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例のバスは、多少早めに、三人の乗客を乗せて八時前にがたがたと帰ってきた。すると、さっきから道ばたに立っていた恐ろしい顔をした男が、運転手になにか聞きとれないことばを耳打ちした。運転neostrata 果酸手のサージェントは郵便袋と一束の新聞を投げだすとホテルに入いって行った。ところでその乗客というのは、けさニューベリーポートに着いたとき見かけた男たちで、車から歩道によろよろとおり立つと、そのへんにふらふらしていた連中の一人と低いのど声で呟《つぶや》きあったが、そのことばはどうみても英語でないことは確かであった。わたしは、からになった車に乗りこみ、きたときと同じ席に腰をおろしたものの、どうにも気持がおちつかず、やがて運転手が現われて、人を妙に威圧するような太いのど声でぶつぶついい始めるのを聞くと、どうやらやっと気が鎮《しず》まった。
 ところが、さてバスには乗ったものの、今度は運がついていないらしかった。いまニューベリーポートからの帰りには、かなりいいタイムで走ってきたのに、エンジンに故障ができて、この先、アーカムまではとて淨膚も行けないというのだ。いや、それどころか、今夜中には、とても修理がつきそうになく、インスマウスから、アーカムへでもどこへでも、よその土地へ行く便は全然ないらしかった。運転手のサージェントは、どうもお気の毒だが、だんなは、ギルマン・ハウスにでも泊るほかはありますまい、たぶん宿賃のほうは、いくらか勉強してくれるだろうが、いずれにしても、ほかにどうしようもありません、といった。この思いがけない故障に、わたしはちょっとぼんやりしてしまい、灯のつかぬ家が半数にもおよぶ、この荒廃した町で夜を迎えるのかと考えると、ぞっと身ぶるいするような思いがした。が、ともかくわたしはバスからおりて、ギルマン・ハウスのロビーへ入いって行った。無愛想で妙な顔をした夜勤の事務員が、一番上から二番目の階、つまり四階の四二八号室というのを、一ドルでわたしにとってくれたが、ただし水道の設備はないということであった。
 ニューベリーポートで、このホテルの噂はいろいろ聞いていたにもかかわらず、結局ここに宿をとることになって宿帳に署名し、宿賃も支払い、例の事務員に旅行鞄を持たせ、この不機嫌で陰気な男の案内するがままに、まったく人気のないらしい埃《ほこり》まみれの廊下を通って、一階、二階、三階と、軋む階段をのぼって行った。案内されたのは、窓が二つついていて、飾りのない安っぽい家具の置いてある旅館の裏側に面した陰気な部屋で、その窓からそとを見ると、下には低い荒れた煉瓦塀にかこまれた、うすぎたない中庭があり、荒れ朽ちた屋根が、その向うに沼池をのぞんで西の方に突きだしていた。廊下のつき当たりには、古い遺跡を思わせる浴室があって、そのなかには古い大理石の水盤や錫《すず》の湯槽《ゆぶね》があり、薄暗い電燈がついており、壁のまわりに通っている鉛管には、その上からかびくさい板がおおってあった。
 まだいくらか明るかったので、わたしはホテルを出ると中央広場へでかけて行き、ちょっとした夕食をとろうと思った。さっきと同じように、うすきみ悪い連中がうろついていて、その連中の視線が、全身にそそがれるの權證到期をわたしは感じた。例の食料品店はもう閉まっていたので、昼間は入《は》いらずにやめておいたあのレストランに入いらざるをえなかった。が、その店には、ずんぐりとして頭の幅の狭い、じっとにらむような、瞬《まばた》きをしない眼をした男と、鼻の低い、驚くほど分《ぶ》厚で不器用な手をした若い女とが働いていた。サービスは、すべてカウンター式になっており、やや気の休まる思いをしたのは、食品がすべて罐詰や包装品を使用している点であった。クラッカー付きの野菜スープを一皿|摂《と》ると、もう充分だったので、ギルマン・ハウスに引き返した。
 受けつけのデスクのかたわらにあるぐらぐらした台の上で、例