線維筋痛症と化学物質過敏症

22c7bea5.JPG線維筋痛症と化学物質過敏症(患者さんへ、治療にあたる方へ) 

「中枢感作」のページで紹介したように、線維筋痛症は、脳の中枢が関わって痛みが起こる疾患グループの中の一つであるとされています。

このグループの中には、筋筋膜痛症候群、顎関節症、むずむず足症候群、間質性膀胱炎、心的外傷後ストレス障害、抑鬱、原発性月経困難症、偏頭痛、緊張性頭痛、過敏性腸症候群、慢性疲労性症候群とともに、線維筋痛症が入っており、また、同じグループの中に、化学物質過敏症が入っていることが注目されます。
つまり、線維筋痛症を発症した人が、同じグループの他の疾患を発症する可能性があるのと同様に、化学物質過敏症を併発する可能性もあるということを示しています。化学物質には、当然、医師から処方される薬剤も含まれます。

線維筋痛症を発症した人には、処方された薬物に対してひどい副作用を示す人が多くいます。痛みが軽くなることと引き替えに副作用が出るなら、合理性がありますが、痛みは軽くならずに副作用だけが出たばあい、患者が味わう苦しみはひどいものがあります。
薬物を服用することによって、失神、嘔吐、畳をかきむしるほどの苦しさを感じたり、ものすごい眩暈、疲労感が出ることもあります。

管理人である私も、線維筋痛症を発症してから目が非常に見えにくくなり、その後、白内障、緑内障をともに発症しました。しかし眼科で処方された白内障、緑内障の点眼薬を目に点しただけで、発熱し、症状が悪化するということが起こりました。もちろん線維筋痛症を発症するまでは、点眼薬で発熱したり、具合が悪くなったことは一度もありませんし、眼科医に聞いたところでは、処方された点眼薬で発熱したり具合が悪くなる患者さんは、ほかにはいないということでした。
このように、化学物質過敏症を併発している場合には、薬を使ったときの副作用が、通常よりはるかに激しい場合があります。

多くの患者は、線維筋痛症を発症する前は、特別に薬物に過敏であったわけではなく、その前は、薬を服用することによって病気がよくなったり、症状が和らいだりという経験をしています。ですからそれと同じように、この疾患を診てもらって投与された薬についても、痛みや疲労感が楽になるだろうという切実な期待を持って服用するわけです。

ふつう、医師から薬をもらえば、患者はそれをきちんと飲むことを義務と思い、真面目に飲まなければ病気がよくならないと考え、言われたとおりに飲もうと努力するでしょう。そして、その結果として痛みは楽にならずに、激しい副作用だけが出たとします。患者のショックは計り知れないものがあるでしょう。
もし患者自身が、自分が化学物質過敏症を併発している可能性を知らなければ、投与された薬剤によって副作用が出たときのショックは大きいでしょうし、また、あまり激しい副作用が出ると、全身状態が悪くなることもあります。

もちろん、化学物質過敏症を併発しない患者さんもいますし、そういう場合は、もし自分に合う薬剤にめぐり合えば、痛みやそのほかの症状がよくなることもあります。化学物質過敏症を併発しているかどうかは、実際に薬物を飲んでみないとはっきりしないことが多いです。

化学物質過敏症を併発した線維筋痛症患者の陥る副作用が激しいことを考えれば、患者の立場から言えば、製薬会社各社は化学物質過敏症を併発した患者でも副作用の出ない、この化学物質過敏症を克服した薬剤の開発研究が重要ではないでしょうか。



日本リュウマチ学会で発表された治療法

dd9533d6.JPG私が治療を受けた先生は2004年のについて発表しています。その時にリュウマチ学会の線維筋痛症研究者の前で線維筋痛症の患者さんに実際の治療を行いました。
その様子を書いた雑誌の記事があるので、下記に引用します。記事は先生自身が書いています。

<引用>

私は、線維筋痛症と顎関節症が、同じメカニズムで起こる疾患であることが分かったので、このメカニズム「中枢感作」の症状を、治療に応用することにしました。
私が具体的に行ったことは、大阪大学で開発された治療装置をさらに改良し、有効性が不安定だった部分をもっと改善するために、近年に分かった、この「中枢感作」現象を応用することにしたのでした。
その結果として、私の治療は、線維筋痛症と難治性の顎関節症について、高い有効率を得ることができました。
私はこの治療法を、2004年の日本リウマチ学会で発表しました。
そして討論時間の終了後に、会場内で線維筋痛症のブースを運営していた線維筋痛症の患者さん数人にご協力いただき、リウマチ学会の線維筋痛症研究者の医師たちに見ていただきながら、デモンストレーションのかたちで治療を行いました。私の行った治療には、とても高い効果があって、それを現場で見た線維筋痛症研究者の医師たちは、即効性も含めた効果に驚かれていました。
線維筋痛症関係の学会で行われた歯科医師による治療法の発表は、日本国内では私が初めてでしたが、海外では、医科と歯科による合同研究や、連携治療は珍しくなく、成果や効果を挙げている例が多々報告されています。日本でも、遅ればせながら、そのような連携、合同研究が出来る体制が出来ることを、願っています。


*ブログ管理人注*
私は、2004年にリウマチ学会でこの医師が発表した内容を家族が見ていたことが、この治療を行うきっかけになりました。2006年に私の症状がいよいよ悪化し、にっちもさっちもいかなくなったころ、この発表を見ていた家族が医師の行っている治療法を思い出し、悪化してどうしようもなかった私にこの治療法を受けさせ、これに賭けてみることにしたのでした。その結果として、私は劇的に回復しました。

参考までに、その先生のホームページを下記に掲載いたします。

http://www.yamadasika.jp/

中枢感作 

b67a324e.JPGアメリカで2006年に出版された「線維筋痛症とそのほかの中枢性の疼痛症候群」(Fibromyalgia & Other Ceintral Pain Sundromes)には、線維筋痛症が、中枢感作といわれる痛みをめぐるメカニズムによって引き起こされる疾患グループの一つであることが示されています。
この中枢感作は、この疾患を理解する上で重要な要素なので、下記に説明したいと思います。

1965年に、MendellとWallは、通常は痛みと感じない程度の刺激を皮膚に連続的に加えると、人体が徐々に本物の痛みを感じる現象について研究していました。
そして研究の結果、皮膚に対して連続的に刺激を加えた場合に、皮膚の感覚受容器から脊髄に送られる痛みの信号じたいは増加しないにもかかわらず、その一方で、脳に送られる痛みの信号は増加しているという現象を見出しました。

この現象は、簡単には[wind up]と呼ばれ、脳の中枢が、疼痛の感度を増大する機能を持っていることを示しています。
健康な人でもこの[wind up]は起きますが、顎関節症、線維筋痛症、慢性疲労性症候群、原発性月経困難症、過敏性大腸炎では、健康な人とは異なり、痛み感度の異常な増大が起こることが報告されています。
そして、この異常な痛み感度の増大が起こる[wind up]のことを、中枢感作と呼びます。そして、この中枢感作のメカニズムは、そのほかにも図1に示されているようなさまざまな疾患を引き起こす可能性があります。



治療歴(発症から回復するまで)

7e4f2736.JPG2001年4月11日 線維筋痛症発症

当日、仕事に行っていて、夕方から痛みが発生し、その夜から激痛に変わり、ほとんど
眠れず、翌朝には歩けなくなっていました。発症時の状況は患者によってさまざまです
が、私の場合はこのように劇的な形で発症しました。



2001年4月 敬愛病院の整形外科を受診

椎間板ヘルニアの疑いありと言われましたが、レントゲン撮影の結果、そのような所見
はありませんでした。



2001年7月 山田整形外科を受診

仙骨がずれているとの診断を受け、そこで紹介を受けたカイロプラクティックの整体治療
を始めました。その3ヶ月後に50メートルくらい歩けるようになりましたが、それ以上は
歩ける距離は伸びませんでした。

このころから私は、自分の感じている痛みが通常のものと違うことに気づき始めました。
何か異常なことが起きていると感じた私は、新聞などで、痛みの原因が何なのか、関係
がありそうな情報を探し始めました。そして2002年2月に、新聞で「線維筋痛症」の記
事を見つけました。



2002年3月 国立病院機構東京医療センター 受診

リウマチ内科の西海医師により、線維筋痛症の確定診断を受けました。

西海医師は、日本ではまだ誰も線維筋痛症に注目していないころ、最初にこの疾患の
論文を発表した、日本では先駆的な存在の医師でした。私はインターネットで西海医師
の存在を知り、確定診断を受けることができました。

多くの患者さんが線維筋痛症との診断を受けるまで、相当数の病院、医院を受診してい
ますが、私の場合は比較的早くこの疾患との診断を受けられたことになります。

ここで投薬中心の治療を受けましたが、症状に変化は見られませんでした。



2004年1月 H歯科医院で健康診断を受ける。

自宅近くのH歯科医院で、歯の健康診断を受けました。その歯科医師から体重を乗せて
歯を揺さぶられ、その翌日から、強い疲労感、眩暈、重量感、目が眩しい感じなど、交通
事故の後遺症にも匹敵するような、重い症状が出始めました。



2004年2月 N病院の心療内科を受診

線維筋痛症を治療してもらえる数少ない病院でしたが、私は化学物質過敏症を併発して
おり、そこでの投薬中心の治療では、残念ながら症状はよくなりませんでした。薬を飲む
たびに、非常に胃が痛む、ものすごい眩暈が出るなど、副作用が出ました。



2004年9月 自治医科大学付属大宮センター受診

あまりにも症状が重く、状態が極端に悪くなり、きっと脳に何か異常が起きているに違い
ないと思い、自治医科大学付属大宮センターの脳神経内科でMRIを受けました。しか
し、大脳には何も異常は起きていないという所見でした。



2005年8月 東京女子医大付属東洋医学研究所を受診

受診したのは、線維筋痛症の治療に理解と熱意を持つ医師で、最初に行った漢方薬の
投薬では、やはり副作用が強く出たため、投薬による治療は中止しました。

それ以後は、医師の指導で身体を温め、血流の循環をよくするようにつとめました。痛
みはいくらか楽になりましたが、歩けるようになるといっためざましい回復はできません
でした。この医師の指導による「痛みが楽になる」方法は、「介護者の方へ」の記事で紹
介しています。



2006年9月 山田歯科医院を受診

山田医師による、大脳指向型(BOOT)咬合療法を始め、劇的に回復しはじめました。





線維筋痛症の「教科書」

63e960c9.JPG一般に、線維筋痛症は難治性の疾患と言われています。この疾患は、日本では非常に知名度が低く、ほとんど知られていませんが、欧米では日本よりはずっと知名度が高く、研究が始まったのも日本よりかなり古いです。発症するメカニズムや治療法についても、海外では100年以上も前から、さまざまな研究が重ねられています。2006年に、アメリカで、これまでの線維筋痛症の研究をまとめた教科書「線維筋痛症と他の中枢性症候群」が出版されました。
執筆者は、米国32人、イギリス3人、ドイツ1人、カナダ4人、スウェーデン1人、メキシコ、スイスと、7カ国に渡っています。
この和訳本はまだ出ていませんが、この本の中には、非常に重要な内容が多く含まれています。
線維筋痛症の「教科書」「線維筋痛症とそのほかの中枢性の疼痛症候群」(Fibromyalgia & Other Ceintral Pain Sundromes)」

2006年、アメリカで発行
発行元:LIPPINCOTT WILLIAMS&WILKINS A Wolters Kluwer Company



この教科書の中で、線維筋痛症が、他にもある痛みを伴う疾患の中で、どのような位置づけで考えるべきかが図解されています。




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