2008年07月

線維筋痛症の「教科書」

63e960c9.JPG一般に、線維筋痛症は難治性の疾患と言われています。この疾患は、日本では非常に知名度が低く、ほとんど知られていませんが、欧米では日本よりはずっと知名度が高く、研究が始まったのも日本よりかなり古いです。発症するメカニズムや治療法についても、海外では100年以上も前から、さまざまな研究が重ねられています。2006年に、アメリカで、これまでの線維筋痛症の研究をまとめた教科書「線維筋痛症と他の中枢性症候群」が出版されました。
執筆者は、米国32人、イギリス3人、ドイツ1人、カナダ4人、スウェーデン1人、メキシコ、スイスと、7カ国に渡っています。
この和訳本はまだ出ていませんが、この本の中には、非常に重要な内容が多く含まれています。
線維筋痛症の「教科書」「線維筋痛症とそのほかの中枢性の疼痛症候群」(Fibromyalgia & Other Ceintral Pain Sundromes)」

2006年、アメリカで発行
発行元:LIPPINCOTT WILLIAMS&WILKINS A Wolters Kluwer Company



この教科書の中で、線維筋痛症が、他にもある痛みを伴う疾患の中で、どのような位置づけで考えるべきかが図解されています。




下記が私のホームページです。
http://homepage3.nifty.com/fmsjoho

線維筋痛症の概念

3ff50881.JPG線維筋痛症は、日本ではまだ知名度の低い疾患で、医師の中にも、この疾患について詳しく知っている人は、リウマチ科などをのぞけば、ほとんどいないといわれています。
以下に、日本のみにとどまらず、世界の線維筋痛症の研究者のあいだで共通の認識となっている事項について、かいつまんで記したいと思います。
線維筋痛症は、脳のなかの痛みを感じる感受性の部分が変化を起こし、身体の各部分には異常が起きていないにもかかわらず、患者自身が激しい痛みを感じる疾患です。身体には異常が起きていないのに、患者が激しい痛みを感じるのは、末梢にある痛みを感じる感覚受容器から、痛みの中枢に至るまでの痛みの伝達経路(つまり痛み信号の上り経路)のどこかに、異常が起きているからだと考えられています。
人間の脳は、大きく分けて大脳、中脳、小脳の三つがあります。
そしてそのうちの中脳部に、痛みを伝達するときの感度を調整するべき機能の中枢が存在すると考えられています。感度を調整するというのは、およそ次のようなことになります。
痛みの信号が流れる伝達経路を「川」に例えるとします。その川を流れる水の量を調節する「水門」の機能を担っているのが、痛みの伝達感度の調整機能ということになります。もし水門の口を締めれば、川(伝達経路)の中を流れる痛み信号の量は少なくなり、口を開ければ、川(伝達経路)を流れる痛み信号の量が増えるわけです。
その水門にあたる機能を担っているのが、痛みの伝達感度の調整をする中枢ということになります。そして、この中枢を担っているのが、中脳中心部にある中脳中心灰白質(ちゅうのうちゅうしんはいはくしつ・略してPAG)だと考えられています。
この機能については、一般的には下降痛疼痛抑制系として知られています。この下降痛疼痛抑制系は、今述べたように、中脳中心灰白質(PAG)が中枢を担っていますが、それだけではなく、多くの部位が関係した非常に複雑な系によって制御されていることが分かっています。そのなかでも青班核のノルアドレナリンニューロン、また、さきほどの中脳中心灰白質(PAG)、および延髄大縫線核(えんずいだいほうせんかく)にあるセロトニンニューロンが主要な働きをしていると言われています。近年になって、臨床データや実験などから、下降性疼痛を抑制する系だけではなく、興奮するほうの系(興奮性の系)もあることが発見されました。この興奮性の系は、中脳中心灰白質(PAG)や、三叉神経中脳路核(さんさしんけいちゅうのうろかく)(略してMe5)など、中脳の深部にある核にコントロ
ールされており、延髄背側網様体(えんずいはいそくもうようたい)がその機能を行っていると言われています。しかしまだ、詳しい全容は明らかになっていません。
さきほどの水門の例えに戻りますと、水門を閉める機能を持つのが、「下降性疼痛抑制系」開ける機能を持つのが「興奮性の系」ということになります。そして今、線維筋痛症患者に多く投与されているノイロトロピンは、この水門を閉める機能を担う「下降痛疼痛抑制系」の働きを活性化させることで、伝達経路を流れる痛み信号の量を抑え、結果として痛みを少なくさせることを目的とした薬剤です。そして、この痛みの伝達感度の調整をする中枢、つまり、下降痛疼痛抑制系は、この次に出てくる中枢感作に深く関わっているものと考えられています。
痛みは、人間の身体にとっては警報と同じ役割を担っており、強い痛みが出るというのは「異常なことが起きているぞ」という警報が鳴っているのと同じことになります。この警報装置は、生命の維持には必要不可欠なものです。身体のどこかが致命的に痛んでいたり、傷を受けているときに、脳がそれに気づかないでいては、もっともだいじな生命が危機に瀕してしまいます。したがって何かしらの異常を感知したときには、脳はすべての活動をストップさせ、その「警報」、つまり痛みに気持ちや神経を集中させようとするでしょう。
そして線維筋痛症は、たとえてみれば、その装置が警報を出した状態のままで故障し、警報が鳴りっぱなしの状態が四六時中続くという病です。つまり、生命の危機を知らせる警報「痛み」が発生し、「この警報に注意しなさい」という状態のまま、「痛み」のスイッチが入りっぱなしになっているようなものといえます。
そして、身体には異常なことがなにも起きていないのに、患者が激しい痛みを感じるのは、痛みの中枢に至るまでの痛みの伝達経路(つまり痛み信号の上り経路)のどこかに異常が起きていると考えられているのは以上に述べたとおりですが、つまりそれは、人間の中脳部にある、痛みを伝達するときの感度を調整するべき機能が、上手く働かないということになります。
なぜ、この感度調節機能がうまく働かないで、いわば暴走してしまい、神経経路の中に痛み信号が多量に流され続け、結果として患者の身体に耐え難い痛みが起こるのかについて、いまのところ原因は不明とされていますが、人体のどこかに、いわば「原発病巣」があって、その場所から慢性的に、痛み中枢への上りの信号が流れ続け、その結果として、患者の身体に耐えがたい痛みが起こっているという可能性が指摘されています。



(詳しい情報は、下記ホームページ参照)
http://homepage3.nifty.com/fmsjoho/

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