
バスク人による、バスク人のための唯一無二のクラブ――スペイン・バスクのビルバオを本拠地とするアスレティック・ビルバオは、“純血主義”を貫くフットボール界でも希少な存在だ。
同じくバスク州を拠点とするレアル・ソシエダが、2002-03シーズンにシャビ・アロンソらスペイン人とダルコ・コバチェビッチ、ニハト・カフベジ、バレリー・カルピンら多国籍軍団の活躍でリーガを席巻しても、ビルバオの根幹は少しも揺るぐことはなかった。
基本的にはバスク人のみで編成するクラブ運営のため、当然ながら補強やスカウティングの面でも選択肢は限られる。そんな中でも、ラ・リーガで実に8度の優勝を誇り、レアル・マドリー、バルセロナと並ぶ降格経験がないクラブを作り上げてきた。そして、古くはホセバ・エチェベリア、イスマエル・ウルサイス、近年ではフェルナンド・ジョレンテやアリツ・アドゥリス、アンデル・エレーラ、ハビ・マルティネス、イケル・ムニアイン、アイメリック・ラポルトら世界的な名手を輩出してきた育成力にも定評があるのがビルバオの強みだ。
「外からみれば一見弱みと思われる私たちの指針は、実は最大の強みでもある」
メソッド部門のチーフディレクターを務めるアンドニ・ボンビン氏(38歳)はビルバオの特色をこう表現する。独自のスカウティング方法や育成理論まで古豪ビルバオに流れる源泉を読み解くべく、クラブを隅々まで知り尽くすボンビン氏へのオンライン・インタビューを行なった。
https://news.yahoo.co.jp/articles/dfc87792b14f1affec299ac1c5a33606a5b6e803
同じくバスク州を拠点とするレアル・ソシエダが、2002-03シーズンにシャビ・アロンソらスペイン人とダルコ・コバチェビッチ、ニハト・カフベジ、バレリー・カルピンら多国籍軍団の活躍でリーガを席巻しても、ビルバオの根幹は少しも揺るぐことはなかった。
基本的にはバスク人のみで編成するクラブ運営のため、当然ながら補強やスカウティングの面でも選択肢は限られる。そんな中でも、ラ・リーガで実に8度の優勝を誇り、レアル・マドリー、バルセロナと並ぶ降格経験がないクラブを作り上げてきた。そして、古くはホセバ・エチェベリア、イスマエル・ウルサイス、近年ではフェルナンド・ジョレンテやアリツ・アドゥリス、アンデル・エレーラ、ハビ・マルティネス、イケル・ムニアイン、アイメリック・ラポルトら世界的な名手を輩出してきた育成力にも定評があるのがビルバオの強みだ。
「外からみれば一見弱みと思われる私たちの指針は、実は最大の強みでもある」
メソッド部門のチーフディレクターを務めるアンドニ・ボンビン氏(38歳)はビルバオの特色をこう表現する。独自のスカウティング方法や育成理論まで古豪ビルバオに流れる源泉を読み解くべく、クラブを隅々まで知り尽くすボンビン氏へのオンライン・インタビューを行なった。
https://news.yahoo.co.jp/articles/dfc87792b14f1affec299ac1c5a33606a5b6e803
「限定」こそビルバオの強み

ビルバオとはどんなクラブなのか。私たちのクラブについて質問されたら、私は迷わずこう答える。「常に困難に立ち向かい、打ち勝っていく力を持つクラブだ」と、ね。
限られた戦力の中でメガクラブと戦い、降格をしたことがない。スペインのような国で、それを90年以上続けるのは非常に難しいミッションでもある。裏を返せば、集団の力が個人に勝るということをクラブが体現してきたともいえるね。バスクの血という純血性や理念が結束を高め、その限定性がチームの強みになっている。それが我々の強さの根底にある。
もう1つ、ビルバオに関わるすべての人間が自分たちは特別なクラブだということを強く認識しているということだ。あまり知られていないかもしれないが、かつてイングランドの労働者階級の人々がこの地に来て、チームを組んだことでクラブが誕生した。その後、バスクの人々が集い一部分を担うことになった。
そこからもわかる通り、ビルバオは小さな町クラブからスタートし、労働者階級の人々が深く関わっていたクラブともいえる。その歴史から多くのアイデンティティを得て、今でも小さな町の1つから始まった誇り、競争力を残しながらクラブ経営を続けている。
この挑戦者としてのアイデンティティをプレーに反映できるようなスタイルを築き上げてきたのも大きな特徴だ。我々のやり方は常にチャレンジ精神を植え付けるもので、前からアタックする積極的なスタイルを崩さない。特に攻守の切り替えの早さは常にトレーニングに組み込まれ、それをシステムに落とし込む。自分たちのアイデンティティや選手の特徴、すべて複合的に考えてプレーモデルを構築する。
つまり、選手ありきではなく、もともと揺るがないチームの骨組みがあり、そこに合う選手を育て、チームにはめ込んでいくんだ。仮にメッシであれ、ロナウドであれバスク州に関係がない選手を獲得することはできないので、自分たちの理念にあう選手を育てていくしか選択肢はないからね。
監督が替われば多少の戦術的な変更はあるが、基本的にはこのクラブ哲学に合う監督を選ぶ。マルセロ・ビエルサもそうであったように、出来る限り早く前線の選手にボールを渡すことを常に考えさせている。ポゼッションではなく、縦に速い展開をカンテラから教え込んでいるんだ。個人戦術に関しても、基本的にはチーム戦術ありきで行うということをユースから徹底しているね。そして、どんな相手であれ自分たちのやり方を貫くのもビルバオのサッカーといえる。
限られた戦力の中でメガクラブと戦い、降格をしたことがない。スペインのような国で、それを90年以上続けるのは非常に難しいミッションでもある。裏を返せば、集団の力が個人に勝るということをクラブが体現してきたともいえるね。バスクの血という純血性や理念が結束を高め、その限定性がチームの強みになっている。それが我々の強さの根底にある。
もう1つ、ビルバオに関わるすべての人間が自分たちは特別なクラブだということを強く認識しているということだ。あまり知られていないかもしれないが、かつてイングランドの労働者階級の人々がこの地に来て、チームを組んだことでクラブが誕生した。その後、バスクの人々が集い一部分を担うことになった。
そこからもわかる通り、ビルバオは小さな町クラブからスタートし、労働者階級の人々が深く関わっていたクラブともいえる。その歴史から多くのアイデンティティを得て、今でも小さな町の1つから始まった誇り、競争力を残しながらクラブ経営を続けている。
この挑戦者としてのアイデンティティをプレーに反映できるようなスタイルを築き上げてきたのも大きな特徴だ。我々のやり方は常にチャレンジ精神を植え付けるもので、前からアタックする積極的なスタイルを崩さない。特に攻守の切り替えの早さは常にトレーニングに組み込まれ、それをシステムに落とし込む。自分たちのアイデンティティや選手の特徴、すべて複合的に考えてプレーモデルを構築する。
つまり、選手ありきではなく、もともと揺るがないチームの骨組みがあり、そこに合う選手を育て、チームにはめ込んでいくんだ。仮にメッシであれ、ロナウドであれバスク州に関係がない選手を獲得することはできないので、自分たちの理念にあう選手を育てていくしか選択肢はないからね。
監督が替われば多少の戦術的な変更はあるが、基本的にはこのクラブ哲学に合う監督を選ぶ。マルセロ・ビエルサもそうであったように、出来る限り早く前線の選手にボールを渡すことを常に考えさせている。ポゼッションではなく、縦に速い展開をカンテラから教え込んでいるんだ。個人戦術に関しても、基本的にはチーム戦術ありきで行うということをユースから徹底しているね。そして、どんな相手であれ自分たちのやり方を貫くのもビルバオのサッカーといえる。
スカウティングの7つのポイント

少し我々のクラブのスカウティングについて触れておきたい。もちろん選手個人の能力も大切だが、重要視するのは我々のクラブカラーにマッチするかということだ。実際に育成年代に限らず評価しているのは、以下のような7つのポイントだ。
(1)競争力がある選手
(2)両足を使える選手
(3)勇敢さ、度胸があり、どんな難しい状況でもそれに立ち向かえる選手
(4)チームを集団として家族のように考え、自己を犠牲にできる選手
(5)頭で論理的に考えることができ、サッカーに対する理解が深い選手
(6)人間としての崇高さ、気高さがあり、クラブに誇りを持って行動できる選手
(7)味方を鼓舞しつつ自分に打ち勝つことができて、アスリートとしての芯の強さを持つ選手
特に(6)と(7)の2つがビルバオのカラーを表しているといえるだろう。
スカウティングの際に重視するのは、選手の人間性を含めた全体像がチームにとってどのように機能するかであり、それが個人の評価に繋がる。まずそこをクリアすることで、ポジションごとの適性や補強ポイントに合致しているか、というフェーズに入っていく。
他のクラブと比較すると、この人間性の部分、特にチームへの献身性や戦える選手であるといった内面が占める割合は大きいのかもしれない。技術は教えられても、選手のパーソナリティはなかなか変えられないからね。これらの指針をクラブ哲学として持つことで、連係面やアイデアの共有といった見えにくい力に繋がり、ビッグクラブとも集団として戦うことができる。
そういった視点で観た時に現在のチームで象徴的な選手は、ウナイ・ベンセドールだね。彼のことはアカデミーから見ているが、ボールコントロールに優れて、インテリジェンスを持ち、常に戦える選手だ。まさにクラブが理想とするMF像を体現しているといえる。
あとは残念ながら引退してしまったが、アリツ・アドゥリスの存在はクラブに大きな影響力を持った。あれだけのFWなのにチームのために働く献身性を持ち合わせていた。自分の得点能力という個性を出しながら、チームカラーを100%体現していたといえるね。彼の背中を見て、若手はビルバオというクラブの特殊性を深く理解した。模範的な選手であったし、レジェンドといえる存在だ。
2人以外にもこのクラブで育った選手には、どんなシチュエーションでも諦めるような者はいないよ。そして、他クラブへ移籍しても育まれた競争力を忘れずにトッププレーヤーへと成長していった。このことは私たちの誇りでもあるし、クラブの育成理論の正しさを顕著に表しているといえるだろう。
そして、サポーターの力はクラブにとって非常に大きいね。我々のホームスタジアムである「サン・マメス」は、どんな相手であっても要塞と化す。バルセロナ、レアル・マドリー、バイエルンであれ、我々のホームで勝利することは容易ではない。それは、我々のクラブの歴史やルーツをサポーターが理解し、12人目の選手として相手チームにプレッシャーをかける存在となるからだ。世界中を見渡してもサン・マメスのような雰囲気を持つスタジアムは稀だろう。
最後に1つ、我々のクラブでプレーするには必ずしもバスク人である必要はないということを伝えておきたい。
たとえばバスク州のジュニアチームに所属したことがある、家族の都合で幼少期に暮らした経験がある、といった選手もいる。例は多くはないが、かつて監督を務めたエルネスト・バルベルデも当てはまるね。ビセンテ・リザラズ、アイメリック・ラポルトといったスペイン国外の選手も、バスクにルーツを持っていたんだ。そういった経歴があれば日本人であれ、ブラジル人であれ、アフリカ人であれこのクラブは受け入れることができる。指導者に関しても過去にはドイツ、イギリス、アルゼンチンなどからスタッフを受け入れてきた経緯がある。
大切なことは、出自や国籍ではなく、このクラブに流れるフィロソフィーを理解し、エンブレムの重みと歴史に共感してくれることだ。今シーズンは思うような時間を過ごせているとは言い難い。課題は明白でDFでのミスが多発していること。その点だけ改善出来れば上位を狙える才能が集まっていると感じている。
私自身もこの特別でユニークなクラブに所属していることを誇りに思うし、少しでも日本の皆さんに我々のことを深く知って欲しいと願っているよ。
(1)競争力がある選手
(2)両足を使える選手
(3)勇敢さ、度胸があり、どんな難しい状況でもそれに立ち向かえる選手
(4)チームを集団として家族のように考え、自己を犠牲にできる選手
(5)頭で論理的に考えることができ、サッカーに対する理解が深い選手
(6)人間としての崇高さ、気高さがあり、クラブに誇りを持って行動できる選手
(7)味方を鼓舞しつつ自分に打ち勝つことができて、アスリートとしての芯の強さを持つ選手
特に(6)と(7)の2つがビルバオのカラーを表しているといえるだろう。
スカウティングの際に重視するのは、選手の人間性を含めた全体像がチームにとってどのように機能するかであり、それが個人の評価に繋がる。まずそこをクリアすることで、ポジションごとの適性や補強ポイントに合致しているか、というフェーズに入っていく。
他のクラブと比較すると、この人間性の部分、特にチームへの献身性や戦える選手であるといった内面が占める割合は大きいのかもしれない。技術は教えられても、選手のパーソナリティはなかなか変えられないからね。これらの指針をクラブ哲学として持つことで、連係面やアイデアの共有といった見えにくい力に繋がり、ビッグクラブとも集団として戦うことができる。
そういった視点で観た時に現在のチームで象徴的な選手は、ウナイ・ベンセドールだね。彼のことはアカデミーから見ているが、ボールコントロールに優れて、インテリジェンスを持ち、常に戦える選手だ。まさにクラブが理想とするMF像を体現しているといえる。
あとは残念ながら引退してしまったが、アリツ・アドゥリスの存在はクラブに大きな影響力を持った。あれだけのFWなのにチームのために働く献身性を持ち合わせていた。自分の得点能力という個性を出しながら、チームカラーを100%体現していたといえるね。彼の背中を見て、若手はビルバオというクラブの特殊性を深く理解した。模範的な選手であったし、レジェンドといえる存在だ。
2人以外にもこのクラブで育った選手には、どんなシチュエーションでも諦めるような者はいないよ。そして、他クラブへ移籍しても育まれた競争力を忘れずにトッププレーヤーへと成長していった。このことは私たちの誇りでもあるし、クラブの育成理論の正しさを顕著に表しているといえるだろう。
そして、サポーターの力はクラブにとって非常に大きいね。我々のホームスタジアムである「サン・マメス」は、どんな相手であっても要塞と化す。バルセロナ、レアル・マドリー、バイエルンであれ、我々のホームで勝利することは容易ではない。それは、我々のクラブの歴史やルーツをサポーターが理解し、12人目の選手として相手チームにプレッシャーをかける存在となるからだ。世界中を見渡してもサン・マメスのような雰囲気を持つスタジアムは稀だろう。
最後に1つ、我々のクラブでプレーするには必ずしもバスク人である必要はないということを伝えておきたい。
たとえばバスク州のジュニアチームに所属したことがある、家族の都合で幼少期に暮らした経験がある、といった選手もいる。例は多くはないが、かつて監督を務めたエルネスト・バルベルデも当てはまるね。ビセンテ・リザラズ、アイメリック・ラポルトといったスペイン国外の選手も、バスクにルーツを持っていたんだ。そういった経歴があれば日本人であれ、ブラジル人であれ、アフリカ人であれこのクラブは受け入れることができる。指導者に関しても過去にはドイツ、イギリス、アルゼンチンなどからスタッフを受け入れてきた経緯がある。
大切なことは、出自や国籍ではなく、このクラブに流れるフィロソフィーを理解し、エンブレムの重みと歴史に共感してくれることだ。今シーズンは思うような時間を過ごせているとは言い難い。課題は明白でDFでのミスが多発していること。その点だけ改善出来れば上位を狙える才能が集まっていると感じている。
私自身もこの特別でユニークなクラブに所属していることを誇りに思うし、少しでも日本の皆さんに我々のことを深く知って欲しいと願っているよ。

バスク純血主義ってより所縁主義だし、面白いクラブ