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「日本には強烈なショックが必要だ」トルシエが語るサウジ戦…日本代表に欠けていた「野心」と「マネジメント」を埋める術とは?

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「日本の敗戦は見た」

それがフィリップ・トルシエの第一声だった。日本がサウジアラビアに0対1で敗れたカタールW杯アジア最終予選第3節の試合終了直後、私たちは電話で話し合っていた。緒戦のオマーン戦に続き、接戦をモノにできなかった日本代表をトルシエはどう評価したのか。率直な意見を聞いた。

https://news.yahoo.co.jp/articles/91df7a4028824bb27e35af1a2b6510469703fe71

時間がないのは言い訳にならない


2
―試合をすべて見たのですか?

「放映するテレビ局を見つけるのが難しく、アラブの放送を見たから幾つかのシーンは見られなかった。

 どうしてなのかわからないが、日本はコレクティブ(組織的)な面で敗れた。コレクティブなクオリティを欠いていた。内容も乏しかった。個の面でも技術的なミスが多く、選手の能力も見劣りがした。インテンシティも動きも質・量ともに不十分で、試合の重圧があったのかも知れないが、これまで日本が作りあげてきたDNAがこの試合では何も感じられなかった。

 たしかに大迫はチャンスを2度作り出し、これだけ出来の悪い試合でも、前半の日本は2点入れていてもおかしくはなかった。サッカーはそうした効率のディテールで勝負が決まるが、私の最大の失望は日本がまったくコレクティブでなかったことだ。本当に何もなかった。プランも戦略も感じられなかった。最後の十数分を除き、ゴール前に積極的に侵入することもなかった。しかしサッカーでは、終盤はだいたいそんな風にグチャグチャになる。

 才能を欠く選手たちが自分たちの本性に反するサッカーをした。このチームに才能は感じられない。何かができるとしたらコレクティブになったときだけだが、それもなかったから個人では何もできなかった。ゴール前への侵入もなく誰も違いを作り出せなかった」

―その通りでした。

「サウジアラビアも決して良くはなかった。彼らの出来もまたごく平凡だった。サウジも大きなプレッシャーを受けて、緊張していたのかも知れないが」

―しかし日本よりもコレクティブで規律もあったのは明らかではないですか。

「ディシプリン(規律)があったのは間違いない。それはマネジメントの効果だろう。私は監督のエルベ・ルナールをよく知っている。彼は規律に溢れ、組織的にチームを構築する。

 日本は自分たちの経験を生かそうとした。経験に溢れた選手を揃えたが、インテンシティを欠き野心も感じられなかった。どうしても勝ちたいという気持ちが、日本からは感じられなかった」

―オマーン戦もそうでしたが、集合から試合までの時間が短く、2~3回の練習しかできません。オマーンはセルビアで1カ月の合宿を行いましたし、サウジアラビアも準備の時間を十分に取っています。2連戦の初戦はいつもこうなります。

「君の言う通りだが、高いレベルではドイツもフランスもアルゼンチンもブラジルも、どこも日本と同じだ。中国やベトナム、サウジアラビアならひと月なり数週間の準備ができるだろうが、日本の選手たちはヨーロッパのクラブで毎週プレーしているし、監督は3年間このチームを指揮している。選手もスタッフもお互いをよく知り、経験に溢れた選手たちもいる。足りないのはパッションであり野心や決意だ。プレーの強度もなかった。選手は自分たちの経験に依拠しようとしたが……、足りなかったのはフラム(フランス語で情熱、炎などの意)だ。選手たちが本当に勝ちたがっていたか、勝てると信じていたかどうかわからないが、魂はなかった。たしかにあと3日の余裕があれば違うのだろうが、それが負けた理由だとは私には思えない」

―森保はとても合理的で知的な監督ですが、情熱や決意といったメンタルの強さは彼の欠点のひとつかも知れません。

「彼はサッカーをよく知っているとは思うが、マネジメントはまた別だ。選手を刺激して気持ちを高め、彼らのリアクションと最高のパフォーマンスを引き出す。グループに最大限の力を発揮させるのがマネジメントだ。その点で日本人監督は外国人監督とはやり方が違う。欠けていたのはその部分で、チームは眠っていた。選手も怠けていた。

 理性の部分に関しては、私は何とも言えない。ただ、チームの出来は悪く、素晴らしい日本代表とは言えなかった。最終ラインの選手たちは歳を取っていた。長友も酒井もベテランだ。柴崎も、他の中盤は……」

―柴崎は酷かったです。

「魂もフラムもなかった。問題はどこにあったのか、マネジメントだったのか。私にはよくわからない……。それを指摘できるのは私ではないが、チームがチームとしてプレーしていなかったのは明らかだ。

 これで予選がとても難しくなった。もちろんまだ計算上は、突破は十分に可能だ。諦めるのはまだ早いし気落ちしてはいけない。

 目的達成はまだ可能だが、日本にはもうミスを犯す権利がなくなった。残りの試合を全勝かそれに近い結果を得なければ、直接突破の道は開けないだろう。もちろん3位に入り、プレーオフに出場することも視野に入れるべきだが」

―そこも考えるべきですね。

「目的は何かをハッキリさせる。それは勝つことではなく予選を突破することだ。3位に入ってプレーオフに進むことも十分に可能だ。

 ただ、本大会の1年前の段階で、日本代表はまだ出来あがっていないというのが私の印象だ。チームは完成していない。プランが感じられないし、何も感じられない。コレクティブな面でとても失望したし心配だ。コレクティブにプレーするのが日本の長所であり、日本人は容易にそれができる。しかし今日の試合では、そうした面がまったく見られずパスは3本と繋がらなかった。縦の速さもなかった。

 最後の十数分は違った。サウジがプレーを止めてしまったのはあったが、日本はそれまでとは異なるトライをした。

 ここまで酷い日本を見るのは初めてだ。才能がプレーにあらわれることもペナルティエリアへの侵入もなく本当に酷かった」

―次のオーストラリア戦までは移動も含め4日しかありませんが、何をすればいいのでしょうか?

「チームに変化は必要だ。オーストラリアはセットプレーに強い。クロスやCK、FKでは空中戦の強さを発揮する。だからより高いインテンシティが必要だし、久保や田中などフレッシュな選手の投入も必要だろう」

―久保は負傷で今回は招集されていません。堂安もです。

「つまり選択肢は多くはないわけだ。このチームはまだW杯を戦える状態ではない。戦術的にも……、ディフェンスはベテランばかりだ。経験は豊富だが、長友は何歳になったのか?」

―35歳です。酒井も31歳で、吉田は33歳です。

「五輪代表がとてもいいチームであったのに、ベテランに頼るのはどうかと思う。ではどうすればいいかと言えば、まったく違う精神状態で試合に臨む。チームをより情熱的かつコレクティブで危険にする。4日では小さなディテールを調整することしかできない。

 サウジ戦で酒井はほんの数回しかオーバーラップしなかった。長友も大きく動かなかった。大迫は前線で孤立し、サポートは皆無だった。また日本のボール保持率が46%しかなかったのも驚きだった。そのうえパスが3本4本と繋がっていかない。そうなるとちょっと難しい。

 オーストラリアに対してどうプレーするかはわからないが、今は何よりも自信を取り戻すことが問題だ。自信の回復こそが急務だ。

 絶対に勝たねばならない試合であるから、選手の両肩には大きな圧力がかかる。だから埼玉スタジアムの観衆はとても重要になる。選手とチームをサポーターが力づける。信じることこそが重要で、予選はまだ終わってはいない。数字の上ではまだまだ突破の可能性がある。だからこそ監督を信頼すべきだし、目覚める必要がある。日本はオーストラリアを破る力を持っているのだから。

 試合はいつだ?」

―来週の火曜で、キックオフはフランス時間で12時14分です。

「それなら見られる。日本の勝ち点は?」

―3試合で3点です。これだけスタートが酷かったのは本当に久しぶりです。前回のヴァイッド(・ハリルホジッチ)のチームも初戦はUAEに敗れましたが、2戦目からは連勝しましたから。

「田嶋会長はメディアから批判されるのではないか?」

―そう思います。

「監督交代も迫られるのでは?」

―しかし今回は会長自身が選んだ監督なので、ヴァイッドのときとは違って容易には代えられないでしょう。

「ベルギーがフランスから先制点をあげた(註:ネーションズリーグ準決勝の中継中だった)」

―試合はもう始まっているのですか?

「もうすぐ40分でベルギーが1対0とリードした。私はまだ(膝の手術後)入院中だ。土曜に退院する」

―明後日ですね。リハビリは順調ですか?

「ああ、うまくいっている。今、見ているのはベルギー対フランスで、ベルギーはちゃんとしたチームになっている。組織もしっかりしているが、フランスはちょっと日本と似ている。今日のフランスは自信を欠き、デシャンは3バックで臨んだ。しかしそれは彼らのプレースタイルではない。選手はフランス人を配しているがチームにはなっていない。日本同様に選手はいるが自信を欠き、確固としたプランもない。今日は3バックで臨み、明日は4バックという具合だ。選手の入れ替えもあった。(註:後半のフランスはペースを取り戻し、運動量の落ちたベルギーを圧倒して3対2と逆転勝利を収めた)。

 対してベルギーはシステムが確立している。日本も以前は自分たちに合ったシステムを作りあげていた。だが今日の日本は本性とは異なるプレーをして、残念なことにクオリティの高い選手は存在しなかった。加えて自信や意志の問題があった。監督のカリスマ性やマネジメントにも問題があったかも知れない」

―そうかも知れません。

「まあいい。目的はもう負けないことだ」

―簡単ではありませんが。

「サッカーにはサイクルがある。日本にはフラムがなく、だからこそ強烈なショックが必要だ。ボンニュイ」

―メルシー、フィリップ。

日本対オーストラリアは12日19:14より埼玉スタジアムで試合開始予定。
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コメント一覧

    • 1
    • Posted by
    • 名無し
    • 2021年10月11日 22:20
    • ID:iirdf5lx0
    • 空前絶後の選手が必要なのね
    • 2
    • Posted by
    • 名無し
    • 2021年10月11日 22:40
    • ID:fvJqdtei0
    • その「野心あふれる男たち」がそろってけが人だったりするのでな。
    • 3
    • Posted by
    • 名無し
    • 2021年10月11日 22:44
    • ID:jhnZCJ8Z0
    • トルシエに森保のケツを蹴ってもらいたい
    • 4
    • Posted by
    • 名無し
    • 2021年10月11日 22:56
    • ID:iirdf5lx0
    • >>2
      野心だけはあるよな
    • 5
    • Posted by
    • 名無し
    • 2021年10月11日 23:22
    • ID:CtA.Q4w00
    • フランスを日本に見立てて言った後、(後半圧倒して逆転した)でフフッってなった。
    • 6
    • Posted by
    • 名無し
    • 2021年10月12日 00:48
    • ID:Qk22Eova0
    • いつも日本に対して激甘な寸評しかしないトルシエがここまで言うのは珍しい
    • 7
    • Posted by
    • 名無し
    • 2021年10月12日 01:07
    • ID:F11tonRi0
    • 内田をコーチにしろよ
      めちゃくちゃショック与えられるだろ
    • 8
    • Posted by
    • 名無し
    • 2021年10月12日 06:52
    • ID:AfVYJr5O0
    • >>7
      プロ選手相手にコーチ経験なんて何もない人間とかどういう発想になったらそんなやべーこといえるんだよ。ショックの前に戸惑うわ。
    • 9
    • Posted by
    • 名無し
    • 2021年10月12日 07:36
    • ID:IimZ0osz0
    • 6月の勝利の歌を~を観ると、トルシエはモチベーションあげる能力は凄かったよな
    • 10
    • Posted by
    • 名無し
    • 2021年10月12日 07:59
    • ID:sH89EGwM0
    • かなり好い事いうね。いくら良い選手が居てもコーディネートやマネジメントが出来なければ意味が無い。
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