2011年10月06日

フリーのHDRソフトFusionのいいところわるいところを考えた

※追記:こちらの記事に日本語化ヘルプファイルを置いておきます。


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わるいところ、そのイチ……というより、最大最悪の弱点。

PA041986_1_1
PA041987_1_1
PA041988_1_1



自動で位置合わせをさせると、たまにこういうことになる。
こんなふうに、なにもない部分(極端にコントラストが低い部分)が大きかったり、繰り返し模様があるもの(繰り返し回数を間違える)などに弱いみたいだ。
あと、景色の一部に風になびく木の枝とか移動する雲とかがあるのも、その位置を合わせようとして、かえってほかの部分がズレてしまうことがある。

などと考えると、意外と弱いものが多い。
暗すぎるものも合わせられないし、ズレが大きすぎるのもだめだ。
6枚を読ませて修正させると、1枚として同じ位置に合わせられないというクズぶりを発揮することもある。


だけども、「これはだめだ」というのが、合成の前にわかるというのは救いではある。枚数が少ないとだめだが、多い場合は、うまくいかないものを除けばいい(こともある)。他のソフトのように、合成してから「ありゃ、ズレてるじゃん」というのがわかるよりはマシかもしれない。
「位置合わせ」と「合成」とが別プロセスになっているからこそできることだ。

それに、そもそも回転ズレ(傾きのズレ)も修正できるソフトはPhotomatixぐらいしかない(ホントは、有料ソフトならできるものがほとんどだろうと思うが、私は知らない。いちおうダイナミックフォトというのを試したことがあるけど、とてもじゃないけど使ってられない。慣れればということもあるけど、私は慣れる気配を感じなかった。フォトショで手動であわせるほうが楽だ)ところ、よくぞここまでやったということはある。
うまくいくときはうまくいくのだ。

しかし、どうして画像をゆがませてまで位置合わせをさせるのだろう。「長方形」という画像の外形を保ったままズレを修正するという技術は特許でもあるんだろうか。
それとも、超広角のはじっこのゆがみなども補正しちゃおう(さらにいえば、レンズが違っても画像を合わせちゃおう、とか)という考えが裏目に出ているのだろうか。

追記:こういう自動での位置合わせがうまくいかないときは、手動でやるHDR Alignment Toolを激しくお勧めする。

 



わるいところ、そのニ。
それはゴースト除去機能が弱いところだけど、ほかのソフトも同じなので、とくに弱点ではないか。少なくとも、手で消すLuminanceHDRよりは(うまくいけば)かなりマシだし。
これについては、半自動というモードがあるPhotomatixがすばらしすぎるんだ(ただし、これはその部分のHDR合成をしないということを選んだわけで、反則っぽいといえばいえると思う……つか、ほかのソフトのゴースト除去もリクツは同じだと思うけど)。
写ってる動体によっては、Photomatixの自動(これ、意外とだめだ)よりはよっぽどきれいさっぱり消えることもあるので、「弱い」というのは正しくないな。「残念ながら完璧ではなかった」ということで……これじゃ、当たり前か。→ 追記:当時のPhotomatix Proの自動ゴースト除去は、けっこう消し跡が残ったりしてたのです。

 



わるいところ、そのサン。
HDR合成&トーンマッピングさせた画像をよくみると、細部が破綻してる(乱れている)ことがままある、ことも弱点かな(SUM合成だとそういうことはない)。いわゆる「細部の強調」をやりすぎているという感じだろうか、エッジの諧調のジャンプがひどすぎたりすることがある。
フォトショなんかでもそうだけど、シャープ処理をやりすぎると、たとえば黒い部分の周りに白いふちどりが激しく出る。この明暗のコントラストでシャープ感を上げてるんだけど、このふちどりが目立つんだよね(取り切れなかったゴーストと合わさると、かなり目立つことになる)。
サムネ(プレビュー)を見ながらの調整だとわからなくて、いいかもと思って処理をさせて、結果を原寸で見るとがっくり、ということになる(そもそも、プレビューと本番がかなり違うのだけど、まあ、これは他のソフトも似たようなものか)。
それが大きな画像で、破綻がピクセル単位だったりすると、わずかにボカして縮小しちゃえばわからないことが多いけれども……まあ、このあたりは調整しだいかもしれない。まだまだいじりきれてないから。
でも、もしもなにやっても改善しなかったりしたら、これも画像処理ソフトとしては、わりとイタイかもしれない。→ 13年追記:現在のFusionは有料(フリー版も有)になってますが、トーンマッピングの結果はこの記事を出した当時とはかなり違ってます。

 



わるいところ、そのヨン。
わるいというわけじゃないけれども、HDRソフトのくせに32ビットHDRファイルが読めない、書けない、ということは惜しいと思う。
うまくいけば、位置合わせとゴースト除去はかなりいいので、これでHDRファイルを作ってLuminanceHDRに渡したくなることもなきにしもあらず(PhotomatixやPicturenautではうまくいかないこともある)。

 

 


では……こんどはいいところ、そのイチ。
これは弱点の裏返しだけど、回転ズレ(像の傾き)だけではなく画像のゆがみまで修正できる、ということだよね。うまくいけば、のハナシだけど、フリーでここまでできるのはすごいと思う。
そして、その修正した画像をそれぞれ保存できるということもうれしい。
その画像を使って、たとえばLuminanceHDRやPicturenautで合成して32ビットHDRファイルを作ることもできる(LuminanceHDRやPicturenautは回転ズレを修正できない)。←新バージョンのLuminanceHDRでは回転ズレの補正も動くようになった(ただし、すごく遅い)。

ためしにパースが違う写真(ブラケットではなく、ただの連写)のズレを修正させてみたんだけど……

P9301705_2
P9301706_2
P9301707_2



みごとに重ねてきたのにはひっくりかえった(HDR合成のあと、ノイズ除去をして色補正)。

P9301705_1_hdr_mode_2_2




Photomatixではできなかった(平均化で合成)。
※英語版の新しい4.1ではパースの補正もできるようになっているが、試してみると、これは意図的にひどくゆがませたもののせいか、補正量を最大に設定しても、一部が重なりきれてなかった。しかしながら、ここまでひどいものを重ねようと思う人もいないだろうから、実用上は問題なかろう。

P9301705_1_7_1_fused






いいところ、そのニ。
EXIF情報がいらないところ、だろうか。
本当にいらないのか、ソフトが適当に見当をつけているのか、それはわからないけど(Photomatixは見当をつけて、それを確認してくる)。
32ビットHDRファイルを作れないところからして、ほかのソフトとは違う処理をしているのかもしれない。それゆえEXIF情報はいらない、のかもしれない。

 



いいところ、そのサン。
Photomatixでいうところの露出合成ができる、ことだろうか。
LuminanceHDRもPicturenautもできない、Fusion以外でできるのはPhotomatixだけ、だと思う(ただし、おそらく有料のソフトのなかにはできるものが多くあると思う。これぐらい、カネ払ってるのにできないのはおかしい)。

P8260853_3_1_sum_1



露出合成というのは、複数の写真の「いいとこ取り」で合成するという方法らしく、トーンマッピングによるHDR画像作成とは違う。画像処理をして新たに絵を描きなおしている(コントラストを上げる処理では、たいがい絵が荒れる)わけではないので、画質を落とさず絵を合成できるという利点がある(たぶん)。

RAWから3枚の明るさの違うJPGを現像し、それをFusionで合成したものが上の写真だが、下にあるRAWと同時記録されたJPGと比較してどうだろうか。
ま、やりすぎるとおかしくなるのはHDR処理と同じだけど。

P8260854_001




んで、おそろしいことに、このFusionは1枚のRAWからも露出合成をやってのけるだけではなく、なんとびっくり、1枚のJPGからも露出合成ができてしまう(それは合成じゃないと言われればそのとおりなんで、正確にいえば露出合成とは違うプロセスが行なわれているのだろう。だけども、細部を強調するトーンマッピングじゃないという意味で、ここでは露出合成と呼んでしまうことにする。たぶん、ダイナミックレンジがどれほどあっても、明部と暗部、その中間にわけて、それぞれをブレンドする割合やコントラスト、ヒストグラム上で明暗に分けるポイントなどを調整していると思う。なお、Fusionでは加算というか合計というか、そういうふうに呼んでる)。
1枚RAWからいじれるということで、考えようによっては、RAW現像ソフトのように使うことも可能かもしれない(ただし、SUMではなくHDRでちょっと派手にすると、ものすごく画質が荒れる)。


ちなみに、同じく露出合成ができるPhotomatixは、RAWでもJPGでも、1枚からはできない(トーンマッピングならできる)。→ 追記:バージョン5になって1枚からの露出合成ができるようになりました。そのほか、HDR Darkroomもできます。やってることはフォトショにある明部と暗部の明るさの独立コントロールと同じだと思いますが。


なお、これがトーンマッピング処理をしたものだ(LuminanceHDR使用)。
これらを混ぜても、いい調子の写真が作れることがある。

P8260854_preview_2




あ、そうだそうだ、露出合成はGIMPでもできるんだった。

P8260853_2_1_gi_2



どうもやりかたがイマイチよくわからないのだけど、とりあえずできたものは平均合成みたいで、かなり低コントラストだった。
そのため、フォトショで少しいじくった(GIMPでやれよ)。(^_^;)

 

 

いいところ、そのヨン。
「それはオマエの好みだろう」ということなんだけど、夜景の描写(描出具合)がいい、ということかな。
ただし、露出合成とHDR合成とを混ぜると、だけど。

これが露出合成(SUMというモード)で作ったもの。

PA031887_sum_1



こちらはトーンマッピングしたもの(HDRというモード)。

PA031887_hdr_mode_1_01



混ぜるとこうなる。

PA031887_hdr_mode_1_2



たしかに暗闇は落ちたままでHDRらしくないのだけど、なんかあっさりしているというかなんというか、トーンがなめらかでひじょうに私好みであるのだな、うん。「暗いところを持ち上げる」よりも「明るすぎるところを抑える」効果のほうが強いような印象で、「ふつうの写真」っぽいというかなんというか(露出合成と混ぜているからだろう)。
「これこれ、こういうのを作りたいんだよ」と思ってしまった。

LuminanceHDRで作っても(2種類を混ぜた)そうはならない。どうしてもHDRくさくなってしまう。細部のコントラストが上がりすぎるんだ。

PA031883_8_1



なお、これは32ビットHDRファイルを合成させるのにPhotomatixを使ったけど、その合成の段階で明るいところのトーンがにじんだように破綻している(よくあるのだがどうして?)。


これも上と同じようにしてFusionで作ったもの。
夜景というより夕景なんだけど。

PA021732_1_sum_2



こちらはLuminanceHDRで作ったやつで、どうしても色彩リッチで「濃い」画像になってしまう(彩度なんか落とせばいいんだけどサ)。

PA021730_1_5_1_preview_2



これもFusionで作ったやつ。
全体的にコントラストは低くなってはいるけど、部分部分のコントラストは必要充分なものがあって、ひじょうにやわらかくてなめらかだ。
このトーンをみたとき、モニターの前で、小さく「うひょ~♪」と言ってしまったヨ。

PA021752_1_sum_2



これはLuminanceHDRでトーンマッピングしたもの(をフォトショで合成したもの)だけど、できるだけ似せようと思っても、この程度(HDR合成はPhotomatixにて)。よく見るとハイエストライト中にソラリゼーションがおきて黒点が出てるし、だめだこりゃ、という感じ。

PA021745_1And8more_preview_2



印刷してみたり、違うモニターで見たりすればまた違うかもしれないけど、少なくとも私がいま(私のパソで)見ているものでは、LuminanceHDRで作ったHDR画像よりも、圧倒的にFusionで作ったもののほうが好みだ。

ま、私の好みというのもヘンなもので、夜景でHDRだとかいうなら、照明の電球までわかるように出したい、と思ってしまうんだな。でも、ググって出てくるような夜景HDRは、中間域の調子がトーンマッピングで変わるのがおもしろいらしく、照明がでっかくにじんですっ飛んでいても気にならないようだ(私にとっては、ただの夜景写真の延長であるように思えて気になるが、かといって私は白飛び黒つぶれをゆるさないというHDR原理主義者ではない)。
上の写真で、すべて電球までわかるかというと……それはハナシが別である(自分のことは棚に上げる)。(^_^;)

 

夜といえば天体写真だけど……月のある風景をFusionの露出合成で。
これだけ雲が明るくなっているのに、月の形そのものがわかる(模様は無理)というのは、ふつうに撮影したのでは不可能。
かといってHDR合成でトーンマッピングをすると、暗部が持ち上がりすぎて不自然になってしまう。都市の夜景などではそれもいいかもしれないが、天体写真は「暗い空に明るい天体」というのが基本だから、空は明るくなってほしくないのだ。

P9131417_sum_1



おそらく作り方しだいなんだろうけど、こういうのはトーンマッピングによるHDRよりも、露出合成のほうが、雰囲気をだいじにした絵作りができるような気がする。

まあ、夜景にいいといっても、たまたま相性がいいものにあたっただけという可能性もなくはないけどね。

 




んでもって、これはいいところでもわるいところでもないのだけど、ただの連写で気軽に遊べるのも楽しい。

GEDC3235_sum_co8_1



なにをどう遊んでいるのかわからない、かな。
これは8コマを合成したものだけど、真っ昼間で三脚もないから低速シャッターにしたくともできない(それでも1/90で切れてるけど)ので、連写したものをあとで合成して低速シャッターで撮ったようにみせかけよう、というものだ。


Fusionは位置合わせができるし、平均合成(「SUM」のアベレージ。いわゆるふつうのコンポジット合成だな)もできるので、こういうのが作れるわけ(まあ、Photomatixでも「平均化」というのでできるけど、なにも調整ができない。Fusionだと、まったくの平均ではなく、まぜる割合を増減することもできる)。

※コンポジット=合成というような意味なので、コンポジット合成というのはおかしいのだけど、なぜか天文のほうでは慣例的に使われている。何枚かをつなぎ合わせて大きな画像を作るという合成や、画像の中に違うものを抜き合わせで貼り付けるような合成……そういう合成とは違うということで言われているのだと思う。


これは12コマをブレンドしたものだけど、フォトショで平均合成にHDRを10%混ぜてみた(これは日陰だったので、1/20で切れてる)。

GEDC3239_sum_01



まあ、どちらも、もっともっと枚数が多いほうが「擬似低速シャッター効果」は高かったとは思う(同じ合成でも、天文のほうでは「擬似低速シャッター効果」が出ては困るんだけどね。だいたいノイズ低減をしつつのコントラストアップが主な目的で、私が画像処理して荒れた絵を重ねるのもこれが目的)。

 

なお、素材があまりに早いシャッター速度で切れてる場合は、数枚から数十枚程度を重ねただけでは、低速シャッターにみせかけることはむずかしい。素材もできるだけ遅いシャッター速度であったほうがいい。
これは10枚を重ねているけど、素材それぞれが1/340で切れているので、少しぐらい重ねても低速シャッター効果は出てこない。単純計算でいえば、露光時間0.003秒が0.03秒になるだけだ(それに比べて、上の1/20が12枚というのは、0.05秒が12倍の0.6秒、つまりシャッター速度1/2秒強に相当する)。

GEDC3257_sum



水の流れをもっと白く見せたい場合、比較(明)で合成するということも考えられるけど、それはハイライト部分が多数重なるだけで、「流れ」のなめらかさが出てこない。白飛びもひどくなる(やってみればわかる)。
なので、平均合成(ふつうのコンポジット)のほうがいいと思う。

 


そ~ゆ~わけで、Fusionの評価としては、よくないところもあるけれども、いいところもあると思う、という感じか。


ありきたりの結論だけど……はい。(^^ゞ

私が入れたのは2.0.5だったんだけど、ほんのちょっとの間に2.1.0になった(各オペレータにリセットボタンがついて、HDRが3モードになった)。どんどん改善……かどうかはわからないけど、とにかく変化しているようだから、どう変わっていくのか注目しておきたいところ。


 

 

 


ミクの歌で「Room sized Logic」という曲。
曲もPVも、両方いい♪


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