大人の発達障害

大人の発達障害について

発達障害 | 2018/09/24

発達障害とケトン食

はじめに

著者が糖質制限について、あまり知識がなかったころ、発達障害の2人のお子さんを育てている母親が「グルテンフリーで2人ともずいぶんよくなった」と言いました。彼女は認知症の親を当院に連れてきたのですが、著者が大人の発達障害を診始めたことを知って、そのような情報をくれたのでした。

そのとき著者は不謹慎にも「食事で中枢神経疾患がよくなるから誰も苦労しないよ」という気持ちが半分沸き起きたと記憶しています。それから2年たち、自分が脂肪肝に対しておこなったケトンダイエットの結果、これは頭が明晰になる、眠気がなくなる、元気になるとはっきりわかりました。

グルテンフリーとは小麦粉制限、ケトンダイエットとは糖質制限の少し厳しい方法のことで、結局同じものです。白米、パン、めん を食べないで、というのは小麦粉(パン、そば)を食べないで、と同じ意味。

ケトン体は、飢餓状態の時に脂肪細胞から出てくる抗酸化物質で、一方糖質は万病の元です。細胞はケトン体か糖質のどちらかにエネルギーを委託して生きています。一日中おやつを食べているとケトン体が出る機会がなくなり必ず病気になります。

飢餓というと大げさですが、12-15時間何も食べなければ達成できます。体が飢餓だと勘違いして緊急事態(脂肪細胞を動員する)で、ダイエットに成功するわけです。江戸時代のように朝食+夕食ではなく、昼食+夕食にすればいいのです。ココナッツオイルを朝飲めば正午まで腹は絶対にすきません!

一方今の食事だと、余ったエネルギーは中性脂肪として脂肪細胞に蓄えられるため、食後に運動しないと毎日確実に数十gずつ太っていきます。運動しないなら主食(とくに麺類)に手を出さないことです。著者は、どんなに夕食が豪華で白米を食べても毎日100gずつ体重が減っています。一日の前半はカロリーも少ないので体重が落ちるのは当たり前ですが。

高齢者がこれをやると、もしかしたら筋力が落ちるかもしれませんので、昼の卵は2-3個必ず食べるように指導しています。卵が多くて心筋梗塞になるということはありません。コレステロール伝説は忘れていいと思います。その間違いは、ここ15年くらいで米国の学会が訂正しています。

ですが聞いてください。名古屋フォレストクリニックの第一号ケトン食をおこなった認知症は、重症のピック病。車いすが手引き歩行に改善したのですよ。改訂長谷川式スケールは0から2です。これは奇跡です。

白い炭水化物と言われる精製された米、小麦粉は急峻に血糖を上げるので血糖スパイクを形成し、その後血糖を下げようと慌てて出てきたインスリンが体を蝕みます。発達障害の子供さんは甘いものを好むため、よけい血糖の乱高下がおきて情緒不安的なる、集中力障害で学業成績が落ちるということです。

精製が少ない茶色い炭水化物(玄米、全粒粉)なら血糖上昇が緩やかなのでよほど大丈夫ですが、ケトン体は飢餓状態で脂肪細胞から出てくるものなので、ダイエット目的なら絶食のほうが効率的です。つまり朝食抜きでブラックコーヒーにココナッツオイルを大匙1杯入れて飲むのです。

ダイエット成功の秘訣は、空腹感がおきないということですからココナッツオイルは絶対に採用してください。飲まないとつらいだけ、空腹に負けていつかドカ食いしてリバウンドします。

糖質制限+ココナッツオイルの白澤式ケトンダイエットは医師仲間で成功率100%と言われています。とくに男性は、おもしろいように体重が下がり、快調になります。

著者が診ている100人近いADHDの多くは大人ですが、当然ケトン食について指導を始めています。言うまでもなく肥満傾向の方はダイエットとなりますし、痩せた方でもさらに病的に痩せてしまうということはないです。

クレッチマーの体型分類ではないですが、大脳と大腸は同じ中胚葉を起源としており、太った人は頭の回転が遅く便秘、痩せすぎの人は神経過敏で下痢というイメージがあります(違っていたらごめんなさい)。

発達障害の二次障害でうつ状態となり精神科から抗うつ薬が処方された方、副作用で太る可能性がありますから日頃からケトン体質にしておけば予防できそうです。

著者も小学生のころ、ひどい過敏性大腸で兎糞様便秘(大腸が痙攣するため)で浣腸をよくしましたし、緊張すると下痢。クラシックコンサートなどで絶対に音を立ててはいけないときに必ず空咳が出たものです。

劇的に治ったのは第一三共のパンラクミンで、腸内細菌が改善されたこと。そして緊張性の咳なら半夏厚朴湯が合います。ヒステリー球という病態がありますが、神経質な女性が喉に何か違和感がある(咽喉頭異常感症)にも適応です。こういう悩みも外来でおっしゃってください。

著者はこのように健康優良児ではなかったので、発達障害の方の自律神経不調、不定愁訴、更年期障害などの苦しみはよく理解できます。だから漢方内科も標榜しています。アスペルガー症候群の方は聴覚過敏があって、人によっては生活が制限されます。騒がしい通勤、勤務がしにくいですね。

認知症も34年間やってきましたが、それも含めて病は口から入る、臨床栄養学の大切さがようやくわかってきました。患者さんが一生通じてやってもいいものがケトン食生活。がん予防にもなるのでぜひ知識を持ってもらいたいと思います。

炭水化物と糖

炭水化物とは、糖質+食物繊維です。後者は血糖に関係ないので無視してよいです。ですから炭水化物制限とは糖質制限と同義語と考えてさしつかえありません。

糖質と糖類は、違います。図1のように、糖類は糖質に含有される関係です。糖類は悪者。それ以外の糖質は良い者と覚えましょう。悪者である理由は摂取後急激に血糖を上昇させて、インスリン(肥満ホルモン)を出すからです。パルスイートという甘味料は、糖アルコールに分類され急激に血糖が上がらないことを売りにしています。
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図2のように、ラムネ、はちみつ、ドーナツはとくにお勧めできません。こういうものを食べていると寿命の前にがんなどで病死するリスクが上がります。たまたま長生きしたとしても同じものを食べさせられた子孫が短命になります。発達障害もふえます。ビール、日本酒もできれば飲まないで。飲むなら夜に少しだけ。糖質ゼロは、OKです。

主食系は夕食だけにしましょう。ここでは、ごく簡単に代表選手だけを述べました。いきなりは覚えられないでしょうから。
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白澤式ケトン食

著者は脂肪肝を治すために人間ドックで医師から来年までに10kg痩せなさいと厳しく言われました。医者仲間も8人が糖質制限で10kg痩せて快調だと聞いていましたので、いよいよ自分もやるのだと決意しました。

3か月間に67.7kgだったのが現在59.2kgです。すでに8.5kg落としたので(図3)来年6月に10kgは間違いなく合格ラインに入ります。勝利は手中にあります。ダイエットの成功は、自分にできる方法をみつけること、リバウンドがおきないことが大事です。
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私が選んだのは白澤式。2018年の新刊に書かれてあるとおりにしました。著者が気に入った点は、空腹感が生じない、運動しなくてよい、夕食は何を食べてもよい、という3点です。これ以上楽なダイエットがありますか?

ココナッツオイルで空腹感が生じないので絶対に必要です。ネットで使い切りタイプのバージンココナツオイルを購入。ブラックコーヒーに入れて飲みます。著者の場合、朝の6時ですね。

15時間絶食が必要ですから外来が終わる1230分にコンビニで買ってきた野菜ステックか生野菜サラダとゆで卵2を食べます。毎日です。7時の夕食:まったく欲望のまま好きなものを好きなだけ食べます。散歩もせず10時に就寝。

午前中、午後、患者さんとしゃべりまくってどうしようもなく腹が減るということはおきません。お茶は飲みます。

休みの日の午後3時に小腹がすいたら素焼きのミックスナッツ20個は許可されていますが、10日に1回たべるくらいです。午後のコーヒーはフレッシュを入れていいです。寝られなくなるのでコーヒーはひる3時までに飲みましょう。カフェインレスのコーヒーならOKですが。クルミとアーモンドは頭にいいですね。

ミックスナッツはコンビニやスーパーで売っています。塩分と油のついていないものを選びます。(表紙に、入っていないと書いてあります)

休日の昼食サラダは自分で作ります。トマト、レタス、キュウリが主体でアマニオイル、オリーブオイル、岩塩で味付け。ガーリックの粉末などを振りかけて味がするようにします。市販のドレッシングは糖類が入っているので最初のうちは避けますが、体重5kg減を達成したら使ってもいいです。

私も7kg落ちたら卵の代わりにサンマを食べたりして規制を緩めていますがリバウンドはまったくおきません。着実に毎月1.5kgずつ落ちてゆきます。昼にラーメンを食べたいと思うことはありますが、夕食ならOKです。

ですから、この3か月ほとんどダイエットをしているという苦しみはなく、頑張っているという意識すらありません。外来は以前より元気です。しゃべらない患者ばかりですから(笑)著者はしゃべりっぱなしです。12時を過ぎても、夕方5時を過ぎても集中力は続いています。

雑談は名古屋フォレストクリニックの生命。やれやれと思っているのはスタッフだけでしょう。断っておきますが著者は双極性障害ではなく、現在躁期ではありません。頭はキレキレです。

白澤式は、1日の前半で若返って、夕食はダイエットに疲れないようにご褒美というシステム。白澤先生は本当に患者思いですね。休日の家族とおしゃれな喫茶店に行ったときは、アイスコーヒーとサラダを注文しています。ガムシロを入れるという選択肢は逆立ちしてもないですね。毒を飲むのと同じです。

この方法で認知症も発達障害の方もかなりよくなるはず。西洋薬が合わない方も治療をあきらめないでいいです。まずココナッツオイルを買うこと。すべてはこれから始まります。「無理のないダイエット」は、我慢でなく知恵を使うことで達成できます。すべてはココナッツオイルが握っています。

白澤卓二:Dr.白澤のアルツハイマー革命 ボケた脳がよみがえる。主婦の友社、2018

(注意)ココナッツオイルを水道に捨てると詰まります。冬は固まりますがホットな飲み物に大匙いっぱいを入れれば溶けます。下痢になる人は、半匙を朝、昼に分けてでも飲みましょう。ココナッツミルクもケトン体をたくさん作ってくれますが、現実問題として絶食時間帯の飲めるものならオイルです。ココナッツミルクはグリーンカレーなどの料理に入れるのですが、炭水化物が体に入る時刻での投入は効力が薄いようです。糖質が体にあるときは、ケトン体が活躍しにくいです。ケトン体が体にあるということが、認知機能を改善し若返ることのキモです。瓶入りは古くなると酸化するので、大家族みなで飲むならいいですが、個人ならステイックタイプがお勧めです。固まっても指で押し出すだけです。

ケトン体で頭がよくなる理由

白澤卓二先生は新刊(2017)で、最近発達障害のこどももクリニックで診ていると書いています。つまり精神科で治せなくても糖質制限で治せるから患者が来るのです。

頭が悪いというのはIQの話ではありません。大人の発達障害の場合はむしろ知能指数が高いほうが自閉症になりやすいわけで、みなさん大学を出ていて太っている方は2割以下ですが、上司や仕事が嫌いだと機能的に前頭葉機能が落ちてものを覚えられなくなり、仕事にミスがでます。それを含めて頭が悪いと表現しました。

しかし機能的な病気なので治せる可能性があります。頭がいいというのは、眠気がない、集中力がある、精神的ストレスに強いという状態で達成されます。学歴とはちょっと違います。この状態に持ってゆくのがADHDの治療目標です。

ADHDはノルアドレナリン、ドパミンの機能的低下がおきるので、ドネペジルなどのアセチルコリン賦活薬では記銘力は上がりません。そこで、コンサータ、ストラテラを処方するのですが、専門家(星野仁郎先生)でも改善率60%とおっしゃっています。

この保険薬でよくならない場合は、いまの著者ならフェルラ酸含有食品とケトン食で治そうとするでしょう。フェルラ酸は摂南大学薬学部のマウス実験で海馬神経幹細胞が増殖していて、臨床では端谷先生(愛知県の発達障害専門医)は学童ADHDへの使用で高い改善を学会報告しています。

ケトン食で小児の発達障害が認知機能を上げることは間違いありません。全員改善できるとは断言できませんが。最初は西洋医薬を試すにしても、効かないとか長期戦に入ってきたら著者にご相談ください。

西洋医薬のリスクは副作用がありうるということ。サプリメントとケトン食ならよほど間違ったやり方をしないかぎり副作用はないです。ケトン食は一部の患者で低血糖をおこしうるので、常識的に知っていなければなりません。肝硬変、重症腎不全、糖尿病治療中、などの方はやめてください。また小児の場合、低身長になると予想されます。

頭をよくするには、①糖質制限、②脂質をじゅうぶん摂る、の両輪が必要です。糖質制限食は、総カロリー制限ではなく、脂質・タンパクを今まで以上に増やす療法で、心筋梗塞が増えるのではないかと反対された時期もありますが、世界中の研究でそれは否定されています。循環器疾患をおこす本元はインスリン抵抗性なのだと理解されつつあります。

スポーツ選手のうち、名選手は頭がいいことが条件です。頭の回転が速いから相手の行動を予期して勝てます。ピザ屋の息子であるジョコビッチ選手はグルテンフリーで復活し、長友選手、井岡選手も糖質制限をしています。

日本のパンに使われる小麦粉の約55%は米国産で異種交配を繰り返した小麦粉は慢性自己免疫疾患のセリアック病を増やしたと言われています。このパンを食べると2時間後に血糖値が下がり空腹感を惹起するため、無性にパンが食べたくなるというパン依存症の女性を増やしたといいます(白澤)。頭に靄がかかったようになりだるくなり、眠くなります。

アメリカは発達障害にグルテンフリー食が普及しており、日本でも難治性てんかんには学会が推奨しています。グルテンアレルギーと発達障害は密接な関係があり、パンをやめれば学業成績は上がると言うことです。(ひごろ糖質の摂取が多くない学童なら、あまり差はでないかもしれません)

迷惑するのは、パン屋さんでしょうから、そういった小麦ではないものを使っているという表示を出して販売されれば大丈夫だと思います。なかなか情報が得られない中で、おそらくリスクを下げる買い方としては大量生産型の安いパンは買わない、茶色いパンを買う、できれば食べないということだと思います。(著者の主観です)

著者は白澤式(夕食は自由)でダイエットしていますので、レストランでパンが出たり、イタリア料理でパスタが出たら喜んでいただきます。残すなんてシェフに失礼です。そんな特別な日があっても、ちゃんと体重は落ちてゆくので大丈夫です。1年に300日ケトンダイエットしていれば問題ないでしょう。

ただ、ケトンダイエットの癖がつくと、せっかくホテルのおいしい朝食が用意されても目玉焼きと野菜、魚にしか手は伸びなくなるものです。コーヒーに砂糖を入れるなどという蛮行は絶対にしなくなります。病気のある人なら自然とそうなっていきます。本によると、外食は濃すぎて食べられなくなるとのこと。1万年前の正常な人間に戻るのですね。

ADHDと認知症が合併したお年寄りはたくさんおられます。朝はできれば絶食で、ココナッツオイルを必ず飲んでいただくのですが、デイサービスの昼食はどうするかというと、ちゃんといただいてください。

デイのあった日の夕食は主食抜きで、卵2個(あるいは蒸し鶏)と生野菜だけにしてください。腹が減って寝られないと言うことはおきません。ココナッツオイルを朝飲んだからです。

さて、本題の「ケトン食でなぜ賢くなるのか」ですが、推論でしかわかりませんが、イライラしなくなる、だるくない、頭のモヤモヤがとれる、眠くない、ストレスに強くなるという現象から試験成績があがると言えば読者は納得できませんか。

実際にケトン食群と糖質群で食前後の脳血流シンチ、神経伝達物質などの測定で差が出るははずです。臨床では一卵性双生児の検討で成績に差が出ているので、現象としては間違いないでしょう。納得できない方は、近い将来出てくる「客観的データ」をお持ちください。

白澤先生の本には、①成績が上がった兄弟(12歳、9歳)、②母親が2子の誕生前からケトン食だった場合の1子との差、③ピアノコンクールに入賞できるようになった中3女子の3ケースがカラー写真入りで顔を隠さずに堂々と紹介されています。白澤先生の人徳がにじみ出ていますね。

もし自分自身がADHDとわかっている方がこれから子供を作ろうというときは、あらかじめ自分がケトン生活にしておくことで、遺伝率60%のADHDが子供に遺伝したとしても軽い症状で抑えられるという可能性が高いと思います。

このコーナーは、たまたま発達障害のコーナーでケトン食を論じたわけですが、この文章を読んでしまった方のすべて(適応外の病態を除き)がケトン生活に入っていただいて結構です。つまり図4に示すように、糖質食とケトン食は人生を大きく変える分岐点と言って決して大げさではありません。がんになりたくない人も本当にお勧めです。

ケトン食の詳細は、認知症ブログの右横にある「ダイエット」をクリックしてみてください。
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名古屋フォレストクリニックを通院中のADHDの方が、ケトン食への切り替えで通院しなくてよくなる、あるいは毎月の通院が3か月ごとに減らせられることは、確実だと思っています。そうすれば著者も全国からの難病初診患者さんをもっと早く診られるようにできます。

臨床栄養学の教育が貧困であると批判されています。著者は自分自身が生活習慣病(高血圧、高脂血症、肥満)になり、ケトンダイエットで心身が変わるという体験を生まれて初めてしました。

この体験を患者さんに還元するよう今後も努力していきます。患者さん自体がいなくなることが、医師の使命だと心得ています。

江戸時代、世界一時間にルーズだった日本人が世界一時間を守る国民になりました。このように政府が正しい方向性を示せば、国内から生活習慣病は一掃できるはずです。その方法論はケトンダイエットにあるのだと、発見できました。

白澤卓二:Dr.白澤の頭は1日でよくなる ケトン食でできる子に。主婦の友社、2018

 

 

発達障害 | 2018/09/13

若年性認知症と誤診しそうになったADHD

 日本老年精神医学会では、2018年の郡山大会で発達障害と認知症の鑑別というシンポジウムがあり、座長の谷向知先生が、「FTDは難病指定されましたが、発達障害をちゃんと除外するようにと説明書きにある」と紹介し、著者も内心どきっとしました。 

朝田は、6年間記憶検査のスコアがおちなかったピック病の報告をしています。こういう症例を知ると、行動障害型の認知症と発達障害の鑑別は実に神経を使うように思います。しかし、ADHD(注意欠如多動性障害)の方しかしないこと、を知っておればもう少し自信をもって鑑別診断できるようになるでしょう。

 新聞報道をみると、若い認知症が増えているという話題があり、医師としては「若いからといって認知症を否定してはいけないな」と肝に銘じるわけですが、逆に若いからやはり認知症以外の可能性が高いともいえるわけです。鑑別診断は、常にバランスよく!といきたいところです。

 緑川は、画像所見で前頭葉萎縮が明らかな場合を除いて、行動上の特徴だけからAS(アスペルガー症候群)とFTD(前頭側頭型認知症)を鑑別しにくい患者がいることを指摘しています。とくに精神科医はCTなどの機器を使わないことが多いので、このような悩みがあると思われます。

 フォローしていっても、認知機能が下がらない患者の中にASが含まれているため、診断は先延ばしにすべきと提案しています。また、偶然に家族がASについて書かれた冊子や新聞記事を読んで、患者の若いころの行動と類似すると主治医に知らせてきた2例を報告しています。

 ASという病名は、DSM-5で消えようとしていますが、我が国においてピック病との病名が残っているのと同様、国民には根付きつつあるため今後もマスメデイアによって報道されたほうが診断の気づきに役立つと著者は考えています。もちろん、犯罪者の病理背景として差別に使われることを欲してはいません。

ADHDの約半数にASが合併することが知られています。当然、ドネペジルは興奮性が高いためにASには処方しません。ただし、陽性症状がすでに薬剤でコントロールされており、コンサータやストラテラで記憶が改善しない場合、ATD(アルツハイマー型認知症)の方面からアプローチするという意味で1.67mg程度なら、ありでしょう。

1)脳萎縮の強い緑内障の57歳男性。上の空はてんかんの鑑別も必要

彼は1年3か月前からいつも1人でやってくる。最初はFTDだろうと思っていたが、HDS-Rスコアが29→28とあまり落ちず、治療も奏功しないことから著者の悩みの種であった。

彼がおかしくなったのは54歳からで子供の頃はADHDの症状はなかったという。

初診時の記載をふりかえると、頭頂葉が萎縮しており、海馬萎縮は0.5。語義失語はないため、海馬萎縮の少ないATDで確定と書かれている。ドネペジルを開始。上司に認知症初期と判定されましたと伝えると、上司は納得したという。

彼の最近の事件はこうである。ここ1年間般若心経を続けていたが、1週間前に突然やめた。妻に指摘されてはじめてやめたことに気づいた。会社でも約束事を忘れていて、勘違いしていた。彼の忘れ方というのは、側頭葉てんかんのように意識のないところでおきているような感じでした。それが「注意欠落」の様相だった。

彼がADHDではないかと思い質問してみたら、案の上整理整頓ができないという。娘2人も机はぐちゃぐちゃ。とくに長女は利発でASの合併が疑われた(易怒)。

娘の易怒性は彼の妻から遺伝したようだ(たまに病的と思われるほど怒る)。妻の姉のこどもは、現在30歳だが5年前から憑依したかのように暴れ出す。精神科に入院したこともあり、統合失調症だろうと感じた。現在自宅療養で独身とのこと。

彼は会社内で禁止されているのに、あせって走ってしまう。もし彼がADHDなら、娘2人は父親からADHD、母親からASを引き継いだと考えた。それにしても人生の途中でADHDになることがあるのか?HDS-Rスコアが28もあるのに、彼の会社での不履行は甚だしい。

しかし脳は萎縮している。振り返ると、著者がADHD診療に乗り出して70例の中で彼の脳萎縮が例外的にとびぬけて高度である。ただし海馬だけを評価すると萎縮なし。これは、著者がADHDCT所見としてのちのち重要となった。つまり、ADHD単独例は海馬だけは絶対に萎縮していないという事実。

ADHDは単純作業が苦手。彼は著者の誤診により認知症と言うことになったため、上司は単純作業に回したのだが、それは逆効果だった。会議室の予定表の管理をまかされ、終わった会議を消すという単純作業ができず、終わっていないのに消してしまう。

ピック病はルーチン作業が得意だから逆である。上司にしてみたら、頭が悪いのだから単純作業をやらせようと思ったのであろう。しかし彼のIQは高い。

ドネペジル、アマンタジン、チアプリド、バルプロ酸、プレタール(先発品に限る)を使っているが、これはATDと側頭葉てんかんを想定したもの。まったく当て外れだった。

ADHDと気づいてから推奨したのが、CDPコリンだったが、それで頭がすっきりしたし、コンサータも好感触。昼に眠くならなくなった。会議の内容が半分は入るようになった。上司に怒られる回数は減った。間違いなく前進した。

心配だった緑内障だが、コンサータ開始以後私の指示で眼科医に定期的に眼圧を測ってもらっており、「そういう薬って、人によって違うからね。あなたの場合は大丈夫ですよ!心配なし」と言ってくれたという。

自分を守る眼科医なら 緑内障患者にコンサータは許可しなかったでしょう。何かあったら眼科医の責任になります。しかし私も彼を救うにはコンサータしかないと思いました。だから眼圧への影響は十分説明しておいたし彼もちゃんと眼科へ行ってくれています。彼はADHDだから眼科へ行くのを忘れるリスクもありました。著者は紙に眼科へ行くこと、と書いて渡しました。本当に重い注意欠如者は、簡単な話でも紙に書いて説明するのがいいです。

現在彼はコンサータ72mg(最高量)で満足しています。クビになる危機も脱しました。もう一度繰り返しますが、眼科医の判断によっては彼は会社を辞めさせられていました。ちなみに著者は、かかりつけの眼科医から緑内障の点眼薬を18年間処方されていましたが、白内障手術で訪れた大学病院の教授から、緑内障ではない、点眼はしないでくださいと言われました。多くの薬が緑内障禁忌とされていますが、眼科医は2人以上の判断を仰ぐといいと思います。

いま、思うと子供のころADHDの症状はなかったという彼の言葉は間違っていると思います。ほかの症例を含めてADHD患者は、違うことを答えることがあります。

注意:コンサータは緑内障に禁忌、ストラテラは閉塞隅角緑内障のみ禁忌となっています。また、眼圧が正常な緑内障もありますので、やはり素人判断はできません。

2)47歳から通院している無職の男性。芸術系大学を出てバイクが趣味。

母親がATD姉妹例で通院していた関係上、いつしか息子の彼も受診するようになった。初診は3年前、彼が47だったとき。毛髪にポマードを厚く塗って、全身黒づくめ、時には皮ジャン。仕事はしていない。いわゆる自由人という感じだった。

ときどき猛烈に頭痛がすると言っていたが、ウイスキーをストレートで1杯飲むというから生活の乱れからくる筋群性頭痛だろうと思った。彼は食欲もあり少なくとも大うつ病ではないという理解はしていた。

当時の私は、認知症、うつ病、統合失調症くらいしか鑑別の引き出しがなく、HDS-Rスコア28.5の彼をFTDなのかなと思うしかなかった。最初のころ彼はドネペジルを拒否し、生活保護のためサプリメントも買えないと言っていた。いまとなっては、「映画がすき」と言った彼の一言は診断のヒントとなった。

20176月ころ著者は、50歳前後の不思議な患者(認知機能が低下してゆかない)に全員ADHDでないかを確認していた。整理整頓できるかと聞いたら彼は昔からできないと答えた。気が散る、落ち着きがない子供みたい、過敏性大腸と答えた。

芸術系大学を出て、ガンダム系のアニメがすき。2001年宇宙の旅(鬼才スタンリー・キューブリック監督のSF金字塔映画)は、難しくてわからなかったという。たくさんの映画を見ているのに、セリフの多い哲学的な映画は意味をとれないのはADHDの症状かもしれない。

彼の注意スコアは6、多動スコア2。そうなると彼の頭痛はADHDから生えた非定型うつ病のサインかもしれない。コンサータを開始した。4歳のとき、交通事故で頭を打ったことがあり、それは頭痛や倦怠感と関係ありますかと聞いてきたので、関係ないと答えたが、むしろ多動で注意欠如だから事故にあったのだろうと感じた。いまでも彼の趣味がバイクで、毎日の休日を静かに過ごすことはできない。

その後彼はコンサータが切れても外来に来ず、やめたことによるリバウンド(以前より倦怠感が増す)が出て、もう治療したくないと、いままで通りドネペジル低用量を持ち帰った。若いころからしっかりやろうという意思が弱いために、就職できないという面もあるだろう。

すこしでも嫌なことからは逃げ回ってきた人生。薬がなくても取りに来ないのは掃除をしないのと同じです。医師の務めとして、彼を職に就かせること、自分の得意分野で仕事できないかといつも考えています。支援の範囲内でできないかという提案です。

3)HDS-Rスコア24の36歳女性。職場の金庫のカギをしない。

博学な夫が連れてきた妻。そのころは著者は初診でADHD診断ができるようになっていた。いきなり彼女に整理整頓できますかと聞いた。

案の定、子供のころからできないとのこと。女子大学もでていて現在デパート勤め。貴金属の収納場所のカギを閉め忘れるという。被害妄想で易怒もある。注意スコア5のためADHDと診断し、CTで脳萎縮がないことを確認してストラテラを開始した。

念のためHDS-Rスコアをおこなうと24しかとれず驚いた。ご主人が「早口で医者に言われるとパニックになって」と弁明しますが、それこそADHDの症状だった。早口での質問はADHDに対しては負荷試験になり、低いスコアになりました。

夫に認知症ではないから治せるはずだと言ったのはよいが、ストラテラ40mgで台無しに。後日、紹介した地元の実践医からの報告で初回から嘔吐したという。

ADHDが診断できるようになって、やる気満々でストラテラを始めたころの著者は、用法容量のせいでかなりの患者の治療を台無しにしてしまいました。処方数をこなしていない医師に当たるというのは、患者にとって最高の不幸です。

アルコール依存症と発達障害の100%近い関係

  アルコール依存症は、ほとんど発達障害だという印象を述べる精神科医がいますが、それは論文化されていないので保留として、Coppolaらは、ADHDはアルコールと麻薬の摂取に関係があるとし、アルコール依存症のうちで、ADHDありとなしの群間比較を行っています。

 その結果、アトモキセチンはADHDと診断されていようが、いなかろうがアトモキセチンを飲むと飲酒したいという衝動性は減るだろうと推定しています。この論文の文意は、ADHDと診断されていなくてもADHDはいるというニュアンスですから、アルコール依存症はADHDがかなり多いということだと考えます。

AS+ATDでアルコール依存 

65歳男性。初診時は腕を組むなど横柄な印象がありHDS-Rスコアも13だったので、ピック病と考えた。ビールは1日10缶。下痢になっても飲むという。

ある日著者は、昔整理整頓できたかどうか聞いたら、妙に几帳面だ、友達も多かったと聞き、発達障害の芽をいったん摘んでしまった。しかし、それはADHDではないというだけで、彼はASだったようだ。子供を蹴る、妻を怖がる。まるで子供である。

残る病型は、ATDかアルコール関連認知症(ARD)かのいずれかということになるが、頭頂葉も萎縮しているので前者であろうと考えている。他院からガランタミンが出ていたので初診時から継続し、フェルラ酸含有サプリメントを加え、奥さんは一定の満足をされている。

ASだったんだね、と病気の特徴を説明すると奥さんはしきりに「先生の言うことはすごく納得がいきます」と言っていた。大人の発達障碍をはじめて4か月めの話。患者にそれを説明すると、みなほっとしたように「そうなんですね」と納得し、謎だらけだった自分の人生に決着をつけ、新たな出発ができる。これは、やりがいのある仕事だと自分も興奮している。

ASは、ADHDと違って特異な薬と言うものはなく、ピックセットでいいのですが、ピック症状なのにATDの脳萎縮の患者(学歴が高い)は、ASを疑うとよいです。ADHDとASはよく似ていますが、AS特有の症状は、こだわりの強さと反復行動、強硬な拒否です。社会性がないのはASのほうですが、万引きと関係するのはADHD(多動の子供がおこす)のほうです。

ADHDでアルコール依存 

59歳男性、初診時はピック病かと思っていたが110か月経過して、看護師がメモ書きで、早く歩きすぎて困るとの妻のコメントを残していたので、ピックだからといって早くは歩かないよなと思い、あADHDだ!と気づいた。

そして彼がアルコール依存であることとつながった。案の定HDS-Rスコアも2123.5と改善。飲酒が減ったからであろうが、ピックではなかなかこうはいかない。

家系を聞くと、父方の祖父は頭のいい人で(AS)酒飲み、父(ADHD)はアルコール肝硬変、おっちょこちょいで工作機械に挟まれて70歳の時に事故死。患者本人は整理整頓できず、妻もADHDとわかった。幸いなことに妻はアルコールを受け付けない家系のため、3人の娘は全員ADHDでアルコールに強いものの、中毒まではいかなかった。

こういう話を私は初診時におこなわなければならなかった。ピック病+アルコール依存症なんて、運の悪い人だと思っていたが、そうではなくて掃除できないのも飲みすぎてしまうのもみな祖先からの遺伝だった。

発達障害を認知症と誤診していた症例

 発達障害なのに、認知症初期と誤診していた症例は、前述したように著者が発達障害を知らなかった時代に多発し、数えたらきりがありません。そこで、1例だけ紹介します。

1)DLBが猛烈にはやく野菜の名を言うはずがない

7年通院している75歳女性。初診時の主訴は、うつ症状だった。HDS-Rスコアが26しかとれなかったのでずっとDLBだろうと思っていた。今回HDS-Rのやりなおしをおこなうと、野菜の名前が書けないほど早くしゃべったし、時計描画がおっちょこちょいで乱雑。

レビーは平均より動作が遅いのに、これは速すぎる。またHDS-Rスコアは28に上昇したことで認知症説を捨てた。CTを見直すと海馬萎縮なし。 

若いころから整理整頓はできたかと聞くとできないという。最近ジョギングしすぎで足を痛めたという。これは多動である。余暇を静かにすごすことができない。

彼女の子供3人のうち、末っ子は無職。頭が良すぎて中学の時にいじめられた。整理整頓できず、漫画収集が趣味。易怒もある。その子はADHDなのだろう。夫はノーマルなので、この末っ子の母親である患者はADHDということになる。このように、家族の発達障害をききだすことで当の本人の診断もつけられるので、遺伝性の疾患はやりやすい。

私が「あなたは認知症ではなかった!今日から僕の友達じゃない!」と冗談を言うと彼女は「そう言わないで~!」とはしゃいだ。

DLBがこのように明るくなるとしたら、それはLPC化(悪い兆候)なのだが、彼女はADHDのうつ が解除されたのだから歓迎すべきことである。

結局、初診時のうつ状態はDLBのうつ症状ではなく、ADHDの二次障害としてのうつ症状だったのである。現在もセルトラリン25mg、パロキセチン10mgは使っている。誤診されているのに、7年通ってくれる患者がいるのは、医師の幸福です。

 

発達障害と認知症が合併し、鑑別診断を攪乱した症例

 いままで33年も認知症一筋にやってきて、いまごろ発達障害の有無を問診で知ることの大切さを知りました。「一筋」でなく「二筋」でなければいけなかったのです。

 著者は、仲間の神経内科医からfrontal ataxiaという概念を教えてもらって変性疾患の歩行障害を非ドパミン系である抗酸化物質で治そうという発想で、ある程度成功を収めました。これを応用して認知症第三期の歩行もある程度改善できました。この発想は「神経内科一筋」の医師にはできなかったと思います。

 MCI10%以上の患者が発達障害の症状を現在まで残しているとすれば、発達障害の症状が認知症の鑑別診断に影響します。わかりやすく言えば、全員ピック病に思えてくるのです。

 ストレス社会で、発達障害の影響をもった高齢者が急増すると思いますから、これからのもの忘れ外来は、認知症+児童精神科の二筋で知識防衛しなければなりません。

1)発達障害+ATD=ピック症状 の法則

ピック病を疑う患者さんの場合は、とくに家族には「怒りっぽいですか」と確認します。そもそも当院の初診問診票には、「怒りっぽい」に丸がつけていただくようになっています。

ときどき、配偶者は「昔から怒りっぽいですけどね」ということがある。HDS-Rの遅延再生の不得意や、CTでのたらこ状の側脳室体部など、どうみてもATDの画像なのに、態度や易怒がピックっぽいのはなぜだろうと思うことがありました。

著者は、平成29年3月から発達障害の有無について、しっかり聞きだすことにした結果、ある78歳男性は若いころからASであったことが判明しました。AS+ピック病という患者は意外と少なく、ピック病の既往歴で一番多いのはうつ病圏です。

彼の場合は、ASATDでありピックっぽさを演出していたのはASということになります。圧倒的に女性に多い老年期のATDに比較して初老期のピック病とASは男性に多いです。易怒の男性を診ると、ついピック病をイメージしがちですが、冷静に判断すると現在はATDです。

ATDならふつう易怒にチアプリドですが、ASの易怒にはクロルプロマジンが優先ですから、彼の現在の易怒は後者を用いて一気に改善できます。つまり、ASが知られていないかった時代には「性格」と思われていたことも病気なので治すことができます。ただ、現在は様子観察中なのでチアプリド75mgにしています。

彼の家系について追加しましょう。

兄の次女は現在51歳で拒食症。看護学校を卒業し独身。現在行方不明とのことである。彼女の父親、つまり今回の患者の兄は、4年前に79歳で自殺している。彼によると、自殺した原因は拒食症の娘であるとのことだった。

兄の長女は、アニメ専門学校を卒業し、ADHD。そのためごみ屋敷となり衝動買いのため借金を繰り返している。独身です。やはり彼女とは連絡がとれない状態だが自治体が面倒をみていることは確認できたという。

いろいろと患者さんのプライバシーを詮索していると思われるでしょうが、当院を訪れる患者さんのご家族も治したいと思っているからです。高学歴と大人の発達障害も非常にリンクしていて、学会でも発表抄録に「大卒」と書き添える医師が多い状況です。

大人の発達障害というのは、偏差値が高いのに仕事ができないという特徴があります。その原因はコミュニケーション障害ですから、個人技術の職(カメラマンなど)ならうまくいきます。営業、接客は避けなければなりません。ですから会社の上司が、①部下が発達障害であることを認識すること、②その人が不得意な部署に回さないこと、③カラオケ大会などに無理に参加させないこと、が肝心です。

たとえば、ADHDは、単純作業はあきてしまいますが、ピック病、知的障害、は粘り強くやってくれます。仕事のミスが多いからといって、ADHDをルーチンワーク(日々当たり前のことを続ける作業)にもってゆくと、逆効果です。

 

『トリプルA』の患者は少なくない

MCIの10%ADHDであり、認知症ではATD一番多いとなると、ADHD、AS、ATDのトリプルAが合併した人は、少なくないと思われます。

まず彼は国立大学を卒業し、3人の娘は全員大学を出て、うち1人は大手テレビ局のキャスターだった。孫は現在高校3年、8月時点で旧七帝大の医学部を合格圏内に入れており担任からさらに偏差値の高い大学の医学部を狙うように指示されたという。

このようなIQの高い家系では発達障害が出やすいことは、東大医師による成書にも書かれてあります。

私の患者は73歳で初診しHDS-Rスコア19.5.新聞記者だった。それから3年通院し、AS,ADHDがあることがわかった。CTやHDS-R(遅延再生満点)からピック病だと思っているが、最近近医がピックではないと感想を漏らしたという(画像なしでの判断)。それは私がウインタミン20mgで穏やかにしたからピックらしさがなくなったのだとも思える。

彼がピックだとするとピック症状は当たり前ですが、トリプルAだとしても似たようなキャラクターで家族を困らせていただろうと想像しています。

 

72歳の「トリプルA」:高学歴・離婚・ピック症状からすぐに診断

72歳女性が2人の娘に連れられて初診した。学歴が高いのに実家の手伝いをし、独立してスナックを20年やった。高学歴、離婚で浮かんだのがADHDの可能性。HDS-Rより先に生い立ちを聞いた。

案の定、整理整頓しない、衝動買いするということでADHDアンケートは高得点。しかしHDS-Rスコアも12しかなく、ADHDASATDのトリプルAによってピック症状が形成されていた。ADHDを大勢見たおかげで、そういう考察がすぐにできるようになった。

現役ではないので、あえてコンサータなど処方する必要はなく、クロルプロマジン、ガランタミン2mg×2を1か月処方して、実践医に紹介した。

42歳女性。ADHD+FADの症例

患者は42歳女性であるが本人は来なかった。遠方から夫と父親が相談に来た。大学病院で若年性アルツハイマー病(FAD)と診断された。前頭葉など全体的に大脳が萎縮しているそうで、IQ65-70の低機能である。夫は画像を名古屋に持ってくるのを忘れた。

彼女の母も若年性認知症で、37歳発病、5年後に肺炎で死亡している。認知症で有名な主治医はプレセニリン1の異常に間違いない、間に合うから治療しましょうといって抗認知症薬を処方しようとした。易怒があるのに、である。幸いにも薬嫌いなので処方されても飲まなかったとのこと。私はウインタミンを自費で購入してもらった。

ご主人が「こういう若い患者は来ますか?」と聞いてきたので「たまに若い人は来ますが、最近はADHDを受け入れているので・・」と言うと、「妻はADHDだったのです」と言ってきた。教育大学を卒業したのに、自分も認知症になるといけないから医学を勉強したいといって、医学系の大学の専門学校に入り医療従事者になった。

このように猛烈に動きまわって、暴力はないものの口喧嘩は絶えなかったという。芸術にすごい才能があって友達はすぐにできるものの、続かなくて年賀状も途中で放り出して書かなくなったという。まったくもってADHDである。

主治医は日本を代表する認知症の組織の代表なので、大人の発達障害にも目を向けて、そのスペクトラムを研究してくれるといいと思った。

今回画像の提供がないので断言はできないが、ピック病ではなくFADADHDでピックのように見えたのであろう。権威の医師が遺伝子を調べたがるはずである。

2)        発達障害+DLB=LPCの法則

ゴリムストックらの研究によると、ADHDのドパミン低値、ノルアドレナリン低値という病態がDLBに結びつくと考察しています。この論文は2011年に出され、十分な数の患者数を解析しており、ATDや対照群の過去がADHDだった確率は有意に低いということで、非常にきれいなデータになっています。

ゴリムストックの発表を参考にしたのかどうかわかりませんが、なぜか中央大学の文学部が、同じような発表をしています。LDPPAに、ASFTDになるとしています。私の調査ではピック病になった人の過去はうつ病が多いようで、彼らの報告を納得するデータはまだ出ていません。そういう事実があるのか、研究者の想像なのか、どちらでしょうか。 

ただ、こういった報告を眺めていたところ、LPCの成り立ちの一つにADHDがDLBになるとLPC(注釈)みたいになるのだろうなという想像は沸いてきました。そうなると、前頭葉血流が低下していないのに、なぜ横着なのだろうという謎が解けます。

(注釈)DLBともピック病とも鑑別がつかない患者群をとりあえずレビー・ピック複合(LPC)としておいて、経過をみながら病理背景に肉薄しようと提案した著者の考え方。

症例 LBD+ADHD 小学校教諭

3年半通院している68歳女性。隣の県からいつも1人でやってくる。地元の総合病院でパーキンソン病と診断されていた。寝言は大きく、肘に少し歯車現象があった。HDS-Rスコアは30。レビー小体病と診断して投薬を始めた。

彼女は知的な方で、診断について何度も何度も著者に質問してくる。聞いてみると小学校の教諭をしていた。著者は、MIBG心筋シンチをやってもあえれば決着はつきますよと説明した。その結果、やはり陽性であり、しかも脳血流シンチでは血流低下部位が後頭葉だった。PDの場合は前頭葉、DLBが後頭葉の低下なので、初診時の診断でよかったと思った。

幻視はないかと確かめると、高速道路を走っているときに、トンネルに入ると前の車のテールランプがおかしくみえるとのこと。彼女の手は相変わらず結構震えている。

処方に対して、いろいろと意見を出す人で今回も抑肝散はいらないとのこと。そしてCDPコリン、NAC、フェルラ酸サプリが切れてしまったので、どういう飲み方か教えてほしいというのだが、サプリの名前も保険薬の名前も1つも覚えていないのである。最近のHDSRは29.5なのに、私の口頭説明がまったく頭に入らない様子だった。

これで彼女がADHDだと気づいた。IQが高くて、人の意見に反抗し、口頭指示が頭に入らない。

ADHDDLBになりやすいという疫学調査そのものです。絵に書いて説明しなおすと、ようやく彼女は質問をやめました。著者が「こうやって絵に描けばわかりますよね」と確かめるとようやく彼女は笑いました。何度も質問するのは知的だからでなくADHDだからだったのです。

AS+DLB 

症例 82歳男性。彼の出身大学は偏差値75である。彼はノーベル賞の学者と同じ研究所で教授をしていた。奥さんも理知的で私がDLBですというと、私も調べてレビーだと思っていたと答えた。

彼は現在DLBと思われる。ふつう、怒りっぽいレビーはLPCとひとくくりにするが、彼はASで易怒なので、老年期発病の問題点はDLBだけである。HDS-Rスコアは11しかとれない。

入院中にせん妄をおこし、尿カテーテルを自己抜去し大出血騒動を起こしている。せん妄予防にシチコリン750mgを打つと、気分がおちついたと言った。1000mgにしなかったのは、もちろんASでハイテンションになってはいけないからである。だからシスコリン250mgアンプルでの微調整は必要である。

若いころは正義感で怒ったが、普通の人なら遠慮して黙っている場面で怒ったという。それがASの症状である。

高い要職についている方がASだということは、自然の流れとしてありえます。興味のあることはとことん勉強できる才能がある一方で、社会でうまくいかなくなる方もいるし、社会では高い地位について部下を困らせているケースもあります。彼は、結婚してからうまくいかなくなったといいます。そんなとき、ピックセットはぜひ必要で、本人も楽になります。

彼の治療は、遠方なので保険薬を出さずフェルラ酸含有サプリメント(弱)3本、CDPコリン1-1-0としました。CDPコリンで仮にハイテンションになっても、サプリメントが調整するだろうとの考えからです。

岩本らは、DLBASDが併存した症例を報告しています。幻覚妄想で措置入院となった66歳男性。診察時の態度や口調、経歴からASDを疑いました。AQを施行したところ34点(cut off33点)だったため、ASDと診断したそうです。両親は他界しており幼少時のエピソードが不詳だったものの、大方の診断ができたというものです。

認知症のBPSDでは説明できないものとして、感覚刺激に対する過敏性と柔軟性に欠ける思考様式を伴った興奮を上げています。

3)        ADHD-DLBライン

発達障害と認知症の間にある長い年月のブラックボックスは、症例を積み重ねることで謎の解明に肉薄できると思っています。その中で、DLBだけはほかの認知症と異なり発達障害との生物学的関連が強いと思われます。

 昔から著者は、パーキンソン病とDLBはまじめな性格の方が発病するという印象が強いです。にもかかわらず、医学書にそう書いたものを見つけることができません。性格を科学的に分類する方法に矢田部ギルフォード性格検査などがありますが、あまり研究には採用されていません。

 いまでも性格という分類は科学的なものではなく、それを語ることは医師として非科学的のとみなされるという恐れがあるのでしょうか。

 著者が勉強中の発達障害というのは、かつて性格と言われていたものの少なくとも一部分を説明できるものです。とくにASのこだわりは、頑固な性格。相手の気持ちが読めない様子は、空気が読めない性格などと揶揄されてきました。

 社会と融和性のない性格は、実は発達障害のことであったということであれば、認知症予防の役に立てられるのではないかとポジテイブに考えています。

遠方から64歳の男性が女性とともに初診した。強い歯車現象があり、大学のSPECTでDLBと言われており、納得できるものであった。右手優位の振戦が出ることがあり、認知機能が先に落ちたというからPDDでなくDLBでよいと思った。HDS-Rスコアは28

なぜ、軽症なのにこの2人ははるばる名古屋に来たのだろうと思った。結局大学がパーキンソン病だと言いながらアリセプトを処方したので2日で自己判断にてやめたという。その不信感でやってきたのである。

大手の会社に勤めていたが、57歳(定年3年前)からうつ状態となり、心療内科でうつ病と診断された。その後医師は「うつ病ではなくて社会適応障害でした」と診断を変更した。

ところが付き添ってきたのは妻ではなく姉だったことから、話が複雑化する。いま彼は独居で要介護1、ヘルパーに助けられて生活している。著者の疑問は大企業なのになぜ独身?という偏見めいた疑問だった。彼は、いわゆるマザーコンプレックス。しかし、肝心なその母親が亡くなったときに、平気な顔をしていたという。定年前のうつ状態は会社で、パソコンができないということでいじめられたからだという。それでも頑張ってやりとおした。

著者は、彼にADHDの疑いをかけて、決定的な質問をした。整理整頓は得意ですか→できないです。服も脱ぎっぱなし。

お姉さんに「すみませんが最終学歴を教えてください」。「大学です。」「どこの大学でしょうか」「恥ずかしいことに〇〇大学(偏差値75)なのです。」彼は有名中・高校を出たエリートコースを歩んでいる。部活は化学部。星野著書の「発達障害の方はパソコン部、化学部、生物部を好む」を思いだした。

化学部では学校1位の子と一緒だった。その子は医師になった。ほかに裁判官になった子もいる。A君は中学のときからおかしかった。大学の教授(コンピュータ関係)になったが、総代なのに卒業式に出てこなかったという。姉がその話をしているときに、本人がぽつりと「昔から彼も変な感じだったのです」という。

うつ状態のときにかかった心療内科が、うつ病→社会適応障害と診断変更した気持ちがよくわかった。彼は、ADHD素地に二次障害としてうつ病圏となり、DLBを併発したものと結論した。

退職まぎわにパソコンの仕事が入り、仲間からいろいろ教えてもらっても記憶できないために「〇大を出たくせに」といじめられたという。その期間、毎朝老いた母親の手を握って「母さん行ってきます」と泣きながら出社していた。それなのに、母親の死にも泣かなかったというのが、ADHDの決定的なところであろう。

彼のレビースコアは11.5。いままでの著者だったらDLBを治すだけである。もちろん、引退後なのでコンサータは不要であり代替品のアミノ酸サプリやフェルラ酸含有サプリメントでよいと思った。

高い学歴、独身、会社でのいじめ、二次障害、DLBの発病という典型的なADHD-DLBラインのケースとして紹介しました。会社の上司が、彼をADHDだと見抜いていたらパソコンをやらせなかったと思います。

ADHD+DLB (もっとも若い症例)

58歳男性が奥さんと来院。主訴はもの忘れだったが、暗い真面目そうな目に眼鏡をしていて小太り。診た瞬間にADHDだと感じた。

ところが、HDS-Rスコアが13しかとれず、前頭葉もけっこう萎縮していたのでDLBと診断した。当時著者は、ADHD+DLBという発想がなかったので、診断を認知症に限定してしまったのである。

2回目の外来で彼が、やはりADHDであることがわかった。著者は調子に乗って認知症と発達障害の両方を一気に治そうとしてしまった。同様に当時ストラテラは規定通り40mgで開始するものだと思っていたので、それで大失敗した。DLBはガランタミンとCDPコリンで劇的に改善しHDS-Rスコアは27になったが、ストラテラは副作用で中止。

彼の趣味は淡水魚だというが、若いころからの衝動買いはどうなってしまったのだろうと聞き直すと、キャラクターものの雑貨を商売にしているため、それで衝動買いの癖は消化できているのだった。

先日もADHDの奥さんがミニチュアカーを店で売っており、店主の夫はASで自分の趣味を商売にしていたのである。ASのこだわりと繰り返し行動が収集に向いてしまうのであろう。

この症例に話を戻すが、自営業だからあわててADHD治療薬を処方する必要はなかった。ところが、後日、やはりストラテラを再チャレンジしたいというので、今度は10mg開始し、現在まで服用している。

 発達障害を診始めたころの著者は、ADHD-DLBラインのことも、ストラテラの開始規定が過剰であることも知らなかったのです。彼の経験で2つのことを体得できました。

緑川 晶:診療の秘訣 認知症に隠された発達障害。Modern Physician 2017; 37(7):785.

朝田 隆編集:誤診症例から学ぶ 認知症とその他の疾患の鑑別。医学書院、2013.

岩本智秀ら:レビー小体型認知症に自閉スペクトラム症が併存しBPSDを修飾したと考えられる1例。Dementia Japan 2017; 31(4):600.

石浦章一:遺伝子が明かす脳と心のからくり 東京大学超人気講義録。羊土社、2004

 

●名古屋フォレストクリニックでは、発達障害の診療を積極的に行っています。コンサータ、ストラテラで改善しなかった方もあきらめずに受診してください。長々と検査して疲れさせたりはしません。即日治療開始!当院では、治療の引き出しはたくさんあります。
●電話予約:052-624-4010


発達障害 | 2018/09/11

 

発達障害の治療

 

 発達障害の治療事例集は後半で紹介しますが、あらかじめ発達障害の治療薬について概要を説明しておきます。

1)    記憶に対して

発達障害のうち、ADHDには薬が2種類認可されています。アトモキセチン(ストラテラ)とメチルフェニデート(コンサータ)です。まず、ストラテラを使いこなしてから、物足りなくなったらコンサータの登録医になってください。

登録には2人の専門医の推薦状が必要になりますので最低2週間はかかりますし調剤薬局に登録薬剤師が1人いる必要があります。コンサータは30日しか処方できません。

 これらの薬によって、記銘力、やる気、眠気の解消が達成されますが、副作用として、めまい感、眠気がありえますので、用法容量は著者の指示に従ってください。

 ストラテラは、朝40mg開始とされていますが、副作用で4割が脱落するのでやめてください。初回は10mg錠を2錠朝としておいて、気持ちが悪かったら朝、夕に分散します。最初はモサプリド(吐き気止め)を併用しましょう。

 効果がなければ、朝25mg、夕10mgにします。だめなら朝40mg、夕10mgです。いずれも効果が出たら増量しないほうがいいでしょう。患者がもう少しよくしたいと言ったら増量です。

 ストラテラが低用量のうちから合わないなら、コンサータ朝18mgにスイッチします。効かなければ27mg3段階めは18+27mg錠と上げてゆきます。高価な薬なので初めて処方するときは、7日分だけにしておくといいでしょう。別に隔日で飲んでもいいです。

 さて、症例を重ねてゆくと2剤併用が必要な患者がいます。併用禁忌ではないですが専門医しかやらない技なので、併用が有効と但し書きを書いて処方します。たとえば、朝コンサータ27mg、夕ストラテラ25mgというのがあり、です。コンサータは昼3時までに飲まないと寝られなくなることがあります。

 ストラテラもコンサータも体質に合わない場合は、三環系抗うつ薬でやる気が出るタイプのノリトレンを10mgで開始してみてください。著効例を経験しています。

2)陽性症状と陽性の二次障害に対して

易怒、落ち着きのなさ、こだわりの強さがある場合は、ウインタミン細粒14-6mgを処方しましょう。発達障害は拒薬をおこしやすい疾患ですから、家庭内平和のために家族が納得の上で飲み物、料理に入れておくのもありだと思います。

睡眠導入剤も処方可能です。肝機能が心配な場合は、チアプリドでも(小児ですら)奏功します。

基本的にコウノメソッドの対ピックラインナップは可能です。第二選択はジアゼパム(セルシン)、第三選択はクエチアピン(セロクエル、糖尿病には禁忌))、奇異反応にはプロペリシアジン(ニューレプチル)となっています。

第二選択以降の薬が必要な発達障害は、二次障害の段階になっています。あるいは急性精神病様症状という形でも出てきます。妄想には、まずハロペリドール(セレネース)、暴力にはリスペリドンもありです。

小児には、まず甘麦大棗湯を使ってみましょう。甘いので飲んでくれるということが まず第一です。

3)  陰性の二次障害に対して

  発達障害がベースで、うつ病圏、境界型パーソナリテイー障害、神経症圏(ノイローゼ)になっている場合は、それに対して対症療法を加えます。場合によってはADHD治療薬なしでこちらの治療に専念すべき患者も少なくありません。

 うつ病圏は陰証なので、セルトラリン25mg。食欲不振系にはスルピリド100mg程度で開始。パキシル使用も可能です。

 双極性障害、境界型パ-ナリテイー障害、神経症圏は陽証ですからクロルプロマジンをベースに抗うつ薬低用量、抗不安薬など必要なものだけを加えます。

4)  認知症・てんかんの合併

 海馬が萎縮していたら、発達障害単独ではありません。ガランタミン2mg×2を開始。海馬に石灰化があったら自動症がないか家族に聞き、あるならバルプロ酸を開始します。

小林らの発表で、3人のVD(71,72,82歳)なのですが、家族に患者の過去の性格を聞くとADHDだったことがわかり、ストラテラ低用量を開始したら2週間以上たってから陽性症状がなくなったという報告があります。

認知症の記憶を治そうと思ってメマンチンを投与したところ、記憶はよくならないが気分は落ち着いた、と同じことで予期せぬ効果が出ることはあります。それは決して正攻法ではなくADHD治療薬でハイテンションになることはあります。パニック障害、ピック病のあるADHDには、ADHD治療薬は原則禁忌です。

5) サプリメントの選択

 保険薬がなかなか合わない場合は、CDPコリンとフェルラ酸含有サプリメントという2つの武器が発達障害に合います。著者が発達障害に使う薬やサプリメントを図4にまとめました。

  発達障害の方には長い人生があります。世の中に存在する物質は、何を使ってでも治そうとする気持ちが必要です。
スライド1

 

もの忘れ外来にくる発達障害患者

 それでは、本題に入りましょう。図5は当院でADHDと診断した91例の初診時の年齢と、認知症合併例の分布です。当然加齢にしたがって認知症合併者が増えます。

Tzengの集計では、対照群との比較で、大人の発達障害が認知症になる確率は3-4倍高いとしています。ADHDが認知症になったのは、37 (5.48%)、対照群からは81 (4.0%)でした。対照群と年齢と性別をマッチさせたハザード比は4.008でした。これは台湾人のデータですので、日本人もこのようになる可能性があります。

発達障害が認知症になりやすいかどうかの結論はでていません。ただしADHDDLBになりやすいということは、近い将来固まってゆくでしょう。

 とくにLPC(レビー・ピック複合)の病態を示す患者というのは、ADHDをベースとしたDLBですから幻視や家族への執拗な要求は、クロルプロマジンを必要とすると考えてください。
スライド2

 認知症合併者の場合、ADHDがベースにあることに気づけると医師は、ADHDも治したいというモチベーションが上がり、ADHD治療薬も処方したくなるものですが、認知症合併者の方への投薬はADHD単独例の7割くらいの用量でよいことが多いです。もしくは処方なしです。

 いま一番困っている症状が認知症から来ているのか、ADHD症状なのか見極めてピンポイントに処方するのが理想です。しかし少量投与なら大きな間違いはおきません。ですから日頃から70歳以上へのストラテラは10mgスタートの癖をつけておくのがいいのです。

 

ADHDに気づくヒント

 忙しいもの忘れ外来で、ほとんどが認知症の病型鑑別に気がとられている医師の頭の中に、ADHDを忘れないでというメッセージを叩きこんでおく必要があります。そのためには、シンプルにADHDの情報を伝えるのが効果的と思いますので、次の項目を覚えておきましょう。

1)  HDS-Rスコアに出ない注意欠如 

 橋本らは、発達障害の方は心理検査の際に過集中はできるので、成績が落ちないと言っています。しかし本人は生きにくさを感じているので、それで返してはいけないと警告を鳴らしています。ATDとの鑑別が非常に難しくて1例だけアミロイドPETまで行って陰性だったことからADHDと診断したこともあったといいます。学会では、なぜ学歴が高いのかと質問があり、回答に窮しておられました。

 

 薬の飲み忘れ

1年通院している67歳女性。主訴はもの忘れ。初診時、HDS-Rスコアは27ATDだと思っていた。2年後にADHDだと気づいてストラテラ40mgを開始。ところが、ASを合併していたせいか、ものすごく易怒が強まり中止。せっかく診断できたのにと思った。

ある日、彼女はチアプリド40日分、レミニール100日分、ウインタミン95日、Lチロシンが57余っているといった。HDSRスコア27の認知症が、こんなに飲み忘れるだろうか?やはり彼女はADHDに間違いないと、逆に思った。HDS-Rをやりなおすと28だった。認知症ではないとはっきりした。

ほかの薬は全部やめていいからストラテラ25mgだけ飲みなさいと指示。ADHDの人に複雑な指示をしてはいけないと考えた。25日後、頭がすっきりした、と笑顔。その後ストラテラ10mg夕を追加。28日後、頭につまっていたものはすべてなくなった、と表現した。

認知症とは使う薬の系統が違うから誤診はできません。初診患者はとりえず全員ADHDだと思って問診することでしょう。(整理整頓できたか、衝動買いしたか、友達少なかったか、学歴は比較的高いか、を聞く)

石川らは、53歳男性の1例報告をしています。大卒で経営コンサルタントの自営業です。毎日のように忘れ物を取りに帰ってくる、水道の流しっぱなしということで、もの忘れ外来を初診。HDS-Rスコアは満点。MRISPECTで異常なし。

結局、言語性IQ 124に対して動作性IQが 84しかないというアンバランスが検出されてADHDと診断されています。多忙による疲労の蓄積で注意機能が維持できなくなったと考察しています。

2)ADHDらしさのある時計描画

MCIにおいて認知症とADHDを時計描画で鑑別しようと始めたところ、みごとに裏切られました。ADHDならIQも高いし、行う必要もなく完璧に描くはずだと思っていました。

結果的に満点にはなるものの、勝手に針を描く、数字や針の書き間違いを慌てて訂正する、円のラインがすれ違うそぶりが高頻度に観察されます。ですから異常コードに#100 勝手針、#101書き損じ、#102円のすれ違い、の3項目を新設して今後の統計に生かすことにしたのです。

ADHDは認知症のようなとんでもない異常は描かないですが、ゼロや三本針を平気で描くのは驚きました。いかなる心理でこうなるのかわかりませんが、他の研究者の追試を期待しています。

図6は、治療によって0が消えた症例です。書式A,Bとも0が出ていましたし、針の長さ補正もしていましたが、ADHD治療薬2種で集中力が高まり、すべて改善しています。
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図7(5人分)は三本針を描いて慌てて1本消す様子を示します。図8(6人分)は、針の長短を訂正した様子です。このような修正は、認知症ではあまりやらない行動です。
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また、イライラ感の強いADHD150mgのチアプリドでCDも改善した様子を示します。抗精神病薬は出したくないという医師なら、ADHDの陽性症状はチアプリドでも反応するということを示しておきます。

そういった意味では、CDTは認知症と発達障害の鑑別に有用だということも言えると思います。認知症らしい異常な絵の中にADHDらしい描き方をすると両者の合併を察知することすら可能です。

3)家系の問診

ADHDは、ドパミン系の遺伝子変容なので遺伝します。狩猟時代はエースであったのに稲作の登場で集団での仕事が増えた現代では、仕事のミスが多い遺伝子になってしまいました。

まず、IQは遺伝します。一卵性双生児と二卵性双生児での一致率の違いでわかることです。ADHDIQと相関して増えるので、食べ物と視覚刺激(テレビ)の影響でヒトのIQは上がってきている(ニュージーランドの研究、石浦)ことを考えると、それは痛風患者とADHD患者が増えるということにもなるでしょう。

片親がADHDなら60%、両親がADHDなら88%子供に遺伝します。ですから、認知症かADHDか迷ったら、親、兄弟、子供に整理整頓できない子がいるかどうかを聞けばわかります。

80歳女性。5年半通院しているが初診時HDS-Rスコア19.5、海馬萎縮は1.5+で認知症だと信じ切っていた。その後HDS-Rスコアは1823と低下しないので、娘の話を聞きなおすことにした。

若いころから整理整頓できず、衝動買いし、ハサミで子供を嚇すほど怒りっぽかった。非常に頭の良い方で娘もそうである。80歳のピック病は考えにくく、いままで必要だったクロルプロマジン37.5mg、クエチアピン25mgADHDに対して奏功していたのだと分かり、娘に誤診だったと謝ると先生の処方でとても楽でしたと言われた。

その後娘も初診。外国人の夫がなかなか日本語を覚えてくれなくてストレスで8kgも太ったというので、非定型うつ病と思っていたが、昔から聴覚過敏があるというので、母親から受け継いだASの傾向もあると気づいた。そこで娘に説明すると、納得がいくという。母親は最近ますます性格が悪くなった、昔から付き合いにくい母親でしたと言ったのである。

結局、母親の正診に5年半、娘の正診に10か月かかったわけだが、発達障害は家族で多発しているので1人気づけると、みな診断に結び付くというところがある。 

9  67歳男性がADHDであることに気づくまでの経緯をスライドに示します。もの忘れを主訴として4年間通院していたが、HDS-Rスコアが25.5から27に上がってしまったので認知症ではないと気づいた。そこで、若いころ整理整頓ができなかったことを聞き出し、家計調査を行った。
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結局、母親がAS,姉、妹、長女がADHDであることが判明。状況から患者本人もADHDによる記銘力障害で通院し始めていたということがわかった。結果としてガランタミンは不要だったと思われるのですが、彼に合併していたASの易怒に対してクロルプロマジンは、うまく奏功していたため4年間通院してくれていたということになります。

4)海馬萎縮度

 著者は、海馬萎縮度を0から4まで設定しています。0.5ずつですから9グレードあります。集団統計で平均値を見てゆくと、海馬萎縮と進行速度(HDS-Rスコア年間変化量)はちゃんと相関していますので、言ってみれば初診時にその患者が将来どうなるのか、大方わかります。

 10のようにADHDなら(認知症を合併しない限り)海馬萎縮は00.5と決まっています。
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5)ジョギングが好き

 ADHDの多動症状というのは、男性はジョギング、女性はおしゃべりという形で出ることがあります。

 ジョギングが好きな3人を説明しましょう。

A) 58歳男性。母親が認知症で通院している関係で僕も見てほしいと4年前から通院。HDS-Rスコア30、海馬萎縮0.5。なぜ妻がいつも帯同してくるのか聞いたときに、運転が下手なので私が運転していると妙なことを言っていた。農業理論に詳しくしゃべりだしたら止まらないのだが、結局何を言いたいのか毎回わからず。ある日痩せてゆくので聞いたらウルトラマラソン(100km競走)に参加しているという。4年間ピック病と誤診していて、ADHDと気づき、コンサータ18mgでかなり改善し、余計な話はしなくなった。それでもクロルプロマジン12mg、ジアゼパム2mg、ニトラゼパム5mgは必要で、軽いうつ状態に陥ることもあるという。ADHDはマラソンをしたくなるのだと気づいた1例目である。

B) 57歳男性。大学卒でHDS-Rスコア29もあるのに、工場ではミスが続き、単純作業ほどできないという。コンサータでかなり改善したが、やはりATDと誤診していたのでドネペジルも継続。本人はドネペジルもやめないでという。彼は、走ってはいけない規則の工場内で走ってしまうという。ある日の外来で、スポーツウェアで来たことがあり、聞いてみると毎日ジョギングしなければ気が済まないという。そのジョギングはADHDの1症状なのだろうと、前述の症例に学んだ。

C) 43歳女性。いつも新幹線で車いすの認知症の母親を連れてくるのであるが、ホノルルマラソンに毎年母親を連れてでも参加しているという。そのバイタリテイーはどこから来るのだろうかと不思議に思っていた。ある日、もしかして整理整頓はしないほうかと聞くと案の定、ADHDだった。うつ病圏で医師にもかかっており独身だとわかった。ホノルルマラソンとADHDがつながった。

6)コウノメソッドADHDAS問診表

著者がADHDをわかりだしたころは、DSM-5の診断基準から問診表を作って患者に質問していたのですが、回りくどい文章なので1年間の患者経験から1ように分かりやすい文章で、同じようなことは聞かないように工夫しました。
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なぜ文章をシンプルにしたかですが、初めてお聞きしたときは、そんなことはないと否定していた方が、後日ご家族と来るようになって、ご家族に聞き直すと症状が該当していたということがありました。

せっかくADHDを疑って質問しても本人は、そんなことはないと答えることがありますし、実はADHDならではの症状として、医師の口頭の話が頭に入らないという点があって、いいえ、と生返事してしまうのではないかと考えています。そのように曖昧な答えをする患者は、CTとCDTでADHDを確定することがあります。

同時にASもわかるように、すべき質問をそろえてあります。この表を作るために、著者は相当患者数をこなしたのだと思います。

 

中高年のADHD症例

 発達障害という発育の問題が、まさか高齢者の外来に影響があるとは、知識がないとまったくピンとこないと思います。例えば80歳の女性が1人でもの忘れ外来にきて、その方は初期の認知症とは関係のないADHDである、というイメージが少しも湧かないなら、勉強不足なのです。

 その方に、毎日社説を音読しなさい、散歩しましょう、ドネペジルを少し飲んでみますか、という助言は筋違いです。もちろん高齢層ではADHDの症状で生活に支障が出ていることに加え、認知症症状も加わっているという方も多いのですが、ADHD単独例もいるという警鐘です。

ATDに移行するMCIでは、青斑核のノルアドレナリンニューロンであるメラニン含有細胞の減少が認められ、注意や不安感とノルアドレナリン減少との関連性があって、ATD初期とADHDの共通点だという話はあります(高橋)。

ですから注意欠如の様相が似るのでしょう。認知症のごく初期を臨床的にとらえるためには注意力を調べることが有効だとされていて、こういった関係があるのです。

ADHD+認知症の両方の症状をおちつかせたになら、ガランタミン低用量+クロルプロマジン低用量で、患者家族は一定の満足を得るでしょう。

橘高は、「発達障害は年をとるとどうなるのだろう」という疑問を提起しています。発達障害は認知症の危険因子なのか?発達障害が認知症を発症した場合、どのような特徴がみられるのか?どの認知症タイプが多いのか?といったことに興味があるとしています。

  平成306月の日本老年精神医学会では、「発達障害と認知症の鑑別」と題したシンポジウムが2時間にわたって論議されました。すでに、そういった時代に突入したのです。

1)ゴミ屋敷の87歳独身女性。 写真1 

87歳女性が姪に付き添われて初診した。なぜ独身とわかったかというと、著者は記憶検査として故郷と旧姓を聞くからである。この日、付き添ってきた姉の娘が、独身だから苗字は同じですと教えてくれた。昔の日本で結婚しない女性はかなり少ない。その理由はマンションの写真ですぐにわかった。ものすごいごみ屋敷、掃除もしていない。認知症になったからではない!昔からである。

ところが、理知的な人で歴史がすき、有名進学校を出ている。友達は少なく、見合いは断り続けた。服を買ってやっても、こんな服はいやだと拒否。人の心がわからない。ADHD+ATDとして治療開始。クロルプロマジン8mgとフェルラ酸含有サプリメントとした。
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とにかく約束はいまでも守らない人で、かといってピック病ではないのです。つまり、ADHD+ATD=ピック症状の公式にあてはまります。結果として結婚しなくてよかったわけで、姉に財力がありマンションを買ってもらったのは幸いしました。自力だったら生活はもっと破たんし、病気になっていたでしょう。

もう一方の姉(92)は、DLBだと言います。ADHDDLBになりやすいので、この家系はやはり発達障害の血筋でみな頭脳も高いということがうかがい知れました。

独身と精神病を結び付ける発想を不快と思われることは承知の上で、読者には謝っておきます。しかし、昔の女性が結婚しないということに違和感を覚え、彼女の診断に結び付いたことは事実です。

2)少女のような75歳女性。11年間「不思議な患者」だった。

11年間、弟の嫁に付き添われて通院してきた。初診時は62歳だった。彼女は一言でいうと少女みたいな方。純粋で裏表がなくて。しかし風呂に入らない、新聞をどんどん契約してしまう、とピック症状があるのに、脳萎縮は軽く、そうかといって語義失語も強くなかった。

11年前にHDS-Rスコア26だった方が、まだ25もとれた。この人はADHDだったのだ。左側頭葉だけ萎縮しているので、SD-FTDと思っていたがピック症状を演出していたのはADHDだった。ストラテラを開始し、効果が出て笑うようになった。

3)話がかみ合わない理知的な77歳女性。すぐにADHDと見破った

あるグループホームで、77歳女性が娘に連れられて入所した初日だった。著者の往診日だったので施設長がついでに診てくださいといってきた。なぜかというとリチウムを飲んでいて精神科入院歴があったからで、入所後にトラブルを起こされては困るからである。

目に力のある元気そうな方であり、炭酸リチウムということは精神病なのだろう。抗てんかん薬2種類も出ていて、いかにも精神科的な処方。認知症への薬ではない。私が最初に娘に聞いた質問は、若いころから整理整頓はできたか、衝動買いをしていなかったかということである。

娘さんは、飛び上がるような反応でそのとおりだという。本人に聞くと小学校しかでていないが成績は優秀で、父親は海軍。昭和19年春に戦艦武蔵で戦死したから大変だったという。それから彼女は、質問とは違う方向に話し続けた。

彼女はADHDにASを合併し、統合失調症様の急性精神病様症状を起こしたのだろうと思った。初対面の老人に10分以内に彼女の全貌をあばいた。

娘さんも理知的な人で私の説明を速記しており、子供や孫は偏差値75に近い3大学に行っているという。娘さんには高学歴のお孫さんたちは結婚の時に危機になる可能性があるからよく観察してゆくようにと伝えた。そういうときは、どこに行けばいいですかというので、専門医は少ないから私が治すと言っておいた。娘さんは非常に私を信頼してくれて、そのGHへの入所を決めた。

患者はその後、案の定他の利用者を侮るような行動が増えクロルプロマジンは必須となっている。認知症の方々とは、雰囲気が違っており、1人浮いている。

4)55歳から13年間謎だった68歳女性。薬剤師と聞いてADHDとわかった。

50歳のときにくも膜下出血をおこした。いつも優しい夫が付き添ってくる。大学時代に出会ったという。HDS-Rスコアは24.5272522.5と推移。

おおらかでよくしゃべる人だった。おおらかさで陽性なのは沖縄出身だからだと思っていた。しかし、最近は衝動買いがエスカレートして、ついに夫は施設に入れてしまったので著者も驚いた。これほど自分でなんでもできる68歳の人がなぜ施設に?

13年立ってはじめて学歴を聞くと薬学部を出て、薬剤師は2年でやめてしまったという。それは人間関係が保てない証拠。ピック症状で夫を困らせたのである。海馬は萎縮傾向なので軽度のATDが出てきているにしても主体はADHDの症状である。ご主人も、ADHDの治療はしなくてよいということで処方継続となった。

結局、長年の結婚生活で振り回されご主人も疲れ果てたのでしょう。ドネペジル10mgとコントミン12.5gを処方してきていたのですが、ご主人を助けるためにドネペジル2.5mg、コントミン37.5mgでなければいけなかったのだろうと反省しています。

)お稽古事をやりすぎる75歳女性。9年半誤診していた 

75歳女性。いつも娘さんとやってくる。耐糖能異常、頚椎軟骨の突起などで、いろいろと訴えるのだが、HDS-Rスコアが27.5だったのが、114か月で26にしかおちなかったので、認知症予備軍ではないとの判断をした。しかし、本人は今の処方で問題はないというので、ドネペジル2.5mgは継続してゆくことになった。  

彼女の診断はADHDである。整理整頓できるが衝動買いする。買い物の目的を忘れて(注意欠陥)、別のものをたくさん買ってしまう。書道、そろばん、裁縫とやりすぎてしまう(多動)。

一方聴覚過敏、嗅覚過敏もある。きめられた場所にないと気が済まないというこだわりがあり、プチアスペルガーである。つまり、ADHDの軽いのと、ASの軽いのが合体した感じ。海馬萎縮はない。フェルラ酸含有食品なしでHDS-Rスコアを保ってきた。

ひょっとすると糖尿病性軽度認知障害を少しもっているのかもしれない。だからストラテラ、コンサータはあえていらないし、今の処方で彼女は満足している。

6) ADHDに気づくまで13年半通院していた75歳男性 11 
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13年前から認知症の母親を付き添っていた息子。当時62歳だった。母親が亡くなっても彼は当院にチラージンSを処方してほしいとずっと通院していた。私はずっと彼がなぜ通院しているのかわからなかった。チラージンなら近医でもらえば済むことである。

 もちろん主訴はもの忘れだったが、初診時HDS-Rスコアは27.海馬萎縮なしだった。13年の間に雑談の中でチキンハートだよねという話にはなったことがある。昨年、手当たり次第にCDTをお願いしていたのだが、その時彼は、殴り書きのようにスピード感のある円を描いた。いまだからわかるが、円のすれ違いがあり、円外数字だった。このとき私は彼がADHDだとは気づいていなかった。

 今年、昔ヘビースモーカーだったという。難聴もある。これで発達障害だと気づかなければいけなかった。その後ADHDのCDも多く集まり、その共通点に気づき始めていて、もう一度描いてもらった。すると激しく乱れた。2か所を描きなおししたのである。そして整理整頓、衝動買いがあり、4人の子供うち1人の息子がひきこもり、無職であることをつきとめた。つまりその父親である彼はADHDである。

 彼も娘も人の名前が覚えられないとのことである。息子さんに受診してもらうことになった。話はもとに戻るが、彼が私に通院し続けたのは、なんとなく私なら悩みが和らぐように感じたのかもしれない。ドライで自信家なら「なんでチラージンごときで、長距離通院しなければならないのか」と思うはずである。

 彼との相談で、特別にADHD治療薬はいらないということであったが、今後彼に二次障害がおきるという心構えが持てたし、息子さんを治す機会が得られた。

 

小林克治:注意欠陥多動性障害を伴う血管性認知症のatomoxetineによる改善の報告

ー認知症の行動心理症状の鑑別診断の視点からー。臨床精神薬理 2016; 19: 1339-1344.

Tzeng NS et al.: Risk of Dementia in Adults With ADHD: A Nationwide, Population-Based Cohort Study in Taiwan. Journal of attention disorders. 2017 Jun 01;1087054717714057.

高橋純子:MCIと周辺症状とハンマー。老年精神医学雑誌。2017; 28, 444-445.

橘髙 一:児童精神科と老年精神科の両方を実践する立場から。老年精神医学会誌 2018; 29増刊号Ⅱ、116.



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