現段階は、港や倉庫などの物流のルート上でしかヒアリが発見されておらず、
初期の侵入段階であると言えます。
なので、みなさんが家の中などでヒアリを見る確率は低いと思います。
実際、これはヒアリかと写真を見せられたものは、すべて日本の普通種でした。
ですから、アリを見ても即ヒアリだと思わずに冷静に対処してください。

ヒアリと誤解されるアリについて、写真と共に特徴を解説したいと思います。

【ヒアリの形態的特徴】
ヒアリの特徴は環境省のHPにも載っています。
体長が2.5〜6.5mmで、いろいろな大きさの働きアリが同一の巣にいます。
専門用語では、連続多型と言います。
色は赤くて腹部が黒く、ツヤツヤしているのが特徴です。
胸と腹部の間の2つのコブ(腹柄節と呼ぶ)が特徴として挙げられますが、
これはフタフシアリ亜科というグループの特徴で、
よくヒアリと誤解されるアリ達もフタフシアリ亜科に属するものが多い気がします。
Solenopsis invicta2-thumb-300xauto-15206
人と自然の博物館HPから、橋本佳明 主任研究員 撮影


【ヒアリと誤解されるアリ達】
以下のものは、家の周りの良くいて、ヒアリと誤解されそうです。
すべて人に対する刺傷被害はありません。

私はいろいろ飼っていますし、触っていますが問題ありません。

黒いアリや8mmを超える比較的大型のアリ→確実にヒアリではありません
例:アシナガアリ。
○フタフシアリ亜科なので、コブが二つあるという点はヒアリと一緒。
○色合いが少しヒアリと似ているかも
○働きアリは8mmくらい
○行列は作らない。優雅に堂々と歩く(ニュアンスが伝わりますかね)
○アシナガアリの名前の通り、脚が長い。
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RIMG3094


シリアゲアリ属の種アリ類画像データベースで見る
○フタフシアリ亜科なので、コブが二つある
○上から見ると、腹部がハート型に見えます。ツヤツヤした質感
○「シリアゲアリ」という名前は、攻撃などされるとお尻を上げてギ酸を放出するから。
 なので、2つのコブ(腹柄節)と腹部のつながり方が他のアリとは違います。
○この辺の黒いシリアゲアリは樹上性のため、木の上に営巣する。
 庭先の葉の上などにいても、木の幹で行列を作っていることが多い。
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シリアゲアリの中でも、ハリブトシリアゲアリは色合いからヒアリと誤解されるかも
アリ類画像データベース

○キイロシリアゲアリ(略してキイシリ)は黄色いです。
うちの研究室の大事な研究材料です。
ワーカーの大きさは黒いシリアゲと同じくらい。
蜜餌を食べるときにもお尻を上げます。そうした方が飲みやすいんですかね。
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キイロシリアゲアリの女王は8mmくらい。
結婚飛行時は体が少し赤いので、誤解されるかも。
お尻がプリッとしていて、先がとんがっていて、つやつやしています。
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女王とオスにとって一生に一度の交尾をするために巣から飛び立つことを結婚飛行といいます。→アリの話参照
キイシリの場合は9月の蒸し暑い夜に結婚飛行がみられ、
光に集まる性質があるので、夜、灯火に大量に集まります。
交尾後は翅をおとし、集団で群れます。
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↑こんな団子状に集まった女王アリたちが、アスファルトの隙間や
ちょっとしたくぼみ、建物の角などによく見られます。
遠目からだとこんな感じ↓
キイシリ2

↓動画(夜に撮影)



うちの大事な大事な研究材料です。
キイロシリアゲアリに関する研究はこちらで。
このブログでもいろいろ取り上げています。


ヒメアリ属の種 アリ類画像データベースで見る
○フタフシアリ亜科なので、コブが二つある
体長1.5mmくらいで本当に小さいので(ヒメですから)、コブすら見えないかも。
○頭と胸が黄色く、腹部が黒い
○よく行列を作る。家で行列を作る黄色くて小さいアリは、
  大体ヒメアリかイエヒメアリだと思います。
○ちょっと今は手持ちの写真はありません
 (キイロヒメアリなら飼ってるんですが、住宅街には出ないので)


アミメアリアリ類画像データベースで見る
○フタフシアリ亜科なので、コブが二つある
○体長2.5mmくらい
○色合いが少しヒアリと似ているかも
○よく行列を作る。
頭と腹部がまん丸なのが特徴。これで見分けられると思います。
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トビイロシワアリアリ類画像データベースで見る
○フタフシアリ亜科なので、コブが二つある
○体色は暗め(鳶色:とび色)。マットな質感です。
○体長2.5mmくらい
体はスレンダーだが、少し頭でっかちな感じ。
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○よく行列を作る。
○前のブログでも書きましたが、巣入り口に砂を盛るので、
  ヒアリの特徴であるアリ塚と誤解されるかも。
 石の下などにもよく営巣します。
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オオズアリアリ類画像データベースで見る
○フタフシアリ亜科なので、コブが二つある
○アシナガアリと似たシルエット。
○光の当たり方によっては赤く見えるかも。
○体長5ミリくらいで、大頭(おおず)の名の由来である頭の大きい
  大型ワーカー(写真上中)がいるのが特徴です。
  色々なサイズのワーカーがいることを「連続多型」というのに対し、
  オオズアリのように形が全然違うワーカーが2種類いることを「二型」
  と言います。
○小型ワーカーだけで歩いている時がよくあるのですが
(よく一匹で餌探ししてます)、近くに頭の大きい大型ワーカーが
  うろついていたらオオズアリです。
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アメイロアリアリ類画像データベースで見る
○コブは1つ
○体長2mmくらい
お尻がぽってり
↓下の写真は餌をやった後なので腹部が膨れて黄色いですが、
普段はもう少し黒いです。
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ケアリ属の種 アリ類画像データベースで見る
○コブは1つ
○体長3mmくらい
腹部が大きくぽてっとしていて、ずんぐりむっくりした雰囲気です。
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ちょうど7月はケアリ属の種の結婚飛行シーズンで 、
羽アリが大量に灯火に集まるため、今のヒアリ騒動で
不快に思う人が多いかと思います。 
↓左が女王(羽の分を含めて1cmくらい)、右2匹がオス。
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でも、結婚飛行は生涯で一度だけの交尾する夜なので、
どうか暖かく見守ってください。
刺されるなどの害はありません。 

ケアリの女王はアリの中でも長生きなのが特徴で、29年生きたという記録もあります。
精子を貯蔵する受精嚢が巨大で、ミツバチの女王よりも大きいです。
そのため、私も研究で使っています。


私の写真だけではおそらく不十分だと思いますので、
グーグル画像検索やアリ類画像データベースで総合的に評価頂けたらと思います。 

光の当たり方とかでも色やシルエットが違うように見えるし、
アスファルトとか土とか暗い色の背景でアリを見てもまた印象変わるし、
アリを見慣れていないとなかなか区別がつかないものですよね。
でも、参考になればいいなと思います。

オマケ
世の中のアリの基本的な生態や豆知識については研究室HPで紹介してます
 →アリの話