福井県勝山市のミュージカル劇団「ドラゴン・ファミリー」代表の川村信治インタビュー。
ドラゴン・ファミリーは今年3月11日、福井県で開催された「3.11さよなら原発福井県集会 in つるが」に原発を題材にした「岬 〜PUNTA LAVAPIE〜」を公演、アートによるメッセージを披露してくださいました。その代表である川村信治氏に、演劇の世界から見た3.11福島第一原発事故についてお聞きしました。

演劇界が原発という技術的にも社会的にも扱いの困難なテーマに苦労しながら向き合っている姿を、とても穏やかな表情でお話しなさった川村氏の姿が印象的でした。

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高校演劇の世界と長く関わりを持ってこられた川村氏は、10代の役者が演じる難しさをにじませながら、しかし一方できちんと問題把握して向き合うことの大切さをおっしゃっています。

以下インタビュー

▽3.11以後、演劇界では何が起こっているか
日本全体的な流れとしては、3.11以後、上演していいのか、今、劇をやっている事態なのかという疑問が当然あった。僕もそれはとても思いました。

ちょうど3月に高校演劇の春季研究大会というのが毎年あるんですけど、それは中止にせざるを得ないのでは思った。僕も全国事務局員なんですが、事務局としては実施の方向で探ったんですね。実際には北海道で3月の暮れにやったんですね。20日前後だったと思ったんですけど。

そこではもちろん議論があったし、各地区の中部とか四国とか、各ブロックの2位が集まる大会なんですけど。参加資格があっても参加しない学校がいくつかありまして。現実には6校参加になりました。東北の代表はもちろん出られなかったし、四国・九州の代表も出ませんでした。

集まれないとか、道具運べないとかいう事情があったのもそうですけど、学校からストップがかかったとか、保護者が反対したとか、そういうことがあります。
保護者の反対の中には、東北を経由して北海道に行く、また北海道そのものも放射能の汚染を心配したというのがありました。

野田秀樹ら演劇界トップからは、演劇はやるべきだという声明を出しました。個人的には疑問でしたが、そのアピールは新聞などにも取り上げられて、そういう方向に走った感じがありました。
(「劇場の灯を消してはいけない」 - ニュース - 野田地図http://www.nodamap.com/site/news/206

▽演劇の”ネタ”に埋もれる「震災」という題材
プロの演劇は少しわからないのですが、高校演劇では、去年から今年にかけて震災を背景につくられた作品がとても多かったですね。県代表で中部に集まるとか、各ブロックの大会で出てくる作品の中にも、各ブロック2、3個はありましたね。

ただ東北の人たちとも話をしたんですけど、実際に被害を受けた地域とそれより内陸部とでは、ものすごい温度差がありまして。
実際に被害を受けた地域の人たちは、そういう芝居を作っていないんですね。震災を題材にした芝居を作っていない。他の地域でも当事者の気持ちを考えたら作れないという人たちが何人もいましたね。福井でもそういう意見がありました。

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「震災がネタになってはしまいか」と語る川村氏。

そうなると、震災を扱った作品は、それをネタに使ったんじゃないかという厳しい見方もありますね。特に高校演劇の場合、コンクールで目立つとか刺激性とか心をつかむということで震災をネタに使ったのではないかという見方があるのは事実です。できた作品を被害を受けた当事者たちが観て、本当に納得できる作品になっているんだろうかと。
それを迷いながら作っているんだという僕らの仲間もいることはいるんですけどね。

▽扱いの難しい「原発」という問題
で、原発を扱った作品は、その中で少ないんですね。
原発の問題というのは、一つは問題を把握したり学び取るのに時間がかかるというのがあるかもしれないですね。
逆に言うと、問題の把握がある程度できないと作れないっていう対象だと思いますね。演劇化するのに、問題を把握しないと、できない。社会的な問題、科学的な問題、経済的な問題、いろいろあると思うんですけど。

その姿勢は劇作りに必要だと思うんですね。だからある意味でいい壁になっているというか。問題をクリアすることが。
それに比べて震災を扱ってしまうのは、イージーにやられてしまっているんではないかという気持ちがしますね。

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「震災がイージーに扱われているのではないか」と説明。


それで原発を扱った脚本なんですけど、これは大人の劇団ですが、名古屋に“なか としお”さんという僕らの仲間がいて、そこで上演した作品なんですけど、福島にも取材に行かれて、それこそ勉強もされながら「FUKUSHIMA〜原発のウソと真実〜」というタイトルですけど。

それから、「星をゆく舟(ただし一人乗り)」という脚本。これは玉村徹さんという今は福井商業高校なんですけど。この前の福井県高校演劇祭で、県代表になった作品です。
これは福島辺りで被災して、お母さんが亡くなって、そのお母さんが流されていくときに主人公は5才という設定で、身体にペットボトルを巻きつけてくれて、その子が救われたと。その子が福井へ来て、高校生になって15才。つまり10年後の世界。

で、「岬 〜PUNTA LAVAPIE〜」と同じく福井では原発が残っていて、爆発しちゃったという。それで一人残された。友達たちはみんな死んじゃった。演劇部をやってて、その演劇部を思い返すというストーリーなんですね。
で、最初とラストで一人ぼっちでマスクをつけて防護服を着た彼女が現れるんですけど。福井が廃墟と化しているという設定なんですね。

これもいい作品だと思いますね。抒情的な面もありますし、乾いた演出、乾いた演技で、ウェットにならずにユーモアもいっぱい交えながらやっている作品ですね。

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「原発はしっかり把握しないと中途半端になる」と演劇における扱いの難しさを指摘する。

僕の知り合いはそういうような感じですけど。今度の全国大会に出てきた作品で、近畿の代表がちょっとそれを扱ってる風なんですけど、まともに原発というよりは、進化とかテクノロジーとか、そういうのでちょっと中途半端な、成功していないと思いましたね、はっきり言ってね。だから扱うのはしっかり把握しないと、中途半端になると感じたんですね。

で、原爆を扱った作品は、高校演劇も含めて3.11以前に書かれたものがたくさんありますよね。それを掘り起こして、放射能の問題を提起する形でコミットしている。そういう人たちがいますね。

もう一つは、今回の福井県高校演劇祭で代表になった作品ですけど。これもそうですけど、「終わらせてはいけないこと」と「終わらせるべきこと」みたいなメッセージがあって。去年は「はやぶさ」を扱ったんです。
いずれにしても科学的な切り口のミュージカルだったんですけど、その理性とか科学的知性とか、そういうものの重要さを、僕は思うんですね。それで直接原発について言及しなくとも、そういうことを大事にしよう、ということが問題に対応できることにならないかと思っているんですね。

あまりにも騙されていたり、ごまかされていたり、近視眼的であったり、経済至上主義もそうですけど。で、経済至上主義も古くなりつつある今、ものの本を読むと”第四次産業革命”とか、分散型エネルギーとか、分散型経済とかね。そういうことと原発の問題とがうまくリンクしながら、もうドイツなどヨーロッパではもうとっくに変化が始まっている。日本がなぜ乗り遅れているのかというのは、原発があったからという、そういう論があるんですけど。

で、そういうものも含めて、理性とか科学的知性とか、いわゆるサイエンスというか、社会科学なり人文科学も含めて、そういうものの大事さに立ち返るということが必要でないかと思うんですね。
それを演劇で、上演していくということ。それを自分でやっているなと思ったんですけど。


以上が前半部分。
ボリュームの関係で前後編に分けます。

演劇が社会問題を扱うことは特別でもなんでもないけれど、それをしっかり把握して公演しているかどうかは別問題。演劇にかかわる身として、業界の仲間を不当に貶めたくないという気持ちと、しかし「演劇はこんなものじゃないだろう」という気持ちとがせめぎあうメッセージが言外に伝わってきました。

後編では、演劇の社会的な役割などについてお話しされた内容を紹介します。
また自由な文化的表現を押さえつける事例についてもお聞きしました。

後編はコチラ


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