演劇の世界から見た3.11・前編 −ミュージカル劇団ドラゴンファミリー代表・川村信治では、演劇界は3.11を「震災」として表現しながらも「原子力災害」まで踏み込めていないのではということをお伝えしました。
後半では、社会における演劇の役割から劇場運営におけるエネルギー問題まで、幅広い内容をお聞きすることができました。電力の消費地−供給地という立場にこだわらない考え方のヒントになるかと思います。

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電力の消費地だから何も言わないのか。供給地ならではのしがらみで言えないのか。そんなウジウジを吹き飛ばす明快なメッセージがありました。

以下インタビュー

▽フィクションとしての演劇の役割/距離を置いたものの役割
それで演劇の役割というか、「岬 〜PUNTA LAVAPIE〜」なんかもそうなんですけど、フィクションの役割というのがあると思うんですね。
直接的にいっていくと向こう側が受け入れられない議論を繰り返すだけというようなものに対して、フィクションで到達イメージを描けたり、あるいは逆に到達する危険な状態を描けたり、そういうことがあると思うんですね。

で、それは果てしない不毛な議論じゃなく、それを飛び越えていく。飛び越えて巻き込んでいく、主張できる可能性があると思うんですね。同時に距離のあるものの役割は、立地地域とか、勝山・大野とか。あるいは大阪なら大阪とか。その距離のある人たちが言ってはいけないではなくて、逆に大きな役割を持っていると思うんですね。

それは、当該地域はあまりにも巻き込まれているために、見えないこと、あるいは言えないことがあり過ぎてしまってますよ。それに対し、距離があるために客観的になれたり、先が見えたりすると思うんですね。

だからたとえば、今、原発に雇われてしまっている。原発なくなったらどうしよう、みたいな立地地域の人たちがいます。でも、それを続けていったら、みんなが死んでしまうとか、病気になるとか。それしかない経済で不毛だとか。
それに対してちょっと距離のある人たちは、それをやめても充分に経済的に成り立つんですよと言ってる。その危険性はこんなんなんですよってね。あるいはそれに代わる技術がこんな風にあるんですよっていう。そこで騙されているウソは、こういう風なウソなんですよ、とかね。

それはつまり周りに距離のある人たちが、自分たちのために言うってことではなくて、その立地地域の当事者たちのために言えてるんですよね。当事者たちの本当にためになることが、見える。だからこそで連携できるし、知的なところで冷静になれば連帯できるはずのことが、実はかなり見落とされているというか。
周りの人たち、距離のある人たちも、遠慮があるということもあると思うんですね。で、その遠慮は、必要のない遠慮だと思うんです。たいがいの部分が。必要な遠慮もあるかもしれないですけど、そうでない本当に立地地域の人たちのための主張というか、変革というのが、距離のある人たちによってもたらされる、というのがあると思うんですね。

これは僕が昔、サルトルを好んでいたんですけど、サルトルが日本に来た時の講演で、「知識人の擁護」というタイトルのものがあるんです。それはまさに距離があるものの役割ということなんですね。搾取されている労働者が、もちろん自分たちが訴えたりすることが必要なんだけども、あまりに巻き込まれているために言えないこととか、おそれとか、いっぱいありますよ。
それに対し、知識人はちょっと距離があるために言えることとか、見えることとか、本当に労働者のためになることは何かということを提案できたりとか。それと同じだと思うんです。

そうすると、サイエンスそのものが実はそうなんです。巻き込まれずに手続きをしっかりしながら、検証可能なことをやっていくことがサイエンスなんですけど。それって事象に対して客観的な距離を置くってことなんですね。
これが「距離を置く」ってことで同じことだと思うんです。フィクションも、準立地地域あるいは日本の国民、あるいはサイエンスが。これらは必要な一定の距離があるためにできることがあって、だからむしろ、その役割を果たさなければならないと思うんです。
だからたとえば勝山・大野にいて、黙って見守っている必要はまったくないし、してはいけないと思うんですね。「やめよう」「福井から原発をなくそう」って言いやすい状況にあると思いますね。

▽演劇に向けられる微妙な圧力
そういう上演をする。そうすると、そういう上演や劇団に、実は微妙な圧力がかかるということを経験したんですね。

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「微妙な圧力というものを経験しました」

たとえば「岬 〜PUNTA LAVAPIE〜」をやりました。今年3月11日の「3・11さよなら原発inつるが」でやりましたし、そのあと勝山・大野でも上演2回しました。そのとき、劇団員はそれぞれの立場で原発との関わりに悩みながらの公演でしたけど、上演できました。

で、5月の暮れ、全国大会「第20回環境自治体会議かつやま会議」が開催されました。この会議自体が原発に絡んで、これを変えていこうというとても重要な会議だと思います。
(環境自治体会議オフィシャルHP - http://www.colgei.org/
会議の最終日、私たちの劇団「ドラゴン・ファミリー」が、「この川のほとりで」というミュージカルを上演したんですね。それは勝山市から依頼があって、九頭竜川のほとりを舞台に、個々の自然のつながりというものがふんだんに取り入れられているミュージカルで、会議にとても適切だったと思います。会議全体のスケジュールにあわせて短縮はしましたけど、上演できたし、メッセージも届きました。

環境自治体会議は全国53自治体が自主的に参加している会議ですから、本当にこうしたメッセージを聴きたいという人たちが観てくれるという、演劇の上演としてはとても幸福なあり方だったんですけど。

実は上演の数日前に、県から市の担当者に電話があって、「この上演予定の劇団は、3月11日に『岬 〜PUNTA LAVAPIE〜』というのを上演した劇団ではないか。そんな劇団に上演させていいのか」という話があったんです。

▽今後の環境行政・環境型経済が目指すべきもの
環境自治体会議を開催している勝山市は、環境教育に力を入れている。コーディネーターも雇っている。エコミュージアムっていう、市全体が博物館なんだっていう。それを大事にしていこうという。この思想、これは第四次産業革命につながる考えだと思うんですね。

だから今の勝山市の方向っていうのは、僕はとても応援したいという気持ちですね。劇団を市も応援してくれているし、劇団としても市を応援したい。何か原発のような大きなものをつくって経済性を求めたり、歴史や現在を無理して変えて都会のコピーをつくろうとしているっていうことでもなく。そういうものに反対しながら、今あるものを大事にしながら、そこに細かな経済性を見つけていくという。そういう方向だと思うんですよね。

環境自治体会議で学習された内容、僕も全然追ってませんけど、もちろん脱原発につながるし、代替エネルギーということも提案があるし。これも僕が専門家でないのですけど、風力とかソーラーとか言われてますけど、でもJAXAのマグネシウム時代とか、そういう隠された新技術があるんですよね。

で、それらが実現しにくいように見えているのは、予算の問題なんですね。たとえば原発にかけている予算は何百億ですけど、その何百億をその新技術にかけたらすぐにでもできる。それこそ2、3年にでも。だから封じられているんですよね。
知的には持っている人たちがいるのに、予算がつかないから実現できない。それはわざとですよね。こうしたところにお金をかけることで、もっともっとクリーンな、それこそ二酸化炭素も出さないような新技術が眠っているんですよね。
それらは環境にもいいし、分散型経済にもつながっていくと思いますしね。

話は演劇に戻るんですが、劇場の電力使用量というのは、ばかにならないわけです。そこで福井市にマインド&サウンドライフという会社があるんですね。そこの構想が色々ありまして。そこの代表者と話をして聞いたんですけど。

たとえば勝山市の市民会館、ちっちゃな会館ですけど、年間500万円の電気料金を払っているんですね。ハーモニーホールふくいは年間2000万円。そういう電気料金でのホール運営が大変だという問題があります。その電力使用量を落とさないといけないので、照明灯体をLED化するという流れがあるんですね。
このLEDの灯体は開発されていて、切り替えつつあるところもあります。ただ卓から全て替えないといけないらしくて、その費用が相当かかるんですね。でもLEDにすると電気量は落ちるし、長持ちする。経済性は結局あがってくるということなんですけど。全国の電気使用量に占める割合もかなりあると思うので。特に小さな地域の大きなホールなどでは。

で、環境自治体会議ではLED化された舞台で僕らの上演をやってみようかという構想があったんですね。マインドさんは協力すると言ってくれたんですけど。結局実現はしなかったんですけど。
それと上演の電力を、近くの公園にソーラーを置いて、それでまかなうというマインドさんの構想があったんです。

同時に、マインドさんは蓄電器を開発しつつあるんですね。分散型電力を有効に使う一つの鍵は蓄電器ですよね。電気は貯めておけないので。今までなんで真剣にシフトしてこなかったかなって疑問に思うくらいなんですけど。蓄電器の開発を、大手電機メーカとタイアップしながら開発しているという話なんです。
それこそ東芝は、昔は原発施設を作る企業だったんですけど、3.11以後、蓄電器とか分散型電気に相当シフトしているようですね。自家発電も三菱なんかは相当やってますしね。

▽3.11以後の変わりゆく社会や経済の中で、文化・芸術の観点から演劇はどう関わっていくか
かなり楽観的な見方なんですけど、もう歴史は変わる。もちろん変えていかなくてはならない犠牲を払ったということもあるんですけど。そういう犠牲者に対する責任もあると思います。と同時に、経済至上主義者たちが何を言おうと、変わる。そこに向けて、ある意味熱く、ある意味冷静に、客観的に論理を組み立てながら、それぞれ役割を果たしていくことが必要。

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「それぞれの役割があり、演劇もその役割を果たしていく」

そういった大きな流れで、演劇も役割を果たしていけるだろうし、意見を表明する機会があれば、そういう意見を言っていけるだろう。県内でもそれぞれの専門性や立場や志向性で、役割をはたしていけると思うんです。
その大きな流れ「もう変わるんだ」という。そこへ向けて、何が残っているのか。議論すべき対象は絞られてきていると思うんですね。それは知事かもしれないですね。それで知事であるってことは、確かに大きなことですよね。一県の知事が代わるっていうことは、そう簡単にはいかない。選挙もそう簡単ではない。でも、その知事を代えていく。選挙で代わらないものなら、意見を言って、議論をして、あるいは県民世論として、知事が変わらざるを得ないような世論を作り上げていく。

というように対象が絞られてきていると思うんです。それぞれの役割の中で、その対象を意識しながら、そこへ力を注いでいく。以上のようなことがこれから必要だと思うんですね。
そして新エネルギーについては、技術的に30年と言わず5年でも可能だと思います。ただ一つそこで大事な要素は、経済をそちらに向けるという予算のシフトなので、逆に言えば予算のシフトが何年もかかっていくので30年という目標になるのかな、と思いますね。

だから綱引きで言えば中央のラインでせめぎ合っているんじゃなくて、もう印は変化の方に向いてしまっている。もう少しなので、みんなが希望を持って力を集中すれば、もう一気に変わっていくという感じで思っているんですけどね。

日本は小さい国ですから、もう全員が当事者ですよね。誰かが言っていましたが、全員が立地地域にいますよ。大阪だって立地地域なんですよ。その立地地域を何キロにするのかっていう国会議論もありましたけど、放射線の流れとか被ばくとか考えたら、全国が立地地域ですよね。だからみんなでやめてくれというか、立地地域として言っていいと思うし、言う権利もある。遠慮することはない。
それが、そこで生計を立てている人たちのためでもある。「もうそんな袋小路みたいなことやめなさい」と教えてあげる。その方がその地域の人たちは絶対に幸福になる。だからその人たちの幸福を奪うんじゃなくて、もっと多くの幸福をその人たちに提供することなんですよ。

その中で、まだ「福井県でやり続けるんだ」とか「核燃料サイクルをもう一度やれ」とか言ってる人は、全国の迷惑人でしかない。やめることが当地の人たちにとって大きなプラスだと思います。

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「原発継続は全国の迷惑人。やめることが当地の人にとってのプラス」


以上でインタビューおわり。

一時的な経済を維持するために原発を続けることは不毛だという川村氏。
「原発立地自治体の住民じゃないから何か言うのは悪いことではないのか」という遠慮も、結局は将来的な当地の経済、全国的な仕合せを阻害するのだという考え方。
距離が近いから/遠いからという理由で思考をストップさせるのではなく、それぞれの立場から考えていくというスタンスこそが、今後の日本を想うことにつながるのだというメッセージでした。

この日も劇団の練習日で、お忙しい中、お時間をいただきましてありがとうございました。

ちなみにインタビューに登場した環境自治体会議「第20回かつやま会議」における総括は次の通り
かつやま会議宣言


 今、地球温暖化、エネルギーの確保、自然環境の荒廃、廃棄物対策など、私たちは様々な環境問題に直面しており、これらの課題をしっかり受け止め、考え、行動していくことが求められています。私たちはこれまで、経済的な豊かさや便利さを追求するあまり、守るべきもの、なすべきことなど、多くの価値あるものを失ってきました。

 今回、私たちは「恐竜の時代から 未来へつなぐ 豊かな自然と環境」をテーマに、太古からの息吹を感じる、豊かな自然に恵まれた勝山の地で、第 20 回という節目となる環境自治体会議に集いました。3 日間にわたる交流を通じて、先人から受け継がれてきたありふれた自然や、生活の智恵、生産スタイルなど、当たり前になっているものの価値に気づき、再評価し、それを磨き、継承していくことの大切さを学びました。

 これからは、人間も自然の一部であるという謙虚さを忘れず、常にグローパルな視点で事象を捉え、私たち一人ひとりが環境を意識した生活を実践し、それぞれの地域にふさわしいまちづくりを進めなければなりません。

私たちは、次世代を担う子どもたちに引き継ぐべき環境を守り続けることを 確認し、次のとおり宣言します。
  1. 地域の自然環境を保全し、自然と共に生きる意識の醸成と社会づくりを進めます
  2. 資源、人、くらしの 3 つを結びつけ、循環型社会、省エネルギー・省資源を実現する持続可能な地域づくりを進めます
  3. 環境の取り組みを一過性のイベントに終わらせることなく、環境への配慮が日々の暮らしの中で無意識に実践できるような人づくりをめざした、持続可能な発展のための教育を、学校および生涯学習の場で進めます
  4. 環境自治体会議が 20 年間培ってきた地域間連携を強化し、目標を設定し、その達成のために、共に実績を積み上げる取り組みを進めます

平成 24 年 5 月 27 日
第 20 回環境自治体会議かつやま会議参加者一同

次世代を見据えた将来がどうあるべきか考えようと呼びかける素晴らしい宣言だと思います。


◆関連リンク
ミュージカル劇団「ドラゴン・ファミリー」のブログ

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