2019年06月07日

高島タカイワ(釣行記)潮と磯と魚

『大潮の高島は釣りにくい』。長らく通ってみた印象として残ったのが、潮まわりが大きいときの高島では、予測できない潮に遭遇して思うような釣りが出来なかった記憶が断片的にあって、これを繋ぎ合わせると苦手意識になる。長潮も同じように釣り難い。

この日は中潮。古老が云う『高島の潮は二日送れのように動く』を信じるなら、二日前は大潮の中日であり、長潮の二日後の中潮に当たると、同じように大きな一本潮に見舞われて釣りにならない。そして当日。

恵翔丸は3人を頭に数組14名という活況。みなイサキを思って集まっている様子だった。一人釣りは4組で他船は出ないというので、これなら悪くない。

イサキを想定するなら、早期のババイサキを釣るべし。ゴウトウ周りを目標に据えて前夜の大浜を目指した。本ゴウトウなんて理想的な磯ではないか!

そして恵翔丸の磯割りを相談していると、人数からみて本ゴウトウのチャンスはありそう。

船長「フジタサンどこにする?」

「本ゴウトウは?」「○○さんとジャンケンして」

「そんじゃタカイワ!」確定。


大潮を嫌った。どうやらワレやイワグチも空いていたようだが、西からゴウトウ周りで激流のような潮に当たったら釣りにならない。ワレやゴウトウは増水した川のように流れ、イワグチでは潮が底へ突っ込んで磯際で湧き返す。タカミだけが狙い目だったが、ここは底物組に優先権。イサキ祭の6月の最初で最後の高島の日を思うと、まだ早いかと懸念しつつもタカイワで存分に竿を振ることに意義を思ったのだった。(笑)

6月のタカイワ。瀬を釣るタカイワの釣りは高島の夏の釣り。イサキの産卵が一斉に始まったら素晴らしいポテンシャルを発揮するタカイワだが、走りの時期はゴウトウやワレに大型が集中する。先々のタカミではタナ4本、先のコスズメでは瀬には何も居ない事を経験しているので、この日のタカイワは一か八か、いや、四分六分で時期尚早を承知の上だった。

昨年晩夏以来のタカイワの風景。正面に益田川の大風車が見え、左右の視界が180度に広がる絶好の磯。アカイワ側から正面へ深みがあり、駆け上がりを経てコスズメ側へ瀬が続く。大鯛も出るが、主にはヒラマサとイサキが主戦となり、かつて大型の本石鯛やスマが出たこともある。磯は一人用、名前のとおり足場は高いが、コンパクトにして充分であり、なにより魚が掬い易い。竿は充分に引けるのでド遠投も可能。

こんなプロファイルを持つタカイワ。まだ瀬で釣るには早いと分かっていても、やはり仕掛けを入れると期待に胸は膨らむ。正面の潮は予想通りの左流れ。朝から活発に動いている。

イサキのセオリーに従ってナ2本の底カゴでスタート。ヒラマサの急襲に備えたハリスは7号。夏仕様とはいえ、どこに大物が潜んでいるか分からない高島の釣りだ。しかし7号ハリスは見向きもされない。初手から数回はサシ餌がそのまま戻ってくる有様で、ヒラマサどころかイサキの気配も無い。

6号、5号とハリスはあるが、およそ1時間後、潮の様子を見極めたここは一気に4号段々鈎にまで手を落として投入。すると小さな雄イサキがウキを揺らした。『やっぱり居ったか』思い通りに嵌った手にほくそ笑むが、しkしイサキは30センチに充たない小物。狙うはババイサキではないか。

今月から乗船は4時。恵翔丸一杯という事もあって、タカイワから磯着けが始まったので(こんなこと初めて)5時前には座につき、午前5時過ぎには釣り始めているのだが、最初の1尾を取り込んだのは、その1時間も後のことだった。渋い。魚が居ない。


凪の海が蒼く見えるようになった午前7時頃。弱い風がさわさわと吹いて気持ち良い。そしてそのときウキが消し込んだ。漸く釣りらしい風景になってきた。竿を起こして手応えから魚を予想する『少し大きなイサキか?』見えてきた魚影を確認すると、なるほどクロか。

仕掛けを投入する場所は正面。左流れの瀬へ乗せても魚信は無く、やはりイサキはまだ深みに居るようだった。しかしその深みも磯から届く50m範囲ではないのか、西磯のようにアタリは出ない。こんな釣況から考えられる攻め手は一つ、正面から左へ流す駆け上がりを手短に丹念に釣ること。タナを変えながらコマセを集中させて魚が巡ってくるのを待つしかない。

入れ食いのような反応は無く、一尾ずつ丁寧に拾い釣るようなタカイワ。それも大きな魚ならガッツも湧くがどれも30センチ足らずの小イサキ。集中力を保たせるほうに苦労する。

午前9時頃になるとイサキの気配は無くなった。居るのは足下のスズメダイとクロの幼魚だけ。試しにメバルを誘い出してみるが、この日はその姿も無い。いよいよする事が無くなった。トビウオを追いかけてメジが海面を割るので、せめてポケットに入れたジグでも投げてみてやろうかと思い立つが、ジグをセットして海を見遣ったら、もう何処で見たのか予想もつかない。諦め。

背後の山から朝の太陽が顔を出した。ウキの蛍光塗料は蒼い海へ映えて良いが、日陰の無いタカイワでは凄まじく暑い。真夏に照りつける太陽とは違うが、磯の暑さに慣れていない今の時期には充分な暑さではある。

こうなると辛い。海はというと、潮は通しているのに、餌盗りまで全員引き揚げたように気配が無くなり、またしてもサシ餌がそのまま戻ってくる。底カゴに不信感を抱き、タル固定に変えてみるが、当然のように何事もなくエサは返品。この上はタル遊動だが、サシ餌が丸残りの状況で仕掛けを作り替えるには、あまりにも理由が無い。タカイワへ立てかけた魔法のタモも沈黙していた。


時間はズルズルと流れて10時を回った。『あと1時間少々か』時計を見て量り、終盤の釣りを考える。考えるとは云っても、魚が居ないのだから手のうちようも無い。こうなったら出会い頭のヒット──この際、マメヒラでも何でも──を狙ってひたすらサシ餌を流すしか無い。

それなら4号段々鈎では不意の大物を取り逃がすおそれがある。ここは真新しい5号ハリスを出し、速い潮を考慮した3尋の仕掛けを拵え、さっそく仕掛けを流す。タナは2本半。深みに入れて瀬に乗せる、そのまま流し切ったら打ち返す。そのうちに何か──。

潮へ思いが通じたか、ウキが消し込んだ。

それはしかし再びウリボウのアタリだと決めつけて、バッカンの中を覗き込んでいると、腹へ当てていた竿尻がグイグイと体を押す。奇妙に思って穂先を見たら、なんと魚が筋を引っ張っているではないか。慌てて体勢を整え竿を起こすと、これはババイサキ!『やったっ!』。

静かに、しかし素早く道糸を巻き取って魚を寄せてみたなら、漸くお目にかかれた40cmクラスのババイサキ。お腹がはち切れそうな魚だった。

これに気をよくして、すぐさま手返しに移る。が、そう簡単に入れ食いとはならない。辛抱しながら打ち返していると、その5分後に再びうきが消し込んだ。いずれも深みではなく瀬の上だ。いよいよイサキ祭の到来か、期待が一気に昇華する。


しかしババイサキのアタリはこの2回。時計は11時を回ろうとしている。11時半の回収を考えると、そろそろ納竿か。時間一杯の15分まで粘ってみるが、2枚目の後にアタリは無く、また何もないタカイワへ戻っていた。

K先生とも話したように、一雨降るか、あと一押しのきっかけでイサキ祭が始まるに違いない。

次回高島は7月か。



後に聞いたところでは、この日のゴウトウ周りはやはり潮が速くて苦戦したという。芳しい釣果ではないが、結果的にタカイワで良かったのだろうか。潮と磯と魚。

foujitas at 15:49コメント(3)高島回顧録 | 潮待放談 
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コメント一覧

1. Posted by kenbow   2019年06月08日 16:22
5 いつもブログ拝見させて頂いて、
おります!
昨年から。高島でカゴ釣りを始めました。

とても、勉強させていただいてます!

2. Posted by ふじた   2019年06月09日 08:42
kenbowさん^^
いつもありがとうございます。高島の磯は奥行きが深いところですねえ。まだまだ私も手探りです。どうぞよろしくお願いします。m(__)m
3. Posted by バカだな   2019年09月23日 14:26
高卒の田舎者が伊丹十三の文体を真似して駄文を書いてらあ。
キモっ!

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