ネット小説「works」

クロールと申します。 更新待ち望んで下さる方がおられましたら、こりゃ幸せ!

カテゴリ: 魔法戦士 シュガーハニー!





みゆちゃんは可愛い。



感情のおもむくままに声を上げて笑うその笑顔。

サラサラの髪を振り乱して怒り、時に容赦なく涙をボロボロこぼして泣く。

自由奔放そのまんまで、とても可愛い。
目に入れてもきっと痛くない。

そんなみゆちゃんは5歳。

俺の妹の長女、つまり姪っ子である。




この日は実家にて、もうすぐやってくる父の7周忌の打合せをしていた。

母と妹がもっぱら会場や親戚への連絡など、その段取りはすっかりつけていて、俺の仕事はみゆちゃんの遊び相手となることだった。

白い紙にクレヨンで、みゆちゃんは黙々と絵を描いている。

梅雨明けが宣告されたよく晴れた日曜日だった。



「従妹の正子さんには声掛けたくないわ」だのという母の愚痴が聞こえた。

「親戚の立場」を諭す妹に、不穏な空気が部屋に流れだす。
しかし関わってはいけない。
余分な一撃が来る。

「みゆちゃん、それはだぁれ?」

母の一撃を受けぬよう、俺はみゆちゃんの描く絵を指さした。

白い紙にカラフルに描かれているのは、どうやら人物のようだ。


「これね、シュガーハニー!」


「シュガーハニー?」


「幼稚園で人気だもんね~。」

みゆちゃんに話しかける妹の話によると、女の子向けアニメのヒロインだそうだ。

なるほど、ピンクのヒラヒラのドレスや真っ赤な髪の毛。

アニメにはまるで興味ないが、なんにせよ、みゆちゃんは絵画の素質も素晴らしい事を思い知った。

無邪気にみゆちゃんと遊ぶ俺を横目に、母がため息を漏らす。


「圭吾もそろそろ結婚とか考えないの?」


(・・・一撃、出たよ。。。)


声に出さずとも、心で呟いてみた。

機嫌悪い際の恒例の八つ当たりである。

もうその手の話はうんざりするほど聞かされた。

煩わしいことである。

確かに31歳にもなれば、母のような古い人間からみれば「適齢期」を逃したように見えるのだろう。


「みゆちゃん、コンビニ行こっか!」

母の言葉に答えることなく俺は脱出を試みた。


「おじちゃん、みゆピノ食べたい!」


「そっかそっか!何ダースでも買ってやるぞ~!」

俺はみゆちゃんを勢いよく肩車して部屋を飛び出した。



外でセミの初鳴きを聞いた。
そういえばみゆちゃんの誕生日が近い。
コンビニ前のバス停のベンチに座り、みゆちゃんはピノを頬張っている。
小さなほっぺたがピノの円錐形の形で盛り上がっていた。

「みゆちゃんは誕生日なにが欲しいのかな?」

「みゆねぇ、シュガーハニーのステッキが欲しい!」

「ハニー!」と言った瞬間、舌足らずなみゆちゃんの口の中から、勢いよくピノが道路に飛び出した。
悲しそうな顔をするみゆちゃんに、すかさず僕は新しいピノをプラスチックの楊枝に刺して渡した。

「ジアルモジュレーション!!」

ピノを受け取った瞬間、おもむろにみゆちゃんはそう叫ぶと、今度はその手をいきなり振り回した。
7月の道路に2つ目のピノがコロコロ転がり並んだ。

ジアルモジュレーション。

おそらくそれは変身の際の決め台詞だろう。

そして推測だが、正しくは「デュアルモジュレーション」なのだろうと俺は考えた。


みゆちゃんは楊枝の先を口に運び「あれ?ピノないよぅ~」と悲しげな顔をした。
みゆちゃんの誕生日プレゼントが決まった。


7月のアスファルトの熱に、並んだ2つのピノはその形を崩し溶けていく。






 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 





「魔法戦士シュガーハニー!!」:日曜朝8時半放送のアニメ  普通の中学生「圭子」が妖精「ポポル」から譲り受けたステッキを使い正義の味方「シュガーハニー」に変身して、「ブラックセブン」という悪の組織をやっつけていく。(uikipediaより抜粋)



なるほどね。。。

みゆちゃんと話を合わせる為にも、多少の予備知識は必要だ。
俺をネットを閉じると、届いていたメールの「払込証」を印刷してコンビニに向かった。



日が暮れる夕ご飯時なのに、我が家であるマンションのロビーでは中学生が数人集まっていた。
お互いに会話するわけでもなく、その手に握ったタブレットに目を落とし、黙々と夢中になっている。
そのタブレットは今年発売になった「未だかつてない!」と呼ばれるゲーム機で、「社会現象」としても度々ニュースで取り上げられている大ヒット商品だ。
確かに、通勤のバスの中でもタブレットをいじくる大人や女性をよく見かける。
そのうち持っていない人間は「非国民!」というレッテルを貼られ、社会的な制裁が加わるのでは?などと考えてしまう。
どちらにせよ、そういった類にまるで興味のない俺にとっては、なんとも無機質で不気味な光景だった。

コンビニにて「払込証」を渡し、ダンボールを2つ受け取る。
中身はネットにて注文したみゆちゃんへの誕生日プレゼント。
単4電池のパックと、ついでに酒の充てのスナックとプリンを購入した。
店を出ると日はすっかり暮れていて、店の片隅でも若者がタブレット片手にたむろしていた。
彼らの頭上にある電燈に、小さな羽虫がブンブンとスパイラルを作り群がっていた。

部屋にてダンボールを開ける。
一人暮らしの男の部屋には「物騒」とも思えるほど可愛いパッケージが現れた。
パッケージには女の子が描かれている。

「コレがシュガーハニーか。。」


みゆちゃんの描いた「シュガーハニー」とは、まるで一致しなかったが問題は何もない。
ピンクのミニスカート、ヒラヒラの胸元には大袈裟なリボン。
手首足首、体の関節のあちこちに、突っ込みどころ満載のブレスレットやアンクレットやペンダント。
靴は歩行中に階段蹴込部分に突き刺さってしまいそうな鋭利なヒール。
「どこの美容院に行ったらその髪型はセットできるのですか?」と思わず聞いてしまいそうな真っ赤な長い巻髪には「うっとおしくないですか?」と聞いてしまいたくなるほどのカチューシャやヘッドドレスをしていた。

箱はもう一つあった。

ステッキと一緒に人気なのは、クマともウサギともネコとも区別がつかない小動物のぬいぐるみだった。
少女漫画特有で、ハクビシンのように目玉だけがやたらでかい。
 どうやらこいつが妖精「ポポル」のようだ。
ステッキと共にその「ポポル」のぬいぐるみもセットで購入した。
これを愛嬌ある動物と呼ぶのには疑問を抱えるが、とりあえず夜道でこんな生物に出逢った日には、奇声を上げて逃げ出すに間違いなかった。



早速ステッキを開けた。
単4電池を4つはめ込む。
プレゼントとしての梱包は、また仕上げればいい。
自慢ではないが俺は神経質なほど器用だ。

なにより俺の見ている前で、みゆちゃんがこのプレゼントですぐさま遊ぶ姿を見たいのだ。
「ジアルモジュレーション!」とステッキを振り回す、みゆちゃんの満面の笑みを想像した。

ボタンを押した。
「ピュルルルルルル~」と男一人の部屋には決して流れることのないメルヘンチックな音楽が鳴り響き、一瞬怯んだ。
「この部屋に変態がいますよ~」という警報のようだった。
今度はボタンを押して振ってみる。
長めの別の音楽が鳴る。
「なるほど、きっとこれが変身するときの音なんだな。」と俺は納得した。
平仮名ばかりの説明書を見ると、「『デュアルモジュレーション!!』と叫んで変身しよう!」と書かれている。
やはり「デュアルモジュレーション」だったと、俺は一人ほくそ笑んだ。

「みゆちゃんがこれを使って、本物のシュガーハニーになれたら面白いのにな。」

そんなことを考えて、誕生日に喜ぶみゆちゃんの顔が目に浮かぶ。
「デュアルモジュレーション」と俺はボソッと呟き、ボタンを押して振ってみた。



するとどうだろう。

目がくらむほどの白い光でステッキが輝いた。

眩しい光はステッキを持つ俺を包み込んだ。

「な!なんだ!??」

グラリとしためまいのような感覚が俺を襲い、身体が勝手に回転を始めた。
温かな感触が体を包み込んだ。
何かが体に纏わりつく。
回転は速くなり、俺の体は宙を舞った。
目を回してしまいそうな速度だが、視界はしっかり部屋のあちこちを捉えていて別段不快ではない。
いや、むしろ。。。


コンビニ前の街灯に群がる羽虫は、自分の宿命を知らない。
俺もしかり。
俺はとんでもない宿命を背負うことになったのだ。



 



 


 


 





何をどう足掻いても、どんな言い訳も理屈も通用しない姿に俺は変わっていた。

ピンクのミニスカート。
胸元には大袈裟なリボン。
関節のあらゆるところにブレスレット、アンクレット、その他諸々。
凶器のように尖がったヒールを履いている。

肩に覆いかぶさった髪は真っ赤っ赤のクルクルで、やはりその髪飾りはうっとおしかった。
 


「。。。。変身。。?しちゃった。。。。???」


31歳男子が決してやってはいけない姿。
どっからどう見ても不審者だ。

俺は慌ててその服を脱ごうとする。
しかし、服は全身タイツのようになっていて体にぴったりフィットしている。
髪飾り一つ一つまでもが、体の一部となっていて到底外れない。
そうだ!ハサミだ!!
服を切ろうと試みたが、一体全体なんの素材なのかハサミ自体が鉄を切ったがごとく刃こぼれする始末。

切ろうとしたスカートを捲り上げて見ると、股間にある俺の「相棒」がクッキリモッコリとタイツ越しにその形を誇示していた。

やばい!変態だ!
まさしく変態だ!!
どういうことだ!なんだこりゃ~~!!

「そうだ!説明書を読めば!」などと思い立ち、目を通しはしたが、ひらがなだらけの説明書に「へんしんのかいじょ」などとは当然書かれてなく、幼稚なだけのその文面は更に俺を苛立たせた。

抵抗は空しく体中の力が抜け、俺は膝からその場に崩れ落ちた。
どうしよう。
明日会社にこれで出勤か?
「いや~、ちょっとしたイメチェンですよぅ~♪」、なんて笑って言えるはずもない。
頭も上手く回らず、無力感が包み込んだその時だった。

「けいこちゃん、やっと目覚めたね。。。」

 

どこかから穏やかな声がした。
誰だ!?。
その声はテーブルの上にうつぶせで転がしたぬいぐるみだった。

「僕はポポル、魔法の国の妖精さ。」


ぬいぐるみがゆっくりと起き上がり顔を上げる。

「・・・・。。。。。。。。。。。。。。。」

 精一杯の柔らかい微笑を浮かべたそのぬいぐるみは、俺を見るなりその表情をみるみる変えた。
かなりの凍てついた時間が、見つめ合った俺たちの間に流れる。
やがて急に低い声になったぬいぐるみが俺に問う。



「・・・・。。。?。。お前・・・誰だ?」



座り込んだ俺は腕だけで後ずさりした。

「そ、それはこっちのセリフだ!お前こそなんだ!?・・っていうか、ぬいぐるみが喋ってる!!?」

これは夢か?
そうだ!夢に違いない!


「お前・・ひょっとしたら、けいこちゃんか?」

「違う!俺は圭吾っていうんだ!」

ぬいぐるみはあたりをきょろきょろ見回す。

「・・・けいこちゃんは?」

「しらねーよ!誰だよ、けいこって!・・・それよりこれはどういう事だ!?」

「アッチャ~~~」とぬいぐるみはその短い手をおでこに当てて、テーブルにへたり込んだ。
しばし考え込んだぬいぐるみは俺を恨めしく睨むように言った。


「。。おい、お前!『デュアルモジュレーション!』って言っちゃっただろ?」

「・・・言ったさ、それがなんだよ?」

ぬいぐるみは「うわ~~!」と落胆の声を上げて深いため息をつく。
取り返しのつかない事を諭すように、俺に向けて軽蔑の眼差しをする。


「普通大人はな!ましてやお前みたいな男は言わねーだろ?『デュアルモジュレーション!』なんて!」

「しょうがねーだろ!魔がさしたんだよ!魔が!」

「はぁ?なんだ?お前は魔がさすと『デュアルモジュレーション!』って言っちゃうのかよ!」

「うるせー!お前こそなんなんだ!ネコか!?ウサギか!?新種のなんかか!?動物園に電話して引き取り来てもらうか!」

ぬいぐるみの顔色が変わる。

「なんだと~~~~!!ポポルは妖精だ~~!!」


自称「妖精」のそのぬいぐるみは、「妖怪」のように血相を変えて俺に飛びかかって来た。

その口元に見える牙に殺意を感じた。

飛びかかるぬいぐるみを俺はつかみ、壁にブン投げた。

コンクリートの壁が、いとも簡単に砕け散った。


「な!なんだ!?この力は!!?」

「殺してしまった」と壁にめり込んだぬいぐるみを憐れんでみたが、次の瞬間ぬいぐるみは立ち込める粉塵の中から足元をめがけて飛びかかって来た。

避けるために軽くジャンプしたつもりが、天井に頭をぶつけてしまった。

ぬいぐるみは避けられた悔しまぎれに、部屋にあるあらゆるものを投げつけてくる。

宙を舞い襲ってくるCD,本、時計、椅子、テーブル。

それらが全てスローモーションのように見えて、軽々と避けることが出来る。

投げた鋭利なガラス片が当たったがまるで痛くない。
薄手に見えるこのヒラヒラの洋服は衝撃を吸収するようにできているようだ。



力がみなぎる。

身体が軽い。

俺はシュガーハニーの力を手に入れてしまった。


そして妖精との戦いは朝まで及んだのであった。


 






 「世界は一つじゃないんだ。」


自称「妖精」のポポルはゆっくりと話し出した。

 

窓の外は白々と朝を迎えていた。

俺は煙草を取り出し火をつけた。 

隣にやってきたポポルも、それとなく催促するもんだから1本くれてやった。

俺たちはベランダに出て、ため息交じりに煙を吐き出した。

「大掛かりな内装工事ですね」と言われんばかりに部屋はボロボロだ。
壁はめくれ、その下地のコンクリートにまでひびが入る始末。
天井は軒並み落ち、蛍光灯がぶら下がっている。
隣に住んでいた口うるさいババァが、5月に引っ越して行ったことがせめてもの救いだ。


「『シュガーハニー』の世界、つまりもうお前はいわゆる『アニメ』の世界に居るんだ」



人が作り出した架空の物語。

本来「架空」などというものはなく、物語や出来事全てには魂があるという。

例えそれがおもちゃであろうと、魂が吹き込まれたものが時に生まれ、それを手にした者との意識のリンクにより今回のような事態が起きたという。


「お前が「けいこ」じゃなくて「けいご」ってのもなんかの偶然だな。。」


「なるほど。。パラレルワールドってやつだな。」


「そう、そのパラリラワールドにお前は入っちまったんだ。」


「・・・。」



無駄な突っ込みは省くとしよう。


「ところでこの姿、どうすれば元に戻るんだ。」


俺にとって1番肝心な事だ。
ポポルは俺の姿を改めてしげしげと見る。

そして突然呆れた顔で言った。


「とりあえず、その股間のモッコリを何とかしろよ、変態。」


説明書を見ると、呪文によってこのステッキから強烈な魔法のビームが出るらしい。

俺はポポルに向けて、ビームの呪文を唱えようとした。


「ちょっっっ!!待て!!変身を解く方法だな!教える!!」


ポポルは後ずさる。


「とりあえずはブラックセブンを倒すんだ。」


「おい!俺は真面目に・・・。」


言い返そうとしてやめた。

おそらく嘘ではないのだろう。


「その・・ブラックセブンってのは何者なんだ?」


「悪の親玉みたいなやつらさ。セブンっていうだけに6グループいる。」


ポポルの国では数字の6はきっとセブンなんだろう。
しかも数を示そうと俺に向けた手には指がない。 

もう突っ込む気力もない。


「まずは1組倒せ。その戦いが終わる時、変身は解ける。」


ポポルは指を1本立てているつもりなんだろうが、やはりその手に指がない。


「そいつらはどこにいるんだ?」


俺は焦っていた。

このままじゃ社会復帰ばかりかコンビニに行くことも阻まれる。


「もうお前はシュガーハニーの世界の中だ。探さなくても向こうからやってくるさ、近いうちにな。」


その言葉に少しの安堵感が心に広がる。






とりあえず会社に電話して、今日は体調が悪いということにした。 


「今日は晴れた夏日になるでしょう」


ポポルがつけた朝のテレビでは、白い腕を覗かせたノースリーブのお天気キャスターのお姉さんが笑っていた。


俺はブラックセブンを待ちわびた。
我ながら「シュガーハニー」の力を過信していた。
怪獣か巨人でも来ない限り、負ける気はしないと思っていた。





 





 


















そうだった。

午後に大家がやってくる。
部屋の有様は、速攻追い出されても文句も言えないレベルだ。

ブラックセブンを待ちわびて、俺はコーヒーを淹れる。
フィルターに沈んでいく黒い水をぼんやり見ていた。

そんな日常に自分の姿をうっかり忘れてしまうが、キッチンのガラスに映るのは「変態コスプレ」確定のシュガーハニーの姿。
とはいえ、この服の着心地は、寒くなく暑くなく快適ではあった。


コーヒーがすっかり冷めた頃だった。
ブラックセブンはポポルの言う通り、間もなくやってきた。



振動が窓を震わせた。

地震か?
すぐさま窓の外から爆撃のような音がした。
窓を開けると、近所の3階建てのアパートが白煙に包まれている。
その白煙の中に立っていたのは巨人だった。

野球チームじゃなく本物の巨人だ。

巨人は人間と同じような姿をしている。
しかしその皮膚はなく、学校の科学室の標本のように筋肉が剥き出しだ。

皮膚がない為、その口はこめかみまで裂けている。

突然の巨人の襲来に人々は逃げ惑っていた。
ランランとした目で巨人は足元の逃げ惑う人たちを追う。

そのうち一人をつまんだかと思うと、そのまま口に放り込んだ。

その光景はパニックを引き起こし、絶望ともいえる絶叫があたりにこだました。

人食い巨人だ。

俺は慌ててピシャリと窓を閉め、その場にへたり込んだ。



「お!お!・・おい!ポ。ポ。ポポル!!まさかあれがブラックセブンじゃないだろうなあ!!?」


「ん~~~?」

ポポルはプリンを食べていた。

窓を開け巨人を見ると「あぁ、8m級か。。。」と納得して当たり前のぬいぐるみの顔をしている。

「無理っ!!無理無理無理!無理だって!!どーやってあんなの倒すんだよ!!」


「大丈夫。たかが8m級だぜ。」


一体何m級まで巨人はいるというのだ?

「よかったね、小さい巨人で♡」と言いたげに、その顔は笑って引き続きプリンを食べ始める。

「ステッキに向かって『立体起動装置』って言ってみな。」


俺は言われるがままに「立体起動装置!」と言う。

ステッキはなんにも機能しない。
それを見たポポルは呆れたような顔をして俺に言う。


「違う違う!ヒロインはもっとカッコよく言うんだ!『リッタイキド~ソ~~~チ!』。。とかさ。」


ポポルは小さな手足を振り回し、巻き舌でむりやり英語にしたかの発音で言う。

そして「アクションも大事だぜ!」と付け足した。

「なんでそんなアホな事。。」とためらったが、外の巨人の暴れる音が近くなる。

やむおえず俺は、子供の頃に流行った変身ヒーローを真似たアクションで腕を回し、それっぽい言い方で叫んだ。



「リッタイキド~ソ~~~チ!」



するとステッキが光り出した。
服に何かがまとわる感触がする。
見ると腰にフックの付いたベルト、それに連動するように小さなリュックが背負わされていた。



「腰のワイヤーを高い場所めがけて投げるんだ。引っ掛けた後は体重を預ければそこまで飛べる。それで巨人に近づくんだ。」


「近づいたらどうするんだ?」


「巨人の首の後ろにコブがある。それが巨人の弱点だ。」


ビームか何かで近寄らず遠方射撃できるかと期待した俺はがっかりした。

なんとも原始的で肉弾戦な戦い方だ。

ポポルは窓を開ける。



「さぁ、シュガーハニー!戦うんだ!!」

言いたかったセリフを言えたポポルは、満足そうなドヤ顔で鼻息を荒くしていた。


とりあえず近場の電柱にワイヤーを投げてみる。

いとも簡単にワイヤーは電柱に絡まった。

恐る恐るワイヤーを引っ張ってみる。

すると突然、体が引っ張られ、俺は外へ放り出された。



「ウワウワウワ~~~!」



飛びながら次の場所にワイヤーを張らなければこのまま電柱に衝突だ。

こんな風に空を飛ぶ羽目になろうとは、巨人以上に恐怖だ。

巨人に近づこうとも考えたが、その大きさと威圧感に怯んでしまう。

逃げ惑う人達が、宙をあたふたと舞う俺に気づく。


「あれは何だ!」

巨人に立ち向かう俺は、期待に満ちた人々の眼差しを感じた。

正義の味方と思われるなら少しはやる気も出たのだろうが、俺を見上げる人々から返ってきた言葉は残酷だった。


「変態だ!」

「コスプレの変態だ~~!」

「この世の終わりだ~~!」


「お前ら全員喰われちまえ!」と俺は正義の味方らしからぬことを考えていた。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 

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