劇団21世紀枠blog

劇団21世紀枠の公演では本番前にネタバレ含む解題をblogに掲載したり
当日のパンフレットに印刷していることがたびたびありましたが
第10回公演「リングワンダリング」も例にもれず掲載する運びになりました。

というわけで、今日は3つの短編のうちの1つ「死にたい彼女と優しい僕」について!
幕開け、折り重なるように倒れている三人の男女。そのうち二人が発声練習のような声を上げながら徐々に起き上がっていく。
指揮者のように腕を振って、なにやら意思を伝えようとしているよう。しかし、残った一人は倒れたまま、応えない。
徐々に言語化していく二人の発声。男は倒れたままの男を指して「コープス」といい、女は「ホープ」と言う。
女が叫び、倒れた男へ指揮のタクトを振ると、男が嗚咽を漏らしはじめる。
急速に言語化が進み、高所に登った女は自分がアパートの屋上から飛び降りた時の感情を回想する。
女が飛び降り、初めに立った男はアルコールの弊害を語りだす――
あー、これ、文章化するとぜんぜん面白くなさそうというか、引きがないですね。
でも、安心してください、だいたいこれ冒頭4分ほどの出来事でこのあとはこんな抽象的な(不条理な?)表現はなく、
飛び降りをした女性に対するカウンセリングの場面と同棲している二人の男女のクズっぽい生活の回想とが繰り返されます。
全編を通して、女が夢現の妄想の世界から、現世へと変遷していく過程を追っていく構成の作品です。

おおざっぱな作品紹介はこの辺にして、解題ですが
いわゆる王道的ストーリーに共通する構造として
主人公が試練を乗り越えていくことで「負の状態」→「良い状態」へ変化、成長していく
というものがありますが、このお話もその構造に則っています。
飛び降りをした女性がカウンセラーの誘導によって、飛び降りの原因と向き合い、
克服し、再び生を志す。
ただ、実際に観てみると、なんかもやっとしたものを心に残す作品です。
これは「死にたい彼女」の導き手である「優しい僕」が利己的な存在であり
彼女を死にたくさせる「理由」として同時に存在しているためです。
劇団21世紀枠が懲りずに何度もテーマ、主張として表現している「それでも生きていくしかない」的な
風立ちぬ(スタジオジブリ)の「生きねば。ありがとう」(筆者は観ていないので聞きかじりです)のような
ポジティブな(本人の状態はどうあれ)ドラマを本作は肯定していないようです。
飛び降りをした彼女は無目的で従って本当の意味での葛藤もなく、宙ぶらりんな世界観の中で
なんとなく利己的に呼吸をしながら「優しい僕」と共存している。
その過程でアパートから飛び降りることもあったし、死んだ彼氏を生きていると信じ込んだりもした。
カウンセリングを受けて、彼氏の死を認めもする。だが、結局飛び降りる前と彼女の状態は変わりはしない。
私個人としては、観劇に行くときはドラマ性とカタルシスを求めて劇場に行っているので
いわゆるポストドラマ的(人間を感動させるドラマ的手法を排した)作品は好みではないのですが
本作はほんのりそっちよりの作品となっています。
ただ、本公演「リングワンダリング」がそのタイトルの示す通り環状彷徨、つまり同じところをぐるぐる回って遭難すること
を主題とした作品群であることを考えると最も環状彷徨らしい作品です。
迷っていても、歩き続けている限り、それが徒労に終わるとしても、生きている。
そういう前向きなメッセージも内包されてる作品ではないでしょうか? ポストドラマよりなので何を感じるかはお客様次第ですが。

「あたしの背中を押していたなにかは風に溶け、消えた。わりと自由だ」 ――死にたい彼女と優しい僕 p2より引用――

気になる? 死にたい彼女と優しい僕の上演日はこちら↓
6/1(水)19:00~
6/4(土)13:00~ 15:30~
6/5(日)13:00~

チケットの前売り予約(4/31までは前列席がお安い前割チケット販売中!)はこちら↓
http://muzina.saleshop.jp/

どうか! どうか! よろしくお願いします!

劇団21世紀枠の公演では本番前にネタバレ含む解題をblogに掲載したり

当日のパンフレットに印刷していることがたびたびありましたが

第10回公演「リングワンダリング」も例にもれず掲載する運びになりました。

早速ネタバレに入る前に上演前に本編の解題を掲載することの是非について考えていきたいと思います。

はじめてネタバレ掲載を行ったのは第6回公演「居残りメトロ〜ゾンビ編〜」でしたが、当時の所信が以下になります。


——————————————————————————————————————————————————————

作品で伝えられなかった事をそのほかで補う行為は邪道のそしりを受けるものではありますが

現につげ義春氏の作品を巻末の解説を読んだ後に見返すとより面白く感じられ貸し本漫画時代の水木しげる氏の作品を当時の困窮、

創作時の覚悟、思いを知ったうえで読み返すと描線の一本からも意思や息遣いが感じられるような気がしたのです。

思えば、話の筋を知っていることを前提に名場面だけを演じる形式は日本でも古くから存在しているわけで

そういったこもごもした言い訳もあるというわけで、本公演では恥を忍んでうきうきしながら解題を掲載します。

——————————————————————————————————————————————————————


で、実際にネタバレ掲載したことに対するお客さんの反応はアンケートなどから読み取ることしかできていないのですが

劇団内部からの反対意見に比べると、お客さんの反応は好意的なものが多いです。

まあ、そのような状況下で公演ごとに解題を掲載したりしなかったりと、ふらふらしているわけですが

「解題なんてけしからん、作品で勝負しろ」という主張も理解できるのですが

果たして「作品」の範囲は舞台上で行われるパフォーマンスに限られるのでしょうか?

舞台上が見づらい席で観劇したお客さんと最前列で観劇したお客さんは同じ「作品」を鑑賞したといえるでしょうか?

遠方から新幹線に乗って観劇にきたお客さんと徒歩5分の範囲から歩いてきたお客さんは同じ「作品」を経験したといえるでしょうか?

いうまでもなく、お客さんにとっての「作品」はその公演の存在を認識した瞬間にはもう始まっていて

舞台の上で行われるパフォーマンスだけが観劇経験を左右することはないわけです。

ということは、「作品で勝負する」ためにはむしろ、お客さんの目に触れる形での雰囲気づくりが必要と考えられます。

劇団によってはそれが徹底的な秘密主義であったり、パフォーマンス動画をwebに上げることであったり、高価なチケットだったりするわけですが

劇団21世紀枠の場合はそれが「ネタバレ解題」ということで、どうですかね? ひとつ。


と、長々書いてきたわけですが。今公演は3つの短編のうち、2つを日替わりで上演するという形なので

実用上、お客さんが見たい作品を選択できるようにするために劇団側がそれぞれの情報を提出するのが道義というかモラルだよね

という部分があるので、理屈はどうあれネタバレ解題は強行します。

いやだって、作品のタイトルだけ並べられて「おう、見たくなったろ。こいよ」てひどいですよね。実際。


というわけで、今日は3つの短編のうちの1つ「オルビス! オルビス!」について!


タイトルに使われている「オルビス」はラテン語で「輪っか、回転、輪廻」位の意味だそうで

本作の登場人物である二人の間で交わされるコミュニケーションのことを指しています。

この二人というのは、「大学時代に自殺未遂をしたOL」とそのOLが高校生の時に「家庭教師をしていた男性」なんですが

この男性からOLに書きかけの小説が送られてきてから数年後、OLがその男性について回顧するという形式になります。

あー、この時点ですでに時間軸が分かりにくいですね。実際に見るともっと分かりにくいんですが…

ともかく、舞台はOLが男性から送られてきた書きかけの小説を朗読するところから始まります。

小説の内容は男性の私小説であり、幼少期の雪国での生活の描写から始まり、彼の精神を蝕む「人間の軋む音」について書かれています。

舞台上にいるOLと男性の間で読み手を変えながら朗読は続き、やがてOLが自殺を図った場面へと小説はさしかかり——

あ、この辺で切ると思わせぶりな感じが出ていいですね。おもしろそうです。


あらすじはこの辺にしといて、解題ですが

男性の送りつけた「書きかけの小説」はOLに宛てられた手紙であると同時に、雪国(=死の暗喩?)へ持っていくことのできなかった

彼の半身なのでしょう。

手紙を受け取ったOLは雪国まで男性を探しに追いかけますが、見つけることをあきらめてしまいます。

この辺りはイザナギの黄泉の国参りとほぼ同じ構造ですが、この作品はもう少し虚飾されており

死を受容する過程が日本神話では死体の直視と問答で行われたのに対し

OLが男性の「書きかけの小説」の続きを書く(手紙に返信する)ことでなされています。

この手紙のやり取りと自殺と失踪、立場の転換を指して「オルビス! オルビス!」という題になるのでしょう

後半部分は本編を見てないとちんぷんかんぷんだと思われますが、作品を見ずに理解できる解題はなにかおかしいと思うのでこれでよいと判断します。

というわけで、どうでしょうか。興味が湧いてくれると嬉しいのですが。


「この白い世界のどこかにいる先生を残して、逃げ出した」 ——オルビス! オルビス! p12より引用——


気になる? オルビスの上演日はこちら↓

5/31(火)19:00〜

6/3(金)19:00〜

6/4(土)13:00〜 15:30〜


チケットの前売り予約(4/31までは前列席がお安い前割チケット販売中!)はこちら↓

http://muzina.saleshop.jp/


どうか! どうか! よろしくお願いします!


今公演「リングワンダリング」は絵画展と同時開催ですが、
今日は絵画展に出展する作家さんを紹介します!

1人目は、津田沙織さん。
絵画を出展してくださいます!
tsuda参考画像


2人目はAsa氏(ATOM企画)
http://sky.geocities.jp/atom2007dream/atomkikaku.html

絵画展は入場料無料となっております。
演劇も絵画も楽しんでいってくださいね!
他2人の作家さんが出展予定です^^
また随時お知らせしていきます。

演劇展のHP先行チケットはあと48時間です!!
ご購入をお考えの方はお早めにお買い求めください。
http://muzina.saleshop.jp/

このページのトップヘ