Oで始まる映画

September 29, 200719:15Ocean's 13 「オーシャンズ13」 (2007)4
監督:スティーブン・ソダーバーグ
出演:ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、マット・デイモン、ドン・チードル、アル・パチーノ、エレン・バーキン、アンディ・ガルシア他超多数

Ocean's 13 Betterオーシャンの仲間のルーベン(エリオット・グールド)がホテル王バンクス(パチーノ)に騙され、カジノも財産も何もかも失ってしまい、心労から心筋梗塞をおこしてしまうところからお話は始まります。何とかルーベンの仇を討とうと、バンクスをペテンにかけようと目論むオーシャンとその仲間たち。以前の宿敵ベネディクト(ガルシア)も味方につけての大ペテンですが・・・というお話。

オリジナルの11でそのテンポの良さとインサイド・ジョークにニヤリとしたものの、12で超がっかりした私ですが、13は素直に楽しめました。いや、そりゃ「こんなことありえね〜」な出来事の連続なんですが、超大スター達がマジメにクサい演技をしているのが楽しいですし、6年前の第一作の頃に比べて大出世を遂げたようなスター達も、嬉々としてアンサンブル・プレーヤーをやっているのが微笑ましいです。アル・パチーノもこういう映画なら「やりすぎ!」と思うことはないですし、数年前はかなーーーりおばちゃん体型になっていたエレン・バーキンが、「シー・オブ・ラブ」時代さながらの色気でセクシー姐さんを演じていたのも嬉しかったです(そのアル・パチーノとの共演ってのも絶対狙ってますよね)。Ocean's 13 Boring

どんなにストーリーが奇想天外すぎても、ハチャメチャでも、「これはこれでいいんじゃないの」と思わせるのがこの映画の凄いところ。それはすなわち、超大スターばかりのキャストと、オスカー受賞経験もあるソダーバーグ監督の自信からくるものでしょう。これは他のメンツでは絶対に成功しませんよ。このメンツだから、このスタッフだから説得力があるんです。

にしてもトレーラーは最近でも最もわくわくするトレーラーだったんですが、どうでしょう?(ちなみにここでリンクしてあるトレーラーは数あるトレーラーの中でも、私が一番好きなやつ。最後のクルーニーの表情がピカ一です。) 

余談ですが、この全く芸のないポスター(→)は一体何なの!!!上の方に貼ってあるやつは仮にも構図とかキャストの順番とかちょっとは考えた跡が見られるんですけどねえ。これ(→)はひどいですね;;;。

日本語の公式サイトはこちら



June 27, 200721:50Once 「Once ダブリンの街角で」 (2007)5
監督:ジョン・カーニー
出演:グレン・ハンサード、マルケタ・イルゴロワ、ビル・ホドネット、レスリー・マーフィー

0a6fff5e.jpg2007年のサンダンス映画祭のワールド部門でオーディエンス賞を受賞。6月頭の公開以来、アメリカでも話題のアイルランド映画です。

ダブリンの街角でギターを弾きながら自作の歌を聞かせるシンガーソングライターの男の子がある日チェコからの移民の女の子と出会います。実は彼女自身も才能あるミュージシャンなのでした。意気投合した2人は、デモテープを作り、ロンドンのレコード会社に売り込みに行くことにするのですが・・・というお話。

これだけだと「ラブソングができるまで」とほとんど変わらない筋書きのようですが、実際には天と地ほどの差があります。いや、「ラブソング・・・」も最高に楽しかったですよ。でもこの映画は・・・何と言うか、絶対にハリウッドでは作られない映画です。「男の子」(映画の中で役名は出てきません)を演じるのはThe Frames(アイルランドでは大人気のバンドだとか)のヴォーカルをつとめているグレン・ハンサード。本作品でも、彼の歌う歌はほぼすべて彼が作詞作曲したものです。役者としての実績は皆無なようですが、全然違和感がありません。彼の発する言葉には、それが歌詞の一部であれど台詞であれど、嘘はありません。鍍金ではなく、ホンモノの重さと脆さと切なさに満ちています。そして「女の子」を演じるイルゴロワ!本作品撮影時は何と17歳!しかも映画初出演!この彼女が信じられないほど素晴らしいのです。あんな表情、あんな歌声、あんな瞳・・・作ろうとして作れるものではありません。途中からは彼女が銀幕上に現れるだけでうるうるしていました。

この2人の関係にもフェイクな部分は何一つありません。というか、この映画の中にフェイクなところはまったくありません。台詞も、視線の交錯も、スキンシップも、歌声も、ホンモノです。昨夜観たKnocked Upで、「ここはハリウッドだからね。嘘はキライなのよ」というジョークがありましたが、まさにその通りで、ハリウッドではけしてこんな純粋な映画は作れないでしょう。

途中、楽器屋で2人がデュエットをするシーンがあるのですが、その素晴らしいこと!そして途中、「女の子」がチェコ語でふとこぼした台詞・・・。その意味がわかった瞬間、胸が一杯になりました。

エンディングもハリウッド映画ではありえないエンディングです。甘くて、切なくて、美しくて、悲しい・・・素晴らしい映画にふさわしい素晴らしいエンディングだと思います。

トレーラーはこちら。サントラを買いに行かなくては!

June 03, 200720:30Open Hearts "Elsker dig for evigt" 「しあわせな孤独」 (2002)4
監督:スザンネ・ビエール
出演:マッツ・ミケルセン、ソニア・リクター、ニコライ・リー・カース、パプリカ・スティーン

Open Hearts映画ファンの大先輩、Yukkoさんからのオススメの本作品。やっと観ることができました。言わずと知れたドグマ作品で、本国デンマークでは8人に1人が劇場で観たんですって!

婚約直後の若きカップル、シシーリエ(リクター)とヨアヒム(カース)。ある朝、ヨアヒムがシシーリエの目の前で車に轢かれ、半身不随になってしまいます。ヨアヒムを轢いた車を運転していたのは医者の妻のマリー(スティーン)。この事故を通じて、シシーリエとマリーの夫ニルス(ミケルセン)が急接近してゆきます。最初は被害者の婚約者と加害者の夫という関係だったのが、いつしか人目を憚る仲に・・・というお話。ドグマ作品らしく、効果音もなければBGMもほとんどなく、手ブレ状態で各キャラをクローズアップしてゆきます(ただし、ヨアヒムの事故現場の血はあれはニセモノの血だぞ)。

かな〜り地味な作品ですが(・・・本当に8人に1人が観たのだろうか・・・。だとしたら恐るべし、デンマーク!)、揺れ動く人の心を繊細なタッチで描いており、かなりパーソナルなレベルで共感できます。夫を寝取られた妻のキャラもかなり自然で説得力があります。というか、キャラ一人一人がかなりリアリスティックに描かれていて、勿論、自分の愛する人が目の前で車に轢かれて半身不随になってしまった時の気持ちなんて想像もつかないわけなんですが、この映画で表現されているリアクションは十分納得できるものでした。

(ここから先、派手にネタバレ注意)

でもねえ・・・ニルスって馬鹿だなーと思ってしまいました。今まで浮気なんてしたことがない、と言っていましたからね。ほかに何も見えなくなっちゃったんでしょうか。あの状況であの相手に本気で恋におちてしまうなんて!いや、そりゃ恋におちるってことはコントロールがきかないんだと思います(コントロールできるのは行動だけ)。また、不倫などの道ならぬ恋って、別に今の生活に不満がなくてもはまってしまうことってあると思うんです。だからニルスがふらふらと、目の前の若くて美しい被害者(しかも自分を完全に頼ってくれている!)(しかも彼女も温めてくれる体を欲している!)に惹かれてしまうのはわからないでもないのです。

でも恋におちてしまうなんて・・・。そこが一番の悲劇ですよね。体の関係だけにしておけば良かったのに。そうしたら誰も傷つかずに済んだんです。結局彼は彼女に「愛している」とは一度も言ってもらえませんでした。彼の方は「愛している」って、あの状況では恐らく一番言ってはいけないことを言ってしまったのに。

結婚している男性とつきあっている女性って、本当に「奥さんを捨てて一緒になって」って思うものなんでしょうか?私だったら、ベッドの中で「いつか妻と別れて君と一緒になりたいと思う」って言ってもらっているうちがハナだなと思ってしまうでしょうけど。っていうか、実際にある日「妻と別れてきた。さあ一緒になろう!」なんて言われたら「げげげ」って思っちゃいますよ。そのプレッシャーたるや!しかも一度自分の配偶者を捨てて別の女と一緒になった相手なわけですから、今度は自分が捨てられる番かよ〜と思うと全然嬉しくないでしょうね。だからそういう意味でも、ニルスの「愛している」の告白から、「妻と別れてきた」の台詞の意味がしっかり消化できるようになるまでのシシーリエのリアクションはよーーーーーーーーくわかりました。

それにしてもシシーリエはその時一番自分が必要としていたものをすべてもらって去って行ったわけです。やっぱり女性の方がしたたかなんでしょうか。

ちなみに原題は「いつまでも君を愛す」という意味らしいですが、「しあわせな孤独」という邦題はいいですね。Open Heartsという英語の題名よりも、一人一人のキャラの気持ちが良く伝わると思います。

本作品はScrubsや「終わりで始まりの4日間」(原題はGarden State。なんちゅー邦題だ!)でお馴染みのザック・ブラフがリメイク権を獲得。自分はチョイ役で登場するそう(思うにフィンの役?)。来年公開で、ケイティー・ホームズ(汗)やジェニファー・ガーナー(汗汗)などの名前が挙がっているようです。本当にネタ切れなんですね・・・>ハリウッド

最後になりましたが、眼鏡をかけていても、白衣でも、裸でも、胸毛もじゃもじゃでもマッツ・ミケルセンはいい男です!それだけは声を大にして言いたい私。




October 27, 200610:00The Omen 666 (2006)3
監督:ジョン・ムーア
出演:リーヴ・シュライバー、ジュリア・スタイルズ、デービッド・シューリス、ミア・ファロー

1976年にグレゴリー・ペックとリー・レミック主演で公開された「オーメン」の割と忠実なリメイクです。

主役二人がえらく若いのですが、何故30代で「英国大使」?という疑問は一応映画の中で説明されています(そのため、オリジナルよりも死体が一つ多い)。超有名な映画なので、あらすじは書きませんが、いくら「2006年の6月6日」に公開したかったからといって、何故あの名作をわざわざリメイクするかな、というのが第一の感想でした。

映画の出来としては実は悪くないのです。主役二人も頑張っているし、ミズ・ベイロックのミア・ファローはにやりとしてしまうキャスティング。その他にもデービッド・シューリス(カメラマンのジェニングス)、ピート・ポッスルスウェイト(ブレナン神父)、マイケル・ガンボン(ブーゲンハーゲン)など、名優が脇をしっかり固めているので、リメイクとは言え、高級感はあるし、スピード感もある。それなのに、やっぱりオリジナルを何度も観ているからでしょうか。このリメイクで一番困ったのは「全然怖くない」ということなのです。次に何が起こるかわかってしまっているからなのかも知れません。あるいは、「オーメン・最後の闘争」まで観てしまって、ダミアンがどうなるかもわかっているからかも知れません。オリジナルよりもグロ度はアップしているのに、全然怖くないのです。

いくつかある変更点はどれも悪くないのですが(たとえばケイトの死に方などは、オリジナルよりももっとリアルな分怖かったりする)、ジェリー・ゴールドスミスの音楽がないのが怖くない原因の一つかも、と思ったりもします。あとは、ダミアンを演じている子供が、最初から「悪魔の子」みたいな感じなのも興ざめ。オリジナルのダミアンは、ごくごく普通の子供でしたからね。あんな天使みたいな子が何故・・・と思えたので怖かったというのもあると思います。

ジェリー・ゴールドスミスの「アヴェ・サターニ」は、ラストのクレジットが流れるところでうまくアレンジされて使われています。オリジナル版は仕事中にも聞いているのですが、流石にゴールドスミス御大に唯一のオスカーをもたらした作品なだけあって、名曲です。

「オーメン2:ダミアン」が実は大好きだった私なのですが、あれだけはリメイクして欲しくないなあと、このリメイクを観ていてしみじみ思いました。