ヨーロッパ大好き、フリーバードスタッフSです。
今回の旅は、構想10年、研究5年、計画半年、実行1週間のオリジナルツアー。
フランスの文豪ヴィクトル・ユゴーの超大作「レ・ミゼラブル」の舞台をめぐる旅です。
パンひとつを盗んだ罪で、牢獄に19年も入れられた男、ジャン・ヴァルジャンが、ミリエル司教の情愛に触れ、
…ストーリーは各自お調べください。
完訳本は、ちょっと分厚めの新潮文庫で全5巻、さらに分厚い岩波文庫で全4巻あります。これを読むと、登場人物がパリのどこに住んでいたのか、どの通りを歩いたのか、詳しく書かれています。
現在のパリの地図を見ながら、それらの位置を、ひとつひとつ検証していきます。
地図は、パリの全域が入っていて、通りの名前が全て書かれているものが理想です。日本で売っているガイドブックでは不足ですので、ミシュランの都市版道路地図を買いました。書店の輸入地図コーナーで1,400円ぐらいで買えます。
こんな感じで、本文と地図を照らし合わせていくのです。
メトロ「FILLES DU CALVAIRE」駅の近くに、「R.des Filles du Calvaire」フィーユ・デュ・カルヴェール通りが見つかります。
ところが、ひとつの壁にぶちあたります。レ・ミゼラブルの物語は、19世紀前半のこと。パリは19世紀後半に大規模な都市整備事業を行なっており、多くの街路がその形や名前を変えてしまったのです。
ですので、「レ・ミゼラブル」に書かれている街路には、現存するものもあれば、そうでないものもあります。
「レ・ミゼラブル」に出てくる街路という街路を調べつくし、曖昧なものはそのまま残し、何となく全容をつかむことはできたのですが、一部は薄い雲に覆われたまま。いまいちスッキリしません。
そんな時に出会ったのがGoogle Earthです。地球儀風の画面で地図を見るだけのアプリケーションだと思っていたのですが、ここで古地図を見ることができたのです。「ラムゼイ歴史地図」というもので、1834年のパリの地図が格納されています。「レ・ミゼラブル」のクライマックスともいえる革命のシーンが1832年のことなので、ほぼ当時の街の姿を知ることができます。
これで、多くの謎が解決できました。
具体的に、古地図を使った作業内容をほんの一部、紹介しましょう。
例えば、主人公ジャン・バルジャンが晩年を過ごした「ロマルメ通り」。新潮文庫の訳では「ロマルメ通り」、岩波文庫の訳では「オンム・アルメ街」となっています。なぜ訳によって表記がこうも異なるのかも謎ですが、いずれにしても、現在のパリの地図には見つからない地名です。
新潮文庫の第5部第8章4節に、『ロマルメ通りからあらわれて、サント・クロワ・ド・ラ・ブルトヌリー通りに向い』という記述があります。サント・クロワ・ド・ラ・ブルトヌリー通りは、現存する通りの名前です。
ミシュランの地図に「R. Sainte Croix de la Bretonnerie」というのが見つかりました。「R.」というのは「Rue」の略で、「~通り」ということです。
ロマルメ通りは、この付近にあると考えられるので、このあたりを古地図で探します。
かなり読みづらいのですが、赤い線を引いたところに、「R.Croix / de la Breton-ne-rie」と書かれています。
その近く、青い線を引いたところに、「R.de l'Hom / me Arme」というのが見つかります。「de」は英語の「of」みたいなものなので軽く無視します。フランス語では最初の「H」は発音しないので、「l'Homme Arme」を短く発音すると「ロマルメ」になりますよね!
さらに、「l'」(英語の「the」みたいなものです)を無視して、「Homme Arme」をくっつけずに発音すると「オンム・アルメ」になりますね。
ロマルメ通りの場所が見つかっただけでなく、新潮文庫と岩波文庫で表記が異なっていることの謎まで解けてしまいました!
こんな調子で、視力が0.5ぐらい落ちるほどの研究を重ねていきました。
その一部がこちらです。→研究ノートより抜粋
映画がアカデミー賞にノミネートされるほどにヒットし、東宝が新演出版ミュージカルを帝国劇場で公演することも決まり、いよいよ機が熟したので、「レ・ミゼラブル」の舞台をめぐる旅を実行してきました。
日程はこんな感じでした。
5/25 ANA 直行便で成田→パリ
5/26 パリ
5/27 パリ
5/28 モントルイユ・シュル・メール
5/29 アラス
5/30 ワーテルロー
5/31 ロンドン
6/1 ANA直行便でロンドン→成田
モントルイユ・シュル・メール、アラス、ワーテルローがどんな場所かは後々語ることにして、さっそく飛行機の旅、スタートしましょう。
ANAは成田からパリ、ロンドン、フランクフルト、ミュンヘンに直行便を運航しています。
今回はパリから入ってロンドンから出るので、ANAがピッタリでした。
日系航空会社だけあって、食事は日本人の口にあう上品な薄味。
食べたらパリまでゆっくり眠るだけ。と、思っていたら…。
機内映画で「レ・ミゼラブル」が見られるではありませんかー!
ハーゲンダッツをいただきながら、映画を繰り返し見ました。オンデマンドで操作できるので、見たい所を何度もチェックできます。まだDVDの発売前だったので、これは嬉しいですね。
パリに到着したら、シャルル・ド・ゴール空港に乗り入れている近郊列車「RER-B線」で街に向かいます。
リムジンバスよりも安くて早く、メトロ各線にも乗り換えが便利なのですが、空港⇔街のシャトルというよりは、パリ郊外⇔パリ市街の近郊列車という色合いが強いので、途中の駅からかなり混んできます。大きなスーツケースがあったりする場合は、あまりオススメはしません。