2008年06月14日

「iPhoneは、実質的にソフトバンクの独占と言っていい」

ソフトバンクがiPhone 3Gの日本での販売権を獲得したことが日本中に衝撃を与えているようです。一部の証券アナリストを含め、世間には、先週6月4日の最初の短いプレスリリース以来、ずっと「独占契約」の文言がないことに着目し、「非独占販売契約であれば、ドコモも販売するだろう」と、最重要当事者のアップルの意志などそっちのけで、ドコモさえその気になれば何でも叶うはずだと言わんばかりに、希望的観測を言い続けている人たちがいます。その憶測が様々な角度から考えて理にかなったものではないという私見を先日書きましたが、この問題について、どうやら決着がついたようです。

今日6月13日、東京都内で開かれた通信事業者の会合に参加した孫社長がインタビューに次のように答えたと報じられました。

アップルとの契約上では,国内で独占販売とはなっていない。ただ,実質的には我々が優位な状態にあり,独占といってもいい。

別の質問事項への返答の一部分のような文章の切り切り貼りの仕方になっているので、分かりにくいのですが、質問の一つは「今回の契約は独占販売契約なのか」というものだったのだろうと思います。それに対して孫社長はおそらく「たしかに独占とは明記されていないが、事実上、独占といっていい」と答えたのでしょう。蛇足ですが、日経記者が、この肝心の質問(おそらく書き手本人も最も関心のある問題だったはず)をヘッドラインにせず、他の質問をむしろヘッドラインにして、肝心の返答を他の質問への答えに混ぜ込むように文章の切り貼りをしているのは、書き手が「独占」で問題が決着したことを歓迎していない心理の表れです。

いずれにせよ、諸般の事情に配慮してアップルとソフトバンクは(諸外国の通信事業者は)たとえ「実質独占契約」であっても、敢えて独占ということを強調しない発表方針を取っているのであろうという先日述べた推測が、当たっていたように思います。

現実的に考えて、70カ国がそれぞれの国で提携するキャリアが決まり、7月11日からの発売に向けて動き出しているわけですから、この体制に変更を加える要素が入り込む余地など全くないはずです。今後、日本国内での販売目標を大幅に下回るなど、ソフトバンクに過誤があれば、独占的地位がキャンセルされる可能性はあるでしょうが、そうでなければ独占的地位の変更はないものと思っておいてよいのではないでしょうか。


〔nikkei ITpro〕世界観が素晴らしい――ソフトバンク孫社長がiPhoneの魅力を熱弁

 都内で開催された通信事業者の会合に参加したソフトバンクの孫 正義社長は2008年6月13日,7月11日に発売するiPhoneについて報道陣の質問に答えた。価格設定や販売方法について説明したほか,アップルとの交渉を経て販売契約を獲得したiPhoneの魅力について語った。主な発言は下記の通り。


──米国では199ドル,299ドルという価格だが,国内でどう設定するか。


 価格の詳細は発表できない。後日発表する。従来から投入されている他メーカーの高機能モデルよりも,魅力的な価格となるだろう。ただし,ユーザーのさまざまな要望にiPhoneが100%応えられるわけではない。複数の端末を適材適所で用意する。通話料金やデータ通信の料金は未定。今月中に発表したい。


──在庫は潤沢に用意できるのか。販売方法は。


 アップルが世界的に製品を用意することになるので,潤沢ではない可能性がある。発売直後はお待たせするかもしれない。製品は,ソフトバンクショップのほか,アップルストアでも販売する。アップルとの契約上では,国内で独占販売とはなっていない。ただ,実質的には我々が優位な状態にあり,独占といってもいい。


──日本独自に機能を搭載する可能性はあるか。


 ハード的にボタンを追加するなどはあり得ない。タッチパッド上で日本特有の入出力ツールを用意することは考えられる。そのほかは,数多くの専用アプリケーションやゲームを追加していく。アプリケーションはiTunesストア経由で購入できる。おサイフケータイがないといった機能の不足を指摘する声もあるようだが,おサイフケータイは世界的に使われている機能ではない。コストを上げて搭載するものではない。


──他社にさきがけてiPhoneの販売契約を獲得できた理由は。


 精一杯に努力を尽くした結果だと考えている。


──実際にiPhoneを触ってどう感じたか。


 世界観が素晴らしい。パソコンとのデータ連携ツール「MobileMe」を用意したほか,Exchange Serverにも対応してビジネス用途にも対応した。ゲームなど多くのアプリケーションが登場するだろう。

 オブジェクト指向のSDKも注目に値する。マウス操作で何10分と短い時間でアプリケーションが作成できるのは驚きだ。従来,携帯電話のアプリケーションは閉じたプラットフォームで作られており,新しい機種が登場すると作り直す必要があった。iPhoneのSDKは,既に20数万のエンジニアがダウンロードしたという。作成したアプリケーションはiTunesストアで売れる。流通段階まで提供されている点が魅力だ。

 こうしたOSや流通段階のシステムを一から作るとなれば,5年はかかるだろう。iPhoneをまねた端末が登場してくるかもしれないが,iPhoneのようなSDKやiTunesストアを含めたシステムはない。iTunesと組み合わせて利便性を高めたiPodと,単純なMP3プレーヤーで大きく差がついたが,同じような位置づけとなるだろう。

 従来からSymbian OSやWindows MobileといったOSもあったが,iPhoneは数十年の技術の蓄積があるMac OSをベースにしているという優位性がある。ファームウエアについても従来の携帯電話とは思想が違う。ファームウエアをアップグレードして,機能を追加できる。柔軟性はパソコンと同レベルだ。

(松元 英樹=日経コミュニケーション)  [2008/06/13]




ドコモは顧客流出を食い止めるために偽りの「期待感」を振りまく?


ところで今日は、同じ日経ネット上で「NTTドコモ中村社長,iPhone獲得を続行する方針を示唆」という記事が出ています。

〔nikkei ITpro〕NTTドコモ中村社長,iPhone獲得を続行する方針を示唆

 NTTドコモの中村維夫社長は6月13日,iPhoneの販売契約に関する本誌の質問に対し「(国内の販売契約は)排他ではないと聞いている」と,契約獲得を続行する方針を示唆した。「できれば1番目に欲しかった」として,先行された悔しさをにじませるとともに,2番目の獲得を目指す方向性を示した。

 従来からNTTドコモはiPhoneの獲得を目指しており,中村社長も「iPhoneはぜひやりたい」とコメントしていたが(関連記事),2008年6月4日にソフトバンクが国内での発売を公表(関連記事),その後の米アップルの開発者会議で7月11日に発売することが発表された(関連記事)。

(松元 英樹=日経コミュニケーション)  [2008/06/13]



実はそれに先立って、中村社長はアップルWWDC終了後、日本テレビに自宅付近で(?)「ドコモさんからは発売の可能性は」とインタビューを受け、その際、「それはないと思いますね」と答えているのです。実物(初代iPhoneと思われる)を見せられ、それを手に取りながら「若干重いですね。今、日本の携帯はみんな軽いから」とも感想を語っています。

その様子は、これまで報道されてきた「ドコモとの競争」の存在を信じていた者から見ると、拍子抜けするほどその可能性が微塵もないことを表すものでした。

iPhone新機種 ドコモ発売可能性なし
<6/10 12:26>

 アメリカ「アップル」の人気携帯電話「iPhone(アイフォーン)」の新機種が現地時間9日、アメリカ・サンフランシスコで発表された。日本では「ソフトバンク」が来月11日から販売する。発売を検討してきた「NTTドコモ」中村社長は10日、日本テレビの取材に対し、現在のところ発売の可能性はないことを明らかにした。
 iPhoneはこれまで、各国の最大手の携帯会社から発売されており、国内第3位であるソフトバンクのみの発売は世界で初めてのケースになる。


おそらくこの社長発言にドコモ内部から批判が出たのでしょう。急激なiPhone人気の高まりを目の当たりにしたドコモ幹部らは、ドコモに可能性が全くなくなったとユーザーに受け取られると、ソフトバンクへの顧客の大量流出を許してしまうと危機感を感じたのだろうと思われます。そこで社長に進言し、ここはドコモからもiPhone発売の可能性があると印象付けてユーザーに「期待感」を抱かせ、1日でも、1月でも、ソフトバンクiPhoneへの加入・移転を阻止しなければと考えたのだと推測できます。

上の「iPhone獲得を続行する方針を示唆」の記事には、「(国内の販売契約は)排他ではないと聞いている」とあります。しかし、誰からそんなことを聞いたのかという肝心な点が不明なままです。アップル自身がそのようなことを言うはずもありませんから、せいぜい「部下から」ということか、そうでなければフィクションにすぎないということでしょう。

しかし、もはや憶測をばらまく情報戦も、孫社長の発言によって、無意味なものになってしまいました。

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