さて、間が開いてしまいましたが、内務省の情報機関を紹介します。

国内情報中央局(Direction Centrale du Renseignement Intérieur: DCRI)

歴史
 1907年に創設された一般情報中央局と1944に創設された国土監視局を統合して2008年7月に国内情報中央局(DCRI)が創設された。


任務
 DCRIの任務はDSTとRGから引き継がれたものである。中でも、イスラム原理主義によるテロ対策が、最優先課題とされている。それ以外には、外国の干渉並びに脅威に対する対策(防諜活動)、その他国家の権威、国防機密、国家の経済的資産に対するあらゆる活動への対応、通信の監視とサイバー犯罪対策、暴力的傾向を持つ運動、グループ、組織の監視、ならびに脅威の前触れとなる現象の監視、核兵器・生物化学兵器、大陸弾道弾の拡散対策、民政ならびに経済インテリジェンス、技術上産業上重要なフランスの公企業、私企業の監視、イスラム過激派並びにフランスのイスラム原理主義共同体の監視、極左ならびに分離無政府主義者の監視等の活動を行っている。


組織と機能
 DCRIの組織と機能は「国防機密」によって保護されている。DCRIの各機関は、他の地域的従属関係は例外として、国内情報中央局に従属する。
 DCRIの本部はパリ北西部のオー=ド=セーヌ県のルバロワ・ペレ、ヴィリエール通りにある。
 2009年に国土監視局(DST)と情報総局(RG)の半数弱の要員を引き継いで、DCRIは3306名の要員で発足した。
 2009年1月15日に、政府の予算削減策の名目で400名の要員の削減が決定された。2011年12月31日までには2922名にまで削減される予定である。
 フランスはパリと6つの管轄区(国内情報活動の地区割り)に分割されている。それらはすなわち、パリ、リール、レンヌ、メス、ボルドー、マルセイユ、リヨンである。
 DCRI長官はベルナール・スクワルチーニ(Bernard Squarcini)、通称「スクワール」である。
 彼を補佐するのが、国内情報作戦担当副局長はミシェル・ゲラン(Michel Guérin)、国内情報組織担当副局長はモーリス・ベリー(Maurice Bailly)である。彼らの元に本部長、人事部、社会予測分析部、研究部、資源方法部などが置かれている。さらに、不審尋問と港湾の不法侵入に対応するための18名の捜査官から構成される作戦支援グループ(Groupe d’Appui Opérationnel)も設けられている。
 DCRIは本部と、テロ対策部、技術情報部、破壊工作対応部、総務部、支援部、防諜部、国際問題部、経済保護部、司法問題部、戦略部、警備部といった部局から構成されている。現在特に重要視されているのが、テロ対策部と、経済スパイに対応する経済保護部である。
 その他、DCRIにはクリスティーナ(Centralisation du renseignement intérieur pour la sécurité du territoire et des intérêts nationaux: 国土安全保障と国益のための国内情報集約システム)と呼ばれるデータベースが設置されている。このデータベースは国防機密であり、カード化された個人情報の他に、その個人の近親者や関係者にまで及んでいる。このデータベースは2008年7月1日に情報総局と国土監視局の情報を統合して作成された。
 また、多くの構成員の間の通信を追跡するために、2007年5月以来DCRIはルバロワに小規模なプラットフォームを設けた。これにより、特定の人物からの通信の送受信をすべて回収し、住所の記述ならびに銀行に身元を照会できるようになった。またDCRIのエージェントはテロリストが連絡に用いると考えられているあらゆるインターネットのサイトに関する情報を要求することができる。携帯電話、Eメール等に関しては、いつ誰がどこに通信しているのかをシギント設備によって割り出せるようになっている。
 DCRIの2011年度予算は国家警察と統合されたために公表されなくなった。国家警察の予算は前年度に比べ12%上昇した。ちなみに2008年度のDCRIの予算は4千百万ユーロであった。
 DCRIの組織と機能は「国防機密」によって保護されている。そのために、公式に発表されている情報はきわめて少ない。


活動
 DCRIの先代の組織であるDSTには、ソビエト高官からの情報提供による「フェアウェル事件」、それにテロリスト・カルロスの逮捕など歴史に残る業績が多い。DCRIも、その短い歴史にもかかわらず、非常に積極的に活動している。
 そのDCRIが現在最も積極的に取り組んでいるのは、イスラムテロ対策である。
 2009年、原子物理学者のアドレーヌ・イッチューがアルカイダとの関連を疑われDCRIに拘束される。また、2010年10月には、DCRIはイスラム教徒を尋問している。さらに2010年11月には2009年2月の回路でのテロ事件に関わったと疑われる2名の人間を尋問しており、さらにフランスでテロを準備していた容疑で4名の人間を尋問している。このようにイスラム原理主義に対する予防措置はきわめて厳格である。さらに、2009年10月19日にETAのメンバーを逮捕してもいる。
 DCRIが対外活動の一翼をなした例もある。たとえば、2009年11月に、イランにスパイ容疑で抑留されたフランス人学生クロティルド・ライスの釈放、マジド・カカバンドの米国への国外退去、フランス駐在イラン大使の動向、トリカスタン原子力発電所とイランにおけるトタルの関連に関して積極的に調査を行っている。
 ただ、サルコジの大統領就任以降も、権力の道具としての情報機関という性格が消えたわけではない。その一例がベタンクール事件でのDCRIによる不正捜査疑惑である。ベタンクール事件とは、フランスの大手化粧品メーカーの創業者の娘にして大富豪として知られるリリアン・ベタンクールによる、サルコジ大統領サイドへの不正献金疑惑事件であるが、DCRIは、2010年の夏にベタンクール事件に関するルモンドの記事の情報源の調査のために司法相ミシェル・アリオ・マリーの法律顧問であるデヴィッド・セナの通話記録を、正当な手続きを行わずに調査したとされる。
 一方で、DCRIには強力な権限の逸脱とも思える事件も発生している。それがタルナック事件である。タルナック事件とは、2009年1月にフランス中央部の山岳地帯に位置する寒村のタルナックにパリから集まった若者達に国家転覆の容疑がかかりDCRIにより拘束された事件である。しかし、国防省によりDCRIの報告書に矛盾が指摘されている。
 また、2010年11月24日にカナール・アンシェネ紙は、正当な手続きなく個人のコンピューターをハッキングしていると告発した。DCRIは「論争が拡大する」のを防ぐために、公式の表明を控えている。