日本の雇用と労働法 (日経文庫)
濱口 桂一郎
日本経済新聞出版社
2011-09-16


 またもや濱口 桂一郎氏の本を読んだが、やっぱりおもしろい。
 いわゆるジョブ型雇用、メンバーシップ雇用という観点から、日本の雇用慣行が確立していった歴史的経緯、労働法の改正、判例法理の形成等をよみといている。

 以下、おもしろかったところを抜粋。


 1 成果主義賃金

年功制の否定というのが成果主義の中心になるわけですが、そのベースになるべき評価基準は明確ではありません。欧米の成果給はその基本に職務給が明確に存在しており、その上で職務ごとに期待される成果がどの程度達成されたかを査定して個別賃金が決定されるのです。しかし、日本で導入された成果主義賃金は決して職務給ではなく、むしろ現在の職能資格を職務等級に括り直しただけというものが多いようです。現実の日本の人事労務管理は職務ベースで行われているわけではないので、成果主義と言っても職務給マイナス年功制でしかないのが実態でしょう。しかしそれでは、成果主義とは査定の裁量幅の拡大にすぎません。

 ジョブ型雇用における賃金の決定は、産業別組合が団体交渉を行って外部市場で決定されているのに対して、メンバーシップ型雇用の場合には、労働力の調整と雇用保障のためにジョブローテーションが行われるのが通常であって、特定の職に賃金を支払うということはない。それにもかかわらず、日本において成果主義を採用すれば、何らの評価基準がない状態となってしまう。したがって、使用者側の裁量幅を拡大するにすぎないという趣旨…のはず。わたしが理解したところによれば。

 2 労使関係
ジョブ型労使関係法制が予定する争議行為とは何よりもまずストライキです。……ところが戦後日本では、こういう労務不提供型の争議行為よりも、職場占拠、ビラ貼り、リボン戦術のような企業の業務を妨害するような行為が中心になりがちでした。……これらは、企業別組合の組織面、財政面の弱さの表れですが、その背後にあったのは、労働争議を債権契約関係にある者の間の取引のための戦術としてではなく、同じ団体のメンバー間の近親憎悪的な喧嘩と捉えてしまいがちな意識であったともいえます。「忠誠」と「反逆」は同じメンバーシップの表と裏なのです。

 労働組合がストライキをするというニュースは見たことがない世代なので、現実の労働組合が一体どういう活動をしているのかイメージがつかない。たまに聞くのは「春闘」ぐらいだ。あとは、沈まぬ太陽でたしか主人公が労働組合のなにかしてた気がするな…とか、最近だとクロネコヤマトの労組ががんばってるといった印象しかなかったが、それなりにイメージはできた。ただ、歴史の理解が結構めんどくさい…あと、数度は読み返さなければならない気はする。

 そもそも、労働組合に関する新書が少ない気がする。Amazonで検索しても、あまりこれといったものがない。かといって専門書を読むのはめんどくさい…

 3 中小企業

中小企業ほど労働者の職務範囲は不明確で、社長の一言でいくらでも変わることがありますし、賃金基準も曖昧です。労働時間に関しては下請け企業として親会社の都合に合わせなければならないこともあり、むしろ長時間労働が強いられがちです。

 これは、わたしのアルバイト先がまさにそうで、正社員の人でも、人手が足りないときにはバイトやパートがやっているような仕事をしているし、本人も「うちは何でもやらなければならない」「休みがない」「(下請けだから)やれといわれたらやらなければならない」とぼやいている。なんとかしてあげたいものだが…




 結構、沿革的な話が多い本だったので、読むのが少し辛かった。次は、岩波新書から出てるのを通読しようと思う。