俺はともかく、お前のバッテリーはビンビンだったはずだぜ?
少なくとも今まではいつだってそうだった。
運命の出会いをしてから5年。
確かに最近お前に乗っかってやる時間が少なかったけど…
夕方から渋谷でラジオの収録。
今日も暑いし、このところずっと離れ離れだったから
井の頭線はヤメにして、愛しの306に乗り込んだわけさ。
小ぶりだけどやけにグラマー。
少し重たいドアを開けて滑り込むと
車内に充ちた革の匂いがなんとも艶かしい。
いったんシートに深く身を沈めて
久々に合わせた肌の感触を楽しんでから
イグニッションを回す…
あ、あれ?
いつものセクシーなハスキーヴォイスはどこへやら
ギュルギュルギュルと、しぼり出すような唸り声…
何度かブルブルっと震えると
ようやくゼイゼイとあえぐようにエンジンがかかる。
ヤバい。
どうやら相当ご機嫌斜めなご様子。
恐る恐るバックギアに入れてみると
ガクンと膝を折るような揺れの後
ズルズルと進む。
うーん…
なんとか無事に渋谷のNHKに到着。
駐車場に入れたけど、エンジン切るの怖いなー。
素敵なトークが弾んだ収録中も、若干気になる…
帰りも機嫌悪かったらどうしよ。
全部終わって、駐車場に向かい、恐る恐るキーを回す。
やっぱ何だか喉の調子が悪いみたいな声で
苦しそうにブルブルンと体を震わす。
そっか。ゴメンよ。
明日は天気になったら綺麗に洗ってあげるから
今日はこのまま大人しく、ゆっくりおうちへ帰ろう。
そしてもうすぐ秋がやってきて、もっと涼しくなったら
目いっぱい風を吸い込みながら、ずっと遠くまで走ろう。
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