外から見る日本、見られる日本人

バンクーバーの日本人社長ヒロが仕事、生活を通じて感じた経済、経営、社会、日本人観などを綴っています。

2014年09月

金融緩和は資源バブルを招いたか?4

住友商事がアメリカのシェールガス開発に絡む損失などを2400億円も計上し、今期の連結純利益が2500億円の予想からわずか100億円に減ることを発表しました。シェール関連だけで1700億円も損失を計上するその理由は「ガスが思ったほど出なかった」というもの。

アメリカのシェール関連に資金を突っ込んだ日本企業はたくさんあり、その多くが既に損失を計上しています。14年3月期で損失計上したのは三井物産、伊藤忠、丸紅、大阪ガスなどでしょうか?どこも巨額になっています。今回の住友商事の損失計上もそのライン上にあるかと思います。

シェールガスの発掘は新しい技法であるし、まさに1800年代半ばに男たちが金鉱を探し求めて行ったのと同様、北米で雨後の筍の様にその開発競争が進んでいます。それは思ったほど確度が高くないにも拘わらず、遅れまいとした日本企業に思わぬ落とし穴があったとも言えましょう。

ただ日本の商社が投資にいそしんだのはシェールガスだけではありません。あらゆる資源に対して巨額な資金が投入されたものの「市況のゆるみ」が思わぬ損失になっている状況にあります。個人的にはもう少し損失が出てきてもおかしくないとみています。商社で膿を出し切っていないところもありそうです。

商社はその投資資金の5割近くを資源開発に回してきた経緯があり、一部の商社ではその行き過ぎ、あるいはポートフォリオのバランスの悪さから調整に入っていたところもあります。三菱商事などはその典型でしょうか?

ではなぜ、商社はこぞってそこまで資源開発に資金を振り向けたか、といえばいくつかの理由が思い浮かびます。

中国発のレアメタル問題で代替資源の開発を急ぐ必要があったこと
世界的な資源ブームがあったこと、特に中国のブームに市場の深さを見誤ったこと。
日本の震災後、電力の化石燃料の輸入価格上昇に伴う投資機会の到来
商社が巨額の資金を投じて成長投資をする案件がそう多くない中で資源は飛びつきやすい案件であったこと
そして金融緩和で資金を投じやすかったこと

特に最後の金融緩和による資金という点では日本に限らず世界規模でありました。カナダのジュニアマイニング(中小の鉱山会社)はこの4,5年、買収に次ぐ買収でまさに戦国時代にあったと言っても過言ではありません。それこそ、あまりの頻度で「あれ、あの会社はどこに行ったの?」ということが起きていたのです。

これも金融緩和による買収資金の調達のしやすさ、その上、資源価格が上昇基調にあったことが大きかったと思われます。

バブルとは我々の周りでは思った以上に頻繁に発生しています。80年代後半の日本のバブル、2000年のドットコムバブル、2004,5年ごろの北米住宅バブル、そして2011年の金価格が1900ドル台になった頃のいわゆる資源バブル、更にはそれを引きずってシェールバブルとも言えそうです。(私はアメリカの現在の自動車ローンは明らかにバブルの源泉ですから、2014年は自動車バブルを付け加えたいと思っています。)

資源バブルの崩壊に関してはもう一つ、中国でシェールがうまく開発できないこともあるかと思います。シェールは水を大量に使う上に土壌汚染の可能性が指摘されています。中国は兎にも角にも水が不足していますからシェール開発には向かないという事になります。そして中国不動産の低迷も資源需要を下押ししています。

金融緩和は資源バブルを招いたか、といえば間接的にYESでしょう。もちろん金融当局が関知したことではなく、金融緩和→投資リターンの低下→ハイリスクハイリターンへの傾注→資源事業などへの資金投下という一連のシナリオでしょうか?ましてやアメリカがその緩和姿勢をノーマルに戻していくわけですからバブルの始末は早めにするに越したことがないのです。

注意しなくてはいけないのは上述の企業はバブルの始末ができる体力がある企業群だという事です。ここに名前が出ていないところは損を吸収できない問題を抱えるところも出てくるかもしれません。むしろそれの方が始末に困ることになりそうです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

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ではまた明日。

良いインフレ、悪いインフレ4

あなたの家の価値は毎年2%ずつ上昇し、物価もわずかながら着実に上がっている状況にあるとします。あなたの給与は毎年4月になるとベアと昇給、更には会社のボーナスも業績が良いので昨年よりアップが期待される、という世界はある意味、理想です。いや、少なくとも80年代まではそうでありました。こういう時はモノを早く買わないと価格が上がってしまうリスクがある一方で金融商品も利回り7%ぐらいのものがごろごろしていてどちらが得か、などと思わず悩める嬉しさすらあったものです。これが精神的にも健全な良いインフレです。

今、起きているのはどんなインフレでしょうか?9月26日に総務省が発表した8月のCPIから計算するインフレ率。昨年同月比で3.1%(コア)と出ました。上昇は15か月連続です。生鮮品を含む総合は3.3%上昇です。ところがこれに対応するはずの収入はどうでしょうか?今年初め、安倍首相は企業や経済団体に給与水準の引き上げを依頼し、ベア復活、ボーナスでの還元、あるいは非正規社員の正社員化を進めるなど様々な給与、人事対策が行われました。但し、大手の一部です。ほとんどの中小企業には「別の世界だから」と諦めムードすら漂っていたのではないでしょうか?

株価が上がったじゃないか、と言われても株をやっている人は大半が50代から上。経済の自転車を漕いでいる20代、30代の人々の生活がよくなったという話は一向に聞こえてきません。

物価だけが上昇し、今まで買えていたものが買えなくなる状況がスタグフレーションです。日本はジワリとですがその兆候が出てきています。

スタグフレーションになればどうなるのでしょうか?消費減退→企業業績不振→給与所得抑え人事政策も抑制的に→世の中に不景気の空気が蔓延→日本の将来を危惧→外国勢が日本への期待度を下げ、円安加速→輸入物価更なる上昇…。これは最悪のシナリオですが、こういうこともあり得るという事です。

1月から4月までの平均で見ると物価上昇率はアメリカ1.40%、カナダ1.46%、ドイツ1.36%に対して日本は2.80%と突出しています。長期のグラフを見ても日本の金融緩和政策による円安によるデフレからの脱却効果は効き過ぎになってきています。ところが黒田日銀総裁は今の円安水準に対して特段違和感を持っていないようです。(唯一為替の安定化についてはコメントしていますが。)通常、為替の変化による実際の市民生活への影響は半年以上のタイムラグがあります。理由はほとんどの企業は為替予約をかなり先まで行っているため、昨日、今日の為替の変化は直ちに影響が出ないのです。つまり、このところの円安の物価への影響は来年以降になるという事です。

また、日経新聞によると北海道、東北、北陸、四国など地方の物価上昇が酷く、経済の疲弊が進む可能性を示唆しています。安倍首相が地方創生の時代と言いながらこのままでは地方が先に追い込まれてしまう状況を作ってしまっているようにも見えます。地方都市の百貨店の売り上げは8月でマイナス1.9%と5か月連続減。車販売は東北、中国、四国地方は二桁減なのです。

訪日外国人は確かに前年比3割ぐらいの増加が見込めそうです。ですが、その観光訪問先は極めて限られています。外国人の個人旅行客が日本の隅々までやってくる時代にはまだ到達していません。また、日本も著名な観光地はともかく、それ以外のところは外国人を受け入れる土壌が十分にあるとも思えません。

ではどうすればよいのでしょうか?私は稼ぐ力を取り戻すしかないと考えています。それは国民が直接的に稼げる輸出出来る力。そして、その分野は農業とそれに関連する第六次産業なのかもしれません。

忘れかけていた国家戦略特区で最も注目されているのが兵庫県養父市。なぜでしょう。利害関係が少なく、やりやすいからなのです。考えてみてください。戦略特区の一つ東京。参加するのは23区のうち9つだけです。半分以上に当たる14区は参加を見送っているのです。こんな戦略はないでしょう。ところが養父だけは養父がやりたいと言っているところで動かしやすいともいえるのです。ここは農業を通じた構造変化、体質改善の実験場となります。これが失敗したら安倍首相の再選はないかもしれないぐらいの大きなハードルなのですがここは踏ん張っていただかないとTPP発効以降の道筋ができないのであります。

残念ながらインフレ率は今後、しばらくの間上昇を続けるはずです。4%近くになってもおかしくないでしょう。その時になって慌てても間に合いません。金融の量的緩和は「入りは簡単ですが、出は極めて難しい」のはアメリカが証明しました。つまりいくらインフレが突き進んでも止められない可能性を秘めています。ならばいまから稼ぐ方法を見つけないと我々がかつて享受した良いインフレは幻となってしまいかねません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

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ではまた明日。

外国での就職のハードル4

海外から羽田なり成田に着くと必ず思うことがあります。それは空港職員がやたらに多いこと。まず、飛行機を出たところに空港職員が最低でも5-6名。車いすの人が多い時は十数名がずらり。ついで荷物受取場も乗り換え先ごとに札を持って声を上げている職員から荷物担当の職員、税関も羽田なんて時間帯によってはほとんど飛行機が到着しないのに税関の端の方まで全レーンオープン。暇だろうな、と思います。

海外の空港は職員が少なく、用があれば窓口に自分から行くようになっています。カナダは在住者の場合、入国審査、税関申告が日本のように分かれていない上にパスポートや移民カードと税関申告書を機械に読み込ませればそれで終わり。読み取り機は30台ぐらいありますからまず混みません。

日本の家電量販店。平日はさすが店員も手持無沙汰ですから法被を着た人がやたらに目立ちます。冷やかしでも十分相手にしてくれます。一方でこれではネットビジネスに勝てないだろうな、という勝手な心配もしてしまいます。

ぱっと見ればこんなに人が必要なのか、と思われることもありますが、忙しい時は猫の手も借りたい状況となり、人が足りなくてサービスが十分でなければ苦情の嵐となるのが企業側は怖いのか、「すき家」の二の舞にはなりたくないのかもしれません。これは逆に職を探している人からすれば就職しやすいとも言えます。

他方、日本人が外国で仕事をゲットするのは特殊な技能を持っている場合は別としてハードルはかなり高くなります。理由は言語もありますが、それ以上に就職口が少なく、機会が限られるという事でしょうか?海外の大学を卒業しても日本のような新卒を採用してくれる仕組みがある企業はごくわずか。ではどうやって就職口を探すかといえば大学時代のアルバイトなどの伝手、卒業後のバイト時代を通じて正社員に採用してもらうなど一定の経験を経た上でようやくまともな仕事をゲットします。

結果として次々と転職しないと自分のキャリアアップにつながりません。給与も定昇があるわけではなくできる人には給与の上昇と仕事への責任の抱き合わせのオファーが来ます。キャリアアップを望まない場合、その会社のその職が無くなった時、自分の仕事もなくなるリスクを抱えるほか、クビになる(リストラされる)ケースも多々あります。

つまり、海外での就職は実に疲れるし、タフネスが要求されるのです。

海外で活躍する日本人の女性。二通りのケースがある気がします。一つは国際結婚後、子供も作らず夫婦ひたすら働き、共にキャリアアップを図るケース、もう一つが結婚後すぐに子供を作るケースなのですが、気になるのは子供をもうけた日本人の奥様が職場復帰しないことが割と多いのであります。

長年見てきたその心理の陰には国際結婚による「疲れ」を自分の子供と過ごすことで楽になろうとしている気がするのです。一方で私の会社にかつていたフィリピン人の女性。出産2週間ぐらい前まで普通に勤務し、出産後1か月ぐらいで職場復帰しています。彼女は二人子供ができましたが両ケースともそんな風にしてすぐに職場復帰しています。
子供はナニーに預けるか託児所に入れます。

多分、日本の常識では考えられないでしょう。子供をほかの人に抱っこされるのすら嫌がる人もいるぐらいですから。

「やっぱり働こうかな」と思う日本人が見つかる職は人の出入りが比較的多く「日本語の技量を要求される」飲食店などに限られてしまい、職の偏りが大きくなっています。男性の場合も意気揚々として移民して起業しても成功する確率は数%程度でしょうか?(何をもって成功というかといえば10年間自分の仕事だけで飯が食える最低限をクリアすることとしておきましょう。)起業で食べられない男性は結果としてアルバイトに精を出し、アルバイトがいつの間にか主たる収入源となってしまうのです。そんな人を何人も見てきて「例の仕事はどうしましたか?」と聞けば「残念ながら休業です」と寂しそうに答えるのです。

もちろん、起業して成功する確率は洋の東西を問わず、極めて低いのですが日本人の外国での起業した人の成功率は感覚的には日本国内の10分の1ぐらいまで下がる気がします。アメリカなどには日系人としてビジネスで成功し巨万の富を得た人も結構聞きますが、移民となると少ないでしょう。

今、仁川のアジア競技大会で日本人の大活躍ぶりが連日大きく報道されています。何十年ぶりの金といったものもあるようです。しかし、オリンピックとなると歯が立たなくなるのは単にレベルが上がるだけではなく、目線の違いがありそうです。日本人が白人慣れしていないような気もします。つまりメンタルな強さの欠如です。

一昔前、日本男子ゴルフ界は国内では連戦連勝でも海外に行くとからっきし勝てないと言われました。これもメンタルな面が弱すぎ、雰囲気に飲まれてしまうから、と解説されていました。その結果、多くのゴルフプロが「外国では飯が食えないから国内ツアーで稼ぐ」という情けない状況がありました。

私はカナダで面接をする際、志願者によく言うことあります。「このポジションに応募者は20名います。採用枠は1名です。つまり2番じゃダメなんです。一番以外は全員アウトなんですよ。でも日本で就職するなら同じ20倍でも10人採用のところ200人来ますから10番でもOKなのです。この違いは大きいですよね」と。

海外で仕事をゲットしてある程度稼いだり、ましてや成功者となるハードルは異様に高いというのは言語の問題ではなく、あらゆる仕組みそしてハングリーさを含めた精神力との戦いになるという事でしょうか?

それでも10年でも20年かけても構わないので日本人が少しでも海外で挑戦し、成功の栄冠を得られるようになることは老いゆく日本に於いて重要な若者の選択肢となるはずです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

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ではまた明日。

欧米のロシア経済制裁が招く弊害4

日本は9月24日、ロシアへの追加経済制裁を発表しました。内容はロシアの主要銀行5行の日本での証券発行を制限するというもの。5行とはズベルバンク(貯蓄銀行)、対外取引銀行、対外経済銀行、ガスプロム銀行、ロシア農業銀行であります。そう発表しながら菅義偉官房長官はロシア側の対応次第では、今回の措置を解除する意向も示しているようであり、腰砕けな制裁発表だったという事になります。(よく言えばロシアに配慮したですが、悪く言えば欧米と仲良しを維持しながらプーチン大統領を怒らせたくないという意志薄弱さともいえます。)

外務省の戦略としてはまずは11月の北京でのAPECで安倍首相とプーチン大統領の会談を行い、その際に日本での本格的首脳会談の方向性を決めていくのだろうと思います。ボイスオブロシアには日本での会談は来春かという記事が出ています。世界情勢が今のままならば私もその頃が妥当かと思います。

さて、私が気になっているのは欧米の経済制裁によりロシアの孤立化政策を図ったことでロシアと中国の親密具合を後押ししたという政策の後遺症を指摘したいと思います。

ロイターに興味深い記事があります。「ミスター元」と呼ばれる男、イーゴリマリチ氏はモスクワで人民元流通を推し進めているキーパーソンとされています。その彼が人民元流通を進めているようです。ロシアにおけるドルルーブル取引は8月に3670億ドル、これに対して人民元はわずか7億5000万ドル程度ですので数字からすれば無視できるレベルでありますが、今年に入って取引量は10倍に拡大し、今後もその急拡大が見込まれています。特にロシアと中国で交わされた長期ガス供給契約で中国元による決済の可能性も取りざたされており、両国間の通貨を通じた結びつきをタイトにしたという点では両国間に血液が流れ始めたということになります。

その上、欧州のロシアに対する制裁で多くのロシア企業がそのビジネスの矛先を中国などに向け始めているという事ですから貿易を通じた「筋肉」も作り上げられるという事になります。

これはグローバル社会の中、本来地球儀ベースでの自由貿易を推進すべき中で完全なる逆行、つまり、悪い意味のブロック経済を後押ししたという事になります。

もちろん、今後、欧米はロシアの「態度次第」で制裁は解除するなど緩和政策を進めるとは思いますが、独裁的であるプーチン氏のもとでのロシアでは当分顔が変わらないということに考慮足らずだったのではないかと思います。民主主義の国ならばトップは一定期間後に自動的に選挙を通じて国民に問わねばなりませんが、それが実質ないロシア、中国の場合、強い感情がしこりとして残してしまうことがあるのです。

つまり、欧米が「もう許してやる」と言ってもプーチン大統領は「ふざけるな。倍返しだ!」と考える可能性は大いにあるのです。

ウクライナ問題に地政学的にもっとも遠いアメリカがチャチャを入れてぐちゃぐちゃに掻き雑ぜた点については非常に懸念されるところであります。

ところで択捉島にロシアが新空港を建設しました。今後、ウラジオストックなどから直行便が出やすくなります。それまでは旧日本軍の空港を使っていたようですが、濃霧などで欠航が相次いだことも新空港建設を後押しした理由のようです。多分ですが、これをバネにロシアの択捉での活動は更に活発化すると思われ、この実効支配は「死んでも手放さない」と思われます。つまり、我々が生きているうちに何らかの解決がもたらされたとしても島に関してはベストケースでも2島返還しかありえないことが濃厚になった気がします。

実効支配とはプーチンの寝技抑え込みのようにも見えるのですが、立ち技主体の講道館柔道の日本と何やら微妙なコントラストという気もします。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

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ではまた明日。

どうする消費税10%? 4

非常にセンシティブな話題ですが、そろそろもう一度ゆっくり考える時期になったと思いますのでテーブルの上に載せたいと思います。皆さんも一緒に参加してみてください。

マスコミのトーンからすると消費税10%はすでに「ありき」という形に見えます。8%に上げる時のような攻防といった盛り上がりもなく、諦めの様にも見えます。政府の表向きの流れは「最終決定はまだ」という事になっていますが、実態は天変地異でもない限りほぼ間違いなく10%になるはずです。クビにならない官僚が作ったシナリオをクビになりやすい政治家がパフォーマンス的にボイスアウトする三文オペラのようなものなのでしょう。

ただ、経済の実態を見る限り私は心配になってきています。欧米の様に消費税10%が当たり前の国々と比べ日本の8%はまだ生ぬるいと言われてきました。私も当初はいけるかな、という期待がありました。しかし、8%への増税後、どうも街の雰囲気は変わった気がします。たまにしか来ないから感じる独特の嗅覚もあるのでしょう。

8%への消費税引き上げはアベノミクスへの期待と為替の円安、更に株価の回復で「安倍さんはやるねぇ」というイメージを植え付けた戦略勝ちでありました。つまり、目先の金融緩和という即効薬を利用し、この後も「矢」がどんどん飛んで日本は改革すると期待を膨らませさせたのであります。

もちろん私も岩盤規制を砕き、女性の社会進出を促し、地方を活性化し、国家戦略特区を作るという大方針は大いに賛成ですし、推進していただきたいのでありますが、国民がさらに2%の消費税引き上げに体力的について行けるのか不安なのです。

思い出していただきたいのですが、一年ぐらい前にデパートで高額商品が売れると明るい話題を提供していたその主役の消費者は高齢者でありました。つまり、資産ストックを持っている方がその資産インフレ(株や不動産でしょうか)で懐が温かくなり、一時的に消費が回復したように見えてしまいました。おまけに4月からの消費税引き上げもあり、統計的には極めて良好な消費とデフレからの脱却となりました。

化けの皮がはがれた4-6月期は単に反動の消費減のみならず、消費余力をもつ高齢者が「消費疲れ」を起こしている可能性もあります。これは重要なポイントだと思うのですが、高齢者は一時的なボーナス的収入に呼応して消費を増やしたが、長続きしなかったという事であれば今後、消費をリードするグループは不在となり、企業収益にも影響が出てきてしまいます。

安倍首相が今年初めにかなり力を入れていたベア復活等を通じた給与水準の引き上げ。これもひと段落し、給与所得者が所得増の恩恵を消費に振り向ける状況にはありません。むしろ円安による物価上昇で食われた感があります。

このところ、慎重に考えてきたのですが、消費税10%引き上げは日本経済にかなりダメージがあるとみています。それは今後相続税の控除枠の引き上げ、マイナンバー制度などでとにかく税務当局が年貢の回収にいそしむことで単に消費税だけでなく個人からの税徴収が重すぎる負担になりかねないのです。

法人税は引き下げ方針ですが、企業が儲かった場合、その配当金は株主に流れます。その株主は日本企業や日本人でしょうか?過半は外国であります。つまり、法人税引き下げ→配当の改善→儲けの外国への流出という流れが生じます。これでは誰の為に法人税を引き下げ、誰の為に消費税を引き上げるのでしょうか?明らかに外国に良い顔をし、国民への負担を増加させるピクチャーにも見えます。

私は日本の企業は甘やかされていると思っています。社会への一定の還元も少ない気がしています。例えば不動産開発会社はマンションを建築すれば地域への人口増を招きます。それに対する企業の負担がなさすぎます。例えば子供が増えるから学校建設費、一人当たりの緑地が不足するから公園建設負担金、老人も増えるから公民館やコミュニティセンターの建設負担金などなどを役所が企業に許認可の代償として払わせるべきです。つまり、従来国が負担してきた費用を企業に肩代わりさせ、膨れ上がる歳出を抑える努力の仕方もあるでしょう。

あるいは以前、このブログでも書きましたがアメリカやカナダの税務当局はペナルティに対する罰金は時として企業の屋台骨を揺るがすほどでありますが、その姿勢は稼ぐ当局のスタンスであります。

こう考えれば一番弱い国民からいつも搾取する役所ではなく役所が自分で稼ぐ制度を作り上げるべきであります。この辺の発想の転換を通じて「国民の負担、政府の義務を双方で分かち合う関係」に変えるスタンスに立ったらどうでしょうか?

私は東京に来て繁華街の空気が明らかに空虚な気がしてなりません。取り越し苦労なのでしょうか?

ご意見お待ちしております。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

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ではまた明日。

アメリカの金利は本当に上がるのだろうか?4

最近の金融関係の話題は「アメリカの金利はいつ上がるか」に尽きると思います。様々な話題、ニュースはありますが、これほど息の長いまるでヒットチャートの一位を独走しているような話はあまりないでしょう。

一般的には10月のFOMCで金融の量的緩和の終了が決定され、いよいよ「特別な事態」からは一足先に離脱します。そして次の話題は政策金利が上昇し始めるのはいつか、という読み合いであり、今のところ、2015年半ばとの予想が一番多いはずです。予想屋は日々の関係者や重鎮の発言などをベースにやや早まる、いや先送りされると騒ぐわけです。

そのタイミングを決める主たるエレメントは労働市場の回復とインフレ率の回復であります。労働市場については失業率がよく取りざたされます。バーナンキ元議長の時には一つの指標として確かに6.5%という目標設定されていました。しかし、イエレン議長は労働関係の専門家でもあり、労働の質について重視しています。労働参加率、時給や賃金の変化、アルバイトとフルタイムの比率など様々な「質」をチェックする指標があり、U6という指標も重んじているとされています。我々がふだん目にする失業率はU3指標ですが、イエレン議長は職探しをあきらめた人、家事育児で働けない人、やむを得ずパートタイムに甘んじている人を含めた厳しい方の指標をベースにしているとされます。ちなみにアメリカのU6失業率は8月末で12%ですからこれを見ればアメリカが十分な労働市場の回復をしているとは思えないでしょう。

それ以上に厳しいのがインフレ率かもしれません。アメリカのインフレ目標の2%に対してすぐに到達できる目途がないという事であります。

アメリカの超長期インフレ率の推移をみるとアメリカが経済的に世界の覇者となる両大戦間経済と称される1913年ごろから30年代大不況を経て、大戦後の高度成長期に突入、80年ごろまではいわゆる経済成長と歯車がかみ合い、高いインフレを示していました。ところが82年に一気に4%とインフレ率が下落した後は年により、多少の上下をしながらも確実に下落の一途を辿っています。特に最近では月ベースでは12年4月に一度2%を超えたきりであとは到達していません。

これをどう説明するか、いろいろアプローチはあるかと思います。流動性の罠もあるでしょう。成熟経済という説明の仕方もあるでしょう。土地バブルが終わり住宅取得に伴う住宅ローンに厳しいルールが設定され、土地バブルが起きにくいという事もあるでしょう。(私は以前から指摘しているように土地バブルの崩壊からの新たなる土地バブルを作るには世代間をまたがらなければ無理と考えています。)アメリカが今よく見えるのは「自動車販売の経済」であってほぼサブプライム的な自動車ローンをつけ、自動車購入者は嬉しくて車で出かけ、消費をするという経済かもしれません。(ちなみに1920年代にGMがフォードを凌駕した理由の一つにGMがGMACという金融会社を作ったことから自動車販売が急増したことが一因とされています。)

仮に健全なインフレ率とされる2%を超える状態になればアメリカが政策金利を引き上げる十分な理由になるということは大いにあり得るかもしれません。つまり、今の経済予想屋は楽観的過ぎるのかもしれません。

これはイエレン議長も今は何らそのヒントを示さないように誰もまだ分からないのでしょう。それを市場の予想屋が勝手にアメリカの景気回復のシナリオを想定しああでもない、こうでもないと議論しているようなものです。考え方を変えればなかなか、道のりは長いな、という事に気がつくかもしれません。自動車販売のバブルがいつ弾けるかもしれません。そうなればこの影響も大きいでしょう。グローバル化の中で欧州と日本がまだ治療中の中、「お先に」と言えるのか、そのあたりのバランスもあるでしょう。

アメリカの金利は本当に上がるのだろうか、という議論はまだ当分は続きそうです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

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ではまた明日。

新聞社は生き残れるのか?4

朝日新聞に対して国民の厳しい審判が下されたばかりでありますが、同紙に限らず、新聞社が今後も生き残れるかどうか、根底から揺るがされるその立場について考えてみたいと思います。

ヤフーなどインターネットに掲載されるニュース記事は一昔前は配信元が新聞社やメディア媒体主体であったのですが、最近、個人が増えてきています。そしてその個人もその道のプロだったり専門家としての経験からブログなどを通じて投稿されている場合も多く、内容がしっかりしているものが充実してきています。あるいは、新聞では読めない裏情報や詳細のストーリーに出くわすこともしばしばであります。

インターネットのニュース欄は特によく読まれる記事がアップされやすくなっているため、良い記事を書ける専門家はますます読まれるようになる好循環に入っています。一方、新聞社発の情報は徐々に減っている傾向にありますが、それは記事が汎用的で深みが足りないこともあるかと思います。天気のニュースでもスポーツ解説でも経済でも政治でも「もう一歩深読み」したい願望はあるものです。また、営利の新聞は記事の全部を見せないという事もあるのでしょう。

私は時差の関係で日本の早朝と昼のワイドショーをインターネットテレビで割とチェックしていますが、(バンクーバーの昼と夜にあたります。)昼のワイドショーは専門家を入れてトピックスをかなり深堀しています。そして池上彰氏の影響もあるのでしょうが、「わかりやすい」解説が主体となっており、恥ずかしくてこんなこと聞けなかったということも「なるほど」と分かるようになっています。

印刷された新聞はそこにしかないニュースの深さがあったのですが、電波メディアが速報の優位性を利用し、どんどん新しい情報を流すことで新聞は劣勢に立たされていると言ってもよいでしょう。台風情報やスポーツはやはり最新の情報が知りたいものです。それは新聞社がいくら印刷と配達の効率化を進めても絶対に勝てないのであります。

ではそれでも新聞の優位性は何かといえば実によくオーガナイズされた紙面構成で全てのことを「ざっと」網羅するには最適であるという事です。この「ざっと」という言葉に違和感を感じられる方も多いと思います。一昔前は新聞の社説を読めとか、日経を読んで就職試験を突破しよう、と言われていたわけですからそれは「熟読」の原点であったはずです。それが「ざっと」に変わったのはグローバル化でニュース量が膨大に増えているはずなのに紙面のページの都合で記事分配量を増やせないため、記事の肉厚が薄くなったこともあるでしょう。更には一部新聞社のフォントの大きさは「老眼鏡なしでも読める」やさしさがある反面、字数が減っているのです。

つまり、人々が「深堀」を求めているのに対して新聞社はどんどん「浅堀」になっているところにギャップがある気がしています。

新聞社の記者には数限りがあります。編集方針もあるし、文章校正もしなくてはいけません。つまり、高度のフィルターが何重にもかかった純度の高い「エキス」である反面、面白みに欠けることを招いているのかもしれません。

日経新聞が生き残れるのは高い専門性と競合新聞がないことにあります。では一般紙も特徴をもっと前面に出してみたらどうでしょう。いわゆる右寄り、左寄りというポジションではなく、政治記事なら当紙にとか、社会面の充実度は日本一とか、主婦のための新聞とか、いわゆるテイストを出してみたらどうでしょうか?

広く浅く、国民誰でもターゲットというマーケティングの時代は終わりました。切り捨てる部分、絶対死守の部分を持つ勇気も大事だと思います。

新聞社が生き残れるのか、あるいはその生き方がどう変わるのか、まずは朝日新聞の編集がどう変革するのか、ここに注目していきたいと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

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ではまた明日。
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