外から見る日本、見られる日本人

バンクーバーの日本人社長ヒロが仕事、生活を通じて感じた経済、経営、社会、日本人観などを綴っています。

2016年04月

どこまでやる、日銀の緩和政策4

市場にサプライズ感が再び漂ってきました。東京の金曜日午後に流れ出した「日銀、金融機関への貸し出しにもマイナス金利を適用か」の噂。これを受けてメガバンクなどの株が急騰し、日経平均は200円上げ4日続伸となりました。更に為替市場では金曜日午後3時のニューヨーク市場で既に111円台後半まで急落しています。

日銀は27日、28日と定例の政策会合を開きますが、何らかのプランが出そうだというコンセンサスが高まっています。好き嫌いを別にして私もかなりの確率で何らかの緩和策を提示する可能性があるとみています。

理由は107円台まで進んだ円高に一定の歯止めをかけたいという政府と日銀の思惑、また、熊本の地震で一定の対策の姿勢を見せる必要があるからであります。

では、今回浮上した金融機関への貸し出しにマイナス金利の検討ですが、確かにサプライズそのものであります。一つの見方として金融機関から非常に悪評であるマイナス金利による経営への影響に対して一定のボーナスを差し上げる、という発想が無きにしも非ず、という気がいたします。

これがよい話か、悪い話かという点については議論を呼ぶところだと思います。私は昨今の日銀のスタンスについては懐疑派であり、本件についても例えばみずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストが「補助金が出ると分かってしまえば、貸出金利自体がその分下がるので、結果的に銀行の収益基盤が痛むという流れは変わらない」と指摘。経済、物価に与える影響は「あまり大した効果はない。需要の問題であり、補助金をつけて金利を下げさせれば何とかなるというのは、発想として無理がある」(ブルームバーグ)という意見に賛同します。

日銀政策も悪循環に入ってしまっており、市場から常に催促が起きている状態ともいえます。放置すれば乞食が食べ物を乞うのと同じで永遠に満腹感がない状態が続かないとも限りません。

経済にはある程度の自立機能が本来あり、一定程度弱くなれば再び回復するのがあるべき姿であります。が、日本の場合、大きなピクチャーで見れば1990年のバブル崩壊でかつての高度成長時代が終焉し、成熟国として低いインフレ率と低い成長率、それに伴い金利も低くなるという三点セットの状態が流れとしては継続しているのではないでしょうか?

それから既に25年もたっており、世代交代が進んだことで人々のマインドに「これが当たり前の姿」となってしまった感がいたします。だからこそ、モノは「安ければ安いほど良い」というデフレ思想もごく普通に身についたわけで日本の経済とは機能面よりもメンタル面での変化の方が大きいのでしょう。

さて、株価を見るとこれも悪い癖なのですが、一方的な上げ相場になっています。物色される銘柄も週の初めのバイオから様々な銘柄、業種に広がり、東証一部上場銘柄も金融、不動産などが強く買われています。この手の相場付きは経験則からすると日銀の政策発表のある28日の昼過ぎに最後のピークを付けておしまい、というパタンにならないとは限りません。日銀の知恵を絞った政策が市場の期待を越えていない限り28日の前場までの「噂で買って事実で売る」という状況には気を付けた方がよい気がします。

ただ、株価についてはNYが堅調さを維持しており、アメリカの政策はドル安に伴う株高の演出に見え、S&P500、ダウ、ナスダックともに史上最高値が手に届く圏内にあります。よって日本株も基本的には大きく売られる状況にはないと考えております。

来週は早、4月最終週でゴールデンウィークに突入します。どんなサプライズが出てくるのか、人々は黒田総裁のドヤ顔を期待するのでしょうか?

では今日はこのぐらいで。

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また明日お会いしましょう。

残念無念、三菱自動車4

三菱自動車の燃費試験データ改ざん問題に接した時、開いた口がふさがりませんでした。ちなみに私は同社の株主でもないし、同社の自動車を現在持っているわけでもありません。(アウトランダーをレンタカーで持っていましたが先月、手放しました。)ただ、昔、自家用でギャランやミラージュに乗っていたこともあり、自動車メーカーとして嫌いではありませんでした。

なぜ、愕然としたか、それは改ざんという不正が再び大企業で起きてしまったことでニッポン株式会社への信任が下がるということに他なりません。折しも同様の問題で世界を騒がせたフォルクスワーゲンはアメリカで販売した対象車57万台をVWが買い取ることで当局と決着したようです。同社の負った傷も深く、まずはアメリカに想定以上の対応をすることで問題解決を探る苦しさが見て取れます。

VW社は内部留保も含め財務はそれなりの状態にあるとされていながらも銀行からの借り入れを急遽アレンジするなど見えない先にとりあえずの手当てをすぐに行った経緯があります。

三菱自動車の場合、15年末で4500億円の現預金があるので前回の不正時(2001年3月期)の224億円に比べれば遥かに財務的には安定しているというコメントが出ていますが、そんなのんきな話なのだろうか、と危惧しています。

同社の場合、販売車種を絞り込んできた経緯があるため、ディーラーに行ってもピンポイントで欲しいという車がない限りなかなか選択肢に入りません。アウトランダーは良い車だと思いますが、他はどうでしょうか?カナダでは軽自動車はもちろん売っていませんので先日も三菱の販売店で一通り見て歩いたのですが、(レンタカー用途をふくめて)何も欲しい車がありませんでした。

そんな中、起きた今回の事件。そして最新の情報によればi-MiEVもその疑いがかかり、それと同じ計測方法のアウトランダーやRVR等4車種も芋づる式に引っかかる可能性があると報じられています。

このニュースはまだ当地では出回っていませんが、すぐに広まることでしょう。同社は海外での販売が会社を支えているようなものですが、同様の問題を起こした現代自動車はクルマが売れまくっていたアメリカでぽつんと放置されたような販売状況であったことを考え合わせれば影響は相当深刻になりそうです。

感覚的には東芝の時よりも経営に影響する度合いははるかに重く、存続が危ぶまれる可能性もあるかと思います。いや、実際に同社は身売りをすることで負のイメージを払しょくする必要すらあるのかもしれませんが、同社を積極的に買収したいと感じる企業があるかどうか、そこが最大のチャレンジである気がします。

ではなぜこんな事件が起きたのでしょうか?想像ですが、激しい燃費競争の中で数字を上げなければいけないというプレッシャーが不正行為に走らせたという点では異論がないと思います。(東芝の時も原点は同じです。それが経営者だったのか担当部長だったのかの違いです。)

東芝の時と似た体質だと思われる点は不正を知っていたであろう部署なり担当者が皆口裏を合わせた点ではないでしょうか?「責任は俺が取るからやれ!」ぐらいの勢いだったのでしょうか?「それならばしょうがない」と部下が従ったとしたらこれはニッポン株式会社の恥部とも言えます。私の認識する限り日本のサラリーマンは責任という言葉が一番苦手であります。一般には「これで会社を首になりたくない」という保身の意識が踏み出せない、あるいは踏み込めない弱点を持つのが日本の特徴です。一方でアウトロー的な行為に対して「ばれなければ大丈夫」という安易な賭けに出る傾向があるのも事実です。今回はそちらの方でしょう。同様の問題は東洋ゴムの時もありました。

今回の問題はまだ踏み込み始めたばかりでどこまで根が深いのか全く想像できません。が、同社に於いては三度目の不正ですのでいくらグループ会社の三菱東京UFJもおいそれと資金提供できないでしょう。(そんなことすれば銀行株主からの突き上げが必ずあります。)タカタの問題もまだ落ち着いておらず、同社の行方も不明瞭な中、完成車メーカーの今回の問題は明らかに日本の自動車メーカーに影を落とすことになるでしょう。

技術や売れ行きに任せて強気になりすぎると思わぬ落とし穴が待っているということであります。

私は心の底から今回の問題を憂えています。

では今日はこのぐらいで。

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また明日お会いしましょう。

永住権緩和で人は本当に来るのか?4

4月16日の日経トップは熊本の地震を抑えて「永住権緩和で人材誘致」となっています。また、安倍首相は19日の産業競争力会議で「永住権取得までの在留期間を世界最短とする」と表明しました。
意気込みには敬意を表します。

政府の本当の意図とそれに対する可能性について考えてみたいと思います。

日本は世界でも有数の永住権が取りやすい国の一つです。日本国籍は取りにくいのですが、永住権は好対照にあると言えるでしょう。ちなみに永住権と国籍の違いは一般に参政権のあるなしの違いのみです。よって、外国人へ門戸を開くことに抵抗がある日本にとってある程度しっかりしたバックグランドを持つ参政権のない永住者はウェルカムだということでしょう。

ほぼ同じコンセプトを持つのがカナダであります。世界で二番目の国土を持つカナダも人口はわずか3500万人。よって、政策的に年間20万人以上の移民を受け入れ続けています。これは人口比で0.5%程度になりますので日本に当てはめると60万人も受け入れているのと同じ計算になります。

人口増は消費増となり、経済は当然活性化します。バンクーバーやトロントの住宅ブームの一因は高い能力を持った移民受け入れに伴う住宅需要や消費需要、更には投資も引き起こす好循環でありましょう。

日本の移民規制の緩和は数年前から言われていましたが、首相がこの期に至ってあえて強調し始めたのは今の訪日外国人ブームが一時的に終わることなく、次にバトンを繋いでいくという発想に他ならないと思います。観光などで来て日本の良さを感じてもらったら次は日本に住んで働いてみませんか、ということかと思います。特に安倍首相は人工知能やロボットなどの第4次産業革命を睨み、IT関連のプロフェッショナルを招きたい、としています。

発想は分かります。が、成功はしないと思います。

永住するかどうか、それを決めるのはあまりにも多くのファクターがあります。社会が移民を受け入れているのか、税制などにメリットがあるのか、住環境が優れているのか、子供の教育に適しているのか、などなど多くの判断材料があります。特に永住に対してはファミリーの場合、奥様の意向が出やすく、その場合、当然、子供たちのことを第一義にするケースが多いように感じます。

私もカナダへの移民権所有者であり、周りにいる仲間たちと20年もそんな会話をしていますのでこの点については間違いはないと確信しています。

安倍首相のプランが魅力的ではないのは日本政府の勝手な都合だということです。つまり、日本に住みたいと思わせる魅力づくりが十分ではないのに第4次産業革命を推進する為に優秀な外国人を移民権で釣り上げろ、というようなものであります。優秀な人材であればあるほど今は世界中を転々としています。何カ国も渡り住み、そこでフレッシュな刺激を受けながら創造力と経験でモノを作り上げていきます。

私が若くてIT関連の仕事をしているなら、サンフランシスコにも住みたいし、インドの実態も知りたい、そのためにはシンガポールがちょうど真ん中で居心地がよいと思うかもしれません。今はPT(パーマネントトラベラー)と称する人々がごく普通にいて、自分の好きなところで好きな仕事をするスタイルが最先端な発想であります。ならば日本にわざわざ永住権を取る必要がどこにあるのか、分かりません。

「高度専門職」と称する在留資格を3年程度保持した上で移民権を申請すれば提供しますよ、というのが今回の趣旨であります。日経新聞によると15年4月にできたこの制度で15年末までに1508名が高度専門職の在留資格を取得、うち、中国人が64%とのことであります。ここから移民権まで申請する人が何%いるでしょうか?こう考えれば政府が目論むであろう人口減対策として良質な外国人居住者の増加による経済規模を維持するプランは机上のものとなりそうです。

私がカナダで移民としてエンジョイできる理由は何でしょうか?まず、国民が移民権者を差別扱いしません。移民権者にも同等の可能性があるともいえます。次に人々がギスギスしておらず、優しいし親切です。困っている人を助けるという精神も立派ですし、新しい人と出会えば割とすぐに心を開いてくれたりします。子供たちの教育に於いても英語が母国語ではない人の為のプログラムも充実しています。そして最後に環境がよい点を上げておきます。夏のバンクーバーに一度でも来たら誰でも虜になるのはまるでリゾートの中で仕事をしているようなものだからでしょう。

それに対して日本はどうでしょうか?通勤からしてストレスフルです。業務時間は長く、仕事仲間は保身的でオープンな感じがしないところも多いでしょう。ファミリーで移住した方の場合、奥様や子供が都会の中で楽しく過ごせるかといえば疑問符がつきます。日本在住の外国人の奥さんが他の外国人の方たちとつるみやすいのは言葉のハンディもありますが価値観の多様性に日本の社会が適応していないからではないでしょうか?

移民申請者は日本が魅力的であれば勝手に増えていきます。緩和したから移民が増えるという短絡的なものではないでしょう。私は口が酸っぱくなるほど言っていますが、日本の国際化をもっと進めないと日本は本当に埋没してしまいます。国際化とは日本人が日本を知ったうえで外国人ときちんとコミュニケーションを行い、相手と通じ合うことが出来るという意味です。これが出来ないと政府が望むタイプの移民は日本に来ません。

日本が良い国というのはよくわかります。が、時として相手を否定してまで日本が一番だと押し付けるような声も耳にします。日本とカナダを行ったり来たりしている私にとってこのあたりの温度差は何年たっても変らない気がします。

では今日はこのぐらいで。

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また明日お会いしましょう。

TPPでアメリカに振り回されるべきではない4

昨年盛り上がったTPP。国内では賛成派と反対派がぶつかる中、自民党は農業関係のリフォーメーションに尽力しました。その努力の甲斐もあってか15年10月に12カ国が合意し、各国が批准する為の作業に入っているところであります。批准するためには2年という時間的枠組みとアメリカと日本が加わらないと発効しないという条件を乗り越えていかねばなりません。

さて、案外すんなり行くだろうと思われた日本のTPPの批准はしょっぱなから結構な苦戦を強いられており、審議は秋の国会に先送りされるようです。今国会は6月1日までで夏の選挙が予定されていることから国会の延長はなく震災関係でも時間が割かれています。更にゴールデンウィークもあることから実質1か月しかないのにこれだけの重要審議を時間枠で決定するのは無理があります。

内閣が批准を急ぐ理由はアメリカが何を言ってくるか分からない、という点でありましょう。ご承知の通り、アメリカの次期大統領候補は全員TPP反対であります。クリントン氏はもともと推進派でしたが今は方針を変えています。一旦NOといった以上、何かアメリカにとって好条件を引き出さない限り公約違反となりますからクリントン氏と言えどもそのポジションを変えるのは難しいでしょう。トランプ氏に至ってはdisaster(大惨事)であるとしています。

が、大統領選挙は11月、そして就任は来年早々ですから秋の国会までにアメリカが何か言ってくる可能性は低いでしょう。あえて言うならオバマ大統領がレガシーとするために大統領選終了後、新大統領就任までの間を突いてサプライズで批准させるというトンデモ案もなくはないですが、現実的ではない気がします。

ところで日本はTPPで最もメリットがある国とされてます。そして、農林部会長の小泉進次郎議員は農業分野こそ日本でもっとも潜在成長力が高いエリアと述べています。これは私も同意します。農業は一般に第1次産業にカテゴライズされますが、加工すれば第2次産業になり、更にレストランなどは第3次産業になります。この1,2,3を足した第6次産業とは第一次産業従事者が加工を含めた付加価値を乗せる新たなる産業とされます。

栃木県は福岡県と並びイチゴ県でありますが、今、このイチゴツアーなるものが若い女性の間で大人気であります。日帰りバスツアーでイチゴ園でイチゴを食べ放題、イチゴ園にはイチゴのスイーツが土産物品として並び、客が行列をなして買って行きます。これなどはかつてない付加価値のつけ方で、農作物を作物として卸すより大幅な利益が出ているはずです。一方、福岡の雄、あまおうは輸出が伸び、5年で1.6倍になっています。

つまり、TPPで最もデメリットが大きいと言われた農業そのものが変革しつつある中でTPPが腰折れすることは日本にとり非常につまらない結果となります。

ところでEUはなぜできたかといえばアメリカに対抗するためでした。最近のアメリカをみていると我儘の度合いがより一層ひどくなってきた気がします。私は数年前のこのブログで世界はブロック経済化するかもしれないと申し上げたことがあります。かつてのネガティブな意味よりもっと域内経済を通じた規模を追求するというものであります。北米には既にNAFTAがあり、非常に上手くワークしています。が、アジアにはまだそのような大枠が存在しません。それは日本と中国の力の関係が一つは大きく影響しているのでしょう。

日本はそろそろ独立国として立ち上がらねばなりません。その中でアメリカに振り回されるTPPではなく、アメリカ抜きのTPPをバックアップとして準備するリーダーとならねばなりません。TPPの12カ国が11カ国になっても台湾、韓国など加入したがる国や地域は多くあります。これがワークすれば正にアジア経済圏の第一歩になるともいえます。将来、アメリカが入りたいといえば「条件を飲むなら入れてやる」ぐらいのスタンスに切り替えるべきでしょう。

私が大学生の時から接し続けているアメリカを見る限り、今のアメリカはかつての精神的繁栄からは遠く、自分たちの進むべく道がどうあるべきか大変革を遂げている最中にある気がします。このような時期には政策が安定せず、右へ左へぶれやすくなります。なぜこうなったか、といえば大規模な世代交代が進んでいるからでありましょう。つまり、アメリカを支える今のヤングアクティブ層(20-30代)がかつての歴史的苦労を体感的に持たないためであります。(これはアメリカに限ったことではありませんが。)

TPPそのものが最も必要なのはアジアであります。ならば、今の日本に必要なのは明白なるリーダーシップであり、東南アジアを中心にうまく取りまとめる能力ではないでしょうか?そんな中で西川文書なるものが理由で国会が空転するというのはTPP特別委員会、委員長である西川氏の資質そのものが疑われてしまいます。小銭を稼ぎたくて本を出版しようとしたのなら言語道断。委員長は降りるべきでしょう。

TPPは日本が成長する為のエキスが含まれています。これを潰すようなことがあってはならず、甘利さんの苦労を無駄にしないようにすべきでしょう。

では今日はこのぐらいで。

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ではまた明日。

世界経済は本当に不安を抱えているのか?4

メディアには世界経済の不安を煽る記事が踊っています。「リスクオフ」という言葉が一般人に浸透しつつありますが、このリスクとは機関車「世界経済号」であり、このまま乗っていると脱線するかもしれないから駅で降りる、という意味であります。

悲観論者、ニューヨーク大学のノリエリ ルービニ氏は7つのリスクとして、中国経済、新興市場、米国、中東情勢、原油価格、銀行、欧州危機を上げています。なるほど、どれも不安だ、と思えば不安ですが、人間の英知をもって乗り越えられないのか、といえばそんなこともない気がしないでしょうか?

2008年に襲ったリーマンショック。あれは「信用創造の歪み」がひと時に表面化し、短期間にその対応を迫られた点で実に厳しい経済試練だった思います。が、今思い返せば一気に膿を出し切り、失敗したところはやり直しのチャンスを貰えたからこそ、アメリカは復活しました。日本もバブル崩壊に於いては同程度のショックでありました。が、政府も企業も小手先のパッチワークを繰り返したことで10年以上に渡りその影響が残ったのです。往生際が悪かった、ともいえます。

リーマンショック程の波乱が起きれば来年の消費税引き上げを再延期する理由になるので日本のメディアはむしろ不安を煽るかもしれません。一週間ほど前の日経のトップには「もたつく景気、内憂外患、消費息切れ、中国調整なお」というタイトルが躍っています。一般に日本人は悲観論が大好きでアメリカの「ポジティブシンキング」を主張すると「アホかいな」と言われるのがオチとなっております。

私は世界経済の不安とは何をもって尺度とするのか、その原点に立ち返るべきではないかと思います。今や新興国の大都市にも高層ビルが林立し、これが新興国なのか、と思わせるほど活況であったりします。その中で経済成長率でかつての高い数字が維持できず、不安を増幅させています。ルービニ教授の7つの不安の通りですが、この不安のいくつかはあと1年ぐらいで解消するとみています。理由はドル安です。これにより原油価格も資源価格もある程度回復し、新興国の為替レートは改善するでしょう。それに伴い新興国経済も回復貴するとみています。要は経済循環の波の中で2015年がボトムで今、改善の方向に向かっていると考えた方が私にはすっきりします。

世界経済のシステムは何度か起きた経済危機を通じて学んでいます。その為、耐えうる力が出来ています。例えば1997年に今の状況が起きていたらアジア危機になっていたでしょう。2010年頃の欧州危機もギリシャ問題を通じて学んだものがあり、システムが強化されています。例えて言うなら皆さんが使っているパソコンのウィルスソフトと同じでどんどん進化しています。一方、敵も負けていません。例えばマイナス金利の功罪についてはいまだに結論が出ていません。が、今のところ、私が感じる限り、マイナス金利はマイナス効果の方が大きい気がします。それは銀行経営をかなり厳しくすることになり、経済の血液であるマネーのクオリティに悪玉菌が入り込みやすくなるから、と考えています。

ルービニ教授の不安材料の一つ、「米国」ですが、私には不安というよりアメリカが変わったことを素直に受け止めるべきだと思っています。あの国はかつてのアメリカではなく、新たなる民主主義、それはどちらかというと世界の圧倒的傾向である中道左派に寄ってきています。このところサンダース候補がクリントン候補を圧倒していますが、これは人々がより左に共感を持ち始めた起こりうるベクトルではないでしょうか?

「世界経済の不安」とは我々が知っているかつての尺度をもとに良い、悪いを測ろうとしています。私が2%のインフレ率って何処から出てきたのだろう、と率直な疑問があるのもここに原点があります。経済成長の仕方にはいろいろあります。GDPの尺度で「大きくなることはいいことだ」という発想もあるでしょう。一方でパナソニックやトヨタがむやみな売り上げ追及をせず、品質や利益率を重視する経営をしています。となれば、日本の経済成長は高齢化が進む社会に於いて国民がより幸福にそしてクオリティオブライフを高めていくこともありではないでしょうか?

最近の社会問題の数々をみていると我々のライフそのものが世界経済よりももっと歪んている気がしませんか?

では今日はこのぐらいで。

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また明日お会いしましょう。

日銀の金融政策は本当に為替に影響したのか?4

2012年に80円台だったドル円相場はある時を境に急に円安に転換し、15年6月には125円台をつける円安を演じました。この間、一般に言われるのは日銀の13年4月の「異次元の緩和」や14年10月の「サプライズ緩和」効果であります。日銀の役目はインフレ率や労働市場であって為替は財務省の仕事とされますが、一般には中央銀行の政策が為替に影響しやすいと考えられます。

では、この日銀の緩和効果が本当に円安に導くものであったのか、もう一度考えてみたいと思います。

まず、ドル円の長期チャートを見ると77円台をつけた円高修正の動きが出始めたのは12年9月であります。ここから円は一気に安くなり始めます。その第一弾の動きが一旦収束するのが13年5月で102円台をつけた時点でした。

その頃からドル円相場は一進一退を繰り返します。踊り場相場ともいえました。94円から104円程度の比較的狭いレンジ相場が14年7月まで1年2か月続きます。

それから円安第2波が始まり、15年6月までの約11か月間に125円台まで動きます。この後再び狭い動きとなり12月から本格的な円高へ舵を切っています。

こう見ると13年4月の異次元緩和も14年10月のサプライズ緩和もドル円の大きな波動の真っただ中でそれらの緩和が発表されたことでうまくその流れを押し出す効果があったと言えます。

ではドルユーロをみるとどうでしょうか?ユーロは12年7月を境にユーロ高に転換し14年4月頃までその傾向が続きます。そしてそこから一気にユーロ安へと転換し、15年3月まで続きます。現在はそこからレンジ内の動きとなっており、ユーロドルは比較的安定していますが、ユーロ高のレンジ一杯まで来ていますのでいつこの攻防がブレイクしてもおかしくない状況にあると言えます。

とすれば、まず、円安の第1波である12年9月から13年5月とは何だったのか、でありますが、政権交代期待とその期待通りのスタートを切ったことで行き過ぎた円高修正が行われたと見た方がよさそうです。つまり、日銀の金融緩和に効果はなかったかといえば95円程度から104円ぐらいまで動かす補助を行った形となっていますが、先述の通り、異次元の緩和から1か月後には円高の動きはいったん止まってしまうのです。

では14年10月のサプライズ緩和の場合はどうか、といえば確かに窓開けを伴い5円ほど円安となり、その後も円安が続きますが、この時期はユーロと同様、ドル高と世界通貨安問題があった時期であり、円安に対して更なる強い後押しをしたものの大枠の流れの中での話でありました。つまり、日銀の金融政策そのものが強力な為替への影響は及ぼしたとはいえないのであります。黒田総裁は非常に自信ありげに会見をしておりますが、それは為替の大きな流れの中で「順張り」したのと同じ効果でしかありません。

私が今日、このトピックスを上げた理由はアメリカのルー財務長官が15日に発言した「市場の動きは秩序的」とする意味と今後の動きにどう影響するのか、気になるからであります。

私はドル高が明白になり、ユーロや円安の引き金となった14年の水準が当面の為替水準の一つの目安ではないかと感じています。つまり、ざっくりですが、100円が一つの目安になりそうな気がしております。ルー長官の趣旨はドル安で世界経済をある程度引き上げる効果は十分にあり、世界景気の不安定さからの脱却を図り、且つ、アメリカ国内の活力をさらに高めると言っていることに他なりません。

例えばドル安になれば原油は高くなりますから死にかけているアメリカシェールオイル業界も息を吹き返すきっかけを作ることになるでしょう。つまり、アメリカは政策的に「これは非常に良い動きだ、日本には多少、為替で苦労させるが過去約2年間の為替はボーナスだったと思い、我慢しろ」ということで間違いないと判断しています。

しかし、私にはもう一歩踏み込んだ何かがある気がしてなりません。それはアメリカと日本の外交を考えるにあたり、かつての蜜月関係からやや距離が出ることを暗示しているようにも思えます。アメリカの次期大統領が現候補者の中の誰になろうとも日本には厳しい姿勢が待ち構えているとみています。日本を利するTPPなど言い出す隙間すらありません。もう一つ、アメリカは日ロ関係に釘をさしているのかもしれません。仮に日本がロシアと経済を含めたディールをするならば日本をひねりつぶすと。残念ながらアメリカとはそういう醜い側面を持っています。それ故日本の政府高官は誰もアメリカには逆らえないようになっているのです。

為替100円時代はかなり高い確率で起こりうる事態かと思います。これに日本企業は早く気づき、対策を打たないと再び政府に対する怨嗟の声がこだまするようになるでしょう。折しも1-3月の決算が間もなく発表されます。円高局面に突入してからはじめての四半期決算となります。要注目ではないでしょうか?

再三繰り返しますが、為替は日本単体の政策では大きな流れを変えることはできません。為替を占うにはアメリカがどうしたいのか、そこを読み込むことが最重要となるはずです。

では今日はこのぐらいで。

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また明日お会いしましょう。

今だからもう一度考える対話能力4

会社勤めの方ならほとんどの方が聞いたことがあると思う「報連相」、つまり報告、連絡、相談ですが、これが今後のビジネスシーンでもっと重要になる時代がやってくるかもしれません。

一般に「報連相」は部下が上司に対する関係として捉えられると思いますが、私は一般社会そのものに不足しつつある概念だと感じています。

先日、あるカナダ人の顧客から仕事を依頼され、そのアレンジが終わった際に当社のフィーの金額もメールで送りました。するとその依頼主からいつまでたっても何の返事もありません。了解なのか、不満なのか判断できず、次のステップに進めなくなってしまいました。3日経って、その方に電話でメッセージを置いたところ、5分後にメールで「フィーが不満だ」と一言だけ返事がきました。そこで私はそれなら電話でご相談しましょうと返し、彼と何がどう不満なのか、確認し合い、2時間後には新しい折衷案でセトル(決着)できました。

これは私の反省点なのですが、フィーのことはいわゆる標準レート(どこでもその金額がかかる)なので何の確認もせずに仕事だけ先に進めた結果、あれっ、ということになってしまったのです。幸いにして収まるところに収まったので良かったのですが、コミュニケーション不足が災いしたといってよいでしょう。

「報連相」は一般に社内で最も重要な業務上の「インフラ」の一つだと思います。今やメールでのやり取りがほとんどで上からの指示、下はそれに従うというスタイルが出来上がり、下からの反逆はあまりないのかもしれません。私が経験している限りにおいても「会社がそう決めたのだからしょうがない」というスタンスがありありと出てしまっています。これでは従業員にとってそれがハッピーなのか、不満なのか、分からず、後々にえっ思わせるようなこともあります。

また、会社によっては電話での会話は聞かれたくないという方が増えている気がします。仕事の電話をしているのに「今、社内なので外から電話します」と言われると全く理解不能の世界でしょう。

以前、ある若いスタッフを雇用した際、しばらくしてどうも顧客対応がおかしいと思い、本人に声をかけたところ、「顧客対応のマニュアルがないから何をしてよいか分からない」と返されてしまいました。私の主義は「安全とか、トラブルの際の対応などごく基本的なマニュアルしか作らず、あとは自分で考えよ」という方針です。その為、お客様から突飛なことを聞かれた際、どうしてよいか分からないというわけです。

最近は外国人を含め、いろいろなお客様が増えてきましたが、日本の場合はそれでもほぼ単一民族で行動や反応はある程度予想しやすいものです。ところが、海外で仕事をすると百人百様でスタンダードなるものは存在しないと言っても過言ではありません。その時、基本対応としてはお客様の言い分をまず良く聞き、お客様が何を欲しているのか判断する必要があります。

例えばクレームがあった際に相手が望んでいるのは値引きなのか、返品なのか、商品そのものにダメ出しをしているのか、会社の対応なのか、はたまた訴訟する程のクレームかその会話の端々で読み込まねばなりません。また、勢い余ってのクレームか、心底怒っているのかの判断も言葉の端々、顔つきなどから読み込む必要がありますが最近はネット社会でその力が劣ってきていないでしょうか?

ところで12日付の日経の「春秋」は日銀の市場とのコミュニケーション能力を揶揄しています。「『かならずデフレから抜け出せます』など前向きというより、前のめりの言葉が並ぶ。期待や消費が上向かないのは、賃金の伸び悩みや社会保障への不安が大きいからだろうが、サプライズに頼って強気を崩さぬ日銀の政策への気がかりも影響してはいまいか。緩和から4年目なりの練れた『対話力』を磨くべき時だろう」。

黒田総裁とイエレン議長のコミュニケーションの姿勢は全く違います。あえて言うなら黒田総裁は意地になって自己主張を繰り返すのに対してイエレン議長はあくまでも市場との対話、統計や指標を見てフレキシビリティを持ち、強いコミットをせず、政策のベクトルを提示するにとどまっています。

私は最近、電話での話を以前より増やしています。それの方がメールの単語一つひとつの重みを緩和させ、腹の探り合いができるからです。そういえば、日本では一昔前、「ビジネスは午後五時から始まる」と言われたことがあります。アルコールが入ると本音が出る、という意味です。

こうなればビールのチカラを借りてでもリアルの対話をする訓練を強化した方がよさそうです。(のんべいにはうってつけの理由かもしれませんね。)

では今日はこのぐらいで。

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