安倍首相の靖国参拝は波紋を投げかけました。ご当人にすれば選挙戦で参拝することを公言していた以上、行かないわけにはいかない、ということでありましたが中国、韓国のみならず、欧米からも強い逆風を感じているはずの安倍首相はそれでも公約達成の満足感をもって年末年始を迎えるのでありましょうか?

私が見る限りこのタイミングの靖国参拝は安倍首相からすればベストでありました。まず、マスコミの指摘にもありますとおり、中国、韓国とは冷えた関係が続き、改善の見込みは立っておりませんでした。一方、アメリカはオバマ外交が非常に弱いと言われている中、キャロライン・ケネディ大使が着任したタイミングは動きやすさもあったのでしょう。日本も経済が回復過程にあり特定秘密保護法を可決したことで世界の中で日本が突出して目立つ存在となっていることでしょうか?その上欧米は時差の関係上、クリスマスの日でありました。

アメリカの外交の弱さ、特にアジア外交はその脆弱さを露見させています。オバマ大統領はアジアの時代と認め、TPPに全力をあげ、北朝鮮問題も積極的に解決の糸口を探るはずでしたがその進捗には疑問符がついています。それはアジア通のヒラリー・クリントン、ティモシー・ガイトナー、カート・キャンベルといった大物が現政権にいないことも挙げられましょう。対中国外交については防空識別圏問題でも予想通りバイデン副大統領は習近平国家主席に「言っただけ」の状態で以前のアメリカ外交の芯の強さはありません。さらには一部からは中国寄りに舵を切る発言が出るなどアメリカが「ふらついている」状態にあります。つまり、外交的には日本が一定の不満を感じる状況にあった背景は見逃せないと思います。

よって、靖国参拝は逆に安倍首相のポジションを明白にするという意味で「勝ち続けてきた」首相の強い意思表示であったともいえるのでしょう。

ところでなぜ、首相や閣僚は靖国神社参拝にそこまでこだわるのでしょうか?靖国=A級戦犯の合祀というイメージが強く、結果として日本の周りからは強い懸念が出ます。海外に長く住む私の持つイメージは靖国が明治以降のさまざまな戦争を通じて永眠された軍人、軍属者を「英霊」と称して祀っており、祭神としているということでしょうか?つまり、神道でいう神様のひとつなのであります。井上ひさし氏は「国のために戦って死ねば神様になれるという回路」を指摘しています。これは憲法が変わる前で現人神である天皇の位置づけがまったく違っていた思想を前提にしているのでしょう。

欧米ではここが引っかかっています。多くの国での宗教はキリスト、イスラム、ユダヤなどの一神教であるのに対して日本は多神教であり、神があちらこちらにいることが先祖代々、幼少期から教わったことであります。そして、多神教である故に、日本人が「神」と称するものには宿るものがあり、それを崇めるわけです。

そこにA級戦犯が合祀されているということは欧米、アジアから見れば東京裁判で重罪判決が出たその人たちも神とするのか、ということになってしまうのです。これを政府がどれだけ説明しても政府間の優秀な担当者レベルでは言葉尻の理解をするかもしれませんが、コンセプトとして消化するのは難しく、ましてや他国の国民にとっては全くもってわからない行動に映ることでしょう。

つまり、日本政府や日本人がどれだけ諸外国に説明しても根本の入り口である文化や社会的背景がまったく違うのですから「そうですか?」とは言ってもらえないのです。それぐらいは首相や内閣閣僚は十分にわかっているはずです。それを推してまで今、参拝に行かねばならぬ気持ちとは公約を果たすという自己満足だとすればバランス感覚に疑問を感じてしまいます。カナダの新聞もpay his respectという表現であります。

そもそも忙しい首相や閣僚がなぜにして多神教の日本において明治以降の軍人を祭る一宗教法人の神社に行くことを公約とし、反対を跳ね除けて行かねばならないのでしょうか?千鳥ケ淵戦没者墓苑ならば国の管理であり、安倍首相の言うアーリントン墓地に値するでしょう。あるいは、先進国でも執り行われているような全国戦没者追悼式で十分であるという主張は一定の論理性を持ちます。つまり、靖国参拝そのものに大きな偏ったベクトルがあることは事実ではないでしょうか?

政治家の意味は政治を職業とし、専門的にこれに携わる人であり、国を作り、運営していくことを目指すべきです。選挙で選ばれた人であるがゆえに信仰心はコントロールし、国政にまい進するプロであるべきです。日本は右、左の思想判断をしがちでありますが、政治家とは国を富ませ、全ての民を如何に幸福に導くかがその職務であることを考えれば今回の安倍首相の判断は政権を揺るがすほど厳しい批判にさらされる可能性はあるかと思います。リーダーはリーダーとしての尊厳と威厳を見せてもらいたいものです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

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ではまた明日。