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バンクーバー郊外の衛星都市、サリー市。ここで4月初めに売り出したコンドミニアムが話題を呼んでいます。販売会社によると売り出し日一日で300戸の販売契約という記録を打ち立てたそうです。経験者として言わせてもらうと1日に300戸の契約をするのは不可能です。通常は事前に優良顧客向けの交渉や予約を通じて契約をかなり確保した状態で売り出し当日を迎えます。ここに来た一般客に「急がないと良い部屋はなくなる」というムードを作り、売りさばく典型的な販売戦略であります。

それにしても販売センターは大行列で会場の中は押し合いへし合いのこの写真の様子はカナダで一番高い不動産エリアのワンシーンとは思えません。日本のパンケーキ屋やラーメン屋の行列と金額が違います。コンド(マンション)を購入するのにここまでするのかと思うとぞっとしますがなぜ、そこまでして購入するのでしょうか?

当地の不動産価格が安定的に上昇しているという事実は確かにあります。ですが、今日は全く違う視点から捉えてみたいと思います。それはコミュニティが生み出す経済力であります。

大バンクーバー地区のインド系住民は約25万人でサリー市は北米最大級のインド系住民のコミュニティがある地として知られています。つい先日はインドのモディ首相も当地に来られていたぐらいです。それは人が人を呼びこみ、大きなビジネスが生み出される規模の経済を作り出していると言ってもよいでしょう。

もともとインド人街はバンクーバー市の南にありました。しかし、そこでは全くおさまらなくなりサリー市に新たなるコミュニティができたのです。同じことは中国人街でもあり、昔はダウンタウンの東にチャイナタウンが繁栄しましたが、今ではリッチモンドという空港のそばに圧倒的な中華系エリアが生まれています。韓国系もバーナビー市のノースロードあたりといった具合にある一定地域に人が集まるとそこには祖国の商品、言葉、情報が集中し、結果としてコミュニティを生み出します。また、地元出身の政治家も輩出し、コミュニティをよりよくするシステムが構築されます。これが強力なローカル経済力としてこの街の推進力となっているのです。

ところで先日、車でダウンタウンの中心街を走っていたところ窓から強烈なマリファナの匂いがします。横を見るとこれまた身動きが取れないほどの人たちが広場に集まり、マリファナを吸い、出店で関連商品を買い求めています。これは一年に一度のマリファナディでマリファナを合法化しようとするコミュニティが開催しているイベントです。横には救急車が数台横付けされ警察は交通整理に忙しい、というシーンは日本ではありえないでしょう。

日本でSNSといえばスマホを使ってフェイスブックなどを通じたバーチャルな関係を想像するかと思います。しかし、ツィッターやフェイスブックに成熟感が漂うのはバーチャルそのものが作り出す結びつきは案外薄いということではないでしょうか?本来的な使い方はスマホを通じたSNSは情報のプラットフォームであってそれをいかにリアルに転換するかにあるのだろうと思います。

北アフリカの春の民主化運動はご記憶にあるかと思います。あれもSNSが実際に人が集まり、行動を起こすという力になったことが大きいのであります。日本ではリアル版SNSとしてコンサートや趣味の集まりが活気づいてきたと思います。週末の池袋、サンシャイン通りになぜ、女子中学、高校生がここまで集まるのか、それはSNSが生み出すローカル経済ではないでしょうか?

私は最近、ふと町内会の存在がまた注目される日が来る気がして来ました。街中で隣近所付き合いもほとんどない中、私の実家の町内会では火の用心の見回り、祭り、子供見守りなど様々な活動をしています。同じことは大型マンションの管理組合が行う住民イベントもそうでしょう。そこに行ってみようか、という気になるのは近所、同じ学校、同じ出身、同じ趣味、同じ目標、同じ悩み…とった同朋意識がSNSで芽生えつつあるのではないかという気がしています。

日本に行っていつも思うのはドライな関係であります。関東と関西は違うでしょうし、都会と地方も違うでしょう。それにしても近所づきあいを面倒なものという括りにして片付けてきた我々世代は身近なつながりを通じて人生を楽しみ、それが経済に繋がるということをもう一度考えてもよいのではないでしょうか?

次回訪日の際に私は高校の同窓会に出席します。SNSというプラットフォームを通じて連絡を貰い、リアルのSNSができる典型です。とても楽しみです。そしてここでも一定の経済が生まれていることに着目してみたらもっと面白いと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

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ではまた明日。