アメリカ人に知っている会社を10社上げよ、といえば必ず入るであろう会社の一つがゼネラル エレクトリック(GE)でしょう。日本ではあまりなじみがないかもしれませんが、アメリカ人の家庭にはGEの製品が必ず一つや二つあると言われています。
では何の会社かといえば航空機エンジン、医療機器、原発や発電、家庭用電化製品、更に金融もあるコングロマリットであり、アメリカのダウ指標が1896年にできてから一度も外れたことがない唯一の会社という、どう逆立ちしてもアメリカの代表的企業であります。
そのGEはあまりにも多くの著名経営者を輩出してきました。トーマス エジソンが創業し、最近ではジャック ウェルチ(1981-2001)やジェフ イメルト(2001-2017)両氏が経営者としてあまりにも有名で、共に非常に長くトップに君臨してきました。(そのはるか前の経営者もおおむね10-20年前後、長い人は30年もトップに君臨しています。)
さて、その誰でも知っているGEは今、苦境のどん底にあります。それはあれだけ称えられたイメルト前CEOが残した負の遺産の処理があまりにも膨大だからであります。メディアには「GEの解体」のタイトルが躍ります。ただでさえ冴えない業績で配当金を半分にすると発表し、株主の失望感やるせないところにGEキャピタルが手放したはずの保険事業に関し、将来の支払いのための巨額費用を計上せざるを得ないことが「発覚」し、大騒ぎになったことで「GEよ、お前ももうここまでか?」というトーンになっているのだろうと思います。(このシナリオ、東芝とそっくりであります。)
株価はリーマンショック時の一時的下落を除き、1997年並みの水準です。ダウがこれだけ騰勢を強める中、一社足を引っ張っているといっても過言ではないでしょう。それこそGEが普通に成長していたらダウは今頃27000ドルを目指していたかもしれません。
同社の問題はコングロマリット型経営の難しさを物語るものであります。ビジネスの主流が装置産業型で巨額の投資を要するものが多い中で時代の流れに乗りそこなうと全くダメになってしまうリスクを抱えるのであります。イメルト氏が2年ぐらい前に航空機のIoTに先鞭をつけたとインタビューで発言し、強いリーダーシップをとっているようプレゼンしていたのは「カラ元気」だったのでしょうか?
実はGEの苦境を見て東芝の経営の難しさとかなり似ていると感じました。事実、その業務範囲も似ています。東芝は売却という対応を取りました。そしてついに上場維持の確約が取れるところまで落ち着きました。GEも当然、事業の切り売りをすることになるとみていますが解体には至らないはずです。いくら何でもGEもそこまで落ちぶれてはいません。
カナダにバリアントという製薬会社があります。この会社は買収に次ぐ買収で世界有数の製薬会社まで躍り出るのですが、粉飾決算で株価は20分の1まで落ち込み、経営危機がささやかれました。が、そこから必死のリストラ、事業売却、様々な悪い噂をはねのけ、株価は安値から3倍まで戻しました。今も再生の道をひたすら歩んでいます。GEもこんな感じになるとみています。
日本にはこの手の巨大企業はたくさんあります。また、それら企業に経営的問題を抱えているところもずいぶんあります。(具体的企業名は影響があるので書きません。)構造変化への対応が遅れるとGEや東芝のような問題を抱えやすいことは目に見えています。一方、それらコングロマリットの経営者は会社の屋台骨を揺るがすようなそんな事態には「させない、ならない、そんなはずはない」の「3ない」を信じているはずです。
以前から申し上げているように社会の変化や技術革新は「積みあげ」から「掛け算」を通り超えて「ワープ」する時代になっています。かつては地道な努力が勝利に結びつく美談がありました。20年ぐらい前、MBAを取った連中は経営ノウハウを駆使し、レバレッジで大きくジャンプすることを誇らしげに語っていました。
今、そんな話は古臭くて聞いていられません。ワープの世界とはありえない世界が一瞬のうちに起きるのです。それは今までの常識も既存ビジネスも発想もすっかり裏返しになります。これは経営者にとっては恐ろしい話なのです。
コングロマリット企業や多業種を抱えている企業はどうしたらよいのでしょうか?私はそれぞれの分野が最新の技術とノウハウで生き残り策を模索すると同時にコングロマリットというガチガチの関係から企業内の緩い連携に変えるべきだと考えています。「俺たちは同じ船だぜ」という時代ではありません。みんな別々の船でリスクをヘッジする時代です。うちの会社の従業員は10万人というのは自慢ではなくて経営の足かせになるかもしれません。
GEの話は海の向こうのお話しではありません。日本でも第二、第三の東芝問題は必ず起きるとみています。
では今日はこのぐらいで。
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北アメリカランキング
また明日お会いしましょう。
では何の会社かといえば航空機エンジン、医療機器、原発や発電、家庭用電化製品、更に金融もあるコングロマリットであり、アメリカのダウ指標が1896年にできてから一度も外れたことがない唯一の会社という、どう逆立ちしてもアメリカの代表的企業であります。
そのGEはあまりにも多くの著名経営者を輩出してきました。トーマス エジソンが創業し、最近ではジャック ウェルチ(1981-2001)やジェフ イメルト(2001-2017)両氏が経営者としてあまりにも有名で、共に非常に長くトップに君臨してきました。(そのはるか前の経営者もおおむね10-20年前後、長い人は30年もトップに君臨しています。)
さて、その誰でも知っているGEは今、苦境のどん底にあります。それはあれだけ称えられたイメルト前CEOが残した負の遺産の処理があまりにも膨大だからであります。メディアには「GEの解体」のタイトルが躍ります。ただでさえ冴えない業績で配当金を半分にすると発表し、株主の失望感やるせないところにGEキャピタルが手放したはずの保険事業に関し、将来の支払いのための巨額費用を計上せざるを得ないことが「発覚」し、大騒ぎになったことで「GEよ、お前ももうここまでか?」というトーンになっているのだろうと思います。(このシナリオ、東芝とそっくりであります。)
株価はリーマンショック時の一時的下落を除き、1997年並みの水準です。ダウがこれだけ騰勢を強める中、一社足を引っ張っているといっても過言ではないでしょう。それこそGEが普通に成長していたらダウは今頃27000ドルを目指していたかもしれません。
同社の問題はコングロマリット型経営の難しさを物語るものであります。ビジネスの主流が装置産業型で巨額の投資を要するものが多い中で時代の流れに乗りそこなうと全くダメになってしまうリスクを抱えるのであります。イメルト氏が2年ぐらい前に航空機のIoTに先鞭をつけたとインタビューで発言し、強いリーダーシップをとっているようプレゼンしていたのは「カラ元気」だったのでしょうか?
実はGEの苦境を見て東芝の経営の難しさとかなり似ていると感じました。事実、その業務範囲も似ています。東芝は売却という対応を取りました。そしてついに上場維持の確約が取れるところまで落ち着きました。GEも当然、事業の切り売りをすることになるとみていますが解体には至らないはずです。いくら何でもGEもそこまで落ちぶれてはいません。
カナダにバリアントという製薬会社があります。この会社は買収に次ぐ買収で世界有数の製薬会社まで躍り出るのですが、粉飾決算で株価は20分の1まで落ち込み、経営危機がささやかれました。が、そこから必死のリストラ、事業売却、様々な悪い噂をはねのけ、株価は安値から3倍まで戻しました。今も再生の道をひたすら歩んでいます。GEもこんな感じになるとみています。
日本にはこの手の巨大企業はたくさんあります。また、それら企業に経営的問題を抱えているところもずいぶんあります。(具体的企業名は影響があるので書きません。)構造変化への対応が遅れるとGEや東芝のような問題を抱えやすいことは目に見えています。一方、それらコングロマリットの経営者は会社の屋台骨を揺るがすようなそんな事態には「させない、ならない、そんなはずはない」の「3ない」を信じているはずです。
以前から申し上げているように社会の変化や技術革新は「積みあげ」から「掛け算」を通り超えて「ワープ」する時代になっています。かつては地道な努力が勝利に結びつく美談がありました。20年ぐらい前、MBAを取った連中は経営ノウハウを駆使し、レバレッジで大きくジャンプすることを誇らしげに語っていました。
今、そんな話は古臭くて聞いていられません。ワープの世界とはありえない世界が一瞬のうちに起きるのです。それは今までの常識も既存ビジネスも発想もすっかり裏返しになります。これは経営者にとっては恐ろしい話なのです。
コングロマリット企業や多業種を抱えている企業はどうしたらよいのでしょうか?私はそれぞれの分野が最新の技術とノウハウで生き残り策を模索すると同時にコングロマリットというガチガチの関係から企業内の緩い連携に変えるべきだと考えています。「俺たちは同じ船だぜ」という時代ではありません。みんな別々の船でリスクをヘッジする時代です。うちの会社の従業員は10万人というのは自慢ではなくて経営の足かせになるかもしれません。
GEの話は海の向こうのお話しではありません。日本でも第二、第三の東芝問題は必ず起きるとみています。
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日経新聞の人気コラム「私の履歴書」にジャック ウェルチが昔出ていました。
1カ月かけて著名人の半生を語っているので面白く、今でも必ず見ています。ジャック ウェルチが「GEは世界シェア1位か2位の部門しか興味がない」という意味の事を書いて、実際にGEの事業を売ったり買ったりと入れ替えて来たコングロマリットです。
その結果ついたジャック ウェルチのあだ名が中性子爆弾ジャックです(笑)。
しかしGEを退いた後も会社から法外なベネフィットを得ていると元秘書兼愛人に暴露され晩節を汚しました。元秘書兼愛人を冷遇して別れた為ですが、多くの社員の首を切ったように元秘書兼愛人にも冷淡だったのでしょう。
ところで私が以前GEの株価が安くなっていると書き込みしたのも、NY市場でのGEの株価をチェックしていたからです。1年で半値近くまで下がっていたので買いの検討をしていた所に配当を半分にすると発表がありましたから買わなくて正解でした。