英国のテリーザ メイ首相のストレスは我々の想像の域を超えるかもしれません。EU離脱を決めた後、首相の椅子が転がり込んできたメイ首相はもともとは離脱反対派でした。その彼女が離脱の使命を遂行するには強硬派であるボリス ジョンソン外相との対立は容易に想像できるものでありました。

メイ首相はEUとの交渉において双方合意しやすい内容で離脱を推し進めてきました。これに強く反対するデービス離脱担当相とジョンソン外相が今回、辞任したほか、高官レベルでの辞任も増えてきています。対外交渉の事実上の責任者二人が「こんな妥協案のようなEUとの離脱交渉では英国の自主権はもはや消えうせた」とサジを投げたいうのが今回のストーリーであります。

メイ首相としては来年3月の離脱に向けて、今年の10月までには大筋合意し、議会を通過させなくてはいけません。果たして秩序ある離脱はなされるのでしょうか、それとも英国は荒海に投げ出されるのでしょうか?

今日に至る英国内の離脱に向けた強硬派と穏便派のやり取りを見ていると戦前の日本の政策を思い出しました。戦争に突っ走る軍部は内閣で強硬な発言力を押し通し、首相は次々辞任し、首相のなり手がないほどになっていました。その中で外務省の幣原喜重郎(外務大臣から戦後、首相)は吉田茂、広田弘毅の直属の上司として国際関係間の調整を目指しましたが「軟弱外交」と非難されました。

幣原は国内穏健派と外交工作を施し、日本が極端な方向に走らないよう尽力しますが、結果として戦争を止めることはできませんでした。この幣原外交は近代日本外交史において必ずといってよいほどテーマに上がる存在であります。

世の中、コトを進める場合、必ずその進め方について温度差は生じるものです。強硬に進める派閥は往々にして結果重視であり、穏健に進める派閥はプロセスと将来のことを考えた折衷になりやすくなるのではないでしょうか?

例えば慰安婦問題における10億円の支払いは日本国内の強硬派からは強い異論が出ましたが結果としてはあの10億円は痛烈な抑えとして機能しています。北アフリカの春を通じて中東の独裁政権が倒されましたが、あれは政権打倒だけを目指した強硬型だったため、その後の国家の方向性が定まりにくい問題を露呈しました。トランプ大統領の対外政策も強硬的で目先の効果と中長期では違う結果が出るはずです。

英国の離脱に関してはジョンソン氏は政権担当能力はなかったとされます。外相に選ばれたもののほとんど実績を上げなかったとされます。つまり暴言を吐くだけ吐いて何の責任も取らず辞めたとみてもよいでしょう。

ただ、メイ首相も厳しい立場に追い込まれています。首相としての才覚も問われており、総選挙という声も出ていますが、10月というタイムテーブルを考えればそんなことをしている余裕はありません。メイ首相も辞任する意向はなく、彼女の党内の支持も過半数を超えていることから彼女なりのやり方で突っ走るのでしょう。

問題は離脱がどういう落としどころになるのか、であります。未解決問題山積の中で19年3月を延長させる方法もありますが、EUとの交渉力という点では使いたくない切り口です。

個人的にはアメリカが独立独歩の姿勢を強烈に打ち出していることからメイ首相がそれに勇気づけられて完璧ではなくても離脱強行してもおかしくないと思っています。

言い換えればハードランディングの可能性も見ていた方がいいでしょう。ジョンソン氏や前首相のキャメロン氏らと同じ学校だった英国人の知り合いは「もう一度衝撃がある」と以前から指摘していました。

遠い国の話ですが、そんなことになればその激震は地球上に瞬く間に伝播するのかもしれません。秋以降の英国からは目が離せなくなりそうです。

では今日はこのぐらいで。

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また明日お会いしましょう。