9月15日はリーマンショックから10年ということもあり、様々な記事が当時を回顧するように掲載されています。思えば世界の経済システムが大混乱に陥り、連鎖反応を起こし、欧州に飛び火し、世界の首脳は日帰りで首脳会談をこなし、トップ自らが徹夜の会議参加を余儀なくされました。

日本でいう「リーマンショック」とはリーマン証券が倒産したことを象徴的に言っていますが、あの金融危機においてリーマン証券の倒産は全体のごく一部の事象でしかありません。ただ、日本ではわかりやすい通称としてそう呼称されますが、英語ではFinancial Crisis(金融危機)という表現であります。クラッシュのマグネチュードからすれば1930年の大不況と双璧といってよいかと思います。

きっかけはアメリカの住宅バブルでした。買えない人にも住宅が買える、そんな夢物語が現実に起きたのは住宅価格が見る見るうちに上がる中、金融機関がこぞって貸し出し姿勢を強め、融資基準が極めて緩くなったからであります。これは日本の80年代後半バブルの時もそうでした。企業は景気が良くなるとより高い成長率を求め、リスクを顧みない姿勢を強めます。これだけは人間の性で過去にどれだけ過ちがあっても繰り返す癖があります。

ところでアメリカの住宅価格のピークはリーマンショックが起きる1年以上前である2007年6月頃でありました。この1年余りの時間差が引き起こしたものは「無理繰り」と「つじつま合わせ」であり、それがリーマンショックの引き金を引いたと考えています。言い換えればやりすぎて収拾がつかなくなり、誰も補正できなかったということでしょう。

最近、当時のFRB議長であるバーナンキ氏が「危機それ自体がどれほど広範囲で破壊的なものであるか誰も予想しなかった」(ブルームバーグより)とし、「投資家が銀行や他の金融機関から資金を引き揚げなければ、あれほどひどい経済悪化はなかっただろう」とも述べています。

リーマンショックの引き金をたった一言の英語で表現するなら私ならContraction(収縮)と申し上げます。そしてその収縮の過程は膨らませすぎた風船の空気をゆっくり抜くのではなく、多くの資金の出し手が奪い合うように自己の債権回収に走ったことで破裂した、ということであります。この資金の出し手の行動を一語でいうならばGreedy(強欲)と申し上げましょう。

その債権にまつわる「おまけ」が訳の分からないMBS(=Mortgage Backed Securities、住宅ローンを担保にした証券)でありました。平たく言えば10万円の福袋の中に箸にも棒にも掛からぬ商品が結構入っている、と申し上げたらいいでしょう。それでもこれは10万円の価値があるんですよ、と皆が認めて合っていたというものです。周りに押されるように中身がわからないまま買ってみたけれど「開けてびっくり玉手箱」といったところでしょうか?

リーマンショックとは何だったか、北米でそのシーンをまざまざと見せつけられた私としてこれ以上の説明はありません。

人間の欲望は消えません。欲望があるからこそ前進する、という見方もできますが、常軌を逸することが今でもしばしば起きています。その代表例が仮想通貨投資でありました。日本の仮想通貨投資家の過半数は損を抱えています。あの時、若い社会人女性さん達がクレジットカードで仮想通貨を買っていたと報じられていました。1929年大恐慌の時、靴磨きの少年が大量の株式売買をしていた話や80年代バブルの時、主婦が株式新聞を買い、証券会社に詰めかけていたのとまったく同じです。

バンクーバーの不動産価格がなぜ下がらないのか、という質問をされます。私の説明はこうです。高額物件所有者は住宅ローンを組む必要がないセミリタイア層が多く、彼らは雇用やビジネスに振り回されることもないからである、と説明しています。つまり、Contractionが起きにくく、下がっても売り急ぐというGreedyな行動に走らなくてもよいからです。

市場はコンピューターが支配しているとされています。自動売買システムが高速取引を行い、多額の利益を上げているようです。しかし、そのプログラム方針を決めるのは人間です。そして異常値が出た時、プログラムは一方通行の行動に突っ走ります。株式市場で引き起こすプログラム売買では数分間で何%も下落することもあります。人間が非常ブレーキをかける間もありません。それはプログラムを作った人間が強欲という目的を達成するための仕組みであり、収縮が始まれば一番先に逃げる足の速い奴が勝つ、ということでもあります。

リーマンショックのようなことは規模の大小はともかく、今後も起きるでしょう。失敗を経験しないと学ばない人間の性であります。

では今日はこのぐらいで。

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また明日お会いしましょう。