企業買収はかつては海の向こうの大きな会社の話と思っていた方も今では国内中小企業の事業継承でM&Aがごく一般的な選択肢にあがる時代となりました。つまり、M&Aの平準化であります。

そんな中、今回、武田薬品工業が決めた日本では過去最大となるシャイアー社買収は日経に「古い手法」と書かれています。今は若い会社を安く「仕入れる」手法が主体と指摘しています。製薬会社には「特許切れ」という特性が背景にあり、自社での研究開発のみならず、何らかの買収が重要な手法であることを示しています。その一方で買収が必ずしも買収以上の成果を上げていたかといえばこれまた疑問符が付くケースが多かったのも事実です。

1+1<2、この法則については私が現在投資しているカナダの製薬会社Bausch Health社(旧バリアント製薬)が好例だったと思います。同社は買収を重ね、一時期カナダで時価総額No1の企業となり、多くのアナリストは買い推奨をし、株価は2015年夏に338ドルを付けます。が、その後、不正や数々の逆風で同社の株価は大暴落、2017年には11ドルと30分の1にまで下がります。株価下落に拍車をかけたのは借入金の多さで会社存続が危ぶまれたためです。私はそのあたりで投資を決めて十数ドルで買い込んでいます。なぜ投資をしたかといえばライザップ風に言えばおもちゃ箱に輝くものもあったから、と申し上げておきましょう。

製薬会社において新薬開発ほど大変なものはありません。小野薬品工業がオプジーボで一躍有名になりましたが、その薬価水準が日本の保険制度にまで影響すると言われ異例の薬価見直しを強いられたのは記憶に新しいところです。製薬会社にしてみればそれぐらいの価格をつけても売れる薬だと考えたもののそれは売り手の論理であり、買い手やそれを支援する厚労省の立場は放置されたといってもよいでしょう。

ではバイオベンチャーはどうなのか、といえば日本でも上場ベースで30社以上あります。そーせいやタカラバイオなどはかつて話題になったこともありますが、基本的には赤字のところが8割以上といってよいでしょう。つまり、世に存在する数多くの薬を生み出すのにその業界内部は驚くほど厳しい世界が待っているともいえそうです。

日本最大の製薬会社、武田もご多分に漏れず、新薬の特許切れというスケジュール感を突きつけられた経営者はこのまま野垂れ死ぬのか、新たに攻め入るのか、の選択を求められ、好む好まざるにかかわらず、何らかの形で買収という選択をせざるを得ないということのようです。

丸ごと買収のM&Aの巨大化はアメリカを中心に顕著で製薬業界に限らず、あらゆる業界で覇権争いと称して買収合戦が繰り広げられてきました。それは狩猟民族の弱肉強食の思想と似ており、強いものが支配するという社会構造をそのまま反映してきた、とも言えます。

では日経が指摘するように製薬会社にみられる創薬のスタートアップ企業を安く買うスタイルが他業界も含め、浸透していくのか、といえば私は中期的にはないとみています。それはバイオベンチャーが結局ほとんど赤字であるのが実態だからです。換言すれば、創薬はいかにも難しく成功確率2−3万分の1という宝くじのような話をしているとも言えます。それならば当たりくじを持っている会社買収の方が結果として安くつくし、直ちに収益に結び付くでしょう。

企業は「買収するまで」より「買収してから」であります。これはそれを経験したことがある方ならお分かりいただけると思います。武田薬品がこの巨額買収を武田の収益にどれだけ取り込めるか、これは数年たたないとわかりません。少なくともカナダのBausch Health社のようにだけはならないよう祈りたいものです。

では今日はこのぐらいで。

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