外から見る日本、見られる日本人

バンクーバーの日本人社長ヒロが仕事、生活を通じて感じた経済、経営、社会、日本人観などを綴っています。

北米経済

カナダ経済に見る体感温度4

バンクーバーで28年もビジネスをし続けていれば「ビジネスの体感温度」は案外感じやすいものです。北米は景気がいいのか、悪いのか、このあたりをカナダを中心に私の感じる肌温度で考えてみたいと思います。

マリーナの世界から
私の会社で所有、管理するマリーナ。今年の夏はボートが動かない、これが一つ目の体感温度です。この業界、ボートオーナーが数週間から月単位で外洋に出ることもあり、空いたボートの停泊場所を短期のビジターに「また貸し」し、その収益をそこを借りているボートオーナーとシェアする仕組みになっています。

ところが今年は長期どころか短期で出かけるボートオーナーすら少なく、マリーナに行けばボートオーナーたちが動かないボートを囲むようにたむろして酒を飲んでいます。完全な社交場であります。最低でも数千万円、中には数億円するボートのそれらのオーナーが気にしているのは案外、船を動かす燃料費だったりするのです。当地の燃料費は北米で最も高く、燃料をバク食いするクルーザーのオーナーにとって燃料費高騰は航海に出るには気のりしないということでしょうか?高級クルーザーと燃料費の関係は全く論理性がないのですが、高額所得者ほどこんなことが気になる傾向はあり、心理的影響は否定できないかもしれません。

不動産の世界から
不動産が高いのもバンクーバーの象徴でありました。が、この1-2年はスポットライトも当たらず、あきらめムードすらあります。ビジネス中心のトロントの不動産市況は明らかに戻り歩調で薄明りすら差していますが、バンクーバーの市場は中国本土からのマネーに翻弄されたこともあり、市場の落ち着きどころを未だに探している状況であります。

不動産開発は計画してから建物完成まで今や5年以上かかる時代です。今進む数多くの建築中の物件は最低でも2年前、つまりまだバンクーバーの不動産景気が良かったころに開発計画が進んだものであります。空高くそびえつつある建築中の物件が果たして予定通りの収益を上げるのか、開発業者の心中は如何に、というところかと思います。最大のポイントは建物完成3年前に締結された売買契約で個人の経済的事情がその間に変わらず、引き渡し時に約束通り履行されるか、ここにかかっているようです。

商業の世界から
目抜き通りだったロブソン通りはいまや、空き店舗だらけの通りと化したかもしれません。通りに面した不動産所有者たちはビジネスが成り立たないような賃料を当たり前のようにテナントに課し、それでも入居したテナントは6カ月、1年ぐらいでギブアップ、一部の物件では空きスペースである期間の方がはるかに長くなってきました。その中でもロブソン通りのほぼ中心のある建物は路面店スペース6軒のうち5軒が空きになっています。そこを通るたびに思うことは活気のない通り、ということになります。これでは逆効果で「ロブソン通りってつまらないね」というイメージにもつながってしまうのです。こういうのは消費の心理的をすっかり冷やしてしまいかねません。

レンタカーの世界から
レンタカーの事業は好調なのですが、案外、不思議なのが提携ホテルからの問い合わせ。「お客様がいるのですが、クルマは何が空いていますか?」というコンシェルジュから問い合わせに〇〇と△△という具合に答えると電話の向こうにいる客から「一番安いやつを」と電話越しに聞こえています。私の心中は「なになに、一泊5万円も払って1日5000円のクルマですか?」であります。冒頭のボートオーナーの燃料費の話と同じで金持ちはどういう経済感覚のバランスを持っているのか悩みます。昨年までチラチラ見られたおカネに糸目はつけず、というスタイルは明らかに少なくなっています。

結論は?
7月のアメリカの小売売上高統計は5カ月連続の上昇で7月は事前予想の0.3%増をはるかに上回る0.7%増となっています。アメリカの消費はさほど悪くありません。カナダも全く悪くなく、カナダ中央銀行は今のところ、金利引き下げをする姿勢は見せていません。何が悪いかといえばマインドが悪く、企業が投資を手控えていることが大きく影響しているとみています。

とすれば個人の懐はさほど痛んでいない、だけど、みんなが「R」(リセッションのことをよくRと表現します)というのでちょっと財布のひもを引き締めようかな、という感じに見えます。人々の表情に悲壮感などは全くなく、今日も観光客で街は人で溢れています。

こんなバンクーバーの街を見ていると経済は心理的要因が本当に大きいのかなぁと思ってしまいます。

では今日はこのぐらいで。

ブログの応援もお願いできますか?クリックをするとブログランクアップにつながります。

北アメリカランキング

また明日お会いしましょう。

北米で感じる金利と景気4

アメリカのFRBが6月のFOMCで年内利下げのシグナルを発しました。専門家の事前予想では年内の利下げに対する期待度はほぼ100%であり、むしろ何回下げるか、という読みに変わってきています。個人的には9月と12月の可能性を予想していますが、一部には7月の利下げ予想も根強くあります。

今回の利下げの基本的なスタンスはインフレが落ち着いているということですが、もう少し実態面を詰めていけば北米の景気のピーク感があるということかと思います。「高揚感なき好景気」は日本だけではなく、北米でも同じなのだろうと思います。

先日、トロントで取引先の金融機関の証券部門の本部に行った際、担当のバイスプレジデント(部長)が冴えない面持ちで「金利の(先行き)下落はうちの部門(債券売買などを主力とした法人営業部)にはよくないんだよねぇ」と。この部門だけを見ればリスクオンによって預託資金が集まりにくくなり、自分の成績が下がることを気にしているのでしょう。

この銀行はカナダでもトップクラス、世界でも有数ですが「うちの最新のトレーディングルームを見せてあげよう」とセキュリティが何重にもなっている部屋に通されました。体育館のような巨大なトレーディングルームにはマルチコンピュータースクリーンと電話を片手に忙しそうにするトレーダーたちがざっと100人はいるのでしょうか?ここで株、為替、債券すべて取引していると。彼らは北米市場が終わると次の中継地、シンガポールにバトンを渡し、その次はロンドンと世界3か所で24時間体制を敷いているそうです。

横道にそれましたが、マネーでうごめく世界の人の顔色は景気の顔色だとすればこのトロントのウォール街である「フィナンシャルディストリクト」も夏の天気とは裏腹にビル風が吹いているのでしょうか?

先週、バンクーバーのそばで私どもが手掛ける新しい不動産プロジェクトに関して市役所のプランナー(都市計画担当責任者)と会合した際、思わぬ提案を受けます。「土地の用途変更をしてもっと大きなものを作りませんか?」と。「当方のメリットは?」と聞けば「延べ床面積、ユニット数とも2倍ぐらいでどうでしょうか」提案されます。私もかつて当地で土地の用途変更はやりましたが大変な作業である一方、メリットも大きいものです。それをわざわざ当局から提案された事情とは市役所への新規開発申請が急減していることがあるようです。

バンクーバーのど真ん中。高級集合住宅地のある一角では数百メートルの間に新規開発申請の看板が7か所あります。が、まことしやかにささやかれているのは「果たして本当に開発されるのは半分ぐらいか」という噂です。

アメリカ同様金利が上がったカナダも今年に入ってすっかり景気のトーンが変わり、特に不動産部門のスローダウンは深刻な影響が出ています。完成間近の集合住宅は高い土地代と建築費で潜在的値引き余地がないにもかかわらず売れ残りが出ている模様です。超高級物件も数年前に購入契約した顧客が果たして完成した際に本当に引き渡しに応じるのか疑心暗鬼となっています。(当時は中国系の買い手が先を争うようにしていました。)

北米では人件費の高騰でただでさえ利益が確保しにくくなっている中、景気はややスローダウン、消費者の懐はやや絞り気味、お祭り騒ぎの不動産狂騒曲も鳴りを潜め、浮かれるような気分じゃないことは確かでしょう。それでもバケーションシーズンを前にせめて夏の太陽ぐらいは好きに浴びせてほしいというネアカの人々の顔を見ると「日本の2000万円問題騒動ってなんだろうねぇ」と思わず、つぶやいてしまいます。(まぁ、多分あれもマスコミが煽っているだけでほとんどの国民は忘れちゃったトピックスかもしれませんが。)

では今日はこのぐらいで。

ブログの応援もお願いできますか?クリックをするとブログランクアップにつながります。

北アメリカランキング

また明日お会いしましょう。

バンクーバー住宅市場のゆくえ4

バンクーバーは1986年の万博を契機に97年返還を控える香港などから注目され、香港や台湾からの移住と資産の分散化ブームが起き、不動産市場は活況を呈してきました。香港から見てなぜバンクーバーだったかといえばアジアから最も近い北米の都市、アメリカよりマイルドな社会環境や政治的安定感、モザイク社会と呼ばれ、中国人コミュニティ形成にハードルは高くなかったことがありそうです。もちろん、トロントにも中国系移民が多くいますが、バンクーバーの移民はトロントほど根付かない、腰の軽さがあったことも事実です。

多くの香港からの新移民はバンクーバーで満足できる仕事が見つからず、父が単身で香港に戻り、母子家庭が増え、子供はカナダの大学を卒業したら母とともに香港や台湾に帰るという人も多かったのです。それが目立ったのが2005年頃だったと記憶しています。そして入れ変わりにその不動産を買ったのが中国本土からの移民でありました。

つまり、バンクーバーの86年から始まる長期的な不動産ブームの陰には不動産好きな中国人が大きな支えになっていたことは誰もが疑う余地がないのです。もちろん、その間、為替の関係でアメリカ人によるカナダ投資ブームもありましたし、カナダ人そのものも不動産に対する執着は高く、とにかく買う、できれば投資用も含めて買う、というスタンスを貫いていました。少なくともその当時、不動産を買った人たちは数千万円から億単位の不動産あぶく銭を儲けたかもしれません。

が、異様な不動産価格高騰は一般大衆からの不満との背中合わせでもあり、州や市ではより買いやすい住宅への支援を様々な形で打ち出してきました。その中でこの数年、非居住者(=外国人)による不動産購入に対する特別税や空き家にしている場合の空室税なるものを導入し、バンクーバーに向かっていた不動産購入資金が一時、凍り付きそうになったこともあります。金利も上がり、不動産ローンへの審査基準も厳しくなりました。

追い打ちをかけたのがここ数年の中国からのマネーの動きの鈍化です。外貨持ち出し規制と彼らの懐具合の問題が大きいのでしょう。ただ、バンクーバーは中国マネーだけが集まるところではありません。イランやロシアマネーもかなり入り込み、大きなイラン人コミュニティがありますし、当地のインド人コミュニティの存在感は圧巻です。

移民政策という意味では現在の年間25万人水準から数年後には人口の1%に当たる年間35万人水準の移民を受け入れると発表しています。その多くは経済移民であるため、一定の資産とスキルをもつ人たちが多く、潜在的住宅需要は引き続き維持できるとみています。こう見るとバンクーバーに限って言えば中長期的には住宅市場は引き続き健全であると考えています。

ただし、現時点で見るとかなり落ち込んでおり、不動産屋が嘆くような状態です。中古の取引件数は18年度は17%落ち込み、新築着工件数も10%下がっています。2019年、新築着工件数はもっと下がるとみられています。売り急ぐ人は希望売却価格を1000万円単位(7-8%)下げ、それでも買い手がつかない戸建てもあります。

一方、コンドミニアムは交通の便や扱いやすさで新規開発物件は留まるところを知らず、ダウンタウンの眺望が取れる高級新築物件ではSF当たり2000ドル(平米当たり183万円程度)と東京並みになっています。価格については専門家は来年度はやや下がると予想していますが、クラッシュするような状況は全くありません。

なぜバンクーバーの不動産を取り上げたかといえばここは世界のマネーが集積しやすい環境があり、地元経済を支えている点を申し上げたかったのです。人口が増え、マネーが入り、環境があり、安定した国のもと社会サービスや教育も充実していると経済は拡大し続けるし、街はどんどん大きくなります。

世界各地で移民の問題がありますが、カナダが経済移民というハードルの高い移民を中心に受け入れており、国境を接しているのはアメリカだけで不法移民も極めて少ない点が国家の基盤となっていることは欧州やアメリカの南部で抱える問題とは一線を画しているとも言えそうです。そう考えると日本と地政学的には似ているわけで日本の外国人労働者政策等についても学ぶところはもっとあるかもしれません。

では今日はこのぐらいで。

ブログの応援もお願いできますか?クリックをするとブログランクアップにつながります。

北アメリカランキング

また明日お会いしましょう。

北米地方都市の剛腕ぶり4

私は北米で事業をして26年になります。北米の地方都市運営は、民主という名を借りた企業や市民へのぶら下がり傾向があることは意外と日本では知られていない事実かと思います。私も時折、日本からの視察団のアテンドをいたしますが、そのような事情を話すと一様にびっくりされます。

シアトル市が大企業に対して従業員一人当たり275ドルのホームレス住宅建設のための課税法案を可決しました。この税金の名前にはアマゾン税とか企業富裕税とか従業員税とか様々な勝手名称がついているようです。本件、シアトル議会で相当議論をしたそうですが、採決では9対0で市議全員賛成で可決し、アマゾンなど大企業は憤懣やるかたないといったところです。これは年間売り上げ2000万ドル(約22億円)以上の企業を対象としているため、例えばアマゾンはこれだけで11億円相当の税金を新たに払わねばなりません。

何故、こんな税が可決したかといえば街中に1万人以上のホームレスがいてそれらの人を収容する施設がないためだとしています。日本では100%通らない話でしょう。

バンクーバーを含むBC州では不動産「投機」税なるものが紹介されています。これは住宅を「金庫や投資対象」とし、空き家のまま所有し、値上がり益をかすめ取る人々を締め上げるための新税で最大で年あたり固定資産税評価額の2%を課します。これに対してリゾート地として著名な内陸部の街では猛反対が起き、大きな議論となりましたが議会は可決させています。

背景として値上がりが止まらない不動産価格の抑制ということかと思います。

当局は不動産値上がりが一部の投資家の過剰な買い上げが原因と考えていますが、これは正しくありません。最大の理由は移民国家のカナダに於いてバンクーバーはトロントと並び最も人気があるため、不動産需要は基本的に高いこと、旺盛な需要に対して労働力不足で建設コストは毎月上がるほどのインフレをおこしていること、役所が許認可費用を異様に引き上げている上に許認可プロセスが長く、金利がかさむこと、デベロッパーと当局が芸術的で複雑な形状の建物にこだわり建設コストが高いこと等々が主たる理由なのにその負担を不動産の購入者のステータスに置き換えているのであります。

シアトルのケースも景気が最も良い北米主要都市のシアトルでなぜホームレスが1万人以上も発生したのか、その根本的問題を解決しなければいくら低所得者向け住宅を作っても状況は変わりません。こんなものは「甘えの根源」で無限に作り続けなくてはいけなくなります。

北米の地方議会では基本的に許認可業務が企業側と行政側の「交渉で決まる」部分が大きく、交渉力次第でかなり結果は違ってきます。私が当地で完遂した大規模開発事業の許認可取得における法制化作業では3年かかり、47本の契約を契約しました。日本でそれをプレゼンした際、日本の役員は口をあんぐりして「あり得ない」という顔をしていましたが、それが当地の普通であり、実際に開発が完了してみればそれなりに利益が出たのであります。

シアトルの「アマゾン税」もアマゾンなど大企業側に対し当初一人当たり500ドル程度の提示があったようですが、交渉でそこまで下がったようです。

北米の大企業は保守から民主化が強まっています。都市生活者=給与所得者が主流という公式の中で公共サービスを充実させるという発想です。しかし、行政側があまりにも無謀な要求をし続ければ企業は本社移転という選択肢があることを忘れています。

また、企業も儲かっているところもあれば苦しんでいるところもあります。北米の多数の主要都市では最低賃金が15ドルに向かって段階的に引き上げられています。日本で最低賃金1500円など実現不可能でしょう。しかし、それが当地のすう勢であり、企業はそこでもしのぎを削っているのです。

しかし、企業にも限界があります。また、それらの付加税や賃金上昇は最終的に価格に転嫁され、消費者負担となります。(こちらではに日本企業のように値上げを我慢せず、「税金が上がったから値上げする」という論理がまかり通る世界です。)

これが北米方式です。日本とは相当かけなはれていると思います。見習う点もあるし、逆の点もあるでしょう。唯一いえることは我々はそんな厳しい環境で業務をしているということです。日本のビジネス環境は私からすれば緩く、恵まれていると思います。

では今日はこのぐらいで。

ブログの応援もお願いできますか?クリックをするとブログランクアップにつながります。

北アメリカランキング

また明日お会いしましょう。

関税戦争4

「米国は取引するほとんど全ての国との貿易で数十億ドル単位の損失を被っている」とはCNNにあったトランプ大統領の発言の一部です。今回のアルミ、鉄鋼への関税を通じた貿易戦争の「開戦予告」の真意は何処にあるのでしょうか?

アメリカの貿易赤字が黒字だったのは概ね1970年代初期までです。その後、赤字傾向が加速度的に進み2005年には7500億ドル近い赤字を計上します。現在でも5000億ドル水準の赤字を抱え続けています。この体質にアメリカ労働者の強い反発が何度かありました。特に対日貿易で起きています。繊維、鉄鋼、自動車、更に半導体までその対象となりました。

ではこんな赤字のアメリカがなぜ、今でも「世界一の国家」を標榜し続けることができるのか、といえば基軸通貨ドルを擁することと国の借金である国債をバンバン発行できるチカラがあるからです。その国債もアメリカの格付け会社が太鼓判を押すのですから自画自賛以外の何でもないのですが、諸外国は消費するチカラのあるアメリカとの取引を重視するため喜んでこの国債を購入するのであります。

その微妙なバランスの上に成り立ってきたアメリカという国家の基盤をトランプ大統領は「構造改革」しようとしているのでしょうか。「貿易赤字は許せない、どうにかしてこの状況を刷新するのだ」という意気込みかと思います。

ところでアメリカ人がアジア人のように働くイメージはあるでしょうか?一部の統計ではアメリカ人のエリート層の労働時間は一般的な日本人よりはるかに長いと出ているのですが、それは巨額のお金(報酬)というニンジンがぶら下がっているからであります。そういう方々は別にして一般的アメリカ人が長時間労働にもへこたれず、低賃金でも耐え忍ぶというスタイルはあまり想像しにくいかと思います。事実、アメリカへの移民層が実質的にそのような職務を支えていると考えてよいかと思います。

そう考えるとアメリカが貿易において輸出とまではいかないまでも地産地消できるほどの製造業の競争力回復をするとは一般的には考えにくいものがあります。となれば、今回ぶち上げた関税は選挙対策とみた方がよいのでしょう。

問題はここからのステージであります。すでに欧州や中国が報復の準備をしているようですが、トランプ大統領は世界を敵にそれでもこの関税競争を実行するために署名をするのでしょうか?今までのケースを見ればパリ協定の離脱、TPPの離脱、NAFTAの再交渉など「本当にやった!」と周りが驚くことをごく当たり前のように行っています。とすればこの関税についても昨日今日に始まったトランプ大統領のつぶやきではないので署名する公算は高いのだろうとみています。

では世界への影響です。仮に欧州などが報復を打ち出せば当然、その品目の貿易は低迷する公算はあります。しかし、現時点で品目数は限定されており、その間にこの関税戦争がいかにばかばかしいものか気がつき、撤回するか、トランプ大統領がすでに大統領の席にいないかのどちらかでしょう。つまり、個人的には直接的な影響は限定的にとどまるとみています。言い換えればこのニュースに対するリアクションは過大だと思います。

トランプ大統領一人が過去世界が積み上げてきた自由貿易への努力を踏みにじれるほど世界の経営は柔ではありません。アメリカのエリート層は冷ややかな目で事の成り行きを見守りながらもその影響が回避できる方策を確実に生み出すとみています。トランプの術中にはそう簡単に嵌りたくないでしょう。

では今日はこのぐらいで。

ブログの応援もお願いできますか?クリックをするとブログランクアップにつながります。

北アメリカランキング

また明日お会いしましょう。

予想通りのパウエル新FRB議長証言4

パウエルFRB新議長の話など興味ある人はわずかかもしれません。が、アメリカの「二人の大統領の一人」といえば少しは興味も出るかもしれません。勿論、アメリカに2人、大統領がいるわけはないのですが、FRB(連邦準備制度理事会)という組織はそれぐらい金融に関する実権を持っており、アメリカの経済を牛耳っているといっても過言ではないでしょう。

一方、本物の大統領であるトランプ氏は「ビジネスマン」としての自負が強く、経済活性化を政策的に推進しようとしています。言い換えれば今までの大統領は金融政策花盛りという時代のニーズもあり、FRB任せだったともいえるのですが、トランプ大統領はそのお株をFRBから少しでも奪おうと奮闘しています。税制改革もそうですし、具体案が出ませんが、強大なインフラ整備案もあります。こうなるとトランプ政権が進む道をFRBが踏み外さないようフォローしていくというスタンスにみえ、今までと攻守逆転した感すらあります。

その中でジェローム パウエル氏は考え方は前任のジャネット イエレン氏とほとんど変わらないものの民主党が指名したイエレンでは嫌だ、ということで共和党が推すパウエル氏に挿げ替えました。

今日、そのパウエル氏の議会証言が行われました。議長就任以来ほとんど公的に発言をすることがなく、就任初日に襲ったアメリカ株式市場のクラッシュにも無言を貫きました。そういう意味では何を言うのか、一応、注目されたのですが、ふたを開けてみればやはり、何も面白くない証言だったと思います。

面白くない証言とはどういう意味か、といえば市場がほぼ予想した通りの保守的で踏み外さず、言動も深入りせず、現状を追認し、金利は徐々に上げる、といったテーゼ的発言にとどまりました。本年の利上げ回数についても具体的なことには一切触れていません。言い換えれば金融関係のメディアにとってこれほどニュース性のない議会証言もない、ということであります。

では、アメリカの経済が今後もシナリオ通り成長していくのか、という点については専門家の間では議論があるところです。特に税制改革による経済刺激策は現状のように景気が比較的良い時期にやる政策ではないという意見には注目です。これにより労働市場をひっ迫させ、景気を必要以上にヒートアップさせる結果、金利が上昇し、景気を冷やす、というシナリオです。ならばパウエル氏はタカ派でもハト派でもないトランプ政権追随派で、トランプ大統領が盛り上げれば盛り上げるほど市場がオーバーヒートしないよう、ゆっくり冷やす女房役にも見えます。

オバマ政権の際、FRBは真骨頂だったと思います。リーマンショックからの回復においてFRBの果たした役割はあまりにも大きく、長く経済の主役の座についていました。バーナンキ氏からイエレン氏へのバトンタッチもスムーズで、イエレン氏は労働市場の回復という点に強い目標を置きました。

パウエル氏の証言で労働市場の話はほとんど出てきません。あるのはインフレ機運に対してコントロールする、というスタンスであります。ではインフレになりやすい環境を作ったのは誰か、といえばトランプ氏の税制改革です。首座入れ替えに見えるのはこのことであります。

少なくとも過去10年から20年、経済を主導するのは金融政策だという流れがありました。もしかするとトランプ大統領はその大きな流れを変えるのかもしれません。つまり、政権主導型の経済政策と景気対策であります。中央銀行はそれをフォローする役割にする、という役割が世界の流れになる可能性は否定しません。例えば習近平氏は今まで以上に経済政策を強く打ち出すかもしれないですし、日本も炭酸が抜けたような黒田氏の日銀より2020年オリンピック後に向けた政策期待が高まりそうな気もします。

こう考えるとパウエル議長の証言からいろいろ想像力が膨らんできてしまうのですが、こんなことでこれだけ引っ張るのも私だけなんでしょうね。所詮、あまり注目されない新FRB議長という予感がします。

では今日はこのぐらいで。
 
ブログの応援もお願いできますか?クリックをするとブログランクアップにつながります。

北アメリカランキング

また明日お会いしましょう。

イエレン議長の生み出したアメリカ4

ジャネット イエレンFRB(連邦準備制度理事会)議長にとって最後のFOMC(連邦公開市場委員会)が開催され、平穏無事に終了しました。イエレン議長は2014年に就任し、1期4年でその任から降りることになります。就任した時が昨日のように思えてなりません。

アメリカには二人の大統領がいると揶揄されることがあります。トランプ氏のような大統領は国家や外交などを牛耳る一方でFRB議長は経済を牛耳るという意味です。FRBの独立性は高く、特に近年はマネタリズムと称する市場の貨幣量のコントロールを主体とする経済政策が主流であります。かつての財政金融を主体とするケインズ学派ではなくなったところに分業体制が生まれたともいえるのかもしれません。(財政金融が主体であれば大統領と議会が主力になるでしょう。)よって、極論ですが、どれだけ不人気の大統領が選出されてもアメリカ経済だけは別の心臓が鼓動しているように感じるのはこの点でありましょう。

イエレン議長はアメリカ経済がリーマンショックから回復過程に在任したという点において「良い時期に就任した」とも言えます。前任のバーナンキ議長はリーマンショックで苦労しましたし、グリーンスパン氏もブラックマンディなどを経て、アメリカの住宅バブル崩壊はFRBのミスではなかったのか、という疑念も巻き起こったことがあります。そういう意味ではイエレン議長の4年間は追い風の中、氏の計画するアメリカ経済の回復期をほぼ予定通り進めることができました。

もちろん、氏の最終的な業績についてはあと4-5年たたないと答えは出ないはずです。例えば今の暴騰する株価がバブルでそれが何らかの拍子で崩壊した場合、イエレン議長のハト派政策があだとなったといわれる要因になるからです。

事実、ブルームバーグでは「トランプ大統領を襲う異次元バブル崩壊」というビデオ記事を展開しています。内容はトランプ相場がアメリカの大恐慌の引き金となった1929年当時のバブルと似ていて、時のフーバー大統領と同じではないか、というものであります。ただ、この内容はまるでダウのチャートがその時に酷似しているからという風にも取れ、「そうかいな?」とうんうん頷ける内容ではありませんでしたが。

さて、FRB議長の交代時期を迎えてしばらくおとなしかった為替相場が動き始めました。為替が動いたというより目先だけ見ればアメリカ国債が下落(利回りは上昇)しているトレンドと重なります。本来であればFRBが利上げを継続すると宣言している以上、金利差に目をつけてドルが買われるべきところなのに逆の展開となっています。

これをどう解釈するのか、例えば9年となるアメリカの長期的な景気回復サイクルももうここまでよ、と思う人が増えているのか、トランプ減税で材料出尽くしなのか、はたまたアメリカ一辺倒から欧州やアジア諸国へのシフトが進んでいるのか、見方はいろいろできそうです。

今、変革期にあるのかもしれません。一方でバブル崩壊を唱える人もいるのですが、地球儀ベースで見ればようやく回復途上に乗ってきた欧州や日本を含め、まだ果実を口にしていないところも多く、アメリカ一人勝手に盛り上がり勝手に盛り下がってしまっては困るというものです。

次期議長のパウエル氏もわりと石橋をたたいて渡るタイプでハト派サイドとされます。ご祝儀で3月の利上げはほぼ確実だとしてもその後については慎重な展開となるのかもしれません。「経済の大統領」交代がもたらす影響はなるべくソフトランディングであってもらいたいものです。

では今日はこのぐらいで。

ブログの応援もお願いできますか?クリックをするとブログランクアップにつながります。

北アメリカランキング

また明日お会いしましょう。
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

QRコード
QRコード
Archives
記事検索
Recent Comments
  • ライブドアブログ