外から見る日本、見られる日本人

バンクーバーの日本人社長ヒロが仕事、生活を通じて感じた経済、経営、社会、日本人観などを綴っています。

ネタニヤフ首相

イスラエル首相の反乱4

日本人にとってイスラエルが果たす意味は実に分かりにくいかもしれません。中東の方にある小国、名前は聞くけれどよくわからないという方がほとんどでしょう。ですが、西欧やアメリカにおいてイスラエルの存在はその国家をあり方を問うほど大きな意味を持っています。

イスラエルの人口は約800万人。そのうち、約4分の3がユダヤ教信者とされます。(イスラエルは宗教の自由国ですからイスラムもキリスト教徒もいます。)国内の600万人弱のユダヤ教信者に対してそのほぼ同数がアメリカに居住します。更に数は少ないですが、世界各国にユダヤ教信者が住み、各国の政界、財界に強く影響力を及ぼしています。総数わずか1300万人強程度しかいないユダヤ人がなぜ、世界を牛耳るほど力があるのか、ここでは省略しますが、アメリカやカナダ、欧州では極めて大きな力を持っています。ちなみにユダヤ人はユダヤ教の信者になればなれます。私の知り合いの日本人も結婚を機にユダヤ人になりました。その点が、血統主義をとる日本人にはなかなか分かりにくいと思います。

そのイスラエルの首相、ネタニヤフ氏がアメリカ議会で演説を行いました。ネタニヤフ氏は右派であり、中東の中におけるイスラエルの地位を守るという保守本流であります。そのネタニヤフ首相がアメリカ議会でオバマ首相が強く後押ししているイランとの核協議問題に噛みつき、ネタニヤフ首相とオバマ大統領の関係が決定的に悪化してしまいました。もともとネタニヤフ首相が議会演説する段取りをしたのはアメリカ共和党側であり、演説の際には多くの民主党議員が欠席する中での演説となりました。

オバマ大統領はネタニヤフ首相との個別会談も拒否し、非常に後味の悪い形となりました。

この関係を当人同士の行き違いとするのか、アメリカとイスラエルの温度差と取るのか、難しい所でありますが、少なくともオバマ大統領の残りの任期において政治的な関係で両者の改善を見込むことはほぼ不可能だとみて良いかと思います。アメリカ共和党としては国内で圧倒的影響力を持つ政界、財界のユダヤ系の支持を得ることで周りを固め、次期選挙への足場を築いていくことになりそうです。

個人的にはこの関係悪化は現時点では当人同士に留まるとみていますが、今後の状況次第では何が飛び出すか分からなくなります。特に3月17日に予定されているイスラエルの総選挙でネタニヤフ首相率いるリクード党が主導権を握るかどうかにかかってきます。今のところ、連立で乗り切るとしていますが、世論調査ではリクード党の獲得できる議席は22席、野党のシオニスト党は24議席を確保しそうだとみられています。まさに僅差でありますが、第三党以下は混戦で連立政権となればネタニヤフ首相が再選される可能性はあり得ると思います。

そうなればオバマ大統領としてもアメリカ民主党としてもやりにくいことになり、アメリカの外交政策の一部機能不全になる恐れがないとは言い切れません。特に民主党を陥れるような罠に引っかかり、世界の緊張が高まる状態を作り出すことも不可能ではありません。

ただし、ユダヤ人は死の商人とも言われ、ビジネスに長けているわけですから最終的に築いた財産、資産、人脈を手放すことは絶対にありません。アメリカの金庫であるFRBもユダヤ人が牛耳り、その金庫番はイエレン、フィッシャーといった大御所がしっかり管理しています。

こう類推していくと今後イスラエルがアメリカをけん制する方法としてはオバマ大統領をこの夏、どうやってゴルフ場に閉じ込めるか、そして無能化させる動きとなってもおかしくないでしょう。オバマ大統領は今年に入って「吹っ切れた奇妙な自信」と言われたりもしたのですが、難しい状況は変わりなさそうです。せめてTPP,キューバ国交回復はレガシーとして残し、中東とロシアに関しては慎重な対応が求められそうです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

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ではまた明日。

イスラエルの行くところ4

イスラエルがパレスチナ自治区ガザとの戦いに今、立ち上がったのはなぜでしょうか?私はある意味、不意を突かれたと思っています。なぜならばイスラエルの当面の敵はイランだと思っていました。ですので、この時期に隣地との戦いとは奇妙な感じがいたしました。

まずタイミングについては明らかにアメリカの大統領選挙の結果を待っていたと思われます。以前、このブログにも書きましたが、イスラエルのネタニヤフ首相は共和党が勝つか民主党が勝つかによってポジショニング変わってきますのでその結果を踏まえた行動オプションがあったのだろうと思います。

もともとイスラエルが天敵イランを攻撃するには戦略的に難しいところがあります。それは空路の確保であります。イスラエル空軍が途中の国の領空を通過する了承が取れない場合、紅海経由となり攻めにくいとされています。ところがイランそのものが経済制裁などで国内経済は相当厳しいのではないかという噂もあり、二ヶ月ぐらい前にはトルコ経由でイランが大量の金を購入したとされています。私は自国通貨の暴落を受けての対応だったと見ています。

ならば、イスラエルとしてはもう少し時間を稼いでおけばイランは自壊とまではいかなくてもかなり弱体化するかもしれないと見ていた節はあります。

ではなぜ、ガザなのか、といえばそこにイスラム原理主義のハマスが活動しており、ハマスに武器が着々と集まっているということから先制攻撃でそれを抑えるというのがイスラエル側の主張であります。原理主義という言葉は若い方にはとっつきにくいのかもしれませんが、「ある思想の究極」であると言っても良いかと思います。

私が大学生の時、「原理研」と称する活動が大学サークルルームの一角にかろうじてありましたが、多分、60年代、70年代の学生運動の最後の名残だと思います。今でもあるのかは知りませんが、少なくとも日本ではもはやあまりポピュラーではないでしょう。ですが、宗教上の原理主義となるとタリバンもそうですし、それを暴力に訴えるテロリストのアルカイーダにも繋がってきます。ただし、ハマスの場合は政党を持つもう少しきちんとした組織ではあるようですが。

ではなぜハマスに武器が集まっているかといえばそれが結局アラブの春が原因だった、といわれており、まさに「風が吹けば桶屋が儲かる」的なつながりだったということでしょうか?

さて、この戦争、収まるのでしょうか?国連やフランスなどの必死の停戦の呼びかけをふまえどこかで停戦するとは思います。ただ、オバマ大統領はアラブの春の時同様、今回も比較的後方支援的なポジションの発言となっています。多分、財政の崖問題で外交まで手が回らないというのが本音かもしれません。

イスラエルとしてもアメリカの本格的支援がなければこれ以上突っ込むことは出来ませんし、ネタニヤフ首相としては来年早々のイスラエルの選挙における「戦歴」をアピールできますのでほどほどのところで止めると見るのが正解だと思います。割と早い終結になるのではないでしょうか?そしてイランとの対決のエネルギーは蓄えておくということでしょう。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

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ではまた明日。

イラン問題はこれから4

イランのアハマディネジャド大統領が「イスラエルはいずれ消滅する」と発言していることに再び注目が集まりそうです。同大統領は国連総会の26日、ニューヨークで演説をするようですが、当然ながら540万人のユダヤ人を抱えるアメリカ本土でそのような発言をしたとなれば正にけんかを売りにいっているようなものです。

ユダヤ人と称される人はイスラエルに約550万、アメリカにそれより若干少ない約540万人が在住しこの両国で全ユダヤ人1300万人強の85%を占めるとされています。

ご承知の方も多いかもしれませんが、イランは核開発疑惑、更にはシリアのアサド政権に手を貸しているのでは、という疑惑で欧米諸国から強い非難を受けています。また、イスラエルとは歴史的な断絶関係にあります。

今年、ホルムズ海峡を封鎖するのでは、という噂で一時原油価格が急騰したこともありますが、その後、それはないだろうというアメリカの軍事専門家等のコメントが出たこともあり平静を保っています。ところが実際にはイスラエルのネタニヤフ首相は相当強硬な対イラン姿勢を取っており、最近では欧米の支援無しに単独での攻撃も示唆してきました。

私の友人であるユダヤ人と先日もこの件で話をしましたが、ユダヤ人の中でもネタニヤフ首相はちょっと変わり者という評もあるようで何をするかわかりにくいともコメントしていました。

イランとイスラエルの関係はまさに「喧嘩」状態ですが、イランはロシア、中国、そしてイスラエルはアメリカ、イギリスなどを味方につけていることから戦争を正当化する理由があれば何が起きるか想定しにくく、引き続き危険な状態が続き、来年は特に要注意ではないかと見ています。

ネタニヤフ首相としてはアメリカの大統領選挙の結果が大いに気になるところで仮に共和党のロムニー氏が大統領になれば強気の姿勢となる可能性は大いにあるかと思います。一方、オバマ氏ならば疑問符がつきます。事実、現在ニューヨーク入りしているネタニヤフ首相はオバマ大統領と会談の予定はないようです。不思議なようですが、ユダヤ票を取り込みたいオバマ大統領もイランのアハマディネジャド大統領に遠慮をしているようにも見えます。この辺りはオバマ大統領らしいともいえるかもしれませんが。

折りしもQE3で市場に資金は潤沢に滞留しています。商品相場が急騰しやすい環境にありちょっとした事象でも大きな反応を示す可能性がある市場に来年早々、爆弾が落ちなければよいと思っております。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

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