外から見る日本、見られる日本人

バンクーバーの日本人社長ヒロが仕事、生活を通じて感じた経済、経営、社会、日本人観などを綴っています。

ユーロ

消えた「有事のドル買い」4

金融市場の動きは後付けの講釈がよくあります。歴史や過去の流れを踏まえたうえでのコメントがさも当然の如く並びます。その中で今回全く出てこない言葉が「有事のドル買い」であります。過去、国際間の危機が起きた時、買われるものはドルと円と金(ゴールド)という三点セットだったのですが、今回、アメリカから地政学的にはるかに遠い北朝鮮の問題にもかかわらず、「有事のドル買い」という言葉は何処を探しても一つも出てきません。

これは過去の流れを踏襲する人からすれば一大変化なのですがそれを取り上げる記事もありません。本来であれば金融緩和政策からいち早く脱却し、利上げもゆっくりとながら進みだし、世界の主要国の中では最も安定したパフォーマンスを誇ってきたアメリカの通貨、ドルが何故、輝きを失ったのか、ここにはAI(人工知能)では判断できないゲームチェンジがあるのかもしれません。

私がしばしば引き合いに出すドルインデックス。現在91.5ポイント程度で2015年1月初頭以来の水準となっています。以前申し上げたようにチャート的には節目を切ってきているため、当面は「ドルインデックス安」が続くとみて間違いないと思います。

それをサポートするのが昨日のカナダ中銀の利上げ決定でした。7月の会合に続き、9月の会合で2回続けて利上げをしたのはカナダの各種経済指標が良好であるからです。市場では年度内にもう一度利上げする可能性も5割程度とあるとされています。極めて強気の姿勢にあります。

また、注目されていた欧州中央銀行の政策会議。ドラギ総裁が金融緩和政策からの離脱をどう表明するのか視線が集まっておりましたが、来年以降の離脱方針を明白にするとともにどのようなプログラムでそれを進めるのか、10月以降の政策会議で決めていくとしました。

もともとユーロ高ドル安のトレンドだったところにドラギ総裁の金融緩和離脱方策の明示化でユーロはさらに買われ遂に1.20台をつけ、こちらも2014年12月以来のユーロ高となっています。

ではなぜ、ドルの魅力が失せているのでしょう。最大の理由は通貨のバランスがドル対他通貨という非常にアンバランスな構図になっている点があると思います。ドルが基軸通貨として君臨したのは概ね両大戦間に英国スターリングポンドからバトンを受けてからということになります。つまり大体100年たったということです。ドルがポンドからシフトされた理由は様々ありますが、国家規模、経済規模、影響力、統率力等が圧倒していたうえに国土が戦場にならなかったことで疲弊していなかったこともあるでしょう。

そのうえでユダヤ人が英国でなしえなかった世界をアメリカで具現化し、金融を支配するというネットワークがその勝利を引き出したわけです。

ところがドルは万全ではなく、途中何度も躓きかけましたが、多くの歴代大統領は「ドル高政策」を訴え、基軸通貨として何処でも通用する紙幣にしてしまったのです。それこそ、私が82年ごろにソ連や東欧にいた時でも高額のドル建ての入国手続き料(強制両替制度)を払い、モノは「ドルショップ」で購入させられました。その後、高インフレのブラジルに行けば自国通貨は紙切れでドルを求めて泥棒までドル以外はいらないという馬鹿げた状態にありました。イデオロギーで敵対していてもあの緑色の紙幣には世界中の人があこがれたとも言えます。

この4-5年、中国は自国通貨、元を国際化させるためにあらゆる画策を進めてきました。IMFの特別引き出し権に元を構成通貨としてさせてみたり、AIIBも元の国際化の一環だったとも言えます。これに対して中国元の国際化はない、とみる専門家が主流なのも事実です。興味深いのは本日のブルームバーグにアメリカのあるヘッジファンドが中国元安を賭けて7年間相場と戦ったものの中国元は安くなるどころか強くなってきて250億円を失い、「眠れなくなり、顧客を失い、正気も失いかけ」ついに白旗を上げたと報じています。

一方、中国人が中国政府と元を信じていないのも誰も言わない当たり前の話で仮想通貨に走ったのはご承知の通り。ところが一昨日のニュースで中国がICO(イニシャル コイン オファリング)を禁止しました。こうなると資金の逃避先は金しかなくなってきます。それもあってか、金の12月先物は本日、1350ドルを超える上昇ぶりとなっており、世界を駆け巡るマネーがどこにその落ち着きどころを求めるのか皆躍起になっていると言ってもよい状態にあります。

1ドル札には「全知全能の目」が描かれていますが、ドルを発行する連邦準備銀行を管理するFRB議長以下のプロ集団が全知全能者ではありません。地球儀ベースでのパワーバランスの中で生まれた圧倒性がドルをサポートし続けたわけです。

勿論、今回のドル安は単なる循環の一連である、と反論されればそれまでです。が、世界の環境、アメリカの環境はこれまでと大きく変わってきたのは事実です。マネーの達人たちがその長期的ビジョンについてさまよい始めたとすれば別次元の金融の不安定時代があってもおかしくないのかもしれません。

では今日はこのぐらいで。

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また明日お会いしましょう。

ドル高にさせるもう一つの要因4

いくらトランプ政権下のアメリカ経済に期待がかかるとしても7年半も景気拡大が続き、まだ就任演説すら聞こえてこない中、はしゃぎ過ぎではないか、という声があるのは事実です。それでもドル高は続き、投資家はドルを「金利のつく安全通貨」と考えています。このドルの圧倒的支配感は個人的に長らく感じ得なかった状況ですが、何がそうさせたのでしょうか。いろいろ理由は思い立つのですが、今日は欧州の弱体化、特にイタリアの金融問題が引き起こすであろう頭痛の面からみていきたいと思います。

イタリアの銀行が抱える不良債権は3600億ユーロ(約44兆円)とされ、全ユーロ圏の4割を占めます。よってイタリアの銀行再建はユーロ圏の金融不安を取り除くためのキーであり、これが予定通り改善しないことにはユーロの威信には大きな疑問符が残ります。つまり、ドルに資金が集まりやすくなり、ドル高を演出しやすいということになります。(ユーロ圏の不安のネタはこれだけではありませんが今日はこれに絞り込みます。)

さて、そのイタリアの銀行の中で今、火中にあるのがモンテ デイ パスキ ディ シエナ銀行(一般にモンテ パスキ)であります。この銀行、実は1472年に営業を始めた世界最古の現存する銀行でありますが、その余命はあと4か月ともされ、早急なる延命策が必要であります。株価は今年85%近く下落し、昨日だけでも15%以上下落、時価総額はわずか5億ユーロ(約600億円)と風が吹けば飛ぶような状態であります。それでも同行はイタリア第3位行。潰すわけにはいかないのです。

同行の再建プランはイタリア政府のみならずECBからも指導を受けながら計画され、自力再建のハードルが12月22日までの50億ユーロの資金調達でありました。本来ならばこの資金調達はうまく行くはずでした。が、シナリオが狂ったのは先日の憲法改正に伴う国民投票がNOとなり、レンツィ首相が辞任したことで今回のアンカー投資家(=主要投資者)であるカタール政府系ファンドが「やーめた」と言ってしまったのです。彼らの気持ちを覆すのは極めて難しいとされ、同行はバックアッププランを模索しているようですが時間切れかも知れません。

ではイタリア政府は資金を投じて救済しないのか、といえば新しい首相、ジェンティローニ氏は所信表明で「介入の準備はできている」とし、直近ではモンテパスキを含むイタリアの金融支援のため、200億ユーロ(2兆4000億円)の公的資金投入を表明しています。但し、これを議会で通過させるにはまた一波乱あるともされます。

ではモンテパスキを救えなかったったらどうなるか、ですが、イタリアには不良債権を抱えた銀行はいくらでもあるわけでそれらの再建案に暗雲が漂い一気に金融不安が台頭しやすい状況となります。

このように欧州の金融システムはまだまだ不安感が漂っており、これが年明けの懸案材料となります。個人的には最終的には混乱は避けられると期待しておりますが、そのプロセスにおいて悲観論が覆い嫌なムードが起きるかもしれません。

ちなみにやはり不安材料化したドイツ銀行については経営危機から脱しつつあり、確か一部格付けも見通しがポジティブとなったと記憶しています。アメリカ政府との巨額の制裁金も数日中に決着するとされます。実は私はドイツ銀行の株を安値の時に少々仕込んであります。株価は最安値からは7割ほど上昇し、回復期に入っています。

私が懸念するのは市場を吹き荒れる1月の嵐であります。市場が一番警戒するのは秋と共に年明けなのですが、欧州、特にイタリアの不良債権問題をはじめ、中国の外貨流出や国債の不正取引に絡む不安感台頭などいやな材料が集まり始めています。

このような背景があるとどうしてもドルに資金が行きやすくなります。ユーロ/ドルも2002年以来のユーロ安となっており、来年早々にも為替レート1.000の攻防となるかもしれません。ではその場合の円はどうなるのか、ですが、セーフヘイブンの円の強みが現れれば円も過剰に売られないはずですが、ドルに引っ張られる展開となるのでしょうか?

正直、目先が読みづらく、地球儀ベースでの俯瞰が必要です。ここは無理をせず、一旦眺めている方がよさそうな気も致します。

では今日はこのぐらいで。

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また明日お会いしましょう。

英国のEU離脱となれば誰が損か?4

刻々と迫る6月23日の英国の国民投票。各種世論調査では離脱派がリードを広げているという内容が多く、不安感が台頭しています。離脱派も残留派もそれなりに説得力のある主張がありますが、一応、離脱という結果になった場合、いったい誰が一番損をするのでしょうか?

まず短期的視点です。市場関係者からはポンドもユーロも下落、円が対ドルで100円ぐらいまで買われるのではないか、とされています。直近の世界の株式市場を見ると一番派手にやられているのが日本であります。離脱となれば日本の株式市場のボラティリティの高さからすれば日経平均は瞬間的に4ケタ近い下落があってもおかしくない気がします。昨日のマザーズは10%以上下落していますが、その理由はリスク回避のよる換金売り。7割が個人投資家を占めるこの市場の腰の軽さが見て取れます。このペースならば投票日までの残り8日間で東京市場は疲弊し、追証が発生し、その前にボロボロになってしまいそうな気がします。つまりオーバーシュートによる自滅状態で短期的に一番影響を被るのは日本のような気がします。

では当事国の英国ですが、もちろん、離脱ショックはあると思いますが、比較的短期間で第一段階の初期立て直しは可能かと思います。第一段階とは離脱に伴う精神的ショックを伴う様々な観測が入り乱れることで世の中が混乱することですが、早期の収拾は可能でしょう。

英国中銀はこの日のために1年前から対策を練っています。市場への資金供与も通常の月一から週一に変えて金融市場の混乱を未然に防ぐ対策を作り上げています。中銀総裁のカーニー氏はもともとカナダ中銀の総裁でカナダ人です。氏が総裁だった時のカナダ金融市場のコントロールと安定感は抜群で圧倒的な能力をお持ちの方です。期待してよいと思います。

英国は外交的に三つの軸があります。一つ目は旧大英帝国のつながりでカナダ、オーストラリア、インド、南アフリカなどとの深い結びつきを利用した新たな同盟づくりが非常に早く進むとみています。二つ目は中国です。AIIBにいち早く手を挙げ、習近平国家主席が訪英した際、女王をはじめ、最高のもてなしをしたことは記憶に新しいところです。英国はもともと香港を99年間租借していた関係もあり、中国とはそれなりの縁がある国であります。

最後にアメリカですがプロテススタントとして歴史的結びつきはもちろん、JIBs(日本、イスラエル、英国)と称するアメリカを取り囲む結束の固い関係があります。つまり、英国にとって立て直し策のネタはかなり多いと考えられるのです。

一方、ガタガタになるのが大陸に残されたEU諸国であります。短期的にEU離脱派の声が高まることはもちろんですが、EUの中心となるドイツに対する目線が今後どうなるのか、読みにくい点があります。それは2017年に控える選挙であります。しかもそれはドイツにとどまらず、フランス、オランダも含むEUのオリジナル組成組の改選期に当たるのであります。

特に気になるのがフランスで極右政権である国民戦線のマリーヌ ル ペン氏、はたまたドイツのAfD(ドイツのための選択肢党)もEU離脱を主張しており、先日話題になったオーストリアの極右政党、自由党の大躍進とともに欧州大陸の一枚岩が維持できるのか数多くのチャレンジを控えています。

また、ドイツはトルコと、フランスはロシアと軸ができつつあり、欧州内部での力関係がEU外の国との政治的結びつきを含め、非常に複雑になってきていることは事実です。

こう見ると短期的には英国は非常に大きな危機にされされると思いますが、比較的早く回復する力は持ち合わせていると思います。一方、EUは構造的問題とされる共通通貨ユーロのあり方を含め、崩壊の可能性が真剣に取りざたされることもあるでしょう。確かルービニ教授はすでにそれを指摘していたはずです。

アメリカ大統領選で見るとトランプ氏は英国離脱支持派ですのでトランプ氏を利することとなります。

日本は外から見たセーフヘイブン、中から見た市場のかく乱で金融市場だけが一時的に大きく動揺することになりそうです。ただし、この手の話も常にオーバーシュートが伴います。この荒波に乗じてひと儲けなどというのは台風の日にサーフィンをする若者と同じです。まずは静観すべきでしょう。

では今日はこのぐらいで。

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また明日お会いしましょう。

ニュースが少なくなった理由4

最近、ニュースが少なくなったと感じている人が案外多いのではないでしょうか?メディアの主たる注目はギリシャ、中国の株式市場でそれらの情報もいったいいつ明白な結論が出るのか、あるいは方向性が出るのか実に読みにくくなりました。国内に目を転じれば新国立競技場の問題が毎日のように出ていますが、逆にそれ以外のニュースがないともいえるのです。

例えばアメリカから最近声が聞こえてきません。オバマ大統領の名前を新聞やメディアで見出す日がめっきり減っています。レイムダックとなった大統領に決められることが限られるからでしょうか?キューバとの国交回復も大きく取り上げられているとはいいがたいものがあります。FOMCのイエレン議長が示す金利引き上げタイミングもずるずると先送りされ、なかなかそのタイミングがやってきません。

安倍首相は「経済の安倍」と自称するほどでしたがその人気もピークを過ぎ、向かい風の中でもがいているように見えます。アベノミクス三本目の矢はどうなったのでしょうか?長期的な視点に立ち、構造改革をするはずでしたが、矢は折れてしまったのでしょうか?

透明化と民主化が生み出すボイスとボイスのぶつかり合いが世の中の主導力を失わせているとしたらどうでしょうか?

習近平国家主席は敵対する要人を次々に排除する政策を進めています。最高人民法院の奚暁明副院長を重大な規律違反で調査していると発表しています。多くの人は「またか」と思っているでしょう。習近平国家主席は延々とこれを続けるのかもしれません。その時、国家には覇気がなくなり成長の糧を同時に失うことになるかもしれません。しかし、習国家主席としてはもはや戻れない道なのでしょう。

朴槿惠韓国大統領。この方も苦戦が続いています。大統領就任から今日に至るまでほぼ防戦状態でした。支持率は確実に下がり、経済は悪化しながらも中国とアメリカの両面作戦で色が出せない政策を続けています。これも国民からのボイスが強烈過ぎて前に進めないといった方が正解です。

ギリシャ問題を決めるのになぜこれほど手間暇がかかるのかといえば、ユーロ圏では皆で決めなければ何一つ重要なことが進まないその仕組みにあります。ですから今は歩を一歩進めるにも皆で集まって会議をしなくてはいけません。いくら欧州内は日帰り圏だとしてもトップクラスが年中その会議に時間を費やさねばならないとしたら国内問題を放置しているとしか思えません。これでは本末転倒なのにその声は何処からも出てきません。

英語ではこの状態をスタックしている(stuck)と言います。We are stuck といえば我々は行き詰っているという意味になりますが、グローバル化の最大の問題はこのどん詰まり状態のことをいっているともいえないでしょうか?これは逆に地球儀ベースで見た場合、物質文化と情報だけが隅々までいきわたるようになり先進国が地球を引っ張るというスタイルから大きく変貌したことにその理由を見出すことが出来ます。

これは指導者としての能力を持つ人もグローバル化で色が薄まりやすいことになってしまいます。私はその典型的例は「北アフリカの春」と呼ばれる民主化運動で政権が民衆の声によりひっくり返ったことだと思います。しかし、政権をひっくり返すことは出来ても新しい国を作るボイスは一つにまとまらず、うまく行っているとはいいがたいものがあります。

これはより普遍的な回答を求め、賛成と反対が交錯し、事態が進展しないともいえます。私はこれが物事が進展せずにニュースが少なくなりつつある原因の一つではないかとみています。TPPもずいぶん時間がかかっています。そろそろまとまりそうな気配もありますが、このタイミングを逃すとオバマ大統領のレガシーにならなくなってしまう恐れすらあるかもしれません。

この世の中の流れはどうにも変えられません。我々はpoint of no return(帰還不能地点)にいるともいえます。この流れが変わるときがいつかは来るでしょう。それはグローバルからローカル重視という視点に変る時です。地球儀ベースの発展よりこの街、この村の行く末という視点に戻るときは必ず来ます。それはグローバル化に対する人々の疲れからの振り戻しとも言えるでしょう。

今はグローバル化がはやり言葉の様にさえ使われますが、その弊害が少しずつ見えてきたような気もします。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

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ではまた明日。

どこまで進む円安ドル高4

「為替のことは為替に聞け」ですから再び円安に走り始めた為替相場がどこまで行くのかそのゴールは誰も分かりません。専門家は対ドルで127-130円を目指す動きと解説しています。今日はこの前提とそのシナリオの可能性について考えてみたと思います。

まず、基本的なことですが、「今、なぜ再び円安なのか」との質問があれば、「今、なぜドル高なのか」と言い替えるべきと指摘したいと思います。今回の円安局面の為替相場は円に動機があるわけではなく、アメリカが利上げをしそうだという期待からドルが買われているものでユーロやカナダドルを含め主要通貨には強含んでいます。その中に円も入っているだけで円の独自の理由で安くなっているわけではありません。

今週に入ってのドル高の動きは先週金曜日にイエレン議長が諸条件が整えば今年中には利上げに踏み込む可能性を示唆したためであります。ただ、議長発言が何か新たなる指標等に基づく発言というより以前から繰り返している一般論にやや踏み込んだ形となったため市場が明白な動きを示したものです。

しかし考えてみればこのアメリカの利上げ話はもうすでに2年以上もやっているわけで円が80円から124円台まで5割以上円安になった大きな要因の一つであります。仮にこの可能性の話を延々とやっていれば更に5円、10円という円安を引き起こすそのメカニズムは市場心理以外の何ものでもなく論理性は不十分であると言わざるを得ません。

例えば株価ならば分析の技術が進み、市場の評価、同業他種との比較などある程度の妥当価格が算出されます。ところが国家の株価ともいえる為替は相対という関係で成り立っていて為替評価が絶対基準ではないところにミソがあります。(為替の歪性を補うために絶対評価の為替市場を作るという発想があっても面白いとは思いますが。)

よって今後3か月以上にわたりFOMCの人たちが妥当と考えるだけの経済指標が揃うのか、あるいは、そうなり、利上げに踏み切ったとして市場が期待するほどの利上げ幅と今後の利上げスピードになるのか、そのあたりが十分に加味されているのか疑問は残ります。

イエレン議長は雇用と共にインフレ率も十分ではないと指摘しています。アメリカから見ればドル高になれば輸入品は安くなりますから輸入物価の下落によりインフレ率にはマイナスのバイアスがかかりやすくなります。あるいは利上げ幅についてかつてない緩やかなものになると示唆されている以上、0.25%という幅ではなくもっと刻みの小さい0.1%か0.15%といった水準になるとみた方がよさそうです。仮にその程度の幅であればドルは買われすぎていることになります。

では他に理由があるとしたら何でしょうか?円やスイスフランはセーフヘイブンとして買われる通貨でありますが、今回、ドルがその役割を果たす可能性を否定できない気がします。まず、ユーロ圏ですが、ギリシャの行方は混とんとしています。イギリスのユーロ圏離脱の国民投票も控えます。いわゆるユーロ圏の一枚岩が欠け始めるリスクが存在します。

二番目に中国のリスクがあります。とにかく実態が分からないことだらけですが、最近もっと気になっているのは習体制のリスクであります。今は万全でありますが、腐敗撲滅運動を通じて習近平国家主席は敵を作り過ぎました。この体制では持ってもあと数年でその後、混乱期を迎える気がします。その際、今までのベールがはがれてしまい中国の実態と脆弱性が指摘されやすいことは歴史の繰り返しともいえそうです。私が何度か書いたオリンピック10年後説(=大きな不況や経済困苦が起こりやすいこと)を思い出していただければと思います。中国の場合は2018年となります。

中国の不調は当然ながらロシアにも響くわけで地球儀ベースで見れば目先安定しているのはやはりアメリカという事に落ち着くのだろうと思います。これが私の考えるドルセーフヘイブン説であります。

一方で円の通貨としての価値をそこまで暴落させる必要もない気がします。世の中、一方通行のトレンドはなく、必ず、どこかでピークをつけます。それがどこなのか、これから探り合いが進むのでしょう。それにしてもここまで米ドルが高くなるとアメリカ旅行にもおちおち行けなくなりそうです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

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ではまた明日。

ギリシャ問題はなぜ重要なのか?4

ギリシャの行方など日本の人にはあまり関心がないかもしれません。欧州の小国だし、日本との関係も薄い中でその国がどうなるかよりももっと気になる「あの話」のほうに飛びついてしまいます。しかし、世界経済を俯瞰すると目先、それも遅くとも6月中か7月のはじめぐらいまでにはギリシャの行方が見えてくるスケジュール感の中でそのインパクトは向かう方向次第で世界経済の10年後の絵図を書き換えるかもしれないほどだと思います。

今日はギリシャ情勢を誰が読んでも分かるように易しくアップデートしてみたいと思います。

ギリシャは公務員天国で財政支出が多く、経済運営が厳しくなっています。そのため、トロイカと称する欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)、および欧州連合EU)が中心となってギリシャを援助しています。その支援継続にはギリシャが財政再建案を示すことが条件となっており、今回、その融資の更改の時期を迎えています。

ところがギリシャは先の総選挙で反緊縮派が与党となり、チプラス首相が財政の緊縮をせずに金融支援を引き出すことを選挙公約しました。また、与党を形成するために急進左派連合は右派の「独立ギリシャ人」党と連立しています。左派と右派の連立ですから共通点は反緊縮のみであり、チプラス首相が挙げた手を下せば独立ギリシャ党は約束が違うとして与党を維持できなくなります。つまり、チプラス首相にはその政策にフレキシビリティはほぼないと言ってよい状態です。

EUを中心としたトロイカとの交渉は相当頻繁に行われています。次回のメジャーな交渉は今週のリガの欧州連合首脳会議でありますが、事務方からはこの会議で支援再開の合意に至るのは難しいとコメントされています。

一方、ギリシャはIMFからの融資が小刻みに満期になっており、その返済に追われています。ちなみに6月にはIMF宛に4回返済があります。ギリシャはこの難局を乗り越えるため、ECBからの緊急流動性支援(ELA)を受けるほか、政府や政府関連機関のお金を中央に回すいわゆるセントラルキャッシュマネージメントを行っています。国内のユーロがもはやギリギリとなる中、6月の4回のIMF宛返済が出来ても7-8月のEU宛は額が一ケタ多いのでデッドロックに乗り上げます。

昔、東欧では米ドルが貴重で私が行った多くの国で強制両替制度がありました。入国するとき滞在一日当たり何ドルを現地通貨に両替するというものです。一方、当時の東欧で現地通貨を使うところはほとんどありませんからそっくりそれが札束となって残ります。原則現地通貨は持ち出し禁止ですから強制両替制度はその国の入国料であったわけです。これはドルとローカルカレンシーの関係の一例であり、お金が無くなると国家はここまでするのです。同じことがギリシャでも言えるわけで現在取りざたされるのがユーロの流出を防ぐため、一種の資本規制をしようというものです。

そのためのアイディアの一つがギリシャのもともとの通貨、ドラクマ復活説なのですが、これは政府が借用証書を発行してユーロを使わせないというものであります。この借用証書を英語でIOUというのですが、言葉の由来は「I Owe You(私はあなたに借りがある)」であります。IOUは猪瀬元都知事が報道陣の前で見せた借用書と同じようにいったいいつまでどういう条件の借りがあるのかよくわからない証書であると想像され、実質的に二通貨制度となってしまいます。

多分ですが、トロイカはそんな小手先のことはやめてくれ、というでしょう。そうなるといよいよ資金に詰まります。今後の想定される展開ですが、一つはギリシャ側が仮に返済能力がまだ残っていたとしても期限に返済をしない方法が考えられます。これでトロイカ側を焦らせ、譲歩案を引き出す方法はあります。しかし、それは最後の手段でもあります。ちなみにローンの返済がちょっと遅れてもデフォルトにはなりません。先日もトロントのその方面に詳しい人と話をしましたが1か月程度の遅れはoverdueといって会計上、未払い扱いで済ませられます。

例えばアパートの大家がテナントから家賃が期限内に入らなかったらすぐに出ていけ、とは言えません。それと同じで多少の猶予があるという事です。日本は手形の厳密性のイメージがあるのですが、これは猶予があるところに救いがあるともいえます。

二つ目にドイツなどが盛んに進める緊縮案に対するギリシャの国民投票実施であります。これはチプラス首相が自分の首を絞めることになりますので嫌がっています。ですが、その動きは確かにあります。あるいは6月のEUへの返済に関して国民の意に反して緊縮政策を選択し合意した場合、現政権は責任を取って解散総選挙を行うというシナリオもありかと思います。

いずれにせよ、ギリシャがユーロ圏から離脱するシナリオは今のところはないと思います。それは経済のみならず、ギリシャが赤化したり、地中海のアクセスをロシア、中国に奪取されることがもっと問題だからであります。

私はトロイカとギリシャがどこかの時点で合意するとみています。そうすれば回復基調のユーロ圏にも安堵感が漂います。それに失敗すればイギリスのEU離脱の国民投票も控えていることからユーロ圏はドイツを中心とする昔の欧州の地図に逆戻りすることすらあり得ます。それは絶対に避けなくてはいけません。

これから2か月のうちに大勢は判明するでしょう。これは壮大なる生き残りをかけた欧州の駆け引きでそれぞれの戦略に我々が学ぶところも大きいと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

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ではまた明日。

欧州の金融緩和の成功の可能性4

ここまで予定通りことが運ぶと発表された時の感動にはやや欠ける気もしますが、これはエンタテイメントショーではないので刺激ばかり考えないようにしなければなりません。

ECB,欧州中央銀行の独立性も他の中央銀行と同様でありますが、二日前のフランス、オランド大統領の量的緩和の催促ともいえるべく発言には違和感を持ったことは否めません。ドイツ、メルケル首相はさらっと流していましたが、ドイツは金融の量的緩和には基本的にあまり賛同していなかったはずです。よって、今回の量的緩和への道のりは各国政府との調整に相当時間がかかり、その結果、発表したものの斬新さを失っていた、ということにもなります。

一方、アメリカが望んでいた日欧の量的緩和シナリオはこれにて完成したわけで為替のシーソーゲームでいえばアメリカの完勝となったわけです。まさに基軸通貨の賜物とも言えそうです。これにて米ドルの支配はより一層堅固なものになると考えています。あとは来週のFOMCの内容が気になるところでありますが、アメリカが利上げをする一つのハードルは取り除かれたような気がします。

もう一つのハードルである石油価格下落に伴う低インフレ対策ですが、私はサウジアラビアのアブドラ国王が逝去されたことで大きな変化があるとみています。アブドラ国王はエジプトに力を入れていましたが、アラブの春でエジプトのムバラク大統領体制が崩壊した後、アメリカ主導でエジプト再建に期待していました。が、オバマ大統領のエジプトへの「冷たい姿勢」からアブドラ国王がアメリカに対して大きな不快感を持っていたとされています。

よって、その国王の不快感をアメリカ側がぬぐうことができれば石油減産の合意は可能、ということになります。そこに石油価格のこれ以上の下落は食い止められるというシナリオができるわけで私の主観が非常に強い選択肢でありますが、まじめにその可能性は検討する価値はあるかとみています。特にイエメンの大統領府がシーア派系の武装勢力に乗っ取られている状況で国境を接しているサウジとしてはかなりの警戒感を示しています。それに対してアメリカの一定の援護は必要であると考えられ、サウジとアメリカの距離感を単なる石油価格戦争を通じた意地の張り合いでは足元を完全にすくわれる状況にあると考えられるのです。

仮にこのストーリーがすべて現実のものとなれば、石油価格は急騰し、70ドル台奪取には時間がかからないはずです。それはECBと日銀、それにFRBの共通の悩みである低インフレ率の改善に後押しになり、アメリカは利上げをしやすい環境に、ECBは量的緩和の成果があったとみなされ、日本も春闘などインフレにプラスサイドの影響をさらに後押しすることになります。つまり政治的に経済を改善するには時間がかかるとともに各国それぞれの難題を抱える中、金融政策でとりあえず乗り切ることができる唯一の方法となるともいえるのです。

個人的にはこれはユダヤの力によるところが大きい気がしています。

但し、今後の為替の展開については日経の電子版が指摘しているようにドル>円>ユーロの力関係ができ、円が独歩安になるシナリオが薄れ、レンジ内での動きになるのではないでしょうか?また、イスラムの問題のみならず、ニュースではあまり注目されなくなりましたが、ウクライナでは政府軍が東部に兵力増強をかけていますし、ベネズエラの動きもこれからは要注目になります。そんな中、世界不和が引き続き起きるようであればセーフヘイブンとしての円買いもあり得るわけで為替の動きは新たなステージに入ったと言えそうです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

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ではまた明日。
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