外から見る日本、見られる日本人

バンクーバーの日本人社長ヒロが仕事、生活を通じて感じた経済、経営、社会、日本人観などを綴っています。

商社

ウォーレンバフェット氏の日本評価は福となるか?4

バフェット氏率いるバークシャーハザウェイ社の株主総会が開催され、バフェット氏が「台湾より日本のほうが良い投資先だ」と述べるなど、日本へのラブコールを示しました。バフェット氏は先般日本を訪問し、5大商社のトップと会談を経て、商社への継続投資と商社以外への更なる投資の拡大の可能性を述べています。

今までバフェット氏が投資した日本の企業は商社を除くとタンガロイという超硬合金の切削工具のメーカーに長く出資しています。タンガロイはもともと東芝のグループ会社で上場していたのですが、2004年にMBOで独立、非上場となります。その後、バークシャー社の支配するIMCインターナショナルが非上場のタンガロイの株式を買い取ったことからバフェット銘柄として著名になったのですが、上場をしていないので一般の方にはなじみもない訳です。業績は小粒ながら利益の塊のような会社に成長しています。また福島県いわき市にあることからバフェット氏が震災後日本に初めて訪れたことでも知られています。

さて、バフェット氏の投資観は好きな人は好きだし、ドキドキさせない銘柄ばかりという点では嫌がる人も多いのが事実です。ある意味、地味な会社が多いのですが、むしろ、同社の投資規模が大きすぎるのでそれに耐えうるある程度の規模の企業しか投資対象にならない点は考慮すべきでしょう。

また、一定の配当をしながら需要が確実に維持され、将来成長余地、ないし利益増大が期待できること、企業に降り注ぐ各種リスクがどれだけ少ないのかを加味するスタイルです。例えば今回の株主総会の比較話で出てきたのが台湾のTSMCで既に手持ちの9割を売却したとされます。理由は「地政学的リスク」。

バフェット氏のことですから徹底的な分析をしているはずですが、私の予想はTSMCはいざとなれば中国に逆らえない可能性が高いとみたのだと思います。台湾の経済界は中国に敵対心を持っているところは少なく、シャープを取り込み、アップルの重要な取引先である鴻海精密工業もどう見ても中国に足を向けて寝られません。中国人は権力に弱い、これをわかっている人ならば台湾企業がアメリカになびくことはないのは分かっているはずです。

とすれば欧米とのリンクがより強く、政治的安定感がある日本は一つの選択肢になるのでしょう。ただ、バフェット氏が商社株を買い増すと発表した時もプロの投資家の間では思ったほど盛り上がらなかったのが事実です。私もその一人で商社は様々な「フック」を通じた垂直型ビジネスという特徴があるものの世界に通じる決定的な強みではない点においてそれほど評価が高い訳ではありません。

ここでいう商社の「フック」とはかつては情報でしたが、今では投資や融資など金銭面でのリンクに傾注しているようです。その点では通信会社のようなインフラを資源、食糧、木材などに置き換えたような機能であってバフェット氏好みではあると思います。

とはいえ、バフェット氏の日本評価は日本に明るいニュースとなると思います。「投資の(元)神様」に認められたこと、また先々第3、第4のバフェット銘柄が出てくる期待感を囃すことになるでしょう。日本企業に必要なのは元気の素だと思います。長年、頭を叩かれ、蓋をされ、成長しない神話を続けてきた中でコロナ明けと共にようやく企業の賃金が上がり始め、人々が動き、消費し、前向きの社会になってきたことは十分な元気のエキスと言えましょう。表題の「バフェット氏の日本評価は福となるか」について私はYESだと信じています。

もう一つ、バフェット氏がバークシャー社の投資バランスについて90%がアメリカ企業向けと悪く言えばアメリカ一本足打法にリスクを感じ始めた可能性はあります。つまり、日本の個人投資家がアメリカ株に投資をしようとしている中でバフェット氏は日本株にお宝を探すという訳です。つまり、真逆です。私は日本人のアメリカ株投資について否定はしません。ただ、バフェット氏も私も同じ思いがあるのです。それは北米は投資環境が良くない、であります。

アメリカという国は絶対でしょうか?それを疑い始めたらきりがないと思われるのですが、私は19歳の時からずっと縁があってほぼずっと北米との接点を持ち続けました。つまり42年間の実体験、そして過去学んだアメリカと今のアメリカは明らかに違うということです。となればアメリカが生み続けてきた世界のリーダーとしての価値が今後も継続できるか、その確証は少なくとも私は持ち合わせていません。

だからこそ、アメリカと兄弟のような日本に目を向けた優しいバフェットおじいさんの慧眼ではないか、と思ったりするのです。

では今日はこのぐらいで

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また明日お会いしましょう。

アメリカ人投資家たちが見る日本の景色4

アメリカの投資家たちがこのところ、続々と日本入りしています。ブラックストーンのスティーブ シュワルツマンCEO、KKRのヘンリー クラビス氏が来ていました。シュワルツマン氏は岸田首相と会談しています。世界屈指のヘッジファンドに育ったケン グリフィン氏のシタデルも今年、東京に事務所を構えると発表しています。そして注目はウォーレン バフェット氏が2度目の来日を果たし、5大商社のトップと会談を行った上で商社株の買い増しを公言しています。

何が起きているのでしょうか?

これらマネーの達人たちは「人の行く、裏に道あり、花の山」の嗅覚が異様に優れています。その匂いが日本からしてきたのでしょう。ではその発生源は何なのでしょうか?私が思う理由が5つあります。

最大の理由は地政学的理由で中国と対峙できるアジアの経済大国は日本しかない点です。とりもなおさず、日米関係という保険を盾にアメリカが日本に安心して投資ができる環境があることです。

2つ目に政治的安定感が見えていることです。議論百出を前提にドライな見方をすると岸田政権が落ち着いてきたことがあります。「検討使」だけれども何らかの実行も伴い始めていることは認めるべきでしょう。そして有力な対抗馬がおらず、追手の野党も姿が見えないほど引き離しているということで政治的安定感による経済回復の期待度は高いと思います。

3つ目に黒田氏が任期満了になったことがあります。黒田氏の評価が割れたという話題を振りましたが、黒田氏はアメリカ人にとって「サプライズは悪手の極み」ということが分かっていなかったと思います。(日米開戦のあの思い出を含めて、です。)今後、金融政策が学者主導の論理性を持った展開となるなら中期的な金融政策も分かりやすいということではないでしょうか?

4つ目が日本の相対的物価の安さです。併せて企業価値も低いのです。PBRが1倍以下が1800社もあるのは日本だけです。現在の企業価値が低いということは磨けばいくらでも伸びるということです。私が北米の投資先を考えながら「この企業はもう背伸び一杯かな」と思うほど伸びしろがほとんどない企業群が増えているのにくらべ宝の山に見えるのでしょう。「ジパング」の復活でしょうか?

最後に日本の景気が明らかに上向いている点です。物価高についてはほぼ1年間コストプッシュ型インフレで悲観に暮れ、テレビからは「今月は〇品目の値上げが予定されています」と主婦層を抱き込むような報道ばかりでした。その間、企業は調整金やボーナスでパッチワークをしていましたが、1年経ち、企業が本格的に賃上げに踏み切ったこと、それも2-3%ではなく、20-30%も上げるリーディングカンパニーが出ていることは大変革なのです。

実はこの変革に私は大いに期待をしているのです。なぜならゾンビ企業が排除される絶好の機会となっているからです。チカラがある企業しか賃上げは出来ません。賃金格差が出ると従業員の流動化が始まります。北米に比べ流動性が低かったのは横並び体質があり、能力評価が劣後し、組織作りが基本だったからです。が、今の30代以下の人たちは転職を全くいとわないのです。この大変革の予兆こそ、アメリカの投資家たちがかぎ取った臭いであると考えています。

個人的期待としてはアメリカの投資家主導で企業数をとにかく減らしてほしいと思います。上場企業ベースで5年で3割減です。例えばバフェット氏が今回5大商社を十把一絡げならぬ「五把一絡げ」にしたわけですが、5大商社が国内の専門商社などをもう少し買収して業界再編し、商社の購買力の増強に努めたらどうでしょうか?

日本は枯れ行く国家なのか、と言えば「枯らすも育てるもマインド次第」だと思っています。今の日本は高度成長期に頑張ってきた方々の中小企業の事業継承に行き詰まりがあること、ゼロゼロ融資の返済が始まり倒産が急増しており、否が応でも変わらざるを得ないところまで押し込まれたのです。相撲で言う土俵際です。

日本人は以前から外資に弱いのです。国内では強そうなことを言うけれど典型的な内弁慶。外国人には上手に反論できません。今回は開国を迫る黒船と言うより黒船に大金を積んで怒涛の投資の機会をうかがっている、そんな風に見えます。日本がそれに対してやることは「踊る」のではありません。沈着冷静にハードネゴをして良きパートナーとして協業できる体制を作ることではないでしょうか?

日本にビジネスの春の兆しが見えそうです。

では今日はこのぐらいで

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また明日お会いしましょう。

伊藤忠のカリスマ4

このブログでいわゆる著名創業者の話はよくさせて頂いています。では、創業者ではない方で凄腕を一人あげよ、と言われたら、現役の方に絞ると私は迷わず伊藤忠の岡藤正広会長ではないかと考えています。

伊藤忠と聞くと反射的に出てくるのが瀬島隆三と中国だと思います。瀬島の名前は今の若い方には無縁だと思いますが、元陸軍大本営でシベリア抑留後、伊藤忠に入社、その後、同社会長までつとめた同氏のことを書いた歴史書は数多いのですが、概ね良くは書いていません。山崎豊子の「不毛地帯」は山崎本人は否定しているものの瀬島をモデルというかイメージして作り上げた作品として著名です。

中国のイメージについては同社の社長会長を務めた丹羽宇一郎氏のことを引っ張っているのだろうと思います。ただ、丹羽氏が活躍したのは90年代から00年代で2010年には完全退任し、その後、中国に強みがあったことで菅直人首相(当時)の推しで民間人として中国の全権大使になりました。これが伊藤忠の中国イメージが強まった背景であります。

しかし、時を同じくして2010年に社長になった岡藤正広氏が伊藤忠を変えました。何がすごいのか、と言えば儲けることに特化しているという点です。2010年の純利は1281億円だったのが2020年は5013億円、2021年3月期の決算では2015年に続き再び大手商社トップの利益を確保すると見込まれています。

手腕を一言でいうと剛腕で多少の批判はものともせず、絶対にぶれない猪突猛進的なところがあります。例えば大変話題になった2019年のデサント買収は日本初の敵対的買収となりましたが、手中に収めました。岡藤氏が繊維畑であることもあり、強気一辺倒で自身の進退を賭けた戦いだったとされます。

また、子会社のファミリーマートをTOBで上場廃止にしましたがその買収価格はインパクトがない安いオファーだったと記憶しています。TOBは成立しています。募集に応じなかった海外ファンドが安すぎたTOB価格について訴訟を起こしたようですが、多分勝てないとみています。理由は周到な準備と訴訟があることを見越した対策を取っているからです。海外ファンドにとっては将来の布石という感じではないでしょうか?

つまり、岡藤氏のイメージとは儲けることに特化した日本最大の集金マシーンではないかと思うのです。では、私がなぜ、この岡藤氏を日本の代表的経営者の一人として考えているかと言えば「歌を忘れたカナリア」ならぬ「儲けることを忘れた日本企業」でここまでえげつなくお金に執着できるのはある意味、大したものと言わざるを得ないからです。

創業者や起業家のポジションは事業が花咲くことを夢見、お金は後からついてくるともいわれます。一方、岡藤氏は銭勘定第一。さすが大阪育ちであります。

ちなみに儲けを局限化する発想はミルトンフリードマン博士の株主資本主義の教えともいえますが、今は公益資本主義で利益より社会貢献という立場が主軸になりつつあります。その点からすれば岡藤氏のスタンスは7-80年代の古い考え方ともいえそうですが、数ある経営者の中でこれぐらい突出する才能、センスを持つ方がいてもよいのではないかと思います。

ウォーレン バフェット氏が日本の5大商社に投資をしたことが話題になりました。稼ぐ力と潜在能力があるとみていたわけです。その中で多くの商社は資源部門に傾注し、過去、手痛い思いをしてきました。資源は好不調の波が激しく、良いときには驚異的な利益を生み出すため、商社のリーダー的存在である三菱商事などが主力にしてきた悪い癖があります。岡藤氏はそのリスクを十分読み取り、バランスの良い収入構成にしている点もなかなか立派だと思います。

多分、このブログをお読みの方はあまり賛同しないかもしれませんが、私は経営者として稼ぐことは大事だと思っています。日本は清貧と言いますが、海外には強欲な経営者ばかりで弱肉強食の恐竜時代がずっと続いています。その中で草食系で協業と仲良しをモットーにするスタイルでは日本企業は世界では勝ちにくいでしょう。

これぐらいマネーに対してシビアにビジネスをされている岡藤氏はどんな外野の評価があったとしても代表的カリスマ経営者の一人であることは間違いないと思います。(一言お断りしておきますが、私が好きかどうかは別の問題であります。)

では今日はこのぐらいで。

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また明日お会いしましょう。

バフェット氏は総合商社がお好き?4

ウォーレン バフェット氏が日本の5大総合商社の株式の5%程度を取得し、最大9.9%まで買い増しすると報じられています。正直、驚きました。

アメリカの株式市場で日本の会社の名前が出てくることはあまりなく、ソフトバンクは例外的として、最近ではせいぜいセブンイレブンのスピードウェイの2兆2千億円のコンビニ買収ぐらいだったと思います。それでもコンビニ事業がアメリカで陽があたる業種ではないのでサラッとしたものでした。

今回の商社の5%株式取得に関して当地の報道では「Buffett Hunts Abroad With $6 Billion Wager on Japanese Firms(バフェット氏、海外に触手、日本企業に6ビリオンドル<6000億円>の賭け)」(ブルームバーグ)とあり、「ハント(直訳では狩猟)」と「賭け」という言葉を使っているところに記者の疑心暗鬼な気持ちを読み取ることができます。

バフェット氏は長年、決して日本株ファンではありませんでした。過去もほとんど日本株に投資したことはありません。そもそも過去、日本株の代名詞だったハイテク関連の投資は好きではなく、インフラ関連や生活必需関係に投資の軸足を置いていました。2016年にアップルを遅まきながら購入、これが当たり、バフェット氏率いるバークシャー ハサウェイ社のポートフォリオ上、アップルの占める割合が5割を超えてしまいました。

一方、今までお気に入り銘柄であった航空関連や銀行株をコロナの時期に次々に売却したのは時代の変化を見通した可能性もあります。つい先だってはこれまたあり得ない世界第2位の金鉱山会社の株式に投資をしました。こう見ると8月30日で90歳になったバフェット氏はその立ち位置を大きく変えつつあるようにも感じます。(もう一つの見方は投資先やポートフォリオなどの決定についてバフェット氏ではなく同社の他の人が決める影響力が強まっている可能性もあります。)

総合商社を英語でいうとtrading house、trading companyというのですが、日本独自のビジネスで適正な訳がなく「Sogo Shosya」という日本語がそのまま英語としても使えます。それでも80年代ならともかく、近年では商社も海外であまり表舞台に上がってこないのでknown as を前書きにつけないと意味が通じなくなっています。

ではなぜ日本独特のビジネスである商社だったのでしょうか?私は天然ガス関連のドミニオンエナジー、金採掘会社のバリックゴールド社に投資した点を踏まえ、資源を頭に描いているのではないかとみています。 ご存じの通り、資源株はその値動きが荒く、長いサイクルの中では極端な場合、10倍ぐらいの株価変動が起きます。現在、鉄鉱石は中国の需要が高まっていることもあり、金より値上がり率が高く、その方面の投資家では金より銀、銀より鉄鉱石という感じであります。

また原油価格も40ドル台が定着する一方、天然ガスの需要も今後、日本を含め、安定的に伸びてくるはずで当面資源関係産業に明るさがみられると予想した向きがあります。ただ、資源、鉱山株は日本では少なく、カナダやオーストラリアに有力企業や成長企業がずらっと並んでいる中で敢えて資源のない日本の商社を投資対象としたのは商社の資源取引の役割を見出したのかもしれません。

ご記憶にあるかと思いますが、数年前、資源価格が暴落した際、多くの商社は非常に大きな損失を決算で計上しました。その際、一部の商社のトップは資源取引の比率を下げると発言していましたが、実情は商社から資源をとるとかなりスカスカになってしまいます。つまり、商社にとって資源取引は屋台骨であることは間違いなく、今後、様々な資源の活用などで市場の流れを見ながらフレキシビリティを持たせ、器用にビジネスをこなすのではないか、と考えたのではないでしょうか?

商社と我々の生活には直接的に触れ合うことはあまりないと思います。コンビニと商社の関係は知る人も多いと思いますが、基本は商社は関連の食品卸会社を通じた販売と流通という裏方を通じて稼ぐ仕組みになっています。また多くの輸入される食材、穀物、肉や魚も商社が絡んでいますが、スーパーマーケットで商社の名前を見ることはまずありません。

ただ、確実に言えることは真の意味での日本の食やエネルギーのみならずあらゆる生活、産業物資の供給とそのインフラを支えている強大な企業群であることは確かでバフェット氏がそこに目を付けたのなら鋭い、と改めて感服するばかりであります。

では今日はこのぐらいで。

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就職先ランキング2019年4

就職情報会社、ディスコが発表した就職先人気ランキングにふと目が留まりました。就職先の人気ランキングという表現そのものが個人的には嫌いなのですが、一応、世間の興味の目もあるでしょうからランキングを客観的に見てみました。

最も大きな違いは国内学生が選んだ人気企業と日本人の海外留学生が選んだ人気企業が全く相違している点でしょうか?トップ10で双方にランキングしたのは三菱商事と全日空のみ。そして留学生組のトップ10はその2社以外全部外資系企業だという点も特筆すべき点でしょう。

二点目は男子学生と女子学生でここまで違いが出るのか、という点です。やはりトップ10で双方共に入った企業は伊藤忠、三菱UFJだけです。

三点目は男子は商社がお好き、女子は航空会社がお好き、という点です。男子は伊藤忠、三菱、三井の3大商社がトップ10入りで女子は1位がJAL、3位が全日空となっています。また、男子に比べて女子のBtoCへの人気は相変わらずでコマーシャルなどで身近な企業が「良い」と感じているようです。ただ、面白いことに頭に焼き付くほどコマーシャルを打ち出している携帯電話各社はソフトバンクの50位が最高でAUとKDDIにおいては電波も届かない圏外であります。

これらについて個人的偏見でいくつかコメントしたいと思います。

まず、男子2位、女子7位、総合2位の伊藤忠ですが、何故にしてそこまで人気になったのか、やや解せません。前任の岡藤正弘社長(現CEO)は確かに実力があり、現社長の鈴木善久体制でも重要案件は岡藤さんが仕切るという岡藤帝国が生み出されています。同社は瀬島隆三氏や丹羽宇一郎氏を輩出し中国関係では圧倒的力量を持っています。他の商社が資源などに傾注した中でタイのチャロンポカパンと提携するなどビジネスのうまさは評価しますが、学生好みとは思えませんでした。

次です。「女子は航空会社がお好き」。何故なんでしょうか?イメージなんでしょう。華やかな接客でしょうか?CAは今や安定職でかなりお歳になってもフライトアテンダントができます。しかし、そこに群がる女子学生が相も変わらずでは「女子の時代」はやってこない気がします。

一方、留学生が好む企業は肉食系企業が並びます。ランクの7,8,9位のボストンコンサル、アクセンチュア、マッキンゼーは骨付き肉をしゃぶるようなコンサル企業です。さらに3位のデロイト、5位のPwCは会計を通じて自分への徹底挑戦が求められます。私の個人的テイストは留学生好みの企業ですが、これらの会社では入社4-5年で自分の次の道を選ばねばなりません。振り落とされる人も相当多い点で実力勝負といえましょう。そういえば日本の肉食系代表企業であるリクルートがランク圏外しているのは寂しい限りです。

ところで日本の公務員試験ですが、キャリア採用という仕組みが古くなってきたように思えます。20代前半に受ける一瞬の試験でその人の一生のファストトラックのチケットゲットというのはあまりにもずれた発想です。人間、成長する人もいれば退化する人もいます。もっとフレキシビリティを持たせ、「既定路線の人事」なんていう時代錯誤の象徴はもう止めるべきでしょう。夢と希望をもつ有能な若者はどんどん逃げてしまうと思います。

では今日はこのぐらいで。

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決算 悲喜交交4

新年度入りと共に注目されるのが主要企業の2016年3月の決算であります。これから6月下旬の株主総会に向け、この決算を通して様々なドラマが生まれることもあります。

2015年度は第3四半期までは円安効果があり、経常利益の増幅幅が大きくなった会社に自動車などの輸出関連企業が並びます。特に輸出比率の高い富士重工やマツダには恩恵があったと思います。が、第4四半期(1月-3月)の為替は一気に円高に振れたことで影響が出てくるものと思われます。多くの企業はかなり先まで為替予約をしていますから急激には影響を受けません。但し、2016年以降の事業見通しについては為替予想の見直しを余儀なくさせられることから「目標の下方修正」となり、2015年と比べれば企業業績見通しの見栄えは落ちるかもしれません。

その中でプラスサイドのヒーローはソニーでしょうか?長年のリストラが完了し、業績は上振れしています。平井社長も一時期は相当叩かれていましたが、脱却となりそうです。一方、パナソニックの津賀社長は「必ずしも成長を目指すのがすべてではない。成長戦略は続けるが適切な目標に変更した」として、18年までの10兆円の売り上げ目標を撤回し、その代り20年に利益を15年比1.5倍にすると発表しました。想像ですが、売上至上主義への反省は東芝の状況を目の当たりにしたからでしょうか?もっとも、私に言わせれば利益を増やすのも立派な成長だと思いますが。

マイナスサイドの雄は東芝、シャープになると思います。こう並べると電機業界の悲喜交交とも言えそうですが、案外下方に振れて苦戦しているのが、新興国経済の減速で新日鉄住金やJFEといった鉄鋼、また、資源価格の大幅下落で商社はボロボロの決算が並びます。スプリント関連で苦しむソフトバンクも決算対策が必要かもしれません。

商社などに見られる決算の特徴は過去の負の遺産の吐き出しで昨年も膿を出したのに、実はもっとあったということか、この一年の更なる資源価格の下落で新たなる膿が出たということでしょう。多くのサプライズ特損計上の発表はライバル社との無理な競争、また、シェール事業のようにまだ不安定な基盤の事業に突っ込み過ぎた、とも言い替えられます。

5年前はよかったけれど今はダメ、といったビジネスはゴロゴロしています。私が以前からアセットライトにすべき、と申し上げているのは長期では投資回収が出来ないケースが多くなっている証であります。

今後、気を付けなくてはいけないサプライズ特損の可能性としては近年、海外企業を積極的に買収したようなところでしょう。日本企業による海外企業の買収は案外、上手くいかないところが多いものです。日本電産の永守社長のように自分が率先して買収企業に入り込んでいくぐらいの「同体化」をしないとなかなか成功しないものです。あるいはJT(日本たばこ)のようにマネージメントが完全に国際化している企業も比較的安泰です。一方、近年の失敗例としてはタケダがありますが、個人的にはソフトバンクもスプリントではまだ相当苦労する気がしています。

蛇足ですが、このところの日本の株式市場をみると東証一部上場銘柄の株価は冴えない展開が続きますが、ジャスダックなど新興市場の指標はぐんぐん上昇しています。東証一部には海外からのマネーが激しく出入りしますが、新興市場は個人投資家が主導性を握っています。面白いビジネスを展開している企業は新興企業に多く、私も毎日のようにへぇ、と驚くような数々のユニークさに「企業が軽いからこそできる技」なのだろうと思っています。

以前、大企業の時代から新興企業の時代へ、ということをこのブログで書きましたが、フットワークと軽さは今の時代だからこそ、重視すべきだと思います。

では今日はこのぐらいで。

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また明日お会いしましょう。

総合商社の行方4

商社の社長交代において新社長の専門分野が将来的な成長分野を暗示する傾向があります。三菱商事は来年4月に垣内威彦氏が社長に就任しますが、氏は食糧畑が長く、「非資源の深堀」などとマスコミに書かれております。

多くの商社、特に三菱商事は過去、資源関連に傾注し、深い痛手を負いました。三井物産も双日も大なり小なり資源に拘わらなかった商社はなく、その損失処理に追われました。(いや、まだ進行形かもしれません。)

その商社が非資源を掲げてその頬先を転じた先は食糧であります。興味深い記事は2012年の丸紅によるアメリカの穀物メジャー、ガビロンの買収でありました。しかしながらその買収のニュースの華々しさとは裏腹に2015年3月期には500億円の減損の計上であります。あるいは三井物産が2007年から出資をしていたブラジルのマルチグレイン社に2011年には追加出資したものの2015年には売り上げ減から損失を計上しています。それだけではなく、キリンは3000億円を投じて2011年に買収したビール大手、スキンカリオール社の業績不振による損失、1140億円を計上します。買収額の4割がこれだけでもう消えるわけです。

人口が増え続けるこの地球において食糧危機がもう何十年も言われ続け、商社の思惑が食糧事業へ傾注したことは分かります。しかし、アフリカなどの飢餓は別として本当の意味の食糧危機は今のところまだ起きていません。それゆえ食糧の高騰も起きていません。同じことは資源でもいえましょう。いつかは枯渇すると言われる資源だからこそ、その取引に旨みがあると雄弁に語られてきましたが、誰がこの数年の資源価格の下落を想定したでしょうか?

資源も食糧も今のところ安泰なのは人間の英知が危機に陥ることを防いでいるのでしょう。食糧資源は遺伝子組み換え、水産に於ける養殖、家禽類もその成長を遂げています。確かに分野によっては一時的にその不足が指摘されるものもあります。中国が高度成長を果たした際、豚肉が足りなくなると騒がれたこともありましたし、コーヒーの消費量が爆発的に伸びているからコーヒー豆が高くなるとも言われました。しかし、我々が飲むコーヒーの値段は変わっていません。

資源も同様です。例えば自動車の燃費はこの20年でざっと5割改善しています。小型車ならば20年前はリッター15キロ程度だったものが今は24キロ近く走ります。これは人口が増えず、車の総販売台数が増えない日本に於いてはガソリンがそれだけ売れなくなったともいえます。日本は原油を買い、精製していますが、それが国内では全く消費しきれずに輸出をしているのです。皮肉なことに産油国で精製できないところもあり、それらの国に輸出するケースすらあります。

こう考えると従来型の商社の強みである資源、食糧は爆発的拡大が期待できるのかふと疑問になります。

一方、我々人間社会の生活には大きな変化が見られます。一つは平均寿命が伸び続けていること、そして医学の発展で不治の病に治療の道筋が出来、より健康的で元気な生活が長く楽しめるようになりました。また、数年のうちには車の自動運転やAIで人間が考えるよりもっと的確な判断を下し、それを代行してくれるような時代がやってきます。カラダに筋力のアシスト機器をつければ高齢者でもモノが持ち上げられ、もしかすると若者と同様にさっさと階段を上がり、歩行スピードを上げられるかもしれません。それは人類の生活の常識観を完全に覆すともいえます。

言い方を変えれば、商社のビジネススタイルがオールドエコノミーで経済の基盤を形成するとすれば2020年代にはニューエコノミーがその土壌の上で開花するそんな時代の変化が生じそうです。

人間はコンピューターに話しかけるだけでことが足りる時代が間近です。アップルのSiriもマイクロソフトのCortanaも人間がコンピューターとの対話を通じてより学習し、成長していくスタイルをとりますからスマホやパソコンがあなたのすべてを理解する友達となる時代すら訪れるのです。

そんな中、商社型オールドエコノミーは人間が人間として生きていくためのファンダメンタルズを提供する産業として君臨していくのでしょう。それに対して名もない多くの新興企業が驚くような技術を次々と開発し、それらをエンドユーザー向けIT企業が買収し、パッケージ型のサービスを生み出し、人々に新たなワクワク感や新体験を提供することになります。

私が就職活動していたころ、一流商社への道は厳しく、かつ、花形でありました。採用された人たちは一様に元気があってバイタリティが尋常ではなくて、世の中に遠慮という言葉はないというぐらいの積極性のある人たちの集団でした。今でも似たり寄ったりでしょう。

それに対して今、注目を浴びるのは緻密な頭と世の中の動きを先読み出来る人たちが作り出すテクノロジーであります。この二つの相反するものが刺激をし合いながら成長への足掛かりを作り続けることでしょう。

商社が生み出した○○部門出身という独特のキャリアが邪魔になる時代がやってくるかもしれません。もっとフレキシビリティをもって全く違う世界にチャレンジしていくことが商社の生き残りのキーかもしれません。

では今日はこのぐらいにしておきましょう。

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ではまた明日。
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