外から見る日本、見られる日本人

バンクーバーの日本人社長ヒロが仕事、生活を通じて感じた経済、経営、社会、日本人観などを綴っています。

M&A

日本企業の海外戦略。弱みと強みを見てみよう4

バンクーバーで32年も仕事をしていると様々な日本企業、日系企業の動向を歴史的な軸で捉えることができます。そしてその多くが敗退という点は残念な話ですが、事実でもあります。日系企業がバンクーバーで勝てない理由はいくつも挙がります。経済規模がカナダ3番目の大きさの街で常にアメリカとも比較され、ビジネス拠点として光が当たりにくいと考えています。アジアのゲートウェイだけどビジネス都市のトロント、モントリオールからは隔離されカナダの「後背地」とされた政治、経済的立ち位置など思い浮かびます。政権もビジネス寄りではありません。よって日本のようなビジネス環境を求めるには中途半端なのです。

ですが街の規模うんうんだけではなく、日本企業が勝てない理由は他にもあります。キーは日本企業が国際的感性を持っているか、社員なり駐在員なりがローカルのビジネスを取り込む意欲をどれだけ見せるのか、そこが勝負どころなのだと思います。

かつて当地でブイブイ言わせた日本の会社の多くは日本人需要に支えられたものでした。旅行関係、日本食レストラン、各種サービス事業もカナダ在住の日本人向けや日本人旅行者の間で上手く廻していたわけです。ところが日本人は中国、韓国人と違い、群れない性格なのでむしろ日本人を避けることもあるわけです。例えば当地の寿司屋のカウンターでつまんでいれば寿司屋のオヤジが会話に首を突っ込んでくるし、居酒屋から誰と誰が来ていたという話が時々聞こえてきたりします。ですので「会話を聞かれたくないなら日本の店には行くな」になるわけです。

ではカナダにずっといる日本人ですらローカルビジネスを取り込めないのは何故なのでしょうか?ズバリ申し上げると「ローカルの人って面倒くさい」なのです。この意味は客から「あぁでもない、こうでもない」といろいろ要求されることが「ウザい」わけです。おまけにうまく出来なければ文句はクレーマー並みに言われます。普通の日本人なら凹みます。

私のビジネスは売り上げ的に言えばほぼ全部ローカルの方からです。これは私がカナダに来た時から変わりません。先々週、弊社で運営するマリーナの年間係留契約の更新の書類を全顧客に送りました。今年は平均5%の値上げを提示させて頂きましたが、早い人は10分で署名された契約書を送り返してきます。そして多くはそれに一言二言、嬉しいコメントがついています。顧客は皆、私たちが大好きなのです。

なぜ好きか、といえば問題点にはすぐに対応する、なるべく予防的措置をとり、トラブルになる前に対策を施す、そして現場スタッフは全員カナダ人のベテランを揃えていることです。私は契約を、私の右腕は集金などマネー関係をやりますが、いざとなれば私たちも現場で汚れ仕事でも何でもします。そしてそれ以上に客とよく会話するのです。現場スタッフは特にそれが上手で仕事をしているのか、井戸端会議をしているのかわからないですが、億円単位のクルーザーを所有する社会的地位のある方々の信頼を得るのは自分から突っ込んでいくしかないのです。

書籍部門も確実に売り上げが伸びてきています。特に私たちは小売りもしますが、卸が主体でカナダの大学や日本語学校向け教科書はかなり強いと思います。理由はオーバーヘッド(管理費)がほとんどなく、東京に輸出会社と拠点もあるので垂直展開を図っているので安いのです。2019年末から始めたこのビジネス、教科書の卸の金額は一度も価格改定していません。輸送費が高騰したあの時を含め、全部それを吸収できるのは無理をしているのではなく余力があるのです。

企業の多くがM&Aを通じて大きくなっていき、顧客を吸い取り、中小企業を蹴散らかします。しかし、裏返せば彼らのオーバーヘッドや買収の償却に伴うコストは大きいのです。私がアマゾンと価格的に変わらない金額で提供できるのでは彼らは大量の荷物を捌くことでコストは下がりますが、マーケティングやオーバーヘッドが非常に重いわけです。それを均すと私のような弱小と変わらなくなってしまうのです。これらと比較すると小粒でそこまで人件費が高くない日系企業なら安くても利益が出る、しかも良い仕事ができるという優位性はあるのです。

ただ、それがローカルの方になかなか認識されない、それがとても残念なことなのです。潜在的には日本人と日本企業の能力なら世界で勝負できます。なのにその才能を発揮できていない、それが私の32年間見続ける海外における日本企業の現状だと思います。

では今日はこのぐらいで

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また明日お会いしましょう。

国家間のM&Aは幻想か、現実的か?4

馬鹿々々しくてこんなことをまともに言う人も考える人もいないでしょう。国家間のM&Aです。では本当に幻想話なのか、考えてみましょう。

ロシアは18世紀から19世紀にかけ、シベリアからカムチャッカをへてアリューシャン列島まで毛皮になる動物を探し求めていました。そもそもシベリアは未開の地であり、「東に行くと何があるのだろう?」というレベルでした。シベリア東部の最果てとアラスカは「繋がっているのではないか?」と見られていたのですが、そこに幅90キロの海峡があるのを発見したのがロシアの探検家ヴィトゥス ベーリングで彼の名前が今の海峡の名前になっています。

19世紀半ば、ロシアはクリミア問題など西部ロシアの政策運営にほとんどのエネルギーを取られていたため、東部ロシアの存在は「毛皮で儲ける」程度にしか考えていませんでした。そんな中、ロシアは財政難に陥ったため、明治維新の前年である1867年、ロシアはアメリカと交渉し、アラスカを720万米ドル(直接換算で9億4000千万円)の破格でアメリカに売却したのです。それでもアメリカ議会ではこの買取を決定する際、議会では「冷蔵庫をこんな大金を払って買うのか?」という議論が巻き起こったのです。

国家とは一定の領土と国民を従え、秩序に基づき統治される固定の場所に存在する政治的共同体であります。領土は大きい方がよいと考えるのは神から授けられた大地であると考えると宗教的ではありますが、本質的なのだろうと思います。直接的には経済的便益の拡大でありましょう。

一方、欧州などで見られる小国の分離独立化は民族主義やそれを背景とする複雑な歴史が要因であります。では小国が独立して食っていけるのか、と言えば資源があるか、農業など第一次産業があるかは重要です。何もない小国では国家を形成し、世界の水準に合わせて成長させることが難しくなります。なぜなら国家は現代社会においては貿易をせず自給自足経済は極めて困難であるからです。

生産活動には人口を背景にした労力も求められます。何百年も前ならともかく、近代化した現代においては大なり小なりのインフラが整備され、医療や社会保障を少しずつでも拡充させ、国民を養うべく政府部門は確実に大きくなります。それは歳入の拡大が伴うという前提があり、企業や国民からの税収入がその基本になります。ただ、ざっくり言うなら企業からの税収は割と知れており、基本は国民からしっかり吸い上げるというのが概ねどこの国でも躍起になっている方法です。

では国民から吸い上げるべく税収が少子化で減少した場合、政府部門はどうやって維持するのか、これが今後数十年のうちに大きな課題になるはずです。そして、それが出来なくなった国家がとる方法は二つあるのだと思います。破綻し、IMFあたりに支援を求めるのはごく一般的ですが、私は国家の一部、ないし全部を売却するということもアリではないか、と思うのです。

中国とスリランカの関係を見ていると中国株式会社がスリランカ株式会社に港湾施設開発資金をローンするも、その返済に滞ったので借金のカタとしてその施設を中国株式会社が実質運営し、収益により貸金を回収するという構図は通常の企業間取引と何ら変わりないとも言えます。

これがもう少し高じた場合、中国株式会社は土地の割譲とか、スリランカ株式会社に役員を派遣し、実質的に支配することもあり得るでしょう。それはその会社(=国家)の決め事でしかないのです。日本にGHQがきた時も考え方としては管財人と大して変わらないわけです。日本の場合はおよそ7年間で再建が完了したのでアメリカは出て行った、と言い換えられます。この再建がうまく出来なければずっと居座ったかもしれません。

コロナ後、破綻国家あるいは実質破綻の国家は相当出てきています。支援はIMFのような「公的支援」の手法もありますが、「私的再生」もないとは言えないのです。

かつて「カナダはアメリカの一つの州だ」と言われたことがあります。アメリカ人の驕りでもあり、無知振りでもあったわけですが、アメリカとカナダはそれぐらい一体化しています。国家としてはもちろん違うし、それぞれのアイデンティティを持っていますが、多くのカナダで活動する企業はアメリカ資本だし、メディアを含め、文化はかなり一体化したところもあります。株式市場を見ているとアメリカかカナダが祭日の日は取引件数がぐっと落ちます。アメリカが祭日の日はカナダのクルマの量が減ります。アメリカで発行された米ドル建ての小切手はカナダの銀行でカナダドルに換算して入金出来ます。つまり政治は別だけど経済や生活感は割と一体感があるのです。

その点ではユーロ圏も似たようなところがあり、政治的独立はしているけれど他の部分はユーロ圏というかたまりと考えてよいでしょう。

こう見ると国家のM&Aこそまだないですが、より深化した国家の関係、一体感というのは今後、より進んでくると思います。日本では考えにくいですが、言語が共通のエリアである中南米のスペイン語圏は関係深化はあるだろうし、ブラジルとアルゼンチンが共通通貨構想を打ち出したのも経済圏としてはウルグアイを含め深い関係が歴史的に構築されているともいえそうです。

国家間のM&Aなんてばかばかしい話ですが、支配関係が戦争など力による時代からマネーによる時代に代わったと考えれば何一つ驚く話でもない、とも言えそうです。

では今日はこのぐらいで

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また明日お会いしましょう。

日本的会社経営ってなんだろう?4

昨年、稲盛和夫さんがお亡くなりになったあと、時間がたって確信したのは稲盛さんは松下幸之助、本田宗一郎、井深大、盛田昭夫各氏らに並ぶ日本の代表的経営者のおひとりになるだろうという点です。氏の功績も素晴らしいのですが、盛和塾を通じて稲盛思想を広く展開したことが圧倒的強みだったと思います。上述の歴史的経営者は創業者として一つの会社の歴史を作ったわけですが、稲盛さんは京セラ、KDDI、JALという3つの企業に深くかかわるだけではなく、日本の株式会社の99.7%ともいわれる中小企業の経営者の育成に努めたという点で別次元の功績があると思うのです。

先日、日本の会社に送られていた郵便物が回送され、その中にあった知らない不動産会社のニュースレターを何気なく見ていたところ、後記に盛和塾で〇年に〇賞を受賞したと記載してありました。その瞬間、この会社のニュースレターがぴかっと光ったのです。盛和塾生はブランドなのです。

盛和塾のすごいところは各地域のメンバーが塾で自分の会社のことを下世話に言えば、暴露ってしまうのです。普段は出ない中小企業の売り上げ、従業員数をはじめ、今やっている事業の苦労話などを塾生同士でシェアし、一緒に考えるのです。帝国データバンクなど比ではありません。中小企業の社長は孤独と言われますが、この塾では皆で裸になって風呂に入るようなものです。日本的と言えば日本的ですが、多くの中小企業経営者にとって強い心支えになったものと思います。

さて、本題。私はカナダで31年も仕事をしています。このブログで農耕民族と狩猟民族の話も出ます。私がコンドミニアムを開発していた頃、最上階のペントハウスにはプレミアム価格がついて一番先に売れることを経験的に知っていました。それは狩猟民族にとってトップを取り、制覇することは血が騒ぐ思いなのです。一方、日本の高層マンション開発では時折、最上階が共有スペースになっている物件もあります。私からすればあり得ないもったいなさなのですが、福沢諭吉ではありませんが、人の上に人を造らず、の価値観がしっかり根付いているのだな、と思うのです。

日本では90年代以降、大手銀行の統合を進めましたが、どの銀行も統合後、猛烈に苦労しました。明白に力関係がはっきりしていたところは良いのですが、みずほ銀行は割と似た規模のプライドが高い銀行同士の合併でしたので人事を中心に未だに苦戦しています。当然、3メガバンクの中で最も収益性が低く、トラブルも多いのは支配という思想が日本には少ないからです。海外では負けたものは勝ったものに従わざるを得ないという歴然たる歴史と事実がそこに存在するのです。

これらをみると日本を強化するのはM&Aよりも提携の方が手っ取り早いのではないかという仮説は成り立ちます。双方、良いところを持ち寄り、相手の領域に踏み込まず、です。ところが、日本はなぜか、一緒になろうという思想が常にあるのです。残念ながらほとんど、うまくいった試しがありません。なぜか、といえば主導権争いもありますが、各社の個性が強すぎて、作り出すものが妥協の産物の凡庸なモノになるからだと分析しています。

今、東芝の再建プランを日本産業パートナーズ(JIP)が取りまとめていますが、その出資者に広範な日本の大企業群が参加表明をしています。もう一つ、ラピダスという新しく生まれた日本の半導体メーカーも同様です。この会社はトヨタ、デンソー、ソニー、NTT、NEC, キオクシア、三菱UFJ、ソフトバンクというそうそうたる8社が出資し、最近ではIBMと提携して先端半導体を20年代後半にも展開する計画です。うまくいくか、と言われれば私は正直、ダメだろうな、と思っています。かつて成功した試しがないのですから、これなら成功するという理屈はどうやっても生まれないのです。

海外企業がM&Aでどんどん大きくなっていくのは買われた会社は新しいボスのもとでしっかり仕事をする切り替えができるのです。私の取引先などもこの3−4年で5、6社はオーナーシップが変わっています。しかし、それまでいた人たちはそのまま新しい看板の下で働けるのです。日本では排除の理論が先行します。買収とは経営者を蹴り落とすことである、と。

支配関係が上手に展開できる海外に対して農耕民族である日本人はシェアの思想が非常に強く、奇妙なところで個性が出てしまうのです。お山の大将と言われますがそれは買収された後でも継続する悪い癖があるとも言えます。

ならば、代替案として私は日本的企業連携を模索すべきだと思います。共同体的発想のようなもので例えば日本の建設業では一般化しているジョイントベンチャー(JV)は歴史的にみても機能しています。「同じ釜の飯は食わない」という前提の連携組織を作る、これが案外、将来の勝ち組ではないかと考えています。

では今日はこのぐらいで。

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1億総株主案、悪くはないが…4

岸田首相が掲げる「新しい資本主義」の実行計画に「貯蓄から投資への流れを作ろう」が含まれており、自民党の経済成長戦略本部が首相に「一億総株主案」が提出されました。これを受けた街の声はバッシングというか、「アホとちゃうか?」と言わんばかりの声を拾っているようですが、これは偏向報道だと思います。日本人の資産は頑なに銀行預金であって投資に向かない岩盤があるのは事実なのです。これがなぜなのか、考えてみたいと思います。

数日前、以前、弊社のマリーナを運営していた社長からメールがあり、「自分は今、アメリカの投資ファンドと一緒に動いているのだが、お前と会えないか?」と。即座に返したのは「マリーナを買収する話なら1ミリのチャンスもないから会わないよ」と。その後、電話で話をするとニューヨークのマリーナ買収ファンドが350億円の資金を元手にBC州とアメリカのワシントン州のマリーナ買収を仕掛けており、既に2つの施設が興味を示していると。2か月ほど前に彼らが視察に来た際に「お前のマリーナがお目にかなった」そうです。それに対して私の答えは「天まで札束を積まれても動かないよ」と。

弊社が所有運営する駐車場に隣接するホテルの駐車場は10年間ほど弊社が運営していて、その後、ホテルの所有者変更によりBC州最大手の駐車場運営会社に代わりました。その会社が最近カナダ最大の駐車場会社に買収され、看板が全部入れ替わりました。駐車場の運営に何か変わったことがあるかと言えばナッシングなのですがある日突然、看板が変わるというのは街でも結構見かける話です。

いわゆる買収話はもはや主婦の井戸端会議なみに起きています。現在進めているグループホームの開発事業の設計チームのうち2つの会社が短い作業期間中に買収され、オーナーシップが変更になっています。また、数日前は私が所有するあるカナダの準大手金鉱会社が南アフリカの会社に買収されると報じられ、今、売るか、新会社に託すか、考えています。

世界が金余りであることはご承知の通りですが、何が起きているのか、と言えば資本による淘汰であり、業界再編が極めて速いスピードで進んでいることです。以前、ご紹介したと思いますが、街中のオフィスビル、商業ビル、賃貸物件などはほとんどがファンドが所有し、今や自社ビルにこだわる会社は少数派であります。かつてはGMにしろ、クライスラーにしろ最高に目立つ建物を所有することが企業にとってのステータスシンボルでした。しかし、近年、経営者はそれこそ無駄の極み、我々は不動産事業者ではないというスタンスを明白にしたのです。

これは何を意味するのか、と言えば企業において事業部隊と経営側がかなり分離しているということだとみています。買収が頻繁に起き、それがスムーズに進んでいるのは経営陣が買収によるメリットを第三者などに諮問し、株主、従業員、取引先などすべてのステークホールダーにメリットがあると考えるなら経営陣や創業者が「いやだ、俺は売らない」とは言えない時代になったのです。

通常、企業の数が淘汰されれば経営効率は上がるのでメリットは大きくなるでしょう。但し、味もそっけもない運営が待っていることになります。それでも企業価値が上がるなら否定できないかもしれません。

では冒頭のお題に戻ります。なぜ、日本で「一億総株主案」が小ばかにされるのでしょうか?まさか、バブルの時に痛手を負ったおじいさんが「もう株はやらん」と言っているのをまだ引きずっているとは信じ難いです。あるいはセロトニンが少なくて、いつも不安を抱える中、株を買って1円でも下がれば「損した!」と大騒ぎする奥様を説得するのが大変だからでしょうか?

私は日本の企業が抜きんでた成長にならず、株価が十分上昇せず、時価総額が増えないこと、その間、元気のよい新興企業がIPOを通じてどんどん株式市場に参入し、株式市場戦国時代というより何が何だかさっぱりわからんというのが正直なところではないでしょうか?東証は証券コードが足りなくなってコードにアルファベットを組み合わせる仕組みを打ち出す予定ですが、人口減の日本で証券コードが足りなくなるってどういうことでしょうか?

日本ではなぜ、M&Aが北米ほど普及せず、業界の淘汰が進まないのか、と言えば経営陣と事業母体が一体化しているからなのです。つまり、仮に買収案件があっても「社長、あんな会社と一緒になるなら私は辞めまっせ」という訳です。日本人がいまだに「うちの会社は…」というのは会社組織が自分のアバター化しているわけです。これでは経営陣が独立し、ステークホールダーの利害云々以前に子供のように「あいつ、嫌な奴だから」「あんなビジネスしている会社とうちの会社を一緒にしてほしくないね」になるわけです。

これでは日本の会社の企業価値は絶対に上がりません。故に株価も上がらず、一億総株主提言などすれば「ふざけんなよー」になるわけです。自民党の経済成長戦略本部はここがわかっていないのです。というか、この説を述べている人は学者でも少ないかもしれません。ですが、海外と日本の両方でビジネスをしていると見えてしまう日本型経営の盲点の一つでもあるでしょう。

日経に「台湾企業『日本買い』の波 鴻海のシャープ買収皮切り、次の狙いは自動車」とあります。これもおかしな話で日本企業は日本企業に買収されるのは抵抗するのですが、外国企業だと割ところっといってしまいます。次の狙いは自動車。これはありそうです。国内市場が萎んでいるのに7社も非効率に競争してきたのです。日本企業同士でM&Aをしなければ7社のうち3つぐらいは外国に持っていかれるかもしれません。でもそうすれば株価は上がるでしょう。東芝も最後どうなるのかわかりませんが、たぶん、外国ファンド主導で再生され、再上場する時には外国主導であれば株価は高くなると思います。皮肉なものです。理由の一つは経営陣、特に社長の海外投資家向けの発信能力であることは確実でしょう。

一方の日本の個人投資家はこぞってアメリカなど海外へ投資の目を向けています。海外の企業がわからない人のために海外企業をベースにした投資ファンドが国内でバカ売れしています。これでは結局、日本人が日本企業を信じていないともいえるのでしょうね。

とても不思議な光景を海の反対側から眺めながら「新しい資本主義、もう少し、深掘りしてほしかったな」と思っています。

では今日はこのぐらいで。

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また明日お会いしましょう。

稼ぐ力4

日経によると日本企業の自己資本利益率(ROE)が10%を超えてきたと報じらています。見落とすような記事ですが、これは日本企業の筋肉質の体質がさらにマッスルになりつつあることを示しています。

自己資本利益率は効率的な稼ぎ方を指し示す代表的指標であり、アメリカが14%程度、欧州が10%程度とありますので一応、先進国並みの効率的稼ぎ方が日本にも根付いてきたともいえるのでしょう。

日経ビジネスの特集に「ソニー、蘇ったのか」とあります。今期は日立を押さえ電機業界ではトップの7200億円の営業利益を見込むとあります。これは同社の20年ぶりの水準であるそうです。平井さんがCEOになった時、なかなか成果が出ず、厳しい評価が多かったと思います。当時はいわゆるV字回復という言葉がはやっており、ライバルのパナソニックがそれを達成し、比較されたという不運もあります。個人的にはずっと期待していて、テレビの赤字が止まったあたりからリストラの効果が出てきたな、という感じを見て取っておりました。

その回復にはやはり切るものを切り、育てるものを育てるというスタンスがありました。「あぶはち取らず」にならないよう会社の強みと弱みをじっくり研究したのでしょう。立派です。

私は同様の復活劇を東芝に期待しています。いよいよ、問題の3月末を迎えます。ご記憶にあるかと思いますが、東芝メモリを日米韓連合に2兆円で売却し、同社が債務超過に陥り、上場廃止になるリスクを避ける、という計画がなされました。ところが、当時から指摘されていたように独禁法の審査が3月末までに終わらないのではないか、と懸念もあり、同社は「保険」として増資をして仮に東芝メモリが3月末までに売却できなくても上場廃止にならない対策を打ちました。

私は東芝問題が盛り上がっていた当時から東芝メモリの売却反対のポジションでした。では、売却しない方法はあるのか、といえばその売買契約に「本株式譲渡が実行されないまま2018年3月31日を経過した場合には東芝に契約解除権が発生する」(日経ビジネス)とあります。つまり、このまま中国の審査がぐずついてくれれば東芝には願ってもない「選択肢」が転がってくるのであります。同社は東芝メモリが核ですからこれを維持できれば同社の力強い回復が期待できると読んでいます。

日本マクドナルドも面白い回復をしたと思います。あの期限切れ鶏肉事件の際、マクドナルドのビジネスモデルそのものが崩れるのではないか、と懸念されました。私もそうこのブログで書きました。しかし、事件からしばし時間がかかったもののその後の反転は素晴らしいものがありました。それはすっかり違う店と思わせるほど過去を捨て、「おもしろい店づくり、メニュー作り」を仕掛けたからでしょう。最近も「夜マック」で100円払えばパテが2倍というハッピーアワー的新案を打ち出しました。

回復している企業はどこもスクラップアンドビルトをより厳しく行い、落とすものを落とし、価値あるものをさらに磨き上げるスタンスに見えます。

日本はしがみつくビジネスというイメージがあります。「長年やってきたこのビジネスは守り続けなくてはいけない」という発想です。勿論、守ることは大事ですが、現代社会にマッチしているのか、その潜在的ビジネス価値に対して十分なリターンが生まれているのかを勘案し、、自分たちでドライブできないなら売却して第三者に託すという発想は必要なのだろうと思います。

日本ではM&Aが静かなブームとなっています。孫正義氏のように大型案件で目立つものというより中小型案件が積みあがっており、17年は3000件を超え、史上最高となっています。これは企業や会社の新陳代謝であり、持てる資産をバトンタッチし、それを生かしてもらえる企業に花を咲かせてもらうというスタンスの何物でもありません。

そんな中、日本の株式市場はPERベースでみるとまだ12倍台と低迷し、相当割安感が漂っています。欧米並みの水準を考えれば日経平均は24000-25000円あってしかるべきとされます。日本発の世界を制覇するような面白商品はなかなか聞こえてこなくなりましたが、会社の体質は引き締まり、先々の飛躍に備えているようにも思えます。期待しましょう。

では今日はこのぐらいで。

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また明日お会いしましょう。

変化する会社の商品、専門分野4

ヤマダ電機で一坪当たり20万円台の住宅を作りませんか?
セブンイレブンでニッセンの靴下が買えます
家電業界のEコマースは今後の主力、そしてマツキヨでもネットショップ
ソフトバンクはもともとパソコン屋。今では世界が注目する携帯とネットビジネスの覇者

枚挙に遑がありません。

時代の変化とともに会社のビジネスの主力もどんどん変化しています。早い時代の流れの中、更にその先に行くために波が来る前に波を作ることさえ求められてます。あるいは圧倒的な市場規模を確保し、他者の侵入を許さないというやり方もあるでしょう。

つまり、ひとつのビジネスのスタイルに依存していてはもはや5年すら持ちこたえられない時代になりつつあるのかもしれません。企業は多大なる先行投資をしながら短期間に償却できる体力と十分な利益を確保せねばなりません。これが出来るのは資金的に余裕がある一定規模以上の企業となってしまいます。

この速い展開に適している方法はM&Aであることは疑う余地がありません。昨日まで他人の会社であったものが今日は自分のビジネスになるという買収は弱肉強食の世界でありますが、淘汰されるというより、一緒になることで双方の力がより引き出せるということではないでしょうか?

たとえば上述のヤマダ電機。住宅事業に進出するきっかけはエスバイエルというかなりへたっていた東証上場の住宅会社を買収したことがきっかけ。これを機に住宅→太陽光パネルという具合にヤマダのビジネスの展開が明らかに変わってきました。

また、買収に伴う人事面でも面白い動きがあるようです。医療機器のテルモ。同社が2011年に買収したアメリカのカリディアン社のCEOにはカリディアンのトップがそのままつくという異例の人事で、テルモの社長はナンバー2の地位にとどまっています。理由はカリディアン社の主力である血液システムはテルモの二倍の売り上げ。だから買収したのがテルモでもカリディアンに一日の長があるとしたのでしょうか?

企業買収に伴う自社のビジネスの体質改善は確実に進みます。それは企業文化が違うブラッドが入り込むだけでなく、違うビジネスを通じて新たなる創造が生み出されるとしたらどうでしょうか?

東証には12月末で3417社が上場しています。驚くべき数です。私はこの上場数が増えるにしろ、減るにしろ、日本企業の体力が回復するにしたがってスクラップアンドビルトが更に増えてくると期待しています。つまり、上場し将来性がありながらも十分な成長を遂げていない会社はどこかと一緒になり、一方で新たなるビジネスの武器をもった企業がどんどん上場していくということです。これが企業の成長であり、日本の成長であると考えています。

このような社会のなかで、我々働く者はもっとフレキシビリティをもたねばならないということかもしれません。専門の知識を生かしながら水平展開し、応用力を持たせることが被雇用者である働く者が生き残れる解かもしれませんね。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

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ではまた明日。

進む経営統合の未来図4

幻に終わるかもしれない日立製作所と三菱重工の社会インフラ事業の統合のニュースは一瞬の夢を見させてもらったのかもしれませんが、日本企業の未来図を描くに於いてとても考えさせられました。

今、日本がおかれている状況は止まらぬ円高、一層激しさを増す海外ライバル企業との競争、国内の不必要な競争を通じた疲弊、より少なくなる高い水準の労働力ではないかと思います。

これを踏まえ、さまざまな業種で提携、合併を通じて勢力地図が大きく変わりました。いまやその提携、持分関係の勢力図はくもの巣のような状態となっていますが、逆に外資が参入しにくい仕組みであるともいえそうです。

例えば、マイコンといえば日本ではもうルネサスエレクトロニクスですし、DRAM(半導体)と言えばエルピーダメモリーでしょう。が、多分、一般の方にはほとんど知られていない社名だと思います。ルネサスはNEC,日立、三菱電機の合作ですし、エルピーダは日立とNECです。

今回、日立と三菱重工が統合しようとしたインフラ事業は原子力から水処理、再生エネルギー、鉄道など幅広いものを画策していました。

ではこうやってみていくと仮に重工との統合が成功すれば日立本体で単独で進めている事業には何が残るのでしょうか?三菱重工も同じです。先に名前の出たNECでもそうですが、日本の大手企業は提携、統合を進めることにより日本型のあらたな経営スタンダードを形成するように見受けられます。そして企業は持てる力を他社と協力、融通しあう「ノウハウ持分会社」が見えてくるのではないでしょうか?

ご承知の通り、アメリカ型の経営統合は強力なM&Aで弱肉強食のスタイルでした。が、日本ではその力ずくの買収が日本風土になじまないということは過去20年以上のM&Aの実績の中で明白な形となって表れています。その代表的例が金融機関です。例えばみずほフィナンシャルグループは何時まで経っても合併時のたすきや人事を引きずり、結果としてさまざまなトラブルを連発しました。

が、お互いの強みを活かし、手を結ぶ提携や部分統合は譲歩できる部分と強硬に進める部分を分割することが出来、日本企業のプライド、ひいては日本人の「うちの会社」という意識を満足させる形になるのではないでしょうか?

実際に日本では昔からある業界では企業同士の合作がごく普通に行われていました。それは建設会社です。日本の官民の大型工事はJV(ジョイントベンチャー)と称する共同企業体が組成されることがごく普通に組成されています。そこでは双方の力量を出し合いながらプロジェクトを推進していくという意味でうまくワークしていました。

僕も実際にその現場管理を若い時にしたことが何度かありますが、お互いの企業の代表がリスペクトし仕事はスムーズでした。

僕はこの「強みを持った部分の企業連結の活性化」は日本企業を世界最強のものにさせるすさまじい潜在力を持っていると思っています。逆転の発想ですが、日本には似たような会社がごろごろしていました。そしてお互いがしのぎを削っていました。が、少しずつ、特化する分野を変える事でお互いがガチンコしないような市場を作り上げました。

そこから一歩進んだのが部分提携、統合です。これにより会社の数は減ります。一方で強大な資本投下を実現することが出来ます。マーケットシェアも当然ながら大きな改善となり、結果として世界に勝負を打って出ることが出来るのではないでしょうか?

韓国は97年以降特に産業育成を国策として強化してきました。LGとサムソンの競争領域がダブらないよう微妙な調整をしてきたのは政府の関与があったからでしょう。結果として両者とも世界での知名度は飛躍的に上がり、マーケットシェアも大きく伸ばしました。

今、日本に必要なのはまさにこの強さです。

この日本型部分提携、統合のスキームがさまざまな産業に水平展開すると非常に面白い事が生じます。たとえば、すき家でマックが食べられるとか、スタバでサブウェイが食べられるといったクロスオーバー店への創造です。馬鹿な想像だと思うかもしれませんが、こういうことを一番好むのは日本人だということを最後に書き留めておきましょう。

今日はこのぐらいにしておきましょう。
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ではまた明日。
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