2019年09月09日

紗由美の冒険 第5章 10


 妻は、ちょっと考えてから、こう返信をしたそうです。

  【早速にありがとうございます。私は予定もなく大丈夫なのですが、主人に聞いてみないとお返事が難しいです】

 その後、電源を切ってファミレスにいたわけですが、後で開ければ、次のメールはすぐに入っていたようです。

【ご予定がないなら、先生にとっても幸いでした。ご主人のご協力はこれからも必要になると思います。じっくり話し合ってお決めください。明日の十時頃、ご自宅のそばに行く用事があります。もしもご都合がつかないようでしたら、それまでにご連絡ください】

 強烈というか、ヤリ手と言うべきか、こういうのを強引というのでしょう。けれども、その裏側には「これが平田先生のためになる」という自信か「これで人妻を落とせる」という目論見のどちらかかが、あるいは、ひょっとすると、その両方が隠れているのです。

 幸か不幸か、妻にとって、それが前者である可能性を信じたくなる余地があり、私にとっては後者だとしか思えない、というのが現実です。

 相手の思いを否定できず、自分の思いを肯定できず。胸の中にモヤモヤを溜めるしかなかったはず。けれども、最後に決めたのは私です。

 つまりは、さゆが朝からシャワーを浴びて出かけていき、私はそれを送り出したと言うこと。

「多分、何もないわよ? ガッカリしないでね? すこ〜しだけ、触られちゃうのは、防げないと思うけど。いいのね?」

 それは私を安心させたかったのでしょうか? それとも挑発なのでしょうか? 

 さゆは、ハッキリと「触られちゃう」と言っています。その裏側にあるのは「感じちゃう」ということ。さすがに、それは言葉にできません。けれども、私は、やはり「見たい」と思ってしまったのです。たとえ、地獄の苦しみがあったとしても、いえ、そんな苦しみをこそ、味わってみたいと思う自分が、自分でもわかりません。
 気が付けば、私は、妻を「そっち」へと追い込むことしか考えていませんでした。

 だから、私は「昨日と違って」と強調せざるを得ませんでした。

「今日は、さ、もう、エッチなことをされるのは、わかってるから、ホテルまで行ってもいいよ。っていうか、行って欲しい。その代わり途中経過を教えて欲しいし…… できれば、ホテルで中継して欲しいな。スマホをつなぎっぱなしにすれば良いだろ?」
「ホテルなんて行きませんよ〜だ。え? あ…… もう〜 なんで、そんなに哀しそうな顔になるんですか? もう〜 ヘンですよ。奥さんが、他の男の人とホテルに行かないって言ったら、そんな顔するなんて〜 あなたってばぁ。もう〜 えっち」
「いや、ほら、でも、これって、なんでもするっていう命令だよ? 僕が命令しているんだから、ちゃんと言うことを聞くんだろ?」
「む〜 でもぉ、私から誘うなんて、きっと、できないと思うのですケド…… ああ、もう! わかりました! はい。あなたのおっしゃるとおりにしますからぁ。ああ、私、何で、言うこと聞くだなんて、言っちゃったんだろう。もう〜 あなた? 私、あなたを愛してるんです。それはわかってくれてますよね? ええ。愛してるんですよ? ホントに、エッチなんて、他の人としたくないんですからね? あなただけ…… はい。ホテルに行くかどうかは知らないけど、もしも行っちゃっても、ホント、怒らないでくださいね? 絶対ですよ? 嫌いになっちゃイヤなんだからぁ。それとぉ、何があっても、家に帰ってきたら、きっと、あの…… 可愛がってください? 絶対ですからね?」
「もちろんだよ。さゆが、どんなに疲れて帰っても、一晩中、付き合わせるからね?」
「う〜 あの〜 もしも、向こうから言われなかったら、何もしないからね? それでいいですか?」

 普通なら、人妻をホテルに誘うはずもありません。さゆの「もしも」は、明らかに方向性が逆です。それはとりもなおさず、さゆ自身が一番「ホテルに誘われる」と信じている証拠でもありました。

「もちろんだよ。さゆから誘わなくて良いよ。そんなことをしたら、オレ、きっと爆発しちゃうから」
「む〜 私から誘うハズなんてないですぅ、もう〜」
「でもさ、昨日の今日だよ? 夜まで長い時間、二人でいるわけだし。何もしないわけがないよね? また、いっぱい濡らされちゃうよね?」
「む〜 そんなことないもん」
「じゃ、約束。途中で報告すること。メールで良いからね? 時々、トイレに行って、証拠写真も見せてね?」
「証拠写真?」
「さゆのエッチな場所の写真を撮るんだよ」
「え〜 そんな恥ずかしいコト! ひど〜い」
「あれ? 命令して良いんだったよね?」
「む〜 ああぁ、ホント、ヘンな約束しなければ良かった。む〜」
「じゃあ、ミッションの確認ね。メールで報告。時々、オマンコの様子を写真で見せる。そして、ホテルに行ったら、実況中継をすること。よろしく」
「もう〜 エッチなんだからぁ〜 でも、いいわ。こ〜んなにイジワルな旦那サマに、う〜んとヤキモチ焼かせちゃうから。あなたが聞きたそうなシーンになったら、ちゃんと聞かせてあげるわ。覚悟してね? あなたがヤメろ〜ってどなっても、途中で止めてあげないんだからぁ」

 ことさらに、強気なことを言うさゆですが、その顔から読み取れたのは、言葉とは裏腹の「不安」という感情。けれども、その不安が「私にどう思われるか」なのか、それとも「自分がどうなってしまうのかわからない」ことなのか。どちらなのかは、永遠の謎。

『きっと、それは、さゆ本人にも、わからないんだろうなぁ』

 何度も何度もためらって、愛情確認のキスを繰り返してから、さゆは、私以外の男とデートを決めたのでした。

『それにしても、あの服を選んだのは、一番気に入ってるから、って理由だけだよな? あの服の秘密、気付いてないのか?』

 妻の残り香を鼻腔いっぱいに吸い込みながら「なぜ」を考えてしまう私でした。 
 










fsatosi at 21:00コメント(0) 
作品 | 紗由美の冒険

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