2019年09月11日

紗由美の冒険 第5章 12

【も〜 あなたのせいだよ! なるべく気をつけますけど、丸一日、気にし続けるのは、きっと難しいです。だから、たぶん、下着、見られちゃってます。ごめんなさい。】
 【君が何を言ってるのかわからないけど、今日一日楽しんでおいで】

 さゆからのメールにはウソが入っています。見られたのは下着ではないことを知っています。ほぼ、ナマのオッパイを見られてしまったのだと、ちゃんとわかってるのです。

『オレ以外の男に見られるんだぞ。ナマ乳よりも、エロい、あのオッパイも、乳首の色までも、見られちまうんだぞ?』

 返事はありませんでした。次のメールが届いたのは四十分ほどしてから。

【画廊が開くのは午後になるので、先に上野で美術館に行くそうです。】

『それなら、わざわざ、午前中から行く必要なんて無かったじゃん』

 自分の「趣味」のために送り出しているのに、我ながら、矛盾した感情だと思います。けれども、今頃、二人が仲良く美術館デートをしているのかと思うと、リクツなんてなく腹が立つのも本当です。

 短いメールが何本か。いずれも、どこの美術館に入った。休憩で喫茶店に入る、というもの。

 もちろん、約束してある証拠の写真は一回も送られてきませんから、そこにも、イライラしていたところに、画像付きのメールが着信。

 恥 と一文字だけのメールに貼ってあったのは、美術館のトイレでしょうか。鏡に映るさゆは、かすかな笑みを口元に浮かべて、そこはかとない緊張の顔。

 そこに続いたのは、待ち望んでいた写真でした。

『お? あんまり濡れてないな』

 下着もワンピースも脱いで丸裸。ということは、ここは個室の中でしょうか?

 はしたなくも、あの、しなやかな脚をガニ股に開いて、自らの股間にスマホを差し入れて撮っています。
 それだけでは、楚々とした部分が見えないのに気付いているのか、精一杯、片手で大陰唇を広げていますが、スマホのライトをかすかに反射する程度の濡れ方です。全く濡れてないとは言えないけれど、濡れているとも言えないほど。大陰唇も膨らみ、クリトリスもコリッと立っているのは興奮の印と言えば印ですが、肩すかしを食らった感じです。

  【まだ、あんまり濡れてないの?】
【そういうことを、直接聞くなんて、旦那様、キチクだと思いま〜す】

 たった一行だけ。ちょっとムッとしました。

『質問を、そうやってかわすかのかよ』
 
 と思いきや、私の考えていることがわかっているかのように、すぐに次のメールが送られてきました。

【だって、あの下着だもん。まだ、あんまり触られてないけど、視線を感じてドキドキしちゃいます。北山さんの視線が何度もブラに届いちゃいました。きっと、気付かれちゃったと思いますよ。あなたのせいですからね】

 その画像は「タコ」を連想させました。ヌルヌルの軟体動物が持つ、赤い粘膜が、画面一杯に広がっている写真です。

 なんだよ、これ、全然違う…… あ、さては、さっきは拭いてから撮ったのか。

 まるで触られ、イカされた後のように、トロリと濡れそぼち、今にもたれてきそうなほど。

【さっきのは、拭いちゃった後です。恥ずかしかったからです。ウソをつくみたいになってごめんなさい。こっちが本当の私です】

 そして、一息おいて、次のメール。

【サービス。これが、今日の私だよ?】

 トイレの鏡での自撮り写真。ちょっと俯いて、左から見えている写真でした。

『こんなに、かよ!』

 思った以上に、生々し過ぎました。あわせの部分が、クッと浮き上がっているために、蛍光灯の光でも、十分すぎるほどの生乳テイスト。画像を拡大すれば、乳首までもがハッキリと映っていました。

『ナマ乳よりも、男の目を引くじゃん』

 私が考えていた以上に、妻のオッパイを見せてしまったのだと思うと、腹の底からのモヤモヤが、キューッと胃を締め付けてきます。実に勝手な言い分ですが、こんな下着を着けているのに、なんでこんなに見られやすいワンピを着たのだと、怒りすらこみ上げてくる始末。

 もちろん、その怒りをぶつけるわけにはいかないのだという、最後の理性は働いています。

【これだと、もろにオッパイを見せちゃってるね。あとで、じっくりと揉ませてあげるの?】
   【どうしよっかな ハート  あなた、愛してる】
【本当は、触って欲しいんじゃないの? オナニーしたい?】
 
返信がないまま、昼を過ぎました。

 食欲はゼロ。コーヒーを一口飲んでは、メールの着信を確かめ、外を眺めては、またコーヒーを飲んで、メールの着信を確かめ続け、また、外を眺める。

 三杯目のコーヒーが冷たくなっても着信しません。ひょっとして、スマホが壊れているのかと、無意味にネットを開いて、また閉じる。そして、また、新たな珈琲を落とそうかと思った時に、次のメールが来ました。

 【怒らないで】
 
 たった五文字のメールを見て、私は立ちすくんだのです。
 





fsatosi at 21:00コメント(0) 
作品 | 紗由美の冒険

コメントする

このブログにコメントするにはログインが必要です。

amazon
blogram投票ボタン
訪問者数
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

livedoor プロフィール

古川さとし

Archives