2019年11月08日
演劇「あの星にとどかない」を観に行く・・・ #くちびるに硫酸

個人的なことですが
社会人になって何年か経った頃
演劇にのめり込んだ時期がありました・・・
演劇(観劇)にハマったキッカケは
フランスの劇作家ロスタンの戯曲
シラノ・ド・ベルジュラックという作品を
たまたま観に行ったことでした・・・
その作品の台詞の美しさ
台詞回しの巧みさに
雷に撃たれたような衝撃を受けたのです。

それから毎週のように演劇を観に行くようになり
それが高じて「会社を辞めて劇作家になりたい」
などと(今思うと)馬鹿げたことを
本気で考えるようになりました・・・
結局会社は辞めませんでした。
自分に戯曲を書く
才能が無いことに気付いたからです・・・
そして演劇を観ることも
しばらく無くなりました・・・
まるで 夢から醒めたように・・・
今でも演劇・・・好きですけどね

そんな先日の土曜日
とある演劇を観に行きました。
個人的に大好きな
「gekidanU」のアトリエで上演された演劇
「あの星にとどかない」

この作品は
「くちびるに硫酸」というユニットの演劇で
gekidanUのアトリエを使用した
gekidanUプロデュース公演Vol1
サブタイトルは
誰かを好きになったことがある大人の60分絵本

アトリエ(劇場)は住宅街の一角にある
普通の民家の2階・・・
日常空間の最たるものである民家の部屋が
完全なる非日常空間として存在しているのです。
まるで 見知らぬ人の家に入り込み
見知らぬ家族の私生活を垣間見ているような
不思議な感覚・・・
そんなアトリエで観た演劇・・・
素直に胸に刺さりました・・・

幸福は確かにあって
だけど目には見えない
人は幸福の痕跡を目にしてようやく
そこに幸福があったことに思い至る
僕らは・・・僕らはあのとき幸福だったんだ
まちがいなく

物語の中で繰り返された台詞・・・
言葉が軽んぜられる時代にあって
心に秘めた 大切な言葉を
ひとつひとつ 大切に紡いでくれた演劇でした

限られた空間と時間で演じられる「演劇」は
それ故に
観る側の感性と想像力を果てしなく刺激し
きっと作者の意図するストーリー以上に
観る側の解釈の世界は広がっていく
そんな「演劇」が好きだし
この作品は、まさに「それ」でした。
物語、アトリエ
キャスティング、照明、音楽・・・
なんでもない街の一角に
こんな空間と時間がある奇跡・・・
劇中の人物 一つ一つの台詞
一期一会のそれを反芻すれば
そんな作品に出会えた幸せを
果てしなく胸の奥に感じた夜でした・・・
fsuppo at 22:09│Comments(0)│
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