「経営の理想」というエントリーでも書いた通り、弊社ではできるだけ短い時間で仕事を終えて、余暇を充実させていこうという方針で運営している。

効率を上げるためには、当たり前だが「こうすれば効率化できるのでは?」といった改善案の収集が不可欠だ。しかし単に社内で「改善すべきところがあれば言ってください」などと言っても、意外と案は上がって来ないものだ。

多くの場合その理由となるのは、2点である。

1)そもそも自分の取り組んでいる方法が「非効率ではないか?」と考える機会は少ない
2)「非効率ではないか?」と思っていたとしても変わるのが面倒。そのままが楽という気持ちがある


まず1について。
周りがやっていること、先輩に習ったこと、あるいは世の中で普通と思われていることが、自分にとっての当たり前となっている。

当たり前になっていることについて、疑問を持ったり、違うやり方があるのではないか?と思うことはなかなかタイヘンだ。考えるのが面倒だし、何より変えるにはエネルギーがいるからだ。

しかし同じやり方を長く続ければ続けるほど、それを変えにくくなるし、変えたくなくなる。人間というのはそういうものだ。 

たとえば今の時代、パソコンとスマホを使うのが当たり前であり最先端のビジネススタイルとされている。
1人に1台パソコンが配備されているのが「当たり前」である。

しかしこれは本当に、当たり前なのだろうか? 「本当に」1人1台のパソコンは必要だろうか?
もちろん、IT開発会社であり、エンジニアが多い会社なら、必ず要ると言えるだろう。
しかし弊社の場合、そうではない。お客様とコミュニケーションをして、企画を提案する会社だ。
常にいかなるときもパソコンが目の前にある必要は果たしてあるだろうか。

こういうことを検討すると必ず、「ないと困る」とか「ないと仕事に支障が出る」という意見が出るだろう。
しかしこういったことは、実際に試してみないとわからない。

そもそも、勤務時間中にパソコンはフル回転しているだろうか?
Yahooニュースを見ていたり、Facebookを見ている時間もあるはずだ。
調べ物をしているうちに関係のないblogページを見て……といったこともあるだろう。

8時間のうち書類作成やメール返信に仮に6時間使っているとしよう。
であればパソコンの稼働時間は3/4なのだから、人数に対して3/4台あればいいことになる。

会社にあるパソコンを減らして、共有してみるとどうなるだろうか?
あくまで試してみないとわからない。


それ以外にも、

・個人のメールアドレスは必要か?部署ごとでいいのでは?
・個人の携帯電話は必要か?
・文房具は全員ひとりひとつ必要か?
・お中元やお歳暮はすべきか?
・年賀状と年賀メールでは何が違うか? 

など、当たり前を疑ってみることで、いくらでも点検事項がある。
そしてその重要性は、会社の状況や時期によっても変わってくるだろう。

なんでもかんでも変えたらいいのではなくて、重要な事は、
「これは本当に必要なのだろうか?」「こうすることが本当に重要だろうか?」
と疑問を持ち、変えていくことだろう。

人と同じやり方をしていては、人と同じ効率になる。
効率を高めたければ、人と違うやり方をしなければいけない。

その積み重ねが、大きな力になってくるのだと思う。



次に2の「変えるのが面倒」「変わるのが面倒」であるが、これは組織が肥大化すればするほど顕著になる。
自分としては、「これは無駄なのでは?」と思っても、先輩が聞いてくれなかったり、あるいは提案する勇気が持てなかったりする。日本だと自主的な遠慮というか、「自分みたいな下っ端が提言して、エラそうだと思われたくない」 もっと言うと「自分みたいな下っ端が言えない何か特別な理由があるのではないか……」などと恐縮してしまうのだ。

会社の長い歴史の中で、経験的に、「一見無駄だけど実は結果的に効率的なこと」というのはもちろんある。しかし多くの場合、無意識的に繰り返されていることで、時代に合わなかったり、ニーズとずれてきたりしていて、無駄になっていることも確実にあるのだ。それは新しいスタッフの新しい目で見て初めて発見できることも多い。

そういったことが、常に見直される環境を作らねばならないと思う。

個人的な経験として、1番ストレスになるのは、「この会社ではこうすべきなんだ」などと理由になっていない理由で、貴重な時間を無駄に奪われることだ。

「本当にこれ、必要なんかなあ?」「もっと良いやり方が、何かあるのではないか?」と思いながら、時間を奪われるというのは、能力の高い人ほど顕著にストレスになる。

個人的な経験では、広告代理店の仕事では毎回、無駄に綺麗なパワーポイントを作らされる。
手書きと写真で伝わるようなことを、どこかからダミー写真を持ってきてまで具体化して説明することを要求される。クライアント側も、そうしてもらうことが当たり前であるという風だった。 

奇妙なのはクライアント側も、どれだけ資料作成に手間がかかっているかをわかっているので、直して欲しいとか細かく変えたいと思っていても、遠慮が働いて、「まぁ、タイヘンでしょうからこれでいきましょうか……」みたいなことになっていたことだ。

無駄の山を目の前にして、貴重な時間を取られるのが苦痛でしかなかった。

余談が長くなったけれど、
現場のスタッフにとって、「無駄なので変えましょう」というのはとても勇気がいることだ。
加えて、メリットがなく単に精神的な負担があるのであれば、変えようとは思わないのが普通だ。
僕が社員でもそうだろう。

だから、

・改善の提案は常に声をあげやすいような「空気」を作る(制度ではなく)
・良いと思った提案は、まずとにかくやってみる「空気」を作る
・現場のスタッフよりも先に、上司や社長が、「これは非効率なのでは?」と考えて改善案を実施するようにする
・得られたメリットはスタッフに還元する

といったことが重要なのではないだろうか。

最も重要だと思うのは最後の項目で、削減できた無駄とかお金を、できるだけスタッフに還元することではないだろうか。これが現場から意見を出してもらって効率化に結びつける1番の方法だと思う。

結局、お金が浮いた時に会社の利益にしてしまうと、スタッフとしては自分にメリットがないのだから、「気づいていても変える(変わる)のが面倒だからだまっている」ということになる

そのことに気づいてから、少しずつ還元策を実施している。弊社では飲み会は無料、視察などの際に必要であれば実費およびタクシー代も無料などとして、できるだけ金銭的にもスタッフに還元するようにしている。業務時間外の研修は半額を補助している(補助額は今のところ1人につき月額1万円まで)。

ここをもっと推し進め、無駄を削減し、効率化すれば、どんどんスタッフに還元されていく。それはお金として戻ってきたり、休みが増えたり、勤務時間が短くなったりというメリットを用意していきたい。

改善すれば、自分たちにメリットがあるというサイクルを認識してもらい、多くのアイデアが出てくるようにしていきたいと考えている。