1998年にベトナムで行われたタイガーカップ(いわゆる東南アジアサッカー選手権)のグループリーグ最終戦で起こった“事件”。12年ぶりにその映像を見ました。 この試合のことは当時メディアを通じて全世界に(?)伝えられたので、日本のサッカーファンの間でも けっこう有名な話だと思いますが……。
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歴史に残る勝負の主役を演じたのはタイ代表とインドネシア代表だった。ホーチミン市で行われたこの試合の前の時点で、インドネシアは勝ち点6を獲得していてグループ1位、既に決勝トーナメント進出を決めていた。一方のタイは勝ち点4で、3位のミャンマーと並んでいたが、得失点差で優位に立っており、このグループ最終戦でインドネシアに大敗しないかぎりは決勝Tに進めるという状況だった。

最終的にグループ1位になると、次の準決勝の相手は地元のベトナム。2位の場合はシンガポールと対戦することになる。タイもインドネシアも、ベトナムとの対戦を避けるため(※)、グループ2位になることを望んでいた。

※なぜ彼らがベトナムよりもシンガポールと対戦したかったのかというと――当時のシンガポール代表はそれほど強いチームではなく、開催国でモチベーションの高い(?)ベトナムより楽な相手だと判断されていたことに加えて、グループ1位になった場合は次の準決勝の試合のために、ホーチミンから遠く離れたハノイへ移動しなければならなかった――というのが理由とされておる。

試合が始まって数分が経つと、何やら怪しい雰囲気がピッチの中に漂い始めた。両チームとも守備が見るからにいい加減で、前に攻めていってもフィニッシュするのを避けているようだ。そして、時間が経つごとに、わざとショットを外したりしているのも分かってきた。

そうこうしているうちに後半へ突入(笑)。インドネシアのゴールキーパーがついに痺れを切らしたのか、定位置からドリブルでぐんぐんと前線へ上がっていき、中距離ショットを放った。すると、タイの選手も負けじと観客席に向けてボールを蹴り入れたりして、もう収拾がつかない。ただ、「あまりふざけすぎてはマズイ」と思ったのか、互いに2点ずつを仕方なく取り合い、試合は終了時間に近づいていった。

このまま2−2のドローで終わるかと思われた追加タイム。インドネシアがとうとうやってしまった。「引き分けではグループ1位になってしまうぞ……。絶対に失点しないといけない……」 自陣ペナルティエリア内で味方からバックパスを受けたインドネシアのディフェンダーが、まるで意を決したかのように自分らのゴールにボールを蹴りこみ、ネットを揺らしたのだ。この強引な手段により、インドネシアは望みどおりの「負け」を手に入れた。

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当時バンコクに在住していたワタシはリアルタイムでTV中継を観ていたのですが、あまりに気味の悪い(※)結末に遭遇し、憤慨するというよりも、「よくもここまで露骨なことができたもんだ」と逆に感心してしまいました。不謹慎かもしれませんが、「こんな珍しい試合になるのだったら、録画しておけばよかったな」なんて思ったものです。(改めて見ると、八百長同然とはいえ、インドネシアとタイのそれぞれの1点目は両方ともややスーパーなゴールですな・苦笑)

※この「故意のオウンゴール」のシーンを映像で見ると、一瞬、サイドが突然逆に入れ替わったように見えたりするので不気味。 上の動画で、タイのテレビ局がやや面白おかしく伝えているところは、さすがタイというカンジ

さて、せっかくの勝負を演じきったタイとインドネシアでしたが、このあとの準決勝ではそれぞれベトナムとシンガポールにあえなく敗れて終了。当然ながら、この暗黒の試合の後すぐに各方面から大きな批判を浴び、翌日にはもう、両国サッカー協会がFIFAから罰金や国際大会出場停止などの制裁を受けるなんてことも報じられていましたし、準決勝をやる時点ではもう まともに勝負をするなんて状況ではありませんでしたね……。結局のところ、グループ1位だろうと2位だろうと、まったく意味がなかったことになってしまいました。

この大会はシンガポールが初優勝を飾り、幕を閉じました〜。

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msia thai 2002ちなみに、その後の2000年大会(タイ開催)、2002年大会(インドネシア・シンガポール共催)ではタイとインドネシアがファイナリストとなり、“東南アジアの2強”が健在であることを印象づけました(両大会とも優勝はタイ。2000年のアジアカップでも両国代表は立派なフットボールをして健闘)。でも、2004年大会からはシンガポールが台頭、ベトナムも力をつけてきました。最近はインドネシアのポジションがちょっと落ちぎみかな。。。(写真はタイガーカップ2002年大会のマレーシア-タイ戦@シンガポール国立競技場)