<花伝社 2011年>
まず、この本には、よくあるオカルト風の本のように大地震の恐怖を煽るようなフィクション、準フィクション的な記述はまったくないので、その点はご安心を(笑)。あくまでも科学に基づいた内容です。必要以上に専門用語を使うこともなく、とても読みやすくなっています。

(ここから5段落にわたる「前置き」は本書と直接関係はないので、読み飛ばしていただいて結構です・笑)

2009年8月11日早朝に起きた静岡沖地震(マグニチュード6.5、モーメント・マグニチュード6.3とされる)。そのとき、ワタシは初めて緊急地震速報というものを聞き、「これがいわゆる『東海地震』なのか!? いや、『南関東地震』??」などと思いながら、とりあえずベッドから降り、小学生の頃によく避難訓練でやったように 机の下に隠れたりしたほうがいいのかどうか迷いながら、揺れが来るのを待った。ワタシが居住する地域では震度4(最大震度は静岡県の御前崎市、牧之原市、焼津市、伊豆市の一部地域で観測された6弱)で特に被害はなかったが、緊急地震速報を聞いてから実際に揺れを感じるまでの十数秒間(?)の初体験はけっこう緊張感あふれるものだった。

数日後に政府機関から発表されたところでは、この静岡沖地震は「想定される『東海地震』に結びつくものではない」という。もちろん(?)「東海地震」そのものでもないという。しかし、震源は「東海地震」の想定震源域の中だった。そこで疑問が湧いた。「想定される『東海地震』」「想定震源域」の「想定」とはどういう意味なのか? そもそも「東海地震」とは何なのか? たしかに、「○○年内に『東海地震』という名の大地震が来る」とは昔からよく聞いていたが、実のところ、その意味についてはよく理解していなかったし、それまでは、しばしば話に聞く「東海地震」の発生確率などの情報に対して特に疑いを持つこともなかった。(よく考えれば、まだ起きていない地震にすでに名称が付いているのも不思議かも……)

そこで読んでみたのが、『公認「地震予知」を疑う』(2004年)という本。この中で著者は、日本で進められてきた地震予知事業の問題点についてかなり細かく指摘する一方、あくまでも現代の科学で分かっている範囲での地震のメカニズムなどを丁寧に説明していた。地震予知の話と直接は関係しない記述もちょくちょく出てくるものの、「東海地震」対策を含む地震予知事業の実態について参考にできるところは多かった。

その後、内閣府が公表している東海地震対策や気象庁の東海地震解説資料を参照したうえで、他のいくつかの文献なども読んでみて、自分なりに「東海地震」についての結論は出た。簡単に言うと、●「東海地震」が起こるかどうかは誰も分からない(起こる可能性は否定できないが、近い将来には起こらないという可能性も否定できない) ●「東海地震」が起こるとしても、いつ、どれくらいの規模で、どのようなかたちで起こるかは誰も分からない ●「東海地震」は、ある一説に基づいて文字通り想定された地震であり、現在においては、科学的に明確に予知されているものではない――ということ。どれも、知っている人は知っていることだが、知らない人は知らないことだ。ロバート・ゲラー氏の言うように、なんとなく、「時計が時を刻むように、あらかじめ決まっているマグニチュード8の地震が、近い将来東海地域を確実に襲う」と思い込んでいる人も少なくはない。

「○○年以内にマグニチュード○○の地震が○○地域で起こる可能性は○○%」などという曖昧な数字に振り回される必要はない。ただし、このようにして想定される「東海地震」みたいな大地震がいつ起こってもいいように(?)日本全国で対策を立てることは必要なこと。そういう意味では「東海地震」のような想定があったほうがやりやすいのかもしれない。しかし、本当の意味での地震予知というものがまず不可能である以上、こうした想定による対策は全国単位でやらなければ無意味だろう。


さて、前置きが長くなりすぎたが……

前述の『公認「地震予知」を疑う』の著者である島村英紀氏の新しい書籍が、東日本大震災の後に出版された。ここでは、地震予知の問題点指摘や批判はほどほどに、現時点で科学的に分かっている地震に関する知識や、現実として可能である地震・津波対策などについて、項目ごとに簡潔に紹介されている。(「帰宅難民にならないために」「地震保険の問題」といった具体的な対策を記した項目もある)(書中の記述の一部は、過去の著書の中にある内容と重なっている)

冒頭に書いたとおり、この本には、よくあるオカルト本のように地震の恐怖をいたずらに煽る記述はまったくない。(「巨大地震はなぜ起きる」という書名は普通すぎて(?)あまり目立たない気がする……) ちなみに島村氏は、ちまたでしばしば話題にされる「地震雲」や「動物の地震予知(動物の異常行動?)」などについて、地震との関連を科学的に立証できないことを理由に全否定はしていない(分からないことは「分からない」として、否定も肯定もしない姿勢に好感が持てる)が、災害時に人間に起きやすい心理状態が そうした前兆が現実にあったような錯覚を作り上げている可能性を指摘している。

ネットや口コミで広がる曖昧な情報や誤解、デマなどにより、地震に対する恐怖を必要以上に(?)感じてしまっている人がいたら、一度この本を読んでみるといいかもしれない。