2014年05月25日
不動産鑑定士の伊東良平です。
先日、(公社)日本不動産学会主催のシンポジウムに参加しました。その中で、マンションの敷地権について興味深い議論がありましたので、私見の補足を含めて紹介します。
総務省の調査によると、大都市では戸建住宅よりもアパートマンションのマンション方が戸数(棟数ではなく、ユニットの数)が多く、神奈川県では、平成20年の時点でが56.1%が共同住宅です(平成20年住宅・土地統計調査)。共同住宅には、賃貸アパートや賃貸専用のマンションも含まれますから、共同住宅の全てが区分所有ということではありませんが、神奈川県民の多くが区分所有のマンションを持っていることになります。
で、そのマンションの敷地権ですが、ほとんどの場合、敷地権の割合は専有面積(壁芯面積)の割合になっているんじゃないでしょうか。そうじゃない例も数多くありますが、新築マンションをマンションディベロッパーが分譲する際は、建物完成前に売りますから、登記面積が不明のため壁芯面積を利用して敷地権割合を決めるのですが、階数や眺望などに関係なく、単純に床面積の割合を敷地権の割合としている例がほとんどだと思います。
一方、分譲する際の価格は、階数や眺望、間取りや使い勝手など、色々な点を考慮して決めます。ですから通常は、床面積当りの分譲価格は、各戸でバラバラ(というより、この価格の決め方こそが、マンション販売のキモななんです)ですよね。
さらに、分譲後に数年経ち、中古マンションとして再販されたりすると、新築時の分譲価格とは離れていって、古くなる分安くなったり、場所によっては地価が上がって分譲時より高くなったりするわけです。
ここで良く考えてください。床面積当りの価格は各戸で異なるのに、土地の敷地権の割合は、床面積当りの価格の差に関わらず、床面積当りでは”1”なのです。これって、おかしいと思いませんか?
といっても、固定資産税や都市計画税は、土地と建物は別々に課税され、敷地権割合で課税されますので、床面積当りの価格に関係なく決まります。相続税の課税基準も同じです。税金の決まり方は、現実の眺望や間取りの良し悪しと関係ないのです。
こういった点、マンションが存立し普通に運営されている段階では、あまり問題にならないのですが、マンションの建替えや、取り壊して敷地を売却するような場合(正確には今の制度では、建物を取り壊す前に不動産業者にまとめて売却するのですが)、問題が顕在化します。
これらを解決する際の考え方に、「効用比率」「地価配分率」「みなし借地権」という考え方があり、不動産鑑定士は良く使うですが、一般には理解が浸透していないと思います。細かい説明は省きますが、区分所有のマンションの建替えや敷地売却がこれから進む(進めないとスラム化しちゃう)と考えられる中、理解が広まって行くことを望みます。
2013年10月25日
司法書士の芦川京之助ですぅ。
不動産に関係する(かもしれない)相続放棄のお話です。
不動産に関係する(かもしれない)相続放棄のお話です。
相続放棄の申述は、亡くなった方(被相続人)の相続財産が、債務超過(マイナス)の場合に、消極(マイナス)財産が積極(プラス)財産より多いときに、よく利用されます。
もっとも、債務超過の場合だけでなく、通常の相続の場合にも、積極財産が多いとき(プラス)にも、することができます。
もっとも、債務超過の場合だけでなく、通常の相続の場合にも、積極財産が多いとき(プラス)にも、することができます。
相続人間での相続放棄(相続人間の合意)は、被相続人の債権者に対しては効力がありません。
債権者からの請求を免れるためには、債権者の同意が必要です。
債権者との関係でいえば、家庭裁判所に相続放棄の申述をすることによって、確定的に債務を免れることができます。債権者の同意を得る必要がありません。この場合、債権者対しては、相続放棄申述受理証明書を見せれば終わりです。
相続放棄の手順は、次のとおりです。
(相続放棄する人)
相続開始を知った時から、3か月以内(原則)に、被相続人の最期の住所地の家庭裁判所に「相続放棄申述」の申立書(そのほか戸籍謄本など)を提出します。
(家庭裁判所)
相続放棄の申立人に、質問書(難しい内容ではありません。)を郵送します。
(相続放棄する人)
家庭裁判所に、回答書を郵送します。
(家庭裁判所)
相続放棄する人に、相続放棄受理通知書を郵送します。(相続放棄手続の完了)
(相続放棄する人)
債権者に、相続放棄受理通知書コピーを郵送します。
第一順位の法定相続人全員が相続放棄すると、第二順位の法定相続人に相続権が移りますので、その人も、相続放棄したければ、同様に、家庭裁判所に対して相続放棄申述の申立書を提出することによって、相続放棄をすることができます。
司法書士の芦川京之助でした。
http://legal-heart.com/main/
司法書士の芦川京之助でした。
http://legal-heart.com/main/
2013年08月10日
司法書士の芦川京之助ですぅ。
質問:
妻には、夫が司法書士に依頼した内容を司法書士から聞き取る法律上、正当な理由がありますか?
質問:
妻には、夫が司法書士に依頼した内容を司法書士から聞き取る法律上、正当な理由がありますか?
回答:
司法書士法第24条「司法書士又は司法書士であつた者は、正当な事由がある場合でなければ、業務上取り扱つた事件について知ることのできた秘密を他に漏らしてはならない。」という規定、すなわち、秘密保持の義務があります。
この規定がありますので、一般の人が司法書士に仕事を依頼する場合、安心して、ご自分のこと(依頼した内容など)が他の人に伝わらないという安心感もあり、司法書士に仕事を依頼することができます。
この規定がありますので、一般の人が司法書士に仕事を依頼する場合、安心して、ご自分のこと(依頼した内容など)が他の人に伝わらないという安心感もあり、司法書士に仕事を依頼することができます。
例えば、次のような場合、司法書士は、知り得た事実を伝えてよいでしょうか。
事例
・司法書士がある夫婦の夫から仕事の依頼を受けました。その妻とは法律上、関係のない内容です。
・司法書士は依頼された内容の書類を作成し、夫宛てに書類を郵送しました。
・その妻が、司法書士に要求します。内容は、次のとおりです。
夫宛ての郵便を受け取りました。郵便物の内容を確認していませんが、郵送された書類には「実印」を押印しますか。さらに、その書類のために「印鑑証明書」を取得する必要がありますか。書類に実印を押印するのか、印鑑証明書が必要なのか、教えてください、という内容です。
その妻がその内容を知りたい理由は、その夫婦間では、実印を押印する書類は、妻の面前で押印すること、印鑑証明書も妻が役所に取りに行くことになっているからです。ですから、妻としては、当然、「知る権利がある」ということです。
この事例の場合、基本的に、司法書士が依頼された相手は、夫であって妻ではありません。依頼された内容は、法律上、妻に関係がありません。ですので、妻に、書類の内容やどういう種類の印鑑が必要なのか、印鑑証明書を用意する必要があるのかを教える義務は、司法書士にありません。
妻に、これらの内容について、教える法律上「正当な事由(理由)」もありません。いくら妻からお願いされたとしても、教える法律上「正当な事由(理由)」がありませんので、教えることができません。
結論として、妻が、どうしてもこれらの内容について知りたいのであれば、夫に聞くしかありません。
司法書士 芦川京之助
司法書士 芦川京之助
2013年08月01日
司法書士の芦川京之助ですぅ。
株式会社や有限会社は、聞いたことがあると思います。ご自分の勤めている会社や世の中の多くの会社が、株式会社や有限会社という組織形態の会社です。街中や名刺で、よく見かけますね。
でも、合同会社という名前の会社は、街中で見かけませんね。株の取引がされている会社の組織形態が、株式会社です。株式会社であっても、中小零細企業のように株式会社の株式が公開されていない会社もたくさんあります。
有限会社は、現在でも存在しますが、有限会社を新たに設立すること、作ることが、今ではできません。
一般的な営利企業を新たに作る場合、今では、株式会社で作ることになります。
そこで、一般の人は、普通、会社を作るとき、有限会社で作ることができないので、株式会社で作るしかないと考えます。
株式会社を作るときにかかる費用の種類は、次のとおりです。
1 定款に貼付する収入印紙が4万円
2 公証人役場に支払う手数料が5万円
3 株式会社の設立登記を登記所に申請する際にかかる登録免許税が最低15万円
4 登記申請を司法書士に依頼するときの司法書士に支払う手数料が6万円
以上の合計額が30万円もかかってしまいます。
ただし、定款に貼付する収入印紙の4万円は、電子認証で定款を作成すれば節約することができます。さらに、司法書士に依頼しないで自分で登記申請すれば、6万円を節約することができます。この場合、定款を電子認証で作成しないと収入印紙代の4万円がかかることになります。
このように費用面を考えますと、株式会社の設立登記にかかる費用は、最低でも20万円かかることになります。そこで、費用面で安く設立登記ができる会社が、合同会社です。株式会社の場合と比較してみます。
1 定款に貼付する収入印紙が4万円
2 公証人役場に支払う手数料が0円(公証人の認証が不要です。)
3 合同会社の設立登記を登記所に申請する際にかかる登録免許税が最低6万円
4 登記申請を司法書士に依頼するときの司法書士に支払う手数料が5万円
以上の合計額が15万円です。株式会社と比較して半額です。
さらに、定款に貼付する収入印紙の4万円は、電子認証で定款を作成すれば節約することができます。なおさらに、司法書士に依頼しないで自分で登記申請すれば、5万円を節約することができます。この場合、定款を電子認証で作成しないと収入印紙代の4万円がかかることになります。このようなことから、合同会社の設立登記にかかる費用は、6万円ですむことになります。
合同会社は、普通の株式会社と同様、営利を目的とした事業内容であれば、業種に制限はありません。
今では、有限会社という名前で、新たに会社を作ることができない代わりに、合同会社という名前で、会社を作ることができるようになりました。最近は、新たに会社を作る場合、この合同会社という組織形態で会社を設立登記する件数が増えているということです。合同会社で会社を始めて、その後、会社が大きくなったら株式会社に変更(組織変更)することもできます。
今では、有限会社という名前で、新たに会社を作ることができない代わりに、合同会社という名前で、会社を作ることができるようになりました。最近は、新たに会社を作る場合、この合同会社という組織形態で会社を設立登記する件数が増えているということです。合同会社で会社を始めて、その後、会社が大きくなったら株式会社に変更(組織変更)することもできます。
合同会社とよく似た名前の会社があります。合名会社と合資会社です。
合名会社は、出資者(株主のようなもの)全員が無限責任社員です。
合資会社は、出資者が無限責任社員と有限責任社員です。
合同会社は、出資者全員が有限責任社員です。
有限責任社員とは、出資者が出資した金額だけ、対外的に責任を負うというものです。
無限責任社員とは、出資者が出資した金額だけ対外的に責任を負うわけではなく、すべての会社の債務について無限に責任を負うというものです。
もちろん、株式会社の株主は、有限責任社員です。
司法書士 芦川京之助
2013年07月27日
不動産鑑定士の伊東良平です。
石渡税理士が、定期借地権設定を利用した相続税対策についてコメントされたので、ちょっと(でもありませんが)補足。
契約期間満了に伴って確実に土地が返ってくる定期借地権は、借地借家法の規定で住宅なら50年以上土地を貸付なければなりません(一般定期借地権)。このため、地主さんの資産運用として利用されるのはほとんどが事業用定期借地権です。
事業用定期借地権は、平成20年1月1日の借地借家法改正で10年から可能になりましたが、事業用に限定されていることは変わらず、土地の貸付先が店舗や倉庫などの利用に実質限られています。そのため、量販店や飲食店、パチンコ店などが出店し得る、街道沿いの大きな土地でなければ成立し得ません。
定期借地権を利用したアパート賃貸(不動産業者等に土地を貸して、アパートを建てさせて地代を得る)は、50年というような長期の貸付(その時点では本人だけでなく、相続人も死んでしまっているかも)が要件になりますので、相続税対策としては無理があります。
また、土地の資産運用で良く利用されるのが、駐車場業者に青空駐車場として一括賃貸して、駐車場業者から固定地代を貰う土地貸付ですが、こちらは借地借家法の適用がなく、土地が「底地」とは看做されませんので、相続税対策にはなりません。
いずれにしても、定期借地権を利用して相続税対策ができるのは、幹線道路沿いなどの商業利用ができる立地に限られますが、そのような立地の場合、借地権設定ではなくオーダーリース(建設費のほぼ全額を店舗を営業する事業者から低利で借り、事業者の求める建物を建てて長期で貸付け、家賃と相殺して借入を返済して行き、差額を地代分として得る)が多くなっています。
ところで、石渡さんが解説した相続税の評価基準は、土地の路線価や建物の固定資産税評価額を機械的に当てはめたものですから、不動産価値の実体とは大きく離れます(そうでなければ私のような鑑定士の商売が成り立ちません(笑))。ある意味、実体としての価値が相続税評価よりの高いから、中古マンションなどを購入すると相続税対策になるのですが、物件の特徴や背景の事情によっては反対になる(相続税評価額が実体より高くなる)ことがあります。この辺り、安易に不動産業者や建設業者の提案に乗らず、不動産鑑定士に相談してほしいところなのですが。
特に、借地権と底地の実体の価格は、ここ数年の動向では相続税評価額とかけ離れています。地代が高くて借地権は全然売れないし、底地は不動産業者や個人富裕層がポンポン買っていきます。
まず基本的な事ではありますが、借地権の価格と底地の価格を合計しても更地の価格にはなりません。
なぜなら、借地権の価格は借地契約上どのようにその土地を使えるかという利用価値で決まり、底地の価格は将来に亘ってもらえる地代の大小で決まるからです。
そのため多くの場合、借地人と底地人が一緒になって借地関係が解消されると(借地人が土地を明け渡したり、借地人が底地を買ったり)、失われていた価値が顕在化して、借地人と地主のどちらか、またはその両方が儲かります。
ある意味、税評価のルールと不動産取引の実体がずれていることが、不動産の運用が節税策になる理由なのですが、実体としての不動産価値を把握するのは、節税プランを考えるより難しいところがあります。しっかり専門家に相談してください。
不動産鑑定士 伊東 良平