2009年12月09日

SI住宅はなぜ普及しないのか?

横浜建築不動産調査の伊東です。

 日本では、マンションは完成時点ですぐに住めることが「常識」ですが、中国や中東・東南アジアでは、新築マンションは内装が何もない「がらんどう」の状態で引き渡されます。新築マンションを買った人は、引き渡された後に自分で内装工事を発注し、自分の好きな壁紙や木造作を室内に設えます。キッチンや風呂などの設備的に変更が難しい部分は既設ですが、リビングや寝室はペンキを塗っただけの状態で(最近では、建物の重量に影響する床材などは貼ってあることが多い)、新築マンションはすぐに住むことができません。
 したがって、中国や東南アジアのマンションは、同じマンション内でも、各戸すべて内装が異なります。中には投資目的で買われ、1年以上内装されずに放っておかれる住宅もあります(転売時に買う人が内装できるようにするため)。

 このような、建物の骨格と内装が分離された住宅を「SI(スケルトンインフィル)住宅」と言いますが、日本ではあまり普及していません。理由は何でしょうか。

 かつては、法律的に作ることができませんでした。
 内装が「がらんどう(専門用語で「スケルトン」と言います)」の状態では、(建築基準法施行令や消防法上)内装制限に準拠しているかどうか検査できないため、検査済証が発行されませんでした。
 また、内装の無い状態では、そこが「居宅」(登記上の「住宅」の呼び名)であることを確認できないため、建物の表示登記ができませんでした(区分建物の表示登記は、一棟全体の住戸について同時に行う必要があり、一棟の中に内装のない状態の区画があると、用途が不明なため、一棟全体の表示登記が行えない)。
 このため、内装のない状態で各戸の買主に「共同住宅」として所有権移転登記を行うことが事実上できず、引き渡すことができないという問題がありました。所有権移転登記ができなければ、抵当権設定登記もできず、住宅ローンの融資実行ができないため、事実上だれも買えないマンションになってしまいます。

 これについては、法改正を伴わない「制度改定」が行われ、形式上は内装のない状態で建物を完成引き渡しすることが可能になりました(国土交通省発表)。
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha02/07/071220_.html
 まず建築基準法・消防法については、、内装・設備が完成した住戸から順次建築基準法・消防法の検査等を経て使用することができることとなり、建物としての使用が可能となりました。
 次に登記ですが、未内装の区分は種類を 「居宅 (未内装) 」 と表示登記し、倉庫に準じて所有権移転登記できるようになりました。

 しかし、現実にはいろいろな問題があります。
 まず、スケルトン状態で建物を完成させた後、各住戸のオーナーに所有権移転登記し、各オーナーが、内装工事完了ごとに建築基準法・消防法の検査等を受けることになっていますが、建物全体の確認申請時点(つまり原設計時)から内装を変更した場合には、再度確認申請を行う必要があり、手続上現実的ではありません。
 また、各オーナーは「居宅 (未内装) 」 のままで建物を取得した場合には、住宅用家屋の取得に係る税制上の特例措置を受けられません。特例を受けるためには、内装工事完成後に 「居宅」 に変更してから所有権の保存・移転登記をすることが必要で、それなら初めから内装を決めてしまった方が有利になってしまいます。
 品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)の問題もあります。内装工事を別業者に発注するならば、建物全体を建設する建設会社が10年保証を拒否する可能性もありますし、住宅性能表示を受けることができない可能性があります。
 住宅瑕疵担保履行法、マンションのアフターサービス基準等の、瑕疵担保の問題もあるでしょう。建物の共用部と内装が別の工事業者に施工された場合、瑕疵修保を行う業者が不明確になり、住宅瑕疵担保責任保険を提供する保険会社が、付保を断る可能性もあります。

 このように、SI住宅を現実に作れない法的な問題がいくつかありますが、SI住宅が普及しない理由は、何より「消費者がこのようなマンションを欲しがっていない」ことにあると思います。
 日本人は家に自己主張することを嫌うのか、あるいは家屋に自己主張したい人は戸建に住みマンションを買わないのか。自分の家の内装をお隣と変えたい、あるいは自分好みの内装にしたいという気持ちは、壁紙の色・模様や床の仕上くらいで、新築時はモデルルームの内装でOK、という人が多いのかもしれません。
 また、中古マンション市場とリフォーム市場が整備されましたので、自分好みの内装をしたい人は中古マンションを買えばよい。消費者は無理にSI住宅を買う理由はなく、ディベロッパーもこのことを理解してか、「内装はお客様ご自身で、どこの会社にも頼めます」と売り込んでいる例はほとんどありません。

 気をつけていただきたいのは、単に建物の主体部分(躯体+外装+共用設備)と内装(戸内仕上+戸内設備)を分離して、外部から共用配管などを交換できるようにした構造のマンションを「SI住宅」と銘打っている例があることです。これは、建物の設計上の問題であり、マンションの「建て方」が変わったわけではありません。主体部分と内装とを分離発注し、スケルトン状態で各オーナーに「引渡し」ができなければ、本当の意味での「SI」ではありません。
 この点、建設会社やディベロッパーのフレコミに騙されないよう、注意しましょう。



fudousan_soudan at 15:08コメント(0)トラックバック(0)住宅選び  

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