2010年06月11日

小野善康氏が内閣府の参与に(驚き)?

不動産鑑定士の伊東です。

 鳩山内閣から菅内閣に替わり、民主党も人気を取り戻しているようですが、私が注目している「内閣人事」は、大臣(政治家)の人事ではなく内閣府の参与の人事です。マスコミが取り上げないので気づきませんでしたが、今年の2月に、大阪大学社会経済研究所所長の、小野善康氏が、内閣府の参与になっていました。
http://www.asahi.com/business/topics/economy/TKY201005080310.html

http://blog.hokkaido-np.co.jp/staff/archives/2010/06/post_890.html

 これは、実は非常の大きな出来事と私は考えています。小野先生がどの程度内閣の経済政策に関与する立場になるかはわかりませんが、もし、小野氏が小泉内閣時代の竹中平蔵氏のように、国の経済政策の指針を考えるとしたら、日本経済の方向性を左右する、非常に大きな出来事になると考えます。

 小野氏はいわゆる「ニューケインジアン」という、拡張財政派の立場なのですが、宮沢喜一元総理のような「古い」ケインズ主義者ではなく、「新古典派」と呼ばれるケインズ理論を否定する立場の理論を用いて、ケインズ経済学を導いた、という異色の経済学者です。
 大学の経済学の教科書に出てくるヒックスの「IS−LM分析」に代わる、「π−L分析」という新たな金利−所得理論を展開した人です。

 その理論は複雑で、言葉で説明するのは非常に難しいのですが、簡単に言うと、「金(カネ)がカネであるだけで喜んで稼ぎまくるヤカラがいる限り、不況が必ずやってくる。その不況を克服するためには、新たな財やサービスを提供して金持ちに金を使わせるか、金の価値を下げて金持ちの貯蓄を放出させるか、どちらかが必要だ。」というものです(この説明が間違っていた場合、私の不勉強のせいです。念のため)。
 普通の人は、Money(カネ)は使いたくて稼ぐのですが、中にはカネを稼ぐこと自体に喜びを感じ、札束を積んだり預金通帳に残高が貯まっていくことそのものに快感を覚えるヤツがいる。それほど極端でなくとも、”将来への不安”などを理由に(現金か低利の預金で)貯蓄ばかり行い、消費も投資もしない人が増えると、世の中のカネにアンバランスが生じ、不況が必ずやってくる、という理論です。
 
 不況を克服するためには、財やサービスの「時間選好率」を上げる、すなわち、「明日より今日欲しい」と人々が思うモノやサービスを増やすか、貨幣の「流動性プレミアム」を減らす、すなわち、「カネを持っていても、使わなきゃ意味がない」と人々に思わせるか、その両方が必要だ、という発想です。そのための手段として「良い公共事業」を増税してでも行うべき、という考えを持っている人です。

 小野氏は「どマクロ経済学者」と呼ばれており、経済理論としては正しくとも、社会学としてみた場合、人間の行動力学を無視した机上の空論であるという、批判者が多くいます。
 ケインズ派の経済学者に共通している考えに「合成の誤謬」(1人1人の行動として正しくとも、みんなが同じ行動を取ると間違いになってしまうこと)というものがあります。景気が悪くなると、人は贅沢をやめて遊興費を減らし貯蓄を増やしますが、国民全員がそれを行ってしまうと、遊興のサービスをしている人の収入が減り、その人が消費する金額も減り、経済全体が収縮してしまいます。
 そうなった場合、伝統的なケインズ経済学では、公共事業を増やし国全体の仕事を増やす、という発想をしますが、小野氏はそうではなく、金持ちに豪遊させるか、豪遊しないなら金持ちから税金を多く取って公共事業で需要を拡大しろ、と主張しているようです。金利を引き下げて、貯蓄の相対的な価値を減らし、金利がゼロでも効果がなければ、貯蓄に税をかけて(いわゆるマイナス金利)その税で公共事業を行う、とも考えているようです。これらの点で、社会政策としては理想的でも現実的でもない、という批判があります。
 でも、一番重要なことは、企業が新たな商品やサービスを開発・提供して、人々の「時間選好率」を上げる、という方法がベストとも主張してます。その点、竹中平蔵氏のような「サプライサイダー」と共通する発想でもあり、それが伝統的なケインズ経済学とは異なる考えです。

 私が感じるに、小野氏の経済学の前提には、公的機関性善説があり、公的機関が悪意で自らの組織と利権の肥大化のために行動すると、小野氏の理論は破綻します。小野氏に批判的な学者は、小野氏の主張している経済理論そのものに対する批判ではなく、小野氏の理論が、現実の世の中では実行不可能な、不自然な前提を置いている(「それができてりゃ、苦労しないよ!」)というものです。人間は自らの欲望のために合理的な行動をしない動物であり、いくら理論的に経済を改善する方法を導き出しても、政策論として実行することが社会的にできない以上、机上の空論であるという批判です。
http://agora-web.jp/archives/984925.html

 いずれにしても、小野氏の今後の発言と、菅政権での政策決定の関与に注目です。メディア露出の多い政治家の行動ばかりでなく、政策ブレーンの「地味な」人事にも注目したいと思います。

不動産鑑定士/一級建築士
伊東 良平



fudousan_soudan at 17:50コメント(0)トラックバック(0)番外編  

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