ピラティスとは?

ピラティスとは、ジョセフ・ピラティス氏によって考案されたエクササイズです。
1926年にニューヨークにスタジオを開設したのち、ピラティスは爆発的人気となりました。

もともとピラティスとは第一次世界大戦中、負傷兵にリハビリとして提供したことをきっかけに発展したものです。ピラティスでは背骨や骨盤に焦点をあてて、インナーマッスルをコントロールし、自分自身の本来の正確な身体の使い方を習得していきます。パフォーマンスの向上、怪我や障害の予防、ボディメイクのためなど、多くのアスリートやダンサー、モデルなどが実践しています。また、リハビリとして今も受け入れられ、私自身も患者さんの日々のリハビリにピラティスのエクササイズが大いに役立つことを実感しています。

また、ポーズを静止するヨガに対して、ピラティスのエクササイズは静止せず反復して動き続けるのが特長です。ヨガには「静」の要素、ピラティスには「動」の要素があります。

さて、このピラティスには、いくつかの基本原則があります。その基本原則はヨガにも通用するものがあると私は考えています。その中でも今回は、ピラティスの基本原則のうち「背骨」に関連する2つを知り、その2つの基本原則をいつものヨガに取り入れてみましょう。

ピラティスの基本原則2つを紹介

今回紹介するピラティスの基本原則はこの2つです。

①「軸の伸長」
②「背骨の分節的運動」

この2つの原則について説明します。

軸の伸長とは

「軸の伸長」とは、重力に対して身体を上に引き上げる感覚のことです。「軸の伸長」によって、重力に押し潰される力に抵抗する垂直方向の抗重力活動が起こります。こうすることで身体の左右のバランスがとれて身体が中心に整い、身体の基本的アライメントが整います。さらに「軸の伸長」によって、自動的にコアにも必要な力が入ります。

※「抗重力筋」については「代謝アップ&良い姿勢に!理学療法士が解説「抗重力筋」を鍛える方法」を参照。

ピラティスの基本原則をヨガに取り入れよう!理学療法士が解説「背骨」の2つの原則

ピラティスの基本原則の中でも、私はこの「軸の伸長」を特に重要視しています。この機能の破綻が様々な怪我や変形や痛みといった障害へとつながると思っています。

まず、ターダーサナ山のポーズ)で体感してみましょう。ターダーサナすべてのヨガのアーサナの原点だと以前お話しました。そのターダーサナ、ただ何気なく真っ直ぐ立っているだけではないですか?「軸の伸長」を意識して立ってみましょう。いろんな例え方ができますが、天井から頭頂部を糸で引っ張られているような、または背骨をいつもより10センチくらい長く引き上げるような感覚です。

背骨の分節的運動とは

背骨は24個の椎骨と、仙骨と尾骨から成り立っています。背骨はその24個の椎骨がひとつひとつ分離して、波打つように連動しながら均等に動くことが理想的で、これを「背骨の分節的運動」といいます。これが失われると、呼吸機能の低下や胸椎の可動性が低下し、それが頚椎や腰椎の過剰ストレスとなり症状へと至ります。

「背骨の分節的運動」は、椎骨同士の間隔が広がりながら動くことが重要で、つまり同時に「軸の伸長」を伴った動きが求められます。では、ロールアップ&ロールダウンで体感してみましょう。背骨ひとつずつを順番に動かすように丸まりながら、前屈位から立位へ、また立位から前屈位へと動きます。立位から前屈していく時は、壁に貼ったポスターが壁からゆっくりはがれ落ちるようなイメージで、前屈位から起き上がる時は、骨盤をまず正面に起こして、その骨盤に背骨をひとつひとつ積み木のように積み上げていき、最後に頭部を静かに乗せるようなイメージです。

 ピラティスの基本原則をヨガに取り入れよう!理学療法士が解説「背骨」の2つの原則
ロールアップ&ロールダウン

私はよく太陽礼拝の動きの中で、このロールアップ&ロールダウンを「背骨の分節的運動」を促すために取り入れています。





2つの基本原則はすべてのヨガポーズに適用可能

「軸の伸長」「背骨の分節的運動」、この2つの基本原則の感覚がとても重要で、実はこれらはすべてのヨガポーズに適応します。

ヴルクシャーサナ木のポーズ) などの様々な片脚でのバランスポーズや 、ヴィーラバッドラーサナ(戦士のポーズ) シリーズはもちろん、スカーサナ(安楽座)のようにたとえ座っていても 、アドームカシュヴァーナーサナ下向きの犬のポーズ) のように下向きの体勢でも、ウッティタートリコナーサナ三角のポーズ) のように背骨が横に傾いていても、ジャーヌシールシャーサナ頭を膝につけるポーズ) のように前屈していても、ブジャンガーサナコブラのポーズ) ように背骨を後ろに反っていても、アルダマッツェーンドラーサナ半分の魚の王のポーズ) のように背骨を捻っていても、バカーサナ鶴のポーズ) のようなアームバランスポーズでも、この2つの基本原則を同時に意識してポーズを行います。

そして、意外かもしれませんが、バーラーサナや、(子供のポーズシャヴァーサナ亡骸のポーズ)といった脱力するポーズでもこの2つの原則が必要です。ここで気付いた方もいると思いますが、本来「軸の伸長」と「背骨の分節的運動」とは、決して全力で頑張って行うものではなく、潜在的な必要最小限の力で実現可能なことなのです。とはいっても、それぞれのポーズによって、また人によって、この2つの原則のコントロールの難しさや、必要な力の差はもちろんあるかもしれません。そのうち必ず感覚がつかめてくるはずです。

最後に

ピラティスの基本原則である「軸の伸長」「背骨の分節的運動」、理解できたでしょうか?背骨を重力に抗うように長く保ち、そして背骨ひとつひとつの隙間を広げることで背骨のきめ細やかな動きを促すようなイメージです。この2つの基本原則が、今後自分自身の背骨を長持ちさせる秘訣にもなります。

「もし30歳であなたの背骨が柔軟性に欠けて硬かったら、あなたは歳をとっています。もし60歳であなたの背骨が完璧な柔軟性を保っていたら、あなたはまだ若いのです。」

これは、ピラティスの生みの親であるジョセフ・ピラティス氏の言葉です。私の好きな言葉のひとつです。ピラティスの2つの基本原則を前提に、自分の背骨に意識を向けながら、今日のヨガの時間を過ごしてみてくださいね。

ライター/堀川ゆき
理学療法士。ヨガ・ピラティス講師。抗加齢指導士。モデルやレポーターとして活動中ヨガと出会い、2006年にRYT200を取得。その後、健康や予防医療に関心を持ち、理学療法士国家資格を取得し、慶應義塾大学大学院医学部に進学。現在大学病院やスポーツ整形外科クリニックで、運動機能回復のためのリハビリ治療に携わる。RYT200解剖学講師も務める。