あれ、手首が痛いかも?

ヨガで両手のひらをマットについている時に、手首に痛みを感じている人はいませんか?手首の痛みの自覚があるままヨガを続けることは、手首の症状を悪化させる恐れがあります。

ヨガで痛めた部位ランキング

毎年恒例となっている「ヨガフェスタ」という国内最大級のヨガイベントで、2008年9月にヨガクラスの参加者約120名に取ったアンケートによると、ヨガで痛めた部位は

1位:腰
2位:手首・頚部
4位:肩
5位:膝
6位:ハムストリングス
7位:股関節
8位:足首・肋骨・肘

という結果になりました。

ヨガでの怪我第2位「手首」理学療法士に聞く、安全に手首を使う3つの秘訣とは?
引用:中村尚人「体感して学ぶヨガの解剖学」

腰は様々なスポーツに共通して怪我が多い部位ですが、手首が2位と上位にランクインしてしまうのはヨガの特性。ヨガ人口がこれだけ増えている今、問題視していかなければいけない点かもしれません。

そこで、今回はヨガで手首を安全に使うポイントをお伝えしたいと思います。








手首の痛みの原因は?

手首の痛みの原因は、腱鞘炎やリウマチなど手首の疾患を抱える人に限りません。

更年期の女性は加齢やエストロゲンの減少により関節が脆弱になりやすくなっています。また、妊娠の女性はリラキシンという関節を緩めるホルモンの働きにより可動域が過剰なりやすく、関節痛が出現することがあります。仕事、スポーツ、スマートフォンなどの操作、産後の世話などで手首を酷使して痛みが出現する人も多いです。

面白いことに、乳児期のハイハイの期間が短いと、上肢や体幹の筋力が充分に発達しないまま成長し、大人になってから支障をきたすという報告もあります。もしハイハイ期をスキップして、我が子を1日でも早く歩かせようと急いでいるお母さんがいたら、一度考え直して欲しいです。

手首を痛めやすいポーズは?

ヨガを続けている人はお気付きの通り、ヨガでは手のひらで体重を支えるポーズがたくさん登場します。特に、難易度の高いアームバランスポーズは、主に両手のひらだけで自重を支えるポーズのため、手首にかなりの負担がかかります。

一方で、初心者クラスでもチャレンジすることの多い、

・四つ這いの姿勢でおこなうポーズ
プランク・ポーズ板のポーズ) 
アドームカシュヴァーナーサナ下向きの犬のポーズ) 

この3つのポーズも、体重を手のひらで支えることになりますが、この場合は手のひらと足裏(膝やつま先)など、4点で自重を支えるので、比較的手首への負担は減ります。しかし、この3つのポーズの時点で手首の痛みを感じている場合は、要注意です。

そもそも人間の手のひらは、体重を乗せるためではなく、道具を使うなどの巧緻動作を行うために発達した、とても精密で繊細な部分です。

一方で、手のひらとほぼ同じような解剖学的構造をしている足裏は、体重を支持するために発達しているため、衝撃に強く頑丈にできています。

足裏よりずっとデリケートな手のひらで、何10キロという自分の体重を支えようとするヨガポーズ自体に無茶があるのです。もしアームバランスポーズにチャレンジする場合は、体幹など全身の制御と強化が充分に成されていないと、必ずいつか怪我につながります。次に紹介する手首を守る方法を、ヨガの時に実践してみてくださいね。

ヨガの時の手首の守り方

ヨガで手首に痛みや違和感を感じていたり、手首に不安のある人は、これから紹介する簡単な3つの方法を一度試してみてください。

1.背屈の角度を軽減する

手首の参考可動域は、掌屈は90°ですが、背屈は70°です。

ヨガでの怪我第2位「手首」理学療法士に聞く、安全に手首を使う3つの秘訣とは?
引用:高井信朗「全部見える整形外科疾患」より改変

参考可動域を越える可動域は、関節への負担となり怪我のリスクが上がる可能性があることは以前こちらで説明しました。両手のひらをマットについて、四つ這いになってみましょう。手のひらはこの時は背屈しています。さて背屈は何度になっているでしょうか?肩の真下に手首をおくことがヨガではニュートラルポジションなので、おそらく背屈90°になると思います。つまり参考可動域をすでに20°オーバーしまっているのです。

そこで、手首を守るために手首の下にブランケットやタオル、ハンカチなどを置いて高さを出しましょう。そうすると背屈を70°くらいに保つことができるはずです。四つ這いの時点で痛い人は、痛みが和らぐはずです。痛みまで出ていない人も、手首へかかるストレスをこれで下げることが可能です。

ヨガでの怪我第2位「手首」理学療法士に聞く、安全に手首を使う3つの秘訣とは?
Photo by Yuki Horikawa

2.手のアーチを意識する

手のひらをマットに置く際に、「人差し指の付け根をマットに押し付けて」とアドバイスを受けたことはありますか?私もそう教わってきましたし、数年前までそう指導してきました。しかし、手にもアーチがあることをご存知でしょうか。足裏のアーチについては以前こちらで説明しました。足のアーチと同様に、実は手のひらにもアーチが存在します。

ヨガでの怪我第2位「手首」理学療法士に聞く、安全に手首を使う3つの秘訣とは?
引用:川島敏生「ぜんぶわかる筋肉・関節の動きとしくみ事典」

手のアーチを保つように手のひらをマットに置けば安全です。つまり、人差し指の付け根が足裏でいう土踏まずにあたるので、そこは無理にマットに押し付けないで、マットから浮いていて構いません。むしろその方が5本の指先に力が入り、より手のひらを力強く使えると思いませんか?

ヨガでの怪我第2位「手首」理学療法士に聞く、安全に手首を使う3つの秘訣とは?
Photo by Yuki Horikawa

逆に、人差し指の付け根をマットに押し付けた状態で、5本の指先もマットにグッと押し付けてみてください。こちらだとどうしても力が入りにくいと思います。

ヨガでの怪我第2位「手首」理学療法士に聞く、安全に手首を使う3つの秘訣とは?
Photo by Yuki Horikawa

さらに、マットに触れている5本の指先と手根とを吸盤のように真ん中に引き寄せるように力を入れてみてください。より手のひらが力強く安定するのが実感できることと思います。

3.肘の過伸展に注意する

肘の過伸展については以前こちらで説明しました。肘の過伸展が手首への負担や痛みを増強します。関節は隣接した関節へと影響を与え合います。肘のアライメント不良が手首へと波及するのです。肘をつっぱり過ぎていないか今一度見直してみましょう。

最後に

手首を安全に使う3つのポイント、いかがでしたか?3つとも早速ヨガクラスで実践できそうなことだと思います。ヨガで感じる痛みは我慢しないことが大切です。信頼できる医療従事者やヨガインストラクター、仲間と出会って、健康的で安全なヨガを続けてくださいね。

ライター/堀川ゆき
理学療法士。ヨガ・ピラティス講師。抗加齢指導士。モデルやレポーターとして活動中ヨガと出会い、2006年にRYT200を取得。その後、健康や予防医療に関心を持ち、理学療法士国家資格を取得し、慶應義塾大学大学院医学部に進学。現在大学病院やスポーツ整形外科クリニックで、運動機能回復のためのリハビリ治療に携わる。RYT200解剖学講師も務める。