肩こりは国民病?

厚生労働省の「平成28年国民生活基礎調査」によると、女性が訴える自覚症状の第1位が肩こり、第2位が腰痛で、男性でも第1位の腰痛に次いで第2位に肩こりが挙げられています。長時間のデスクワークやスマートフォン操作など、不良姿勢の条件が重なりやすい今時の症状と考えられ、過去20年の調査においても同様の結果で、多くの国民が長い間肩こりで悩んでいることがよく分かります。

肩こりについては「つらい肩こり解消エクササイズ」のコラムで詳しくお話しました。

今回は、なぜ肩こりが起こるのか、肩こりの原因となる筋肉、またその対処法としてセルフマッサージの方法をお話していきます。

なぜ肩こりは起こるの?

なぜ肩が凝るのか?その理由は、長時間の不良姿勢や、重い頭部を支えている首と2本の腕の重さが肩に集中するためだと考えられます。

肩こりの定義は様々ありますが、凝りは、専門用語で「筋硬結(きんこうけつ)」ともいいます。凝りの正体は筋肉の疲労で、常にその筋肉が緊張した状態が長引いていることが原因です。

例えば、筋力トレーニングをした時に、同じ筋肉を連続して筋トレすると、疲労が蓄積して徐々にだるくなっていきますよね。そこで筋トレを休止とすぐに「だるさ」は取れますが、肩こりの場合は、不良姿勢や頭部と腕の重さなどによって、休むことなく常に筋肉が緊張している状態にあるので、だるさがずっと残り続けます。それが肩こりです。

また、筋肉の中には血管が流れていて、筋肉が緊張して硬くなることで血管が狭くなります。血管が狭くなると酸素などの栄養分の循環が悪くなり、疲れを感じる疲労物質や、痛みを感じる発痛物質が筋肉内に停滞するようになります。

その結果、肩に重だるさや痛みを自覚することで、肩こりのような症状が現れるのです。



肩こりの原因となる筋肉は?

肩こりを起こす筋肉は、主に次の2つの筋肉です。

・僧帽筋(そうぼうきん)の上部
・肩甲挙筋(けんこうきょきん)

「肩こり」原因の筋肉を知ろう!理学療法士による3つの肩こりセルフマッサージ
illustration by PRiCO(ぷりこ)

この2つの筋肉は首から肩甲骨へとつながる走行が似ていて、共通した動きは、両肩をすくめた時のように、肩甲骨を耳の方に持ち上げる「挙上」という動きです。

この筋肉の辺りを押すと痛気持ちいいような、肩こりの人はここの筋肉の硬さも充分自覚していることと思います。よくこの部分をグーでトントン叩いたり叩いてもらったりすると思いますが、自分でできるちょっと違ったマッサージを後ほど紹介します。

ほかにも、肩こりの原因となる筋肉はいくつかありますが、今回は脇の近くにある、

・大円筋(だいえんきん)

「肩こり」原因の筋肉を知ろう!理学療法士による3つの肩こりセルフマッサージ
大円筋/illustration by 筒井よしほ

・広背筋(こうはいきん)

「肩こり」原因の筋肉を知ろう!理学療法士による3つの肩こりセルフマッサージ
広背筋/illustration by イラストAC

の2つの原因筋にも注目しましょう。

この2つの筋肉同士も、脇の辺りで走行が重なるようになって部分的に似ていて、共通した動きは、腕を内側にねじるように回す「内旋(ないせん)」という動きです。

肩こりの方は、この脇の部分の筋肉も硬くなっている場合が多いです。脇の筋肉なんてなかなか触ることもなかったと思いますが、肩甲骨と上腕骨とにつながっている、肩部を構成する大切な筋肉です。肩関節周囲炎や肩の可動域制限などの原因になりやすい部分です。ここのマッサージを行うことで肩こりの改善も見込めるはずです。



肩こりセルフマッサージ

肩こりに効く、3つのセルフマッサージを紹介します。

マッサージの効果

マッサージによって、血流が良くなり、筋肉が温まります。筋肉本来の柔らかさや弾力が戻り、また、筋肉への圧迫刺激によって痛みの域値が上がる、つまり痛みを感じにくくなります。老廃物や疲労物質、発痛物質が排出されやすくなるなどの考えもあります。むくみや冷えの解消、リラックス効果も見込めるでしょう。

マッサージは、私がおこなっている患者さんのリハビリでもとても有効な治療手段のひとつです。

マッサージは誰か相手にしてもらうことも良いですが、セルフでおこなうことも充分可能です。それに24時間好きな時に自分の身体をマッサージすることができるのは、他の誰でもなく自分しかいませんよね。

3つのセルフマッサージを実践しよう

では実際に肩こりのセルフマッサージを3つ紹介していきます。

1.肩をつまんで肩回し

手のひら全体で反対側の肩をギュッとつまみます。肩のちょうど僧帽筋の上部の辺りです。肩をつまんだまま、その肩をゆっくり回します。肘の先でスイカくらいの大きさの円を描くイメージです。

・肩回し 15回×反対回し(左右の肩を計30回ずつ行います)

「肩こり」原因の筋肉を知ろう!理学療法士による3つの肩こりセルフマッサージ
photo by Yuki Horikawa
「肩こり」原因の筋肉を知ろう!理学療法士による3つの肩こりセルフマッサージ
photo by Yuki Horikawa

2.首をつまんで頷き(うなずき)

手のひら全体で首の後ろをギュッとつまみます。左右やりやすい手の方で構いません。僧帽筋上部と肩甲挙筋とをまとめて握っています。ちょうど猫が首根っこを掴まれているようなイメージです。首をつまんだまま、ゆっくり頷いたり上を見上げたり頭を上下に動かしてください。

・頷き運動30回

「肩こり」原因の筋肉を知ろう!理学療法士による3つの肩こりセルフマッサージ
photo by Yuki Horikawa

横から見ると… 

「肩こり」原因の筋肉を知ろう!理学療法士による3つの肩こりセルフマッサージ
photo by Yuki Horikawa

3.脇をつまんでモミモミ

手のひら全体で反対側の脇の筋肉をギュッとつまみます。その辺りが大円筋と広背筋です。脇の筋肉は胸側ではなく、背中側の筋肉をつまむので場所をよく確認してください。少しつまみにくい部分なので、モミモミする側の手の肘をテーブルに乗せたり、反対側の手のひらで肘を支えるなど、やりやすい方法を見つけてくださいね。

・脇のモミモミ×30回

「肩こり」原因の筋肉を知ろう!理学療法士による3つの肩こりセルフマッサージ
photo by Yuki Horikawa
「肩こり」原因の筋肉を知ろう!理学療法士による3つの肩こりセルフマッサージ
photo by Yuki Horikawa

POINT:手のひらで筋肉をつまむ際は、指腹と手根でつまむようにするとやりやすいです。

「肩こり」原因の筋肉を知ろう!理学療法士による3つの肩こりセルフマッサージ
photo by Yuki Horikawa

マッサージは痛過ぎる強さでは決してやらないでください。揉み返しがきたり、筋肉を傷付けてしまう可能性があります。気持ちいいくらいの強さや回数でまず初回は始めてみて、翌日その翌日と様子をみていきましょう。この3つのマッサージで、ターゲットの筋肉の循環が非常に良くなります。首や肩がじんわり温かくなる感覚があり、マッサージ前とマッサージ後のこの部分の筋肉の硬さも、明らかに改善することが分かると思います。

私のヨガクラスの生徒さんだけでなく、リハビリの中で患者さんにもおこなってもらっている有効なマッサージです。

最後に

いかがでしたでしょうか?

肩こりが起こる原因や、肩こりを起こす筋肉などが分かると面白いと思います。日常やヨガの時間にもこのセルフマッサージを取り入れてみてはいかがですか?

また肩こりには、適切な運動、疲労やストレスの解消、正しい姿勢を知ること、日常こまめに姿勢を変えることなども重要です。長時間同じ姿勢の作業をする際は、時々立ち上がったりストレッチをしたり、背中を丸めたり伸びをしたり歩いたり、鏡で自分の姿勢チェックをしたり、深呼吸をしたり、そういった「リセット」の時間を設けることが大切です。ただし深刻な肩こりの場合は自己判断せず早めに医療機関を受診してくださいね。

肩こりは、自分自身の習慣で改善できるものです。しつこい肩こりとバイバイできるよう、まず一度肩こりと向き合ってみませんか?

ライター/堀川ゆき
理学療法士。ヨガ・ピラティス講師。抗加齢指導士。モデルやレポーターとして活動中ヨガと出会い、2006年にRYT200を取得。その後、健康や予防医療に関心を持ち、理学療法士国家資格を取得し、慶應義塾大学大学院医学部に進学。現在大学病院やスポーツ整形外科クリニックで、運動機能回復のためのリハビリ治療に携わる。RYT200解剖学講師も務める。