
「ちょとーーーーー!!」
「どういうことよーーーーーー!」
「ありえなくなーーーーーーい!」
電話の向こうは、タカコだった。
あまりにその声が大きいので、俺はしばらく電話を耳から話し、しばらく距離を置いてその内容を聞いていた。
「なによあれーーーーーーー!」
「ケムマキの子分の猫の影千代って、どういうことよーーーー!!」
前回(第9話)タカコのことを書いてから、うすうす何かアクションがあるのでは、とビクビクしていたが、予想通り、電話の向こうのタカコは、テレビでよく見る、迫り来るテキサスのトルネードのように怒り狂っていた。
「ありえなくなーーーい!!」
「最低!!」
「忍者ハットリ君に出てくる、ケムマキの、しかも子分の影千代ってどういうことよぉ!!」
「いやっ・・・あの・・・。」
俺は、結構詳しいじゃないかと思いながらも電話のあまりの勢いに、「ちょとーーーーー!!」の小さい「っ」が抜けてるぞ、とは思っていても突っ込めず、しばらく何も言えないでいた。
「ちょとーーーーー!!」
「ケムマキって悪役じゃないのよ!!」
「しかもその子分の影千代ってどういうことよ!! え!!」
「いや・・っ、その、例えが、難しかったんだ・・・例えが。」
俺はとりあえず繕いなおし、なんとか言葉を発した。
「猫じゃないのよーー!!」
「せめて人にしなさいよ!!」
「本っ当っ、猫って何!?もっとキュートでかわいいキャラに例えなさいよ!!」
「いや、これから、その・・、これから徐々にかわいいキャラを出していくつもりだったんだ・・・。」
その場しのぎで、俺は何とか答えた。
「いいわ、ヒロインにしなさいよ!!」
「ヒロインに!!」
「訴えるわよ!!」
「ゾクッ」
俺はタカコの脅しに、おれおれ詐欺とはこういう感じなのだろうな、とビビりながらも懸命にタカコを静める方法を模索していた。
「と、当然だろ・・・。さ、最終的にヒ、ヒロインだよ・・・。」
「決まってるじゃないか、最終的にヒロイン・タカコのハッピーエンドの物語になる予定に・・・。」
「そう?」
単純だった。
あまりの単純さに頭が下がる。
「やっぱり?」
「そうよねぇ。」
「いや、そうかと思ってたんだ実は。」
「そうだよ。」
「シンデレラもマッチ売りの少女も最初は最悪のシチュエーションだったじゃないか。」
「でも、最終的にハッピーエンドだろ?」
俺はタカコの心の隙間を突くように、ちょっと持ち上げた。
「・・・そうよね!!」
「いや、わかってたんだけどね!!」
「そうよね、いや、ごめんね忙しいのに。」
「そうだよ。」
「最終的にヒロインになるんだから、心配するなよ。」
「それに結構、今のキャラもおいしいだろ?」
「うーーーん、ちょっとね!」
単純だった。
ほんとうに。
タカコは、ちょっと考えるとそう答えた。
それを聞くと、俺は話題を変え、タカコの怒りを静め、何とか電話を切る事に成功した。
危うく白雪姫の例も口から出そうになったが、何とかタカコの単純さに救われた。
さて、では張り切って「草薙の頃」再開と行こう!!