今日は朝の八時半から東大病院に忍び込んでいました。
「医学に接する」という理三の一年生向けのゼミがあり、それに友達と二人で参加してきました。今日は人体病理学コースの一日目です。
朝八時すぎに本郷に降り立ち、どきどきしながら東大病院へドラゴン桜に書いてあったけど、理三の人は有名進学校でも宇宙人のような存在らしく、大人になったそんな人たちが集まる場はどんなところだろう、と思いつつ中央診療棟へ。医局に行くのに、診療棟の中で迷ったので、近くにいた方に道を聞いたら、親切にリードしてくださいました。診療棟のスタッフの方だったのですが、古くなった病院が取り壊されることや、病院でも最も古い部分は博物館的に保存するということなどを教えてくださいました。
医局に入って感じたのは中の先生の強権的な態度…。学生を鼻であしらうような感じでした。朝のconferenceというのに混じりました。専門的な話で、細胞や臓器の様子をスライドで見せつつ、ごにょごにょと先生がしゃべる。独り言みたいなしゃべり方…。しかも意味がわからなくって、ついつい舟をこいでしまいましたというわけで、不満たらたらのスタートだったのですが、それもそのはず。このconfeerenceは特にゼミ生のためのものではなく、医局内での打ち合わせみたいなものだったのです。ゼミ生にわかるような簡単な話をしているわけがないですよね。
そのconferenceが終わった後には、担当の先生が病理学について説明をしてくださいました。この先生はとてもいい方でした。組織などの様子を所見して、病気の部位を調査するのが病理学らしいです。最近では遺伝子も範疇に入ってきたらしいです。
その後、医局内の様子を見学しました。研究者さんが、黒くて変形している睾丸を写真と照合しながら、切断していました。誰かのからだの一部が、モノのようになっている、ということを切に感じた一瞬でした。その後、ろうの中に臓器の切片が入っているものが保存されている様子や、顕微鏡でプレパラートを見ている研究者さんたちの様子を見たり、コンピューターシステムの話を聞いたりしました。
お昼休み
医学部の二号館というところに再集合。以下は覚悟のある方だけ読んでください。
土曜日に癌でなくなられた方の臓器が切断される様子を見ました。お盆の上に一人分の臓器が、布をかけられて乗っています。
肝臓 まずは肝臓を見ました。がん細胞に侵された肝臓というのは、まず形がおかしくなっています。腫瘍ができるから、私たちが知っている肝臓の姿とは大きくかけ離れたものになってしまうのです。そして、色が黄疸のため、緑色や黄色になっています。アボカドのような感じです。(アボカド好きな人ごめんなさい)またところどころ出血しています。それを1cmずつ位にスライスします。長いナイフを使ってさーっとやります。そうすると、じわーっと血がにじんできます。さきほど、誰かの体の一部がモノのようになっている、と書いたのですが、ここでは死んだ後でさえも体に残る生、と言うようなものを感じました。今となれば、このように言葉にすることができるけれども、見ているときには正直、わあぁ…と心に感じただけなのです。
肺 次に肺を見ました。肺も目の前でスライスされたのですが、肺からは茶色い水のような液体がたくさんたくさんひっきりなしに出てきました。お盆の下の布の上に水溜りができました。先ほどのような衝撃をより強く感じました。喫煙していると、肺の上側に黒いものがたくさんたくさんたまって、肺が黒く見えます。健康な肺は、少しくらいの黒い塵がたまっているだけです。喫煙は本当にいいことがありません。喫煙している人は、喫煙している人が癌にかかりやすいというデータを見ても、自分だけは大丈夫な気がして、やはりすい続けてしまうそうです。すっている間に、どんどん黒い物質が肺に詰め込まれていくのです。肺がんはゆっくりと窒息していく病気らしく、大変苦しいようです。喫煙はやめてください。
腎臓 腎臓を見ました。携帯電話と同じくらいの大きさの臓器で、形はそら豆形で、健康なものだとつるんとしていて、きれいです。中の組織の様子も模様のようでした。癌だと、表面がぼこぼこした感じになります。
消化管 消化管も見ました。先のほうに舌べろがついているのが生々しかったです。臓器は普段目にしないから、生きている人と結びつけることが難しいけれども、舌はよく目にするので、そう感じたのだと思います。正常な状態だと、消化管の壁はつるりとしていてきれいなのですが、癌だとしわがよった感じになります。
胃 胃は別に見ました。胃癌は初期のものだと、表面を胃カメラで取ればいいだけなので、治りやすいらしいです。胃癌は日本人に飛びぬけて多いらしく、食生活の違いだけでこんなに違うとは思えない、遺伝子に問題があるのではないか、と先生はおっしゃっていました。まだはっきりとした原因はわからないようです。
横隔膜 横隔膜もみました。腹式呼吸をするときに横隔膜の重要性が説かれますし、しゃっくりの原因だともされていて、日常意識することが多い割には実態は謎のものでした。本当に膜です。結構大きくて、平たいべろんとしたものでした。
膵臓 膵臓は消化に大事な期間です。ここは本当に体の中(消化管とは違って)なので、病気になっても発見が遅いし、治療も難しいらしいです。
脾臓・骨髄 白血病の方と比較をしてみました。脾臓の方は差が明らかでしたが、骨髄のほうはわかりにくかったです。骨髄移植をしても、適応せず、効果がない場合が多いらしいです。そういえば、最近骨髄バンクのポスターがよくはってありますよね。しっかり知っておくことが必要だと思いました。骨髄バンクについては、白金台の医科学研究所でも骨髄の一部を保管している低温保管機を見たのに、いまだにしっかりと勉強していない自分は失礼だなぁとおもいます。
この切り出しの様子はかなりの衝撃でした。病気に侵された臓器と、健康な臓器は見ただけでも明らかに相違があり、その相違こそが病理学が成り立つゆえんらしいです。中には、見るという方法にあいまいさを感じ、非難する人もいるようですが、臓器に限らず、デジタルではあらわせない見る、と言う行為はとても大事だと思います。漢方医だと、視診、ということをやるそうです。臓器にその人の病状が見えるように、その人の歩き方、話し方、顔色などから病気がわかる。見えるものが全てじゃない、とはいうけれども見える物だって十分大事だと思います。見えるものも見ていない、ということを意識せずにそんな言葉を口にしないようにします。
先生が臓器を扱うときに、手袋をした手で普通に持っていて、もっていない側が空中でぶらぶらしている光景が不思議でした。その臓器がどこから来たかと思うと、不思議に思いませんか。
その後は顕微鏡でがん細胞の様子などを見ました。明日、そういうプレパラートを作る、ということでプレパラートつくりの様子も見学しました。
《二日目》に続く…