“リスクマネジメント”のプロフェッショナルを目指して
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
旧年中は格別のお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます。おかげさまで、弊社は昨年、創業10周年を迎えました。これもひとえに、皆様方のご支援、ご協力のおかげと心よりお礼申し上げます。
今から約100年前の第1次世界大戦後の戦後恐慌の中、造船会社を買収し、鉄道車両を製造する工場に切り替え、1924年には国産第1号の大型電気機関車を開発し、成長した企業があります。この企業は、事業強化・事業継続のための『リスクマネジメント』、つまり顧客やサプライヤと協働でBCP(事業継続計画)を考え、製品や調達、生産の設計標準化、サプライチェーン、品質保証、労働安全衛生、原価管理などをトップマネジメントで強化し、大恐慌下でも、企業の持続的成長と高収益化を実現しました。
さて、2022年は、感染拡大を防止する新しい日常の定着化が進む一方、社会の価値観や企業の経営環境はますます激変し、まさに『VUCA(ブーカ)』が顕著になってくると考えます。VUCAとは「Volatility(不安定)」「Uncertainty(不確実)」「Complexity(複雑)」「Ambiguity(不透明)」の4つのキーワードの頭文字をとった言葉で、取り巻く環境が複雑さを増し、先行きが不透明で将来の予測が困難な状態のことです。このVUCAの時代の新しい日常、新しい価値観にスピーディに対応し事業を強化・継続するためには、リスクマネジメントが重要であると考えます。『リスクマネジメント』とは、事業などに影響を及ぼすリスクを事前に把握し、その影響を回避する管理のことです。リスクの発生場所は、その企業の弱みの部分とも言えます。予め、そのリスクを明確にし、その弱点箇所の強化に取り組むことで、事業と収益基盤を強化し、売上と利益を拡大させ、企業価値を向上させことができます。
そこで、本年は、企業の持続的成長と利益確保のために、特に、製品やサービスの企画構想・開発設計段階で発生するリスクの把握と低減をする、“リスクマネジメント”のプロフェッショナルを弊社は目指します。
製品やサービスの企画構想・開発設計段階のリスクは、製品・サービスの品質、コスト、納期、製品仕様の誤った開発目標設定や誤った利益計画などが考えられます。これらのリスクの各部門別の要因と取り組みは次の通りです。
1. 経営企画部門
経営企画部門のリスク要因は、実効性のない経営戦略の策定や不適正な組織・人材マネジメントが考えられます。経営戦略が「絵に書いた餅」にならないように、自社の組織体制や人材スキル、企業環境にマッチした経営戦略を策定する必要があります。また組織・人材マネジメントが「総論賛成、各論反対」にならないように、経営戦略の施策内容を個別部門や担当者の具体的な行動計画や目標(KPI:重要業績評価指標)に落とし込むことが必要です。KPIの評価指標を目標とする売上や利益などの数字と論理的に結びつける必要があります。また経営戦略を実行するための組織を再構築する必要があります。
2. マーケティング・営業部門
マーケティング・営業部門のリスク要因は、市場や顧客ニーズの把握と分析が不十分であること、販売価格設定が不適切であることが考えられます。そのため、VOC調査(顧客の声調査)や市場調査、自社や競合企業調査を組織的に徹底して実施する必要があります。
3.設計部門
設計部門のリスク要因は、製品コンセプト不適や競合との差別化不足、コスト見通し不足、法令・規制確認不足などが考えられます。そのため、顧客仕様の製品仕様への落とし込み(品質機能展開)や、プラットフォームとオプション化、モジュール化などの製品の標準化、部品材料の標準化、生産の標準化などを組織的に徹底して実施する必要があります。
4.調達部門
調達部門のリスク要因は、使用する部品材料やサプライヤの現状把握と分析が不十分なことなどが考えられます。そのため、部品材料の標準化やサプライヤリレーションシップマネジメントの強化、集中集約購買や開発購買の強化などを組織的に徹底して実施する必要があります。
5.生産部門
生産部門のリスク要因は、製造プロセスの現状把握と分析が不十分なことや製造プロセスに関する不具合事例が共有されないことなどが考えられます。そのため、生産の標準化や生産効率向上などを組織的に徹底して実施する必要があります。
6.品質保証部門
品質保証部門のリスク要因は、品質に関する不具合事例が共有されないことなどが考えられます。そのため、品質不具合事例と対策の情報共有などをトップマネジメントで組織的に徹底して実施する必要があります。
7.原価企画部門
原価企画部門のリスク要因は、市場や顧客ニーズとコストの把握と分析が不十分なことなどが考えられます。そのため、製品やサービスの総コスト分析などをトップマネジメントで組織的に徹底して実施する必要があります。
8.本社コーポレート部門・役員
本社部門のリスク要因は、フェーズゲート審査会の形式的開催や支援・指導の不足などが考えられます。そのため、フェーズゲート審査への役員の参加による経営視点での審査・判断などをトップマネジメントで徹底して実施する必要があります。
弊社は“リスクマネジメント”のプロフェッショナルとして、お客様企業の製品やサービスの企画構想・開発設計段階で発生するリスクをすべて把握し、適正な開発目標設定や利益計画の策定などで、そのリスクを低減することで、お客様企業の持続的成長と利益確保の実現に貢献できるよう、誠心誠意努力して参りたいと存じます。
本年も皆様方のますますのご発展とご健勝を祈念し、引き続き、倍旧のご支援、ご協力を賜りますよう心からお願い申し上げ、新年のご挨拶とさせて頂きます。