コスト高騰時代を乗り切る“原価企画”



謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
旧年中は格別のお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます。

 本年2023年の世界経済の成長率は昨年の3.2%から2.7%へ、日本の成長率も昨年の1.7%から1.6%に鈍化すると、IMF(国際通貨基金)は予測公表しています。地政学リスクの増大や各国政府の経済政策の変更による世界経済の先行き不透明感は非常に高く、国内も同様で、部品や原材料費、エネルギー費、人件費などのコスト高騰の問題は継続し、この解決策として、コスト低減、特に『原価企画』活動に取組む企業の増加が予想されます。『原価企画』とは製品開発の上流段階から組織横断チームで仕様とコストを作り込むことで、その目的は、次の2つです。
➀製品・サービス利益目標の達成(コストの最適化)
②CS、PS、SS、ESの高い価値ある製品づくり(仕様の最適化)
(CSは顧客満足、PSはと取引先満足、SSは社会満足、ESは社員満足)。

 小平浪平日立製作所創業社長は、1910年の創業当時から、製造会社にとって原価計算は適正な財務計算の基であり、見積の基本であり、また経営管理に不可欠の要件であるという考えのもと、『原価計算』を重視し、独自の原価計算制度を築いてきた。『原価計算』の目的は、①製品の正確な原価の把握、②適正な価格の設定、③経営能率の増進及び原価低減の3点であり、原価計算を経営管理全般に役立てようとしてきた。創業当時における原価計算では、すでに直接費と間接費を明確に区分し、間接費については配賦基準が設定され、製品別全部原価の計算が実行されていた。原価は直接材料費、直接工賃、動力代等の工場費から成る現場仕上額(直接費)と、販売 ・ 本店経費を含む製造間接費である庶費に区分管理されていたという。(※)この『原価計算』のおかげで、1930年の昭和大恐慌も黒字経営を続けることができ、この『原価計算』のDNAは約112年たった今も受け継がれています。

 本年も継続するコスト高騰問題の解決策となる原価企画の2つの目的を達成させるためには、製品の正確なコストの把握や利益創出のための適正な価格の設定、コスト低減といった約122年前の『原価計算』の思考が非常に重要です。
弊社はこの『原価計算』の思考で、製品やサービスの利益目標を達成するために、製品の企画構想段階・開発設計段階からコストと仕様の作り込みを実施する“原価企画”のプロフェッショナルとして多くのお客様を支援して参りました。その実績から企業の持続的な成長と利益を確保するために必要な各部門の原価企画活動の取り組みは次の通りと考えます。

1. 経営企画部門
 経営企画部門の原価企画での役割は、経営目標を達成するための中期経営計画と原価企画戦略の策定です。原価企画戦略が「絵に書いた餅」にならないように、自社の全事業・全製品群の現状原価の把握による原価企画方針や全社組織体制、全社活動計画、活動実績評価、人材スキル向上、情報発信などに取り組み必要があります。「総論賛成、各論反対」にならないように、原価企画戦略の施策内容を各工場や事業本部の組織の具体的な年度計画や目標(KPI:重要業績評価指標)に落とし込むことが必要です。KPIの評価指標は中期経営計画の目標とする売上や利益などの数字と論理的に結びつける必要があります。

2. マーケティング・営業部門
 マーケティング・営業部門の原価企画での役割は、原価企画の対象製品の市場や顧客ニーズの把握と分析、販売戦略、販売価格と販売数量の設定です。そのため、VOC調査(顧客の声調査)や市場調査、自社や競合企業調査を組織的に徹底して実施する必要があります。

3.開発設計部門
 開発設計部門の原価企画での役割は、原価企画の対象製品の競合との差別化するコンセプト作りや製品仕様・コスト目標設定と作り込み、コスト低減策作成と実行です。そのため、顧客仕様の製品仕様への落とし込み(品質機能展開)やプラットフォームとオプション化、モジュール化などの製品の標準化、部品材料の標準化、生産の標準化などを組織的に徹底して実施する必要があります。

4.調達部門
 調達部門の原価企画での役割は、原価企画の対象製品の部材やサプライヤの現状把握と分析、製品仕様・コスト目標設定と作り込み、コスト低減策作成と実行です。そのため、新規サプライヤーや新規部材の開拓、部材の標準化、SRM(サプライヤーリレーションシップマネジメント)、集中集約購買、開発調達などの調達戦略の策定と実行を組織的に徹底して実施する必要があります。

5.製造部門
 製造部門の原価企画での役割は、原価企画の対象製品の製造プロセスの現状把握と分析や製品仕様・コスト目標設定と作り込み、コスト低減策作成と実行です。そのため、製造プロセスの新技術開発や製造プロセスの標準化、製造効率向上などの製造戦略の策定と実行を組織的に徹底して実施する必要があります。

6.品質保証部門
 品質保証部門の原価企画での役割は、原価企画の対象製品の品質に関する不具合事例の現状把握と分析や製品仕様・コスト目標設定と作り込み、コスト低減策作成と実行です。そのため、品質不具合事例と対策の情報共有などを組織的に徹底して実施する必要があります。

7.原価企画部門
 原価企画部門の原価企画での役割は、原価企画の対象製品の市場や顧客ニーズとコストの現状把握と分析や製品仕様・コスト目標設定と作り込み、コスト低減策作成と実行、原価企画活動の全社展開と統括です。そのため、製品やサービスの上流段階でコスト目標とその達成手段の立案、コスト査定、関係部門へのコスト目標の展開、フェーズゲート審議会でのコスト進捗チェックとフォロー、コスト低減施策テーマの推進、経営層への提案などを組織的に徹底して実施する必要があります。

8.本社コーポレート部門・役員
 本社コーポ―レート・役員の原価企画での役割は、原価企画を全社組織で実行し経営目標を達成するという覚悟の発信やフェーズゲート審査会の開催・支援・指導の強化です。そのため、様々な会議や資料での原価企画活動の重要性の発信、フェーズゲート審査への役員の参加による経営視点での審査・判断などをトップマネジメントで徹底して実施する必要があります。

 弊社は“原価企画”のプロフェッショナルとして、お客様企業の製品やサービスの利益目標を達成し、CS・PS・SS・ESの高い価値ある製品づくりをするための原価企画活動に共に取り組むことで、お客様企業の持続的成長と利益確保の実現に貢献できるよう、誠心誠意努力して参りたいと存じます。

 本年も皆様方のますますのご発展とご健勝を祈念し、引き続き、倍旧のご支援、ご協力を賜りますよう心からお願い申し上げ、新年のご挨拶とさせて頂きます。

※出典:森光高大他、「超総原価計算制度の発見とその理論的意義」、原価計算研究2018Vol.42 No.1、2018年  


☆④本人写真
株式会社福原イノベーション研究所
代表取締役社長兼CEO 福原政則