サプライチェーンを最適化するマーケティング調達
この度の能登半島地震で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。また、犠牲になられた方々に、謹んで哀悼の意を表します。
一日も早く日常生活を取り戻せるようお祈り申し上げます。
2024年を迎え、年頭のご挨拶を申し上げます。
旧年中は格別のお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます。
本年2024年の世界経済の成長率は昨年の3.0%から2.9%へ、また日本経済についても昨年の2.0%から1.0%に鈍化するとIMF(国際通貨基金)は予測しています。また世界の消費者物価上昇率も昨年の8.7%から5.8%へ減少すると予測されていますが、依然高止まりで、部品や原材料費、エネルギー価格、人件費などのコスト高問題は本年も継続することが考えられます。一方、納期遅延問題については沈静化に向かっています。しかしながら、一部の部品や原材料は発注から納入までのリードタイムの長期化は本年も継続すると考えられます。
日本経済では、半導体製造装置市場への投資の増加、自動車市場の輸出の回復、医療機器市場の需要の堅調などが牽引し、本年後半からは景気回復基調に戻ると考えられます。このような市場環境の中では、コスト高や納期遅延対策のために、購入仕様の最適化やコスト低減効果の拡大、原材料やエネルギー、物流価格変動への柔軟な対応など市場ニーズに合ったサプライチェーンを最適化することが重要です。
その施策の一つとして、弊社では市場や顧客ニーズにもとづき、購入品のコンセプトや仕様、コストを作り込み、決定する『マーケティング調達』に取り組んで参りました。マーケティング調達は従来の開発購買からマーケティングや製品コンセプトづくりの製品企画段階まで、もう一歩踏み込んだ調達です。市場ニーズから部品や原材料を調査し、新部品や新原材料を使って製品を開発するなどがこれに当たります。つまり、完成した購入仕様書ではなく、市場・顧客ニーズから部品や原材料を選定するという考え方です。そのためには、企画・構想部門と調達部門が連携、または企画・構想部門に調達機能を持たせることが必要で、調達部門は言われたモノを買う調達から買うモノを提案する調達へと組織の機能を変えることになります。
市場ニーズに合ったサプライチェーンを最適化するために、製品の企画構想段階からコストと仕様の作り込みを実施することで、企業の持続的な成長と利益の確保が実現できると考えます。このマーケティング調達での各部門の取り組みは次の通りです。
1. 経営企画部門
マーケティング調達での経営企画部門の役割は、経営目標を達成するための中期経営計画とマーケティング調達戦略の策定です。そのため、全社方針の中で、マーケティング調達の必要性を十分説明し、各事業部にマーケティング調達の方針や組織体制、活動計画、活動実績評価、人材スキル向上、情報発信などの取り組みを指示する必要があります。「総論賛成、各論反対」にならないように、マーケティング調達戦略の施策内容を各事業部の組織の具体的な年度計画や目標(KPI:重要業績評価指標)に落とし込むことが必要です。KPIの評価指標は中期経営計画の目標とする売上や利益などの数字と論理的に結びつける必要があります。
2. マーケティング・営業部門
マーケティング調達でのマーケティング・営業部門の役割は、調達部門との連携を強化し、対象製品の市場や顧客ニーズの把握と分析、販売戦略、販売価格と販売数量の設定です。そのため、VOC調査(顧客の声調査)や市場調査、自社や競合企業調査を組織的に徹底して実施する必要があります。
3.開発設計部門
マーケティング調達での開発設計部門の役割は、調達部門との連携を強化し、対象製品の競合と差別化するコンセプト作りや製品仕様・コスト目標設定と作り込み、コスト低減策作成と実行、設計課題の解決です。そのため、顧客仕様の製品仕様への落とし込み(品質機能展開)やプラットフォームとオプション化、モジュール化などの製品の標準化設計、部品や原材料の標準化、生産の標準化、物流の標準化などを組織的に徹底して取り組む必要があります。
4.調達部門
マーケティング調達での調達部門の役割は、マーケティングや営業、開発設計、製造、物流、保守、品質保証などの他部門との連携を強化し、マーケティング調達の対象製品の部品や原材料、サプライヤー、コストの現状把握と分析、製品仕様・コスト目標設定と作り込み、コスト低減策作成と実行です。そのため、新規サプライヤーや新規部材の開拓、部材の標準化、SRM(サプライヤーリレーションシップマネジメント)、集中集約購買、開発調達などのマーケティング調達戦略の策定と実行を組織的に徹底して取り組む必要があります。
5.製造部門
マーケティング調達での製造部門の役割は、調達部門との連携を強化し、マーケティング調達の対象製品の製造プロセスの現状把握と分析や製品仕様・コスト目標設定と作り込み、コスト低減策作成と実行です。そのため、製造プロセスの新技術開発や製造プロセスの標準化、製造効率向上などの製造戦略の策定と実行を組織的に徹底して取り組む必要があります。
6.品質保証部門
マーケティング調達での品質保証部門の役割は、調達部門との連携を強化し、マーケティング調達の対象製品の品質に関する不具合事例の現状把握と分析や製品仕様・コスト目標設定と作り込み、コスト低減策作成と実行です。そのため、品質不具合事例と対策の情報共有などを組織的に徹底して取り組む必要があります。
7.本社コーポレート部門・役員
マーケティング調達での本社コーポ―レート・役員の役割は、マーケティング調達を全社組織体制で実行し経営目標を達成するという覚悟の発信と、人材・組織体制、予算などのリソースの確保、活動評価、マーケティング調達に関する情報発信です。そのため、様々な会議や資料でのマーケティング調達の重要性の発信など、社内外に向けてのパブリック・リレーションズ(特にメディア・リレーションズ)や人材組織体制づくり予算の支援を徹底して実施する必要があります。
弊社は“マーケティング調達”の導入・定着化を支援することにより、購入する部品や原材料の価値向上、自社製品やサービスの価値向上、利益目標の達成に共に取り組むことで、お客様企業の持続的成長と利益確保の実現に貢献できるよう、誠心誠意努力して参りたいと存じます。
本年も皆様方のますますのご発展とご健勝を祈念し、引き続き、倍旧のご支援、ご協力を賜りますよう心からお願い申し上げ、新年のご挨拶とさせて頂きます。

株式会社福原イノベーション研究所
代表取締役社長兼CEO 福原政則