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 建物を借りているAさんが、ベランダを増設した場合、法律上どういった攻防がなされるでしょうか。

 

1.ベランダを増築

 Aさんは30万円かけてお洒落なベランダを取り付けました。ベランダはもちろん建物と別個には機能しないし、建物にがっちりと付いて元に戻すのはとても大変(強い付合)なので、法律上これは家主の所有となります(民242)。

 でも、それではAさんにとって不公平なので、退去時にその価値(有益費)が残っていれば、Aさんは家主にその対価を請求できます(民608②)。

 

2.原状回復義務の特約

 しかし、最近の多くは、賃貸借契約書に、[ 退去時は原状回復を要す ]との特約があります。この場合、Aさんはベランダをもとに戻す必要があるでしょうか。

 この場合でも上記の強い付合が適用され、Aさんには原状回復の義務はないと考えます。ただし、家主としては、退去時には元の状態にして返してほしい、費用をかけたくないとの思いで特約を付けたのであるから、Aさんとしても「1」の有益費の請求はできないと考えます。

 

3.債務不履行責任や不法行為責任

 ただし、大前提として、Aさんが勝手にベランダを増築してしまった場合は、契約上でそれを禁止されていることも多く、家主から債務不履行による損害賠償責任や、奇抜なベランダを付けて建物の価値を減少させてしまった場合は、不法行為責任を問われる可能性があります。




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 ※文言の表現は分かりやすくするために平易なものを用いており、必ずしも法令に則した表現でない部分が含まれます。